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2025.06.24 Tue

再エネ出力制御が”収益チャンス”に変わる!? 需給調整市場への参加で売電収入を最大化する新戦略!

 
Businessman invests in electric power stocks, on a background with network antennas and wind turbines.
 
スマートジャパンさんに気になる記事が載っていたので調べてみました。
ITmedia : 変動性再エネ電源の需給調整市場への参加要件を検討 期待収入の試算も公開(https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2506/12/news023.html)
 
再エネ事業者の皆さま、こんにちは!情熱電力です。FIP制度に移行し、スポット市場での売電に取り組む中で、「再エネ出力制御」時の収入減少に頭を悩ませてはいないでしょうか。そんな中、まさにその出力制御時こそが収益チャンスに変わるかもしれない、という画期的な議論が始まっています。それが「需給調整市場」への参加です。これまでは参加が難しかった太陽光や風力発電(VRE)ですが、その参加方法や具体的な収入モデルが示されました。この記事では、国の最新資料を基に、需給調整市場への参加方法から、気になる「スポット市場との収入比較」まで、FIP事業者が”今”知っておくべき新常識を徹底的に解説します。
 


 
目次
1.調整力の主役へ!なぜ今、太陽光・風力が「需給調整市場」で求められるのか?
2.うちの発電所も参加できる?【4つのケース別】市場参加の具体的な方法
3.需給調整市場 vs スポット市場、結局どっちが儲かる?収入を徹底比較!
  ケースA:電力需給が安定している「通常時」
  ケースB:問題の「再エネ出力制御時」
4.FIP事業者が直面する「入札のジレンマ」と今後の展望
5.まとめ:来るべきチャンスに備え、今から準備すべきこと
 


 
1. 調整力の主役へ!なぜ今、太陽光・風力が「需給調整市場」で求められるのか?
電力の安定供給には、発電量と消費量を常に一致させる「調整力」が不可欠です。これまでこの役目は主に火力発電などが担ってきました。しかし、再エネの大量導入時代を迎え、状況は変わりつつあります。
天候で出力が変動する太陽光や風力(VRE)ですが、インバータ制御による速やかで精緻な出力調整能力は、実は調整力として非常に高いポテンシャルを秘めています。国は、このVREを新たな調整力として活用すべく、需給調整市場への参加ルール整備を本格的に進めているのです。
 


 
2. うちの発電所も参加できる?【4つのケース別】市場参加の具体的な方法
需給調整市場への参加には、最低1,000kWの入札量が求められます。しかし、小規模な発電所でも諦める必要はありません。国の小委員会では、以下のような参加方法が整理されています。
 
〇ケース1:発電リソース(単体)
1,000kW以上の大規模な発電所であれば、単独で市場に参加できます。
 
〇ケース2:発電リソース(アグリゲーション)
1,000kW未満の発電所でも、複数の発電所を束ねる「アグリゲーション」によって合計1,000kW以上になれば参加可能です。この場合、通信回線などの要件が緩和された「一次オフライン枠」という特別ルールが用意されており、参加しやすくなっています。
 
〇ケース3:ネガポジリソース(VRE+蓄電池など)
VREに蓄電池などを組み合わせ、電気を供給(逆潮流)することも、電気を使う(順潮流)こともできるタイプです。アグリゲーションも可能です。
 
〇ケース4:ネガワットリソース(VRE+蓄電池など)
VREと蓄電池などを組み合わせ、需要を抑制する(電気を使わない)ことで調整力を生み出すタイプです。
 
このように、発電所の規模や蓄電池の有無など、様々な形態での参加方法が用意されつつあります。
 


 
3. 【最重要】需給調整市場 vs スポット市場、結局どっちが儲かる?収入を徹底比較!
FIP事業者にとって最も気になるのは「収益性」でしょう。国の小委員会では、具体的な収入試算が公開されました。
 
ケースA:電力需給が安定している「通常時」
前提条件:
卸電力市場価格:9円/kWh
FIPプレミアム:1円/kWh
非化石価値:0.8円/kWh
 
この場合、スポット市場で売電した方が、需給調整市場に参加するよりも収入が多くなるという試算です。
FIPプレミアムと非化石価値の分が上乗せされるためです。

市場 収入の内訳(円/kWh) 合計収入(円/kWh)
スポット市場 市場価格(9円)+FIPプレミアム(1円)+非化石価値(0.8円) 10.8円
需給調整市場 逸失利益(9円)+調整力対価(約0.66円) 約9.66円

ケースB:問題の「再エネ出力制御時」
ここからが本題です。再エネが余り、出力制御が発生する断面では状況が一変します。
前提条件:
卸電力市場価格:0.01円/kWh(出力制御時は価格が最安値)
この場合、需給調整市場に参加した方が、圧倒的に収入が多くなります。
スポット市場ではFIPプレミアムも非化石価値収入もゼロになりますが、
需給調整市場では調整力としての対価(ΔkW約定価格)をしっかりと受け取れるためです。

市場 収入(試算結果)
スポット市場 収入はほぼゼロ
需給調整市場 収入を確保できる

つまり、多くの事業者を悩ませる「出力制御」が、需給調整市場では「収益を確保するチャンス」に変わりうるのです。
 


 
4. FIP事業者が直面する「入札のジレンマ」と今後の展望
では、出力制御が起こる日だけ需給調整市場に入札すれば良いのでは?」
そう考えたくなりますが、ここに大きな課題があります。
 
スポット市場の入札締切: 前日10時
需給調整市場の入札締切: 前日14時(2026年度以降)
出力制御の指示: 前日17時以降
 
つまり、事業者が出力制御の発生を知る前に、どちらの市場に参加するかの判断を迫られるのです。これは大きなジレンマです。
この課題を解決するため、国は「出力制御指示の予見性を高める」など、事業者がより戦略的に市場参加できるよう、環境整備を進める方針です。
 


 
まとめ
FIP制度下における新たな収益戦略として、「需給調整市場」の重要性が明らかになりました。要点をまとめます。
 
・通常時はスポット市場が有利。
・再エネ出力制御時は需給調整市場が圧倒的に有利。
・しかし、現時点では出力制御の発生を事前に知ることが困難という課題がある。
今はまだ過渡期ですが、この新しい市場は間違いなく再エネ事業の可能性を大きく広げます。今後の制度改定の動向を常にウォッチし、来るべきチャンスに備えて、自社の発電所がどのように市場に参加できるのかを今から検討しておくことが、未来の成功の鍵を握ります。
 
情熱電力からのお知らせ
情熱電力では、FIP制度に関するサポートはもちろん、今回ご紹介した「需給調整市場」への参加も含め、複雑化する電力取引における事業者様の収益最大化を強力にバックアップいたします。
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