「水危機」では済まされない?国連が宣告した『世界水破産』の衝撃と、私たちが直面する不可逆的な未来

世界の水問題に関する気になる記事があったので調べてみました。
普段、私たちが何気なく使っている「水」。蛇口をひねれば当たり前のように出てくるこの資源が、実は今、地球規模で取り返しのつかない事態に陥っていることをご存じでしょうか?
2026年1月20日、国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)は、ある衝撃的な報告書を発表しました。そのタイトルは『地球規模の水破産(Global Water Bankruptcy)』。これまで私たちが耳にしてきた「水不足」や「水危機」という言葉では、もはや現在の状況を表現しきれないというのです。
家計に例えてみましょう。毎月の給料(雨や河川水)だけで生活費(水消費)が賄えなくなれば、私たちは貯金(地下水や氷河)を切り崩して生活します。しかし、その貯金すら使い果たし、借金が膨らみすぎて首が回らなくなった状態――それが「破産」です。
報告書によると、世界の多くの地域で、人間社会は自然が水を補充するスピードを遥かに超えて水を使い続けてきました。その結果、主要な地下水脈は枯渇し、湖は干上がり、湿地は消滅しつつあります。最も恐ろしいのは、これが一時的な「危機」ではないという点です。「危機」であれば、嵐が過ぎ去れば元の生活に戻れるかもしれません。しかし「破産」は違います。一度失われた氷河や、過剰揚水で圧密・沈下してしまった地盤は、二度と元には戻らないのです。
「まだ日本は大丈夫だろう」と思っている方もいるかもしれません。しかし、食料自給率が低い日本は、海外の「水」に依存して生きています。輸入する牛肉や穀物を育てるために使われた水(バーチャルウォーター)が、実は「破産」した水源から来ているとしたら? 世界の水破産は、私たちの食卓や経済活動に直結する、まさに自分ごとの問題なのです。
この記事では、国連が警告する「水破産」の正体と、最新のデータが示す絶望的な現実、そしてこの「破産状態」の中で私たちがどのように生きていくべきかについて、詳しく解説していきます。
目次
1.「水危機」と「水破産」の決定的な違い
2.数字で見る絶望的な現実:世界の水資産はここまで失われた
3.なぜ「破産」なのか? 家計簿で読み解く水循環の崩壊
4.「元には戻らない」という不都合な真実
5.破産管財人としての私たち:これから求められる行動
6.まとめ:破産宣告は「終わり」ではなく「新たな始まり」
1. 「水危機」と「水破産」の決定的な違い
これまで私たちは、干ばつなどが起きると「水危機(Water Crisis)」という言葉を使ってきました。しかし、今回の国連大学の報告書は、この言葉の使用に警鐘を鳴らしています。なぜなら、「危機」という言葉には「一時的なショック状態であり、対策をすれば元の状態に戻れる」というニュアンスが含まれているからです。
これに対し、新たに定義された「水破産(Water Bankruptcy)」は、以下のような状態を指します 。
・構造的な赤字: 長期間にわたり、自然の回復力を超える取水が続いている。
・不可逆的なダメージ: 地盤沈下、生態系の喪失など、もはや取り返しがつかない被害が出ている。
・回復不能: どんなにコストをかけても、過去の豊かな水環境を取り戻すことは不可能。
つまり、私たちは「いつか雨が降れば元通りになる」という幻想を捨て、システムが破綻していることを認めなければならない段階に来ているのです。
2. 数字で見る絶望的な現実:世界の水資産はここまで失われた
報告書は、感情論ではなく、冷徹なデータで世界の現状を突きつけています。以下は、報告書で示された衝撃的な数字の一部です。
・湖沼の消失: 1990年代初頭以降、世界の大型湖沼の50%以上が水量を失っています。
・地下水の枯渇: 主要な地下水脈の70%で長期的な減少傾向が確認されています。
・氷河の融解: 1970年以降、世界の氷河の体積の30%以上が失われました。
・湿地の消滅: 過去50年間で、EU(欧州連合)の総面積に匹敵する4億1000万ヘクタールの自然湿地が消滅しました。
・水不足人口: 現在、世界で約40億人が、少なくとも1年のうち1ヶ月は深刻な水不足に直面しています。
これらのデータは、私たちが「自然の元本」を食いつぶしてしまっていることを明確に示しています。
3. なぜ「破産」なのか? 家計簿で読み解く水循環の崩壊
この状況を理解するために、報告書では「銀行口座」の比喩が用いられています 。
・普通預金(フロー): 雨や雪解け水によって毎年補充される、河川などの地表水。
・定期預金(ストック): 何百年、何千年とかけて蓄積された地下水や氷河。
本来、人類は「普通預金(雨などの循環する水)」の範囲内で生活すべきです。しかし、人口増加や大規模農業、気候変動による「収入減」が重なり、私たちは禁断の「定期預金(地下水)」に手を付け続けてきました。 収入が足りない分を貯金の切り崩しで補い続ける生活。それが限界を迎え、借金(環境負荷)だけが残り、返済(自然回復)が不可能になった状態。それが「水破産」です。
4. 「元には戻らない」という不都合な真実
「水破産」という言葉が持つ最も重い意味は、「不可逆性(Irreversibility)」です。
例えば、地下水を過剰に汲み上げた結果、粘土層が圧縮されて起きる「地盤沈下」。一度沈んでしまった地面は、水を注入しても二度と元には戻りません。メキシコシティでは年間約50センチのペースで沈下が進んでおり、建物やインフラに甚大な被害を与えています。
また、生物多様性の宝庫である湿地が干上がれば、そこに住む種は絶滅し、生態系サービス(水の浄化や洪水防止機能)は永久に失われます。「危機管理」は元の状態に戻すことを目指しますが、「破産管理」は、「元には戻らない」という新しい現実を受け入れ、その上で被害を最小限に抑えることに主眼を置きます。
5. 破産管財人としての私たち:これから求められる行動
では、破産した世界で私たちはどう生きるべきなのでしょうか。国連大学のマダーニ所長は、以下の対策を提言しています。
・敗北を認める: 「まだなんとかなる」という否認をやめ、破産の事実を直視する。
・サプライサイドからデマンドサイドへ: ダム建設や淡水化などの「供給拡大」だけでなく、徹底的な「需要削減」へシフトする。
・残された資産の保護: まだ残っている湿地や地下水を、最後のライフラインとして死守する。
・産業構造の転換: 水を大量に消費する農業や産業のあり方を根本から見直し、乾燥に強い作物への転換や、技術革新による効率化を進める。
まとめ
「水破産」という言葉は非常にショッキングです。しかし、これは絶望して諦めるための言葉ではありません。 マダーニ所長が語るように、「破産宣告は諦めることではなく、新たな出発」を意味します。
私たちが直面しているのは、無限に水が使える時代の「終わり」であり、限られた水を賢く、公平に分かち合う時代の「始まり」です。水の問題は待ったなしの状況です。企業の活動においても、個人の生活においても、「水を使わない」「水を汚さない」「水を守る」選択が、これまで以上に重要になってくるでしょう。
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この記事に関連するページ
・国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH) 今回の報告書の発行元です。水問題に関する国際的な研究機関です。
┗ 世界は「世界的水破綻の時代」に突入 国連の科学者が数十億人の危機後の新たな現実を正式に定義
・国土交通省:水資源 日本の水資源の現況や、世界の水問題に関する日本の取り組みがまとめられています。
┗ https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/index.html
・環境省:水辺の環境活動プラットフォーム 水循環の健全化に向けた官民連携の取り組みを紹介しています。
┗ https://policies.env.go.jp/water/waterside-environment/