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2025.05.20 Tue

「JERA統合から10年、“2026年の壁”が問う電力の未来」日本経済新聞の記事から

 
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先日、日本経済新聞に「JERA統合10年(上)迫る『2026年』の壁」(日経新聞電子版5/14)という記事が掲載されていました。
記事によると、東京電力と中部電力の火力部門を統合して誕生したJERA(ジェラ)が、2024年で発足10年を迎えたとのことです。設立以来、燃料調達の効率化や火力発電のコスト削減といった統合効果を上げてきた一方で、2025年度に親会社との売電契約が終了することで、収益構造に大きな転換点が訪れると伝えられています。
再生可能エネルギーへの投資や、海外企業との提携などで新たな成長モデルを模索する中、JERAは“親会社依存”からの脱却を迫られています。今後の電力業界の行方を占う上でも、この「2026年の壁」は見逃せないテーマとなりそうです。
 


 
目次
1.JERA統合の背景と10年の歩み
2.「2026年の壁」とは何か?
3.JERAが挑む脱・火力依存の道
4.自立に向けた販路戦略とパートナーシップ
5.電力業界の未来とJERAの役割
 


 
1. JERA統合の背景と10年の歩み
JERA(ジェラ)の誕生は、2011年の東京電力・福島第一原発事故を発端とした電力業界再編の象徴的な動きでした。巨額の賠償・除染費用を抱える東京電力と、火力発電の燃料コスト高に苦しんでいた中部電力の利害が一致し、2014年に両社の燃料・火力部門を段階的に統合することでJERAが設立されました。
この統合により、国内の火力発電能力の約半分を担う巨大プレイヤーが誕生。燃料調達のスケールメリットを活かしてコスト削減を図り、発電所の保守・運用効率化、電力・燃料のトレーディング事業拡大など、多方面でシナジーを発揮しました。
特に、2019年に現在の事業体制が完成してからは、企業価値の向上が本格化。2026年3月期の連結純利益は2,300億円と予想され、当初目標だった2,000億円を上回る見通しとなっています(記事より)。JERAの奥田久栄社長も「想定を上回るパフォーマンス」と胸を張るなど、統合からの10年はおおむね順調だったといえるでしょう。
一方で、国際的な脱炭素の潮流を背景に、火力発電中心の事業構造への懸念も徐々に高まりつつあります。その中で、次の大きな転換点として注目されるのが、「2026年の壁」です。
 


 
2. 「2026年の壁」とは何か?
JERAが設立以来、安定した収益構造を築けた最大の要因の一つが、親会社である東京電力と中部電力との長期売電契約でした。両社の小売部門がJERAの火力電力を優先的に購入するという枠組みは、JERAにとって「確実に売れる販路」を意味しており、経営計画の見通しも立てやすい状況が続いてきました。
しかし、こうしたグループ内優遇取引は「内外無差別原則」に反するのではないかという声が業界内外から上がってきました。特に、電力の全面自由化が進む中で、他の大手電力会社や新電力(PPS)からは「公正な競争を妨げる」として批判が寄せられていたのです。
こうした流れを受け、2020年には電力・ガス取引監視等委員会が是正を要請。結果として、東京電力・中部電力との売電契約は2025年度で終了することが決まりました。これによりJERAは、2026年度から自社で新たな販売先を開拓し、市場原理に則った価格で競争しなければならなくなります。
この契約終了によってJERAが直面するのが、「2026年の壁」と呼ばれる構造的な経営課題です。顧客の確保、価格競争力の維持、市場変動への対応といった、これまで経験してこなかったリスクを自ら引き受けることになります。特に電力卸売価格が乱高下しやすい中で、安定収益モデルの継続は困難になってきたといえるでしょう。
この壁を乗り越えるために、JERAは次章で紹介するような「火力依存からの脱却」や「販路の多様化」に取り組み始めています。
 


 
3. JERAが挑む脱・火力依存の道
JERAのビジネスモデルは長年、火力発電を中核に据えてきました。特に燃料の一括調達によるコスト競争力と、発電能力の高さが収益の柱でした。しかし近年、世界的な脱炭素の潮流を背景に、この「火力依存モデル」は国際社会から強い批判を浴びるようになります。
こうした環境変化を受けて、JERAは火力発電の役割を根本的に見直し、「主力電源」から「調整電源」への転換を進めています。これは、天候によって発電量が変動する太陽光や風力といった再生可能エネルギーを補完する役割に火力を位置づけるという考え方です。
さらにJERAは、洋上風力や水素、アンモニアといった次世代エネルギーへの投資を本格化。2035年度までに総額約5兆円を投じ、そのうち1兆〜2兆円を水素・アンモニアに充てる方針を示しています(記事による)。ただし、水素専焼発電のコストは2040年時点でもガス火力の約2倍とされ、採算性には依然として大きなハードルがあることも事実です。
このため、JERAは単独での投資にはこだわらず、国内外の企業とパートナーシップを組みながら資金リスクの分散を図っています。実際、環境投資の領域では米コンサル大手マッキンゼーと連携し、企業の脱炭素ロードマップの策定から再エネ供給まで一貫して支援する事業モデルを展開中です。
こうした構造転換は、収益性だけでなく、将来的な社会的信頼や電力業界内での地位にも関わる極めて重要な戦略といえるでしょう。JERAは火力依存から脱却しつつ、なおも「日本最大級の発電会社」としての責任と役割を模索しているのです。
 


 
4. 自立に向けた販路戦略とパートナーシップ
2026年度から親会社である東京電力・中部電力との売電契約が終了することで、JERAは「自ら顧客を開拓し、販売しなければならない」段階へと移行します。これは、電力の自由化市場で生き残るための第一歩であり、同時に最大の試練でもあります。
この壁を乗り越えるため、JERAは国内外で積極的な提携戦略を進めています。たとえば、2024年4月にはフランスの大手電力会社EDFグループと提携。燃料調達から国内の電力取引事業まで幅広い連携を行うことで、販路と調達コストの両面を強化しました。
また、電力の市場取引(特に日本で2022年から開始された電力先物市場)を活用し、大口顧客への販売機会を増やす工夫も始まっています。これは、販売しきれなかった電力を市場で収益化する新たなビジネスモデルともいえます。
小売分野では、前章でも触れたようにマッキンゼー・アンド・カンパニーと共同で企業の脱炭素支援を行いながら、再エネ・水素電力を供給。すでにヤマトホールディングスや東宝など複数の企業に導入が進んでおり、JERAは2027年までにプライム上場企業100社への導入を目指しています。
このように、これまでの「親会社に電力を卸すだけ」のモデルから、「多様な顧客と直接契約を結ぶ」自立型モデルへと大きく舵を切ったJERA。その取り組みは、単なる販路拡大にとどまらず、今後の電力ビジネスの在り方そのものに挑戦する動きともいえるでしょう。
 


 
5. 電力業界の未来とJERAの役割
JERAが直面する「2026年の壁」は、単に一企業のビジネスモデルの転換ではありません。日本の電力業界全体にとっても、「自由化後の競争環境において、発電・販売をどう持続可能な形で展開していくか」という根源的な問いを突きつける出来事です。
これまでのJERAは、統合によって得たスケールメリットを武器に、火力を主力とした安定収益モデルを築いてきました。しかし、今後は脱炭素の潮流と自由化による市場競争の中で、柔軟かつ革新的なビジネスモデルへの変革が求められます。
水素・アンモニアといった次世代エネルギーの導入、企業ごとの脱炭素ロードマップに対応したカスタマイズ型電力販売、電力トレーディングの高度化――こうした要素は今後の電力会社にとって避けては通れないテーマです。
JERAは今、その最前線に立っています。再エネへの巨額投資に踏み切る一方で、市況の変動や採算性といった現実的な制約とも向き合わなければならず、政府の支援やパートナー企業との連携も欠かせません。さらに、IPO(株式公開)や外部出資といった資本政策も選択肢として浮上しており、経営の自由度とスピードが問われています。
つまり、JERAがどう動くかは、そのまま「これからの電力会社の姿」を映し出す鏡なのです。安く・クリーンで・安定的な電力供給をどう実現するか――この難題に、JERAがどう応えていくのかは、日本全体のエネルギー戦略にとっても大きな意味を持つでしょう。
 


 
まとめ
ERAは、東京電力と中部電力の火力事業を統合してから10年。燃料の共同調達や発電設備の効率化によって国内最大級の電力会社へと成長してきました。
しかし、2026年度には両社との長期売電契約が終了し、自ら市場で顧客を見つけて販売するという“競争の世界”に本格的に踏み出すことになります。
この「2026年の壁」は、単なる契約の転換ではなく、電力の価格形成のあり方や競争の公平性を問い直す大きな分岐点です。
これまでJERAの電力を安定的かつ低廉に仕入れてきた親会社の小売部門にとっては、価格上昇のリスクが現実化する可能性もあります。反対に言えば、これまで不透明だった仕入れ構造に風穴が開き、電力市場全体の健全化につながるという期待もあります。
JERAは再生可能エネルギーや水素などの脱炭素電源にシフトしながら、新たなパートナーとともに成長の道を模索しています。その姿勢は、これからの電力会社のあるべき姿を映し出しているとも言えるでしょう。
そしてこれからの時代は、「どこから電気を買うか」だけでなく、
「その電気がどんな発電方法で、どんなルートを通じて届けられるのか」までが選ばれる時代です。
私たち一人ひとりが電気の背景に目を向けることで、より持続可能で納得できるエネルギーの使い方が広がっていくと、情熱電力は考えています。
 


 
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情熱電力では、全国の電力市場や業界構造の変化を注視しながら、地域に根ざした持続可能なエネルギーサービスの提供を目指しています。
今回ご紹介したJERAの「2026年の壁」は、電力会社間の取引構造や価格形成の透明性を見直す大きな転機となるでしょう。これまで一部の大手企業だけが享受してきた安定的な電力調達の仕組みが変わる中で、私たち情熱電力は、公平で開かれた電力市場のなかで、地域の皆さまにとって納得できる価格・品質・安心を提供し続けていきます。
また、再生可能エネルギーを軸とした電源の選択や、企業・自治体との連携によるエネルギー地産地消の取り組みも積極的に進めています。
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