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2025.05.24 Sat

2050年、最大8,300万kWの電力が不足?将来の供給力と火力リプレース問題

 
エネルギーイメージ
 
2050年に最大8,300万kWもの電力供給力が不足する可能性がある――。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が提示した衝撃的な試算は、私たちの未来の暮らしや産業に大きな影響を及ぼしかねません。
これは、火力や原子力のリプレース(更新)が滞った場合に発生するシナリオです。
需要が上振れし、経年による老朽電源が順次廃止される中で、新たな供給源が十分に確保されなければ、日本のエネルギーシステムは深刻な供給不足に陥る恐れがあります。
いくつかのシナリオのうち極端なケースでは、需要が1兆2,500億kWhと最大に達し、火力・原子力のリプレースが行われなかった場合、夏季夜間に8,300万kWの供給力不足が生じるとされています。
一方で、控えめな需要シナリオ(9,500億kWh)で原子力のリプレースを考慮しても、火力の更新がなければ3,760万kWの不足が見込まれています。
さらに、予備率13.9%(34年度の供給信頼度基準)の確保すら難しいケースも多く、設備を更新しても採算が合わないという問題も浮上しています。
本記事では、有識者会合や各種資料をもとに、将来の需給バランスに関する最新の試算内容、火力発電のリプレースの難しさ、そして政策的課題を整理していきます。
 
【目次】
1.供給力不足のインパクトとは?
2.最大8,300万kWの不足はどのような前提か?
3.火力リプレースをめぐる技術的・事業的課題
4.CCS・水素火力・アンモニア混焼への期待と現実
5.今後に求められる政策と投資誘導のあり方
 


 
1. 供給力不足のインパクトとは?
OCCTOは2050年の電力供給力について、最も厳しいシナリオでは最大8,300万kWが不足すると試算しました(※夏季夜間の需給断面)
 
※夏季夜間の需給断面:OCCTOが行った需給分析における4つの評価タイミング(夏季昼間・夏季夜間・冬季昼間・冬季夜間)のうち、太陽光発電が使えず冷房需要が続くため、特に供給力が厳しくなるとされる時間帯を指します。これは、原子力・火力のリプレースが全く行われない極端な前提における結果ですが、たとえ原子力のリプレースを織り込んだケースがでも3,760万kWの不足が見込まれるなど、需給バランスの脆弱さが浮き彫りとなりました。
 


 
2. 最大8,300万kWの不足はどのような前提か?
不足が最も大きくなるのは、2050年の電力需要が1兆2,500億kWhに達し、老朽火力・原子力の更新が全く行われなかったケースです。
この場合、供給信頼度の基準である予備率13.9%を満たすことができず、極端な需給ひっ迫が想定されています。
一方、需要が9,500億kWhにとどまる控えめなケースでも、火力の更新が進まなければ3,760万kWの供給力が不足するとの試算です。
 


 
3. 火力リプレースをめぐる技術的・事業的課題
将来の火力リプレースには、CCS(二酸化炭素回収・貯留)※や水素・アンモニア燃料への対応が求められますが、
実際の導入にはコストや技術インフラの面で大きな課題があります。
参加事業者からは「水素混焼+CCSの同時導入は非現実的」「バイオマス混焼で効率基準を満たせるなら非効率火力の扱いは再検討を」といった意見が出ており、技術的実現可能性や採算性への懸念が根強い状況です。
 
※CCS(二酸化炭素回収・貯留):発電所などから排出されるCO2を分離・回収し、地下深部などに貯留して大気中への放出を防ぐ技術。火力発電の脱炭素化の切り札とされているが、発電効率の低下やコスト、貯留インフラ整備などの課題がある。
 


 
4. CCS・水素火力・アンモニア混焼への期待と現実
脱炭素化を前提にしたモデルケースでは、2050年時点で火力電源はCCS付きや水素・アンモニアの専焼型へと移行する前提が組まれています。
しかし現実には、CCS導入による発電効率の低下や追加コスト(水素輸入価格37円/Nm3-H2など)が壁となり、投資判断が進まない例も多くあります。
また、既存設備の廃止に伴い、2040〜2050年にかけて最大6,900万kW超が失われる試算もあり、これを埋めるリプレースが追いつかなければ、需給ギャップはさらに拡大します。
 


 
5. 今後に求められる政策と投資誘導のあり方
需給バランスの安定には、単なる設備量の確保だけでなく、稼働率・採算性を担保する仕組みや長期投資への見通しが不可欠です。
容量市場や長期脱炭素オークションといった制度整備に加え、CCS貯留インフラや水素輸送網への支援が求められます。
火力リプレースが事業として成立するようなインセンティブ設計と、供給力維持の観点からの明確な政策的方向性が、いま問われています。
 


 
まとめ
日本の電力供給における“見えない崖”が、じわじわと迫っています。
経年火力や原子力の廃止が進む中で、十分なリプレースや脱炭素投資が行われなければ、2050年の需給ギャップは深刻な事態を招く可能性があります。
本記事で取り上げたように、有識者会合でも懸念の声が相次いでおり、事業性・技術性・政策支援の三位一体での対応が求められます。
エネルギーの安定供給をどう維持するか、社会全体での議論と行動が必要です。
 


 
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