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2026.08.01 Sat

「界隈」はなぜ広がる?口コミマーケティングに学ぶ、電気代や省エネの話題が伝わる仕組み

 
「界隈」はなぜ広がる?
 
複数の気になる記事を見つけたので、まとめて調べてみました。日経ビジネスに掲載されていた「『界隈』はいかに市民権を得ていったのか 誰もが使える自己紹介ワードに」と、「『界隈』からヒット商品が生まれるメカニズム 市場沸騰の4ステップ」という2本の記事です(日経プレミアシリーズ『界隈経済圏』〈牧口松二著〉からの抜粋とのことです)。「〇〇界隈」という言い方、SNSでよく見かけますよね。実はこの言葉が広がっていく過程には、商品やサービスがヒットしていく過程ととてもよく似た構造があるようです。今回はこの2本の記事をもとに、「界隈」がどのように生まれ、広がり、市場にまで影響を与えていくのかを整理しつつ、私たちのような地域密着型のビジネスにとってどんなヒントになるのかも、あわせて考えてみたいと思います。
 


 
目次

 


 

1. 「界隈」ってそもそも何?地図の言葉から自己紹介ラベルへ

 
「アニメ界隈」「美容界隈」など、「〇〇界隈」という言い方を目にする機会が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。辞書で「界隈」を引くと、「ある場所の付近、一帯。また、そのあたりの人たちの集まり」(『デジタル大辞泉』)とあります。もともとは「銀座界隈」「秋葉原界隈」のように、地図の上で丸をつけられる場所を指す言葉でした。
 
面白いのは、「銀座界隈」と聞くと場所そのものだけでなく、「百貨店と老舗と高級クラブが混ざったあの雰囲気」までイメージできてしまうことです。つまり界隈という言葉には、もともと次の2つの意味がセットで詰まっていました。
 
・場所としての「この辺」 ・そこに居着いている人たちの「空気」
 
1980〜90年代には「サブカル界隈」「演劇界隈」のように、趣味や価値観を共有する人たちのゆるい集まりを指す言葉としても使われ始めます。そして転機となったのがインターネット、特にSNSの普及でした。匿名掲示板やブログを経て、X(旧Twitter)やInstagramが広まると、界隈は「自己紹介ラベル」へと進化します。プロフィール欄に「美容界隈/自炊界隈」と書いておけば、まだ見ぬ相手ともなんとなく話が合いそうだと伝わる。ハッシュタグをひとつ加えるだけで、同じ趣味の人たちがひと晩だけ集まる場ができる。そんな軽やかさが、今の「界隈」の使われ方の土台になっています。
 


 

2. 内輪語だった「界隈」がビジネスの言葉になるまで

 
ここでビジネスパーソンとして気になるのは、「界隈」が単なるネットスラングで終わらず、ニュースや商品説明の文脈でも通じる言葉として定着してきた経緯です。日経ビジネスの記事では、その歩みが年表として整理されていました。要点を抜き出すと、以下のような流れになります。
 

時期 主な出来事 区分
2000年代前半 ネット掲示板などで「〇〇界隈」が内輪語として使われ始める ネットスラング
2000年代後半 2ちゃんねるやmixiで「オタク界隈」などの用法が広がる ネットスラング
2010年代前半 Twitterの拡散やハッシュタグ文化と結びつき、日常的に使われる SNS文化
2021年 『三省堂国語辞典 第8版』が俗語的な意味(周辺の人々・活動分野)を記載 辞書収録
2023年 「成分界隈」がドラッグストア販促などで一般化 広告文脈
2024年 「界隈」がユーキャン新語・流行語大賞トップテンに選出 流行語・メディア

(出典:日経ビジネス「『界隈』はいかに市民権を得ていったのか」〈日経プレミアシリーズ『界隈経済圏』牧口松二著より〉)
 
この年表を見ると、「界隈」は突然バズった流行語ではなく、20年近い時間をかけて少しずつ社会に浸透してきた言葉だとわかります。背景にあるのは、人の説明のされ方そのものの変化です。以前は所属や属性で人を語ることが多かったのに対し、SNS時代になると「どんなテーマに反応し、どんな言い回しを使うか」で人となりが見えるようになりました。「界隈」は、その変化にちょうど噛み合う言葉だったというわけです。
 


 

3. 「界隈」からヒット商品が生まれる4つのステップ

 
もうひとつの記事では、界隈の内側で起きていることを観察すると、立派な経済の流れが見えてくると指摘されています。整理すると、界隈の誕生から市場への広がりには、次の4つのステップがあるとされています。
 
 

①きっかけの瞬間

 
界隈の始まりは、大げさなものではありません。誰かが「これ、平成女児って感じしない?」とつぶやいたり、「アプリの地図を塗って歩いている」という話に「それ、ほぼ伊能忠敬じゃん」とツッコミが入ったり。そんなアドリブ的な一言が、小さな共通体験に「名前」を与える瞬間です。ここで生まれた名前のすべてが定着するわけではありませんが、しっくりくるものだけが、少しずつ使い回されていきます。
 
 

②内輪の熱狂

 
名前がつくと、次に起きるのが「内輪ノリ」の熟成です。ここでは、企業が主導する一般的なファンマーケティングとは向きが逆になります。主役はあくまで界隈の人たちの価値観や生活スタイルであり、商品やサービスはそのノリを支える「道具」の立ち位置です。「このノリを一番気持ちよく支えてくれるアイテムって、これじゃない?」という会話の積み重ねの中から、商品が自然に選ばれていきます。
 
 

③熱の拡散

 
内輪ノリがあまりに楽しそうだと、外側の人が気になり始めます。ここで登場するのが、解説noteやまとめ記事、ショート動画といったコンテンツです。専門用語だらけの内輪ノリを、わかりやすいタグに翻訳してくれる存在があることで、「自分は界隈の人間ではないけれど、なんとなく雰囲気はわかる」という見物客が増えていきます。
 
 

④市場シフト

 
最後は「市場シフト」です。売り場や広告、商品設計の前提が少しずつズレていき、以前なら企画会議で通らなかったような発想が、当たり前の顔をして商品棚や広告に並ぶようになります。ここまで来ると、企業側も生活者側も「界隈の影響でこうなった」とはあまり自覚していないというのも興味深い点です。
 


 

4. 電力・エネルギー業界にも当てはまる「界隈経済圏」の考え方

 
この4ステップ、実は電気代や節電といった身近なテーマにも当てはめて考えられそうです。
 
たとえば「電気代が高くて困っている」「電力会社を切り替えたら、思ったより明細がわかりやすくなった」といったつぶやきが、誰かの投稿をきっかけに小さく共感を集める(①きっかけの瞬間)。それに「うちも見直そうかな」「これ、うちの界隈でも話題」というリプライが重なり、節電グッズや料金プランの情報がやりとりされる(②内輪の熱狂)。そのやりとりが「今どき電気代の見直しは当たり前」という空気として、家族や職場の会話にじわじわ広がっていく(③熱の拡散)。そして気づけば「電気代を定期的にチェックする」「複数の電力会社を比較検討する」ことが、特別なことではなく生活の前提になっていく(④市場シフト)――というイメージです。
 
経済産業省が電力の小売全面自由化を進めて以降、電力会社を選べるということ自体は広く知られるようになってきましたが、実際にどう選べばよいか、何を比較すればよいかという実感の伴った情報は、依然として口コミや身近な人の体験談が頼りにされている面が大きいとされています。数字や制度の説明だけでなく、「実際に切り替えてみた人の生の声」が広がることの重要性は、まさに界隈経済圏の構造と重なる部分ではないでしょうか。
 


 

5. 地域密着の企業が「界隈」から学べるマーケティングのヒント

 
ここまでの内容を、私たちのような地域密着型の企業のマーケティングに引き寄せて考えると、いくつかのヒントが見えてきます。
 
・一方的な宣伝よりも、お客様同士の自然な会話や体験談を大切にすること ・自社の商品やサービスを、お客様の生活の中で「話題にしやすい道具」として位置づけること ・SNSや口コミで生まれる小さな盛り上がりを、丁寧にすくい上げること ・会費も会則もない界隈のように、出入り自由で気軽に相談できる距離感をつくること
 
長野県松本市のような地域に根ざして事業を行う企業ほど、こうした「顔の見える口コミ」の力を活かしやすいという側面もあります。大きな広告を打つよりも、実際に利用したお客様の「わかりやすかった」「相談しやすかった」という声が、次のお客様を連れてくる。これは界隈経済圏の考え方そのものだと言えそうです。
 


 
まとめ
「界隈」という言葉は、もともと「銀座界隈」のような地理的な表現でしたが、SNSの普及とともに自己紹介ラベルへと姿を変え、辞書や流行語大賞にも取り上げられるほど社会に浸透しました。その広がり方には、①きっかけの瞬間、②内輪の熱狂、③熱の拡散、④市場シフトという4つのステップがあり、これは商品やサービスがヒットしていく過程ともよく似ています。電気代や節電といった身近なテーマも、口コミや実体験の共有を通じて同じように広がっていく可能性があります。一方的な宣伝ではなく、お客様の自然な会話や体験談を大切にすることが、地域密着型のビジネスにとって大きなヒントになりそうです。
 


 
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