系統用蓄電池の「空押さえ」対策で土地取得が必須化へ!2026年からの規制強化を解説

このブログでも何度か取り上げたことのあるトピックですが、系統用蓄電池による「空押さえ」に関する記事です。
数か月前のデータになりますが、接続検討の受付件数や接続契約申込の受付件数、接続済み件数なども記載してあります。
系統用蓄電池ビジネスをご検討の皆さまに参考にしていただけるとうれしいです。
近年、再生可能エネルギーの普及とともに注目を集める「系統用蓄電池」。しかし、その裏側で系統容量を確保するだけして事業が進まない「空押さえ」が問題視されています。資源エネルギー庁の「次世代電力系統ワーキンググループ」第5回会合では、ついにこの問題に対する抜本的な対策案が示されました。
これまでは比較的緩やかだった申請要件ですが、今後は「土地の権利確保」が厳格に求められることになりそうです。これから参入を検討している事業者様にとっては、事業計画の根幹に関わる重要な変更点です。今回は、その詳細と今後の対策について分かりやすく解説します。
目次
1.系統用蓄電池の現状:申請急増と「空押さえ」の実態
2.2026年1月以降、「接続検討」のハードルが上がる
3.「接続契約」申し込み時点で土地の使用権原が必須に
4.「権利転売」目的のビジネスモデルへの監視強化
5.東北エリアなどでの新たな情報公開と立地選定
6.まとめ:確実な事業化が求められるフェーズへ
1. 系統用蓄電池の現状:申請急増と「空押さえ」の実態
まずは、現在の系統用蓄電池を取り巻く状況を数字で見てみましょう。 資源エネルギー庁の資料によると、2025年9月末時点での全国の受付状況は以下のようになっています。
・接続検討の受付: 約15,000件(約1億6,361万kW)
・接続契約申込の受付: 約2,800件(約2,260万kW)
・接続済み: 111件(約49万kW)
※中国エリアは8月末時点の数値
ご覧の通り、「検討・申込」の数に対して「接続済み」の件数が圧倒的に少ないことが分かります。 もちろん工期の長い事業ですのでタイムラグはありますが、問題なのは「事業化確度の低い案件」が系統容量を埋めてしまっている(空押さえ)ことです。これにより、本当にやる気のある事業者が接続できないという弊害が起きています。
2. 2026年1月以降、「接続検討」のハードルが上がる
これまでは、接続検討の申し込み段階では、土地に関する要件はそこまで厳しくありませんでした。その結果、「防災公園」や「他人の住居」など、現実的に設置不可能な場所での申請が行われるケースもあったようです。
これを受け、2026年1月以降に接続検討および契約申し込みを行う全ての系統用蓄電池(および新設発電設備)について、以下のルールが適用される見込みです。
・要件化の内容: 申し込み時に事業用地に関する調査結果や登記簿等の提出が必要
・狙い: 実現不可能な土地での安易な申し込みを排除する
「とりあえず場所を押さえておく」といった軽い感覚での申請は、今後は門前払いとなる可能性が高いため注意が必要です。
3. 「接続契約」申し込み時点で土地の使用権原が必須に
さらに大きな変更点が、「接続契約」の申し込み段階です。 これまでは契約申し込み時点で土地を取得している必要はありませんでしたが、今後は以下の要件が課される方針です。
・変更点: 接続契約申し込み時に、事業用地における「使用権原」を証する書類の提出を必須化
・ペナルティ: 権原の取得が確認できない場合、申し込みは取り下げ扱いとなる
これはFIT/FIP制度の再エネ電源と同様の扱いです。「土地の契約は後回しで、先に系統枠だけ確保したい」という進め方は通用しなくなります。地権者との交渉をより早い段階でまとめ上げる交渉力が、事業成功の鍵を握ることになります。
4. 「権利転売」目的のビジネスモデルへの監視強化
また、自社で運営するつもりがないのに土地と系統接続の権利を確保し、それをセットで他社へ売却するビジネスモデルについても議論されています。 売却自体は違法ではありませんが、長期間連系されずに「仮押さえ」状態が続くことは問題です。エネ庁は今後、系統容量確保時の保証金や、容量開放ルールの強化などを通じて、こうしたビジネスモデルへの対策も検討していく予定です。
5. 東北エリアなどでの新たな情報公開と立地選定
規制強化の一方で、真剣に事業を行う企業への支援策として「情報公開」も進んでいます。 例えば、東北電力ネットワークでは、接続検討の申し込みに対し、「154kV以上の系統増強工事が必要か否か」という回答状況を公開しています。
・増強工事なし: 早期連系の可能性が高い
・増強工事あり: 工期が5〜10年以上かかる可能性がある
こうしたマップやデータを活用することで、事業用地の選定をより効率的に行えるようになります。今後は他エリアでも同様の情報公開が期待されます。
まとめ
今回のワーキンググループでの議論により、系統用蓄電池ビジネスは「早い者勝ち」のフェーズから、
「確実な事業計画を持つ者勝ち」のフェーズへと移行しつつあります。
・2026年1月以降、接続検討時に土地情報の提出が必要になる。
・接続契約時には、土地の使用権原(所有や賃貸借)の証明が必須になる。
・「空押さえ」目的の参入は非常に難しくなる。
規制強化は一見ネガティブに見えますが、真剣に事業に取り組むプレイヤーにとっては、無用な競争相手が減り、系統容量が確保しやすくなるというメリットもあります。これからの蓄電池事業は、土地交渉と系統協議を並行してスピーディーに進める「実務能力」が問われることになるでしょう。
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それではまた!!
この記事に関連するページ
・経済産業省 資源エネルギー庁:第5回次世代電力系統ワーキンググループ
~発電等設備における系統アクセス手続きの規律強化について~
・電力広域的運営推進機関 (OCCTO):かいせつ電力ネットワーク