お知らせ

INFO

2025.12.31 Wed

「電力自由化で安くなる」は嘘?ハーバード大の論文が暴く米国電力市場の不都合な真実

 
解説します。
 
「電力自由化で安くなる」は神話だったという気になる見出しがあったので記事を読ませていただきました。
正直に申し上げますと、この記事で紹介されている内容は、私たち電力小売事業者にとっては非常に厳しいご意見です。「自由化しても安くならない可能性がある」と指摘されているに等しいからです。しかし、他国の事例では実際にそのようなデータがあるという事実を真摯に受け止め、目を背けることなくこの内容について記事を書いてみたいと思います。
2016年の日本における電力小売全面自由化以降、「電力会社を変えれば電気代は安くなる」という謳い文句が一般的になりました。しかし、電力自由化の先進国であるアメリカの実情を分析したハーバード・ビジネス・スクールの論文や、ニューヨーク・タイムズの記事では、「自由化された地域の方が、電気代が高い」という驚くべきデータが示されています。
本記事では、米国電力市場のデータをもとに、自由化の理想と現実について解説します。これから電力切替を検討している方や、エネルギー市場の動向に関心がある方にとって、非常に興味深い内容となっています。
 


 
米国電力自由化の背景と現状
まず、アメリカの電力自由化の仕組みについて整理しましょう。アメリカでは州ごとに制度が異なり、大きく分けて以下の2つのグループが存在します。
・規制緩和州(自由化導入): ニューヨーク州やカリフォルニア州など16州。発電部門を分離・売却し、市場競争を導入。
・規制維持州(従来型): 25州。地域独占の電力会社が発電から販売までを一貫して行う。
注目すべきは、一度は自由化に踏み切ったものの、後に撤回した州が4州(アリゾナ、アーカンソー、ネバダ、モンタナ)もあるという事実です。また、自由化された州でも、送電と小売は地域独占が維持されているケースが多く、完全な自由競争市場を維持している州は全米でも少数派と言えます。
 
データが示す「自由化で価格上昇」の実態
ハーバード・ビジネス・スクールのワーキングペーパー「Do Markets Reduce Prices? Evidence from the U.S. Electricity Sector」で示されたデータは衝撃的です。
 
1. 発電コストの高騰
論文内のデータによると、2000年代半ば以降、規制緩和が進んだ州では電力の生産コストが急上昇しました。一方で、規制を維持した州では生産コストが低く抑えられています。
 
2. 小売価格の逆転現象
さらに興味深いのは小売価格の推移です。 2005年以降、燃料コスト(限界費用)自体は下落傾向にありました。しかし、自由化された州では、燃料費が下がっているにもかかわらず、小売価格は上昇を続けました。比較データを見ると、規制維持州の方が、自由化州よりも電気代が10〜20%程度安く抑えられているという結果が出ています。
 
3. 膨らむ卸売マージン
なぜ燃料費が下がっているのに電気代が上がるのでしょうか? 分析によると、発電会社の「卸売マージン(利益)」が平均で約15%上昇していることが判明しました。これは、自由化市場において特定の発電企業が価格決定力を持ち、競争が十分に機能していない可能性を示唆しています。
 
なぜ市場原理は機能しなかったのか?
通常、競争が起きれば価格は下がるはずです。しかし、米国の電力市場では以下の2つの要因が壁となりました。
1.新規参入のハードルが高い 発電所の建設には巨額の投資が必要です。そのため、期待されたほど新規参入が進まず、少数の発電会社による寡占状態となり、価格が高止まりしました。
2.実質的なグループ内取引 法的分離によって発電部門と小売部門が別会社になっても、資本関係が残る「同一グループ」であるケースが多々あります。市場を通さずグループ内での相対契約を行うことで、市場競争の圧力がかかりにくい構造が温存されました。実際、市場経由の取引量は全体の約25%(2016年時点)に過ぎません。
 
日本の電力事情への示唆
この米国の事例は、日本の私たちに何を問いかけているのでしょうか。 「自由化=安くなる」という図式は、必ずしも成立するとは限りません。
記事の筆者が指摘するように、設備投資の回収コストや、再生可能エネルギー普及による火力発電の効率低下など、価格上昇には複合的な要因があります。特に日本においては、以下の要因が電気代に直結しています。
・燃料費への依存: 火力発電の燃料をほぼ全て輸入に頼っている。
・電源構成の問題: 原子力発電の稼働状況や再エネ賦課金の影響。
確かに制度をいじって市場を自由化するだけでは、根本的なコスト(燃料費や設備費)の問題は解決しません。
米国の事例を踏まえ、これから日本ではどのような対応をしていくのかが重要です。
 
まとめ
・米国のデータでは、電力自由化された州の方が、規制維持州よりも電気代が高い傾向にある。
・原因として、新規参入の難しさによる寡占化や、グループ内取引による競争原理の不全が挙げられる。
・燃料コストが下がっても、発電側のマージンが増え、小売価格に還元されていない実態がある。
・日本においても「自由化=値下げ」と短絡的に捉えず、燃料費や電源構成を含めた構造的な課題に目を向ける必要がある。
 


 
情熱電力からのお知らせ
今回の記事では、電力自由化の「不都合な真実」に触れました。 米国の事例では「自由化しても安くならない」という結果が示されましたが、私たちはこの事実を、単なる批判材料ではなく「教訓」として捉えています。
米国のような事例があるからこそ、政府は様々な制度改正を重ね、私たち情熱電力を含めた日本の電力会社は、お客様の電力コストを削減するために日々知恵を絞り、不断の努力を続けています。 単に市場価格に連動させるだけでなく、調達方法の工夫や、お客様ごとの電力使用パターンの分析、無駄を省くためのコンサルティングなど、それぞれの会社が独自の「創意工夫」を重ねています。
厳しい市場環境ではありますが、私たち情熱電力は、お客様にとって本当にメリットのある提案ができるよう、これからも誠実に挑戦し続けます。 電力契約の見直しや、エネルギーコストの削減について考えたい法人様・個人様は、ぜひ一度情熱電力へご相談ください。
 
株式会社情熱電力へのお問合せは コチラから
 
・経済産業省 資源エネルギー庁(電力小売全面自由化について
・電力・ガス取引監視等委員会(https://www.egc.meti.go.jp/