蓄電池ビジネス最前線!国の最新動向からサイバーリスクと収益性のリアルを解説します。
先日、経済産業省の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」が開かれ、系統用蓄電池ビジネスの未来を左右する重要な議論が交わされました。この記事では、同検討会の最新の公開情報をもとに、今、蓄電池ビジネスに参入するなら絶対に知っておくべき「サイバーセキュリティリスク」と、気になる「事業の収益性」という2大テーマを深掘りします。国の見通しを大幅に上回るペースで導入が進む蓄電所。その光と影を、ビジネスの視点から紐解いていきましょう。
本記事で参照した会議
経済産業省:2025年度第1回 定置用蓄電システム普及拡大検討会(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/2025_001.html)
経済産業省:次世代電力系統ワーキンググループ(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/003.html)
目次
1.爆発的に拡大する日本の蓄電池市場の現状
2.新たな経営課題「蓄電所へのサイバー攻撃リスク」
どんな攻撃が想定されるのか?
事業者に求められるセキュリティ対策とは
3.【本音で解説】蓄電池ビジネスは本当に儲かるのか?
蓄電池が生み出す7つの価値(ユースケース)
衝撃的な収益シミュレーション結果
4.まとめ:今後の蓄電池ビジネス成功の鍵とは
1. 爆発的に拡大する日本の蓄電池市場の現状
現在、日本の系統用蓄電池の導入は、国の想定をはるかに超えるスピードで進んでいます。
2030年の導入見通しが累計14.1~23.8GWhとされているのに対し、なんと2025年3月末時点で、すでに約12GW(3時間率換算で36GWh)もの蓄電池が電力系統への接続契約を済ませているのです。これは、再エネの主力電源化と電力の安定化に、蓄電池が不可欠な存在として急速に認知されている証拠と言えるでしょう。
しかし、この急拡大の裏で、新たな課題も浮上しています。それが「サイバーセキュリティ」と「収益性」の問題です。
2. 新たな経営課題「蓄電所へのサイバー攻撃リスク」
再生可能エネルギーの導入拡大やデジタル化に伴い、電力インフラ全体のサイバーセキュリティリスクは年々高まっています。遠隔監視・制御が基本となる蓄電所も、その例外ではありません。
どんな攻撃が想定されるのか?
悪意ある第三者が通信網を経由して蓄電所のシステムに侵入し、データを改ざんしたり、不正な充放電を行ったりするリスクが指摘されています。
具体的には、
・蓄電所の運転停止
・機器の破壊や火災の発生
・電力系統全体への波及による大規模停電
といった深刻な事態につながる可能性があります。これは事業者自身の損失だけでなく、電力の安定供給を揺るがし、社会全体に影響を及ぼす経営上の重大リスクです。
事業者に求められるセキュリティ対策とは
検討会では、攻撃の段階に応じた多層的な防御の重要性が示されました。
・侵入防止:ファイアウォールによる不正アクセスのブロック
・被害拡大防止:システム内部を分割(セグメント化)し、万一侵入されても被害を限定
・重要データの保護:データ暗号化や重要操作の承認プロセスの導入
また、国はセキュリティ基準の整備を進めており、「長期脱炭素電源オークション」の第3回以降では、セキュリティ認証制度「JC-STAR」の★1(レベル1)以上の取得が蓄電システムの要件となるなど、公的な支援を受ける上でも対策は必須となりつつあります。
※ 具体的にカタログを並べて比較しているわけではありませんので、完全に弊社の主観ではありますが、
日々、蓄電池関係の皆さまとの会話の中で、このセキュリティ認証制度に関して、国内メーカーは対応がはやく、
海外メーカーは出遅れているのではないかという印象を持っています。
3. 【本音で解説】蓄電池ビジネスは本当に儲かるのか?
ビジネスとして最も気になるのが収益性です。検討会では、業務・産業用蓄電システムの収益性について、具体的なシミュレーション結果が公開されました。
蓄電池が生み出す7つの価値(ユースケース)
蓄電池の収益(価値)は、主に以下の7つの活用法を組み合わせることで生まれます。
1.ピークシフト:電力需要の少ない時間に充電し、需要の多い時間に放電して電気料金の基本料金を削減。
2.太陽光の余剰電力活用:太陽光発電の余剰分を充電・自家消費し、電力会社からの買電量を削減。
3.停電回避(レジリエンス):停電時のバックアップ電源としての価値。
4.環境価値の向上:再エネ由来の電気を使うことによるCO2排出量削減価値。
5.小売電気事業者の調達費用削減貢献:市場価格が安い時に充電し、高い時に放電することでの貢献。
6.供給力提供(容量市場):電力の供給力として対価を得る。
7.調整力提供(需給調整市場):電力の周波数などを安定させるための調整力として対価を得る。
衝撃的な収益シミュレーション結果
では、実際のところ収益性はどの程度見込めるのでしょうか。
検討会では、最も基本的な活用法である「①ピークシフト」と「②太陽光の余剰電力活用」の2つのみで収益性を試算しました。
〇 試算前提
・CAPEX(設備投資額):10.6万円/kWh
・稼働期間:20年
この条件で試算した結果、残念ながら全ての業種セグメントでIRR(内部収益率)がマイナスとなりました。
さらに、国が2030年の目標価格とする6万円/kWhまで設備投資額が下がった場合でも、IRRは1.8%にとどまり、投資回収のハードルは依然として高いことが示されました。
この結果は、基本的な活用法だけでは、蓄電池ビジネスで十分な収益を上げるのは難しいという厳しい現実を浮き彫りにしています。
複数のユースケースを組み合わせ収益性を改善させることが重要となるため、今後の検討会において、新たな試算・評価を行う予定としています。
※ JPEXの今後の価格変動次第ではありますが、充放電時の価格差によって収益を得る「電力市場アービトラージ」だけで
蓄電池の投資を回収するのは時間がかかるというのが弊社としても率直な意見です。
4.まとめ:今後の蓄電池ビジネス成功の鍵とは
今回の検討会の報告から、系統用蓄電池ビジネスに取り組む上で重要なポイントは以下の2つです。
・サイバーセキュリティ対策は必須の経営課題:事業の安定継続と社会的責任の両面から、機器選定の段階からセキュリティを考慮し、国のガイドラインに準拠した体制を構築することが不可欠です。
・収益性の確保には「価値の多重取り」が鍵:ピークシフトや余剰電力活用だけでなく、「容量市場」や「需給調整市場」への参加など、複数のユースケースを組み合わせて収益源を多様化させることが成功への絶対条件となります。
市場は急拡大していますが、その中で勝ち抜くためには、リスクを的確に管理し、蓄電池の価値を最大限に引き出す高度な戦略が求められているのです。
情熱電力からのお知らせ
今回の国の検討会が示す通り、蓄電池ビジネスの収益性を最大化するには、複雑な市場制度を理解し、複数の収益機会を最適に組み合わせる専門的なノウハウが不可欠です。
まだまだ、実証データの乏しい新たな市場ですので、最適解があるわけではなく、いわゆる”王道”がない状況です。
情熱電力では、様々な関係者の方々との連携し
蓄電池の案件開発から、サイバーセキュリティ対策、容量市場・需給調整市場への参加サポート、日々の最適な充放電スケジュールの策定まで、チームで支援いたします。
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