スーパーの「即食」戦略に学ぶ、上がり続ける固定費と電気代の向き合い方

ダイヤモンド・オンラインに『スーパーが「惣菜、ベーカリー、カットフルーツ」を入口に集めるワケ、時短ニーズだけではなかった』という記事があったので調べてみました。
最近、スーパーに入ってすぐの場所に総菜やベーカリー、カットフルーツが並んでいて「あれ、青果コーナーはどこだっけ」と感じたことはありませんか。実はこの売り場の変化、単なる時短ニーズへの対応だけではなく、地価や人件費といった「上がり続ける固定費」にどう対処するかという、経営上の切実な工夫が背景にあったのです。この構図、実は電気代をはじめとした固定費に頭を悩ませている多くの企業にとっても、他人事ではありません。今日は、スーパー業界の売り場改革から、ビジネスパーソンが自社の経営に活かせるヒントを一緒に見ていきましょう。
目次
- 1. スーパー売り場で急増中の「即食」、その正体とは
- 2. なぜスーパー各社は「即食」を売り場の主役にしたのか
- 3. 都市型スーパーは成功、地方スーパーは苦戦…その分かれ目
- 4. ビジネスマンが注目すべき教訓、「上がり続ける固定費」との向き合い方
- 5. 固定費見直しの第一歩は「電気代」から始められる
1. スーパー売り場で急増中の「即食」、その正体とは
最近、食品スーパーの入口正面に、総菜やベーカリー、カットフルーツがずらりと並ぶ光景を目にすることが増えていませんか。以前は青果売り場から始まり、水産、畜産、総菜へと続くのが定番のレイアウトでしたが、この常識が大きく崩れ始めています。
その象徴が「即食(そくしょく)」というキーワードです。日本惣菜協会の『惣菜白書2026』でも、総菜という一部門の枠を超えた「即食」という新しいカテゴリーで市場データが公表されるようになりました。
即食とは、弁当や総菜だけでなく、カットフルーツや刺身、焼魚、電子レンジで温めるだけの商品、サンドイッチなど、「買ってすぐに、あるいは最小限の手間で食卓に出せる食品」全般を指す言葉です。共働き世帯の増加や、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する消費者心理を背景に、こうした売り場が急速に広がっているのです。
2. なぜスーパー各社は「即食」を売り場の主役にしたのか
「時短ニーズに応えるため」というのは、実は表面的な理由に過ぎません。その裏側には、店舗経営を圧迫する、もっと切実な事情があります。
都市部を中心に、地価や建築コスト、そして数年来上昇を続ける人件費(最低賃金の引き上げなど)が、店舗の固定費を年々押し上げています。こうした環境で生き残るには、限られた売り場面積からこれまで以上の収益を生み出す「坪効率(面積当たりの収益性)」を高めることが、避けて通れない経営課題になっているのです。
そこで注目されたのが、需要と収益性を兼ね備えた「即食ゾーン」でした。『スーパーマーケット統計調査2025』によると、総菜の売上構成比は2023年の10.6%から2025年には11.4%まで上昇しています。加えて、部門別の平均粗利益率を見ると、総菜は38.7%と主要部門の中でもっとも高い水準にあるとされています。
下の表は、記事内で紹介されていた主なデータをまとめたものです。
| 指標 | 2023年 | 2025年 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 総菜の売上構成比 | 10.6% | 11.4% | スーパーマーケット統計調査2025 |
| 総菜部門の平均粗利益率 | 38.7%(主要部門で最高水準) | スーパーマーケット統計調査2025 | |
| 30分以内で買い物を終える客の割合 | 約4割 | スーパーマーケット協会2025年データ | |
需要が伸び、収益性にも優れている――だからこそ各社は、部門ごとの売り場配分という「部門別」の発想を捨て、「今すぐ食べたい」という生活動線に合わせた「目的別レイアウト」へと売り場を再編集し始めたのです。
3. 都市型スーパーは成功、地方スーパーは苦戦…その分かれ目
ただし、この売り場改革はどこでも同じように成功するわけではないようです。
かつて総菜の強さで知られたある地方の食品スーパーでは、総菜の売上構成比が12%を超えたことをきっかけに、入口正面へ総菜とベーカリーを配置する大改装を行いました。しかし結果は厳しく、総菜だけを買ってサッと帰る客が急増する一方、青果や畜産といった他部門への買い回りが激減し、客単価が大幅に低下してしまったといいます。
一方、東京都心のライフコーポレーションやサミットといった都市型スーパーでは、同じような売り場改革が成果を上げています。東京都中野区の商業地公示地価(2026年)は前年比17.5%上昇し、一部地点では20%を超える上昇率だったとされ、都市部の地価高騰は深刻です。こうした高い固定費を抱える都市部だからこそ、即食ゾーンを起点に「即食同士の買い回り」を誘発し、客単価と粗利率を同時に引き上げるという戦略が機能しているのです。
つまり、同じ「即食」という切り口でも、立地や商圏、客層によって求められる収益設計はまったく異なります。これは、業種や地域を問わず、経営戦略を考えるうえで非常に示唆に富むポイントではないでしょうか。
4. ビジネスマンが注目すべき教訓、「上がり続ける固定費」との向き合い方
このスーパー業界の事例から、私たちビジネスパーソンが学べることは少なくありません。もっとも大きな教訓は、「固定費が上がり続ける前提のもとで、限られたリソースからどう収益を最大化するか」という発想の転換です。
スーパー各社は、地価や人件費の上昇という自社では簡単にコントロールできないコスト増に対して、売り場のレイアウトという「変えられる部分」を最適化することで対応しました。プロセスセンターやセントラルキッチンとの連携を進め、店舗のバックヤード業務を効率化したことで、売り場面積を広げる余力を生み出したことも見逃せません。
これは、どんな業種にも通じる発想です。すべての固定費を一律に削ることは難しくても、事業の中で「変えられるコスト」と「変えにくいコスト」を切り分け、変えられる部分から手を打っていく。この視点は、経営資源が限られる中小企業にとって、むしろ重要な考え方といえるでしょう。
電気代も見過ごせない固定費のひとつ
記事では地価や人件費が主な固定費として取り上げられていましたが、店舗や事業所を運営するうえで見逃せないもう一つの固定費が「電気代(光熱費)」です。
冷蔵・冷凍設備を多用するスーパーはもちろん、オフィスや店舗、工場を持つ多くの企業にとって、電気代は毎月確実に発生し、かつ年々の変動が大きいコストです。地価や人件費のように短期間で大きく変えることが難しい固定費だからこそ、「見直せる部分がないか」を定期的にチェックする価値があります。
5. 固定費見直しの第一歩は「電気代」から始められる
スーパーが売り場のレイアウトという「変えられる部分」から手を打ったように、私たちも自社の固定費の中で「見直せる部分」から着手してみるのはいかがでしょうか。
電気代の見直しは、以下のような点から検討できます。
・現在の契約プランが、自社の使用状況(時間帯・季節ごとの使用量)に合っているか ・複数の拠点がある場合、拠点ごとに最適な契約になっているか ・新電力を含めた他社プランとの比較検討をしたことがあるか
大がかりな設備投資や業務プロセスの変更を伴わずに着手できる点は、電気代見直しの大きなメリットです。スーパー業界が「即食」という新しい切り口で売り場全体の収益設計を見直したように、私たちも固定費を「今のままで当たり前」と捉えず、定期的に点検する習慣を持つことが、これからの経営体力につながっていくはずです。
まとめ
食品スーパーの売り場に広がる「即食革命」は、単なる時短ニーズへの対応ではなく、地価や人件費といった上がり続ける固定費に対応するための、切実な経営戦略でした。総菜という一部門の枠を超え、売り場全体で坪効率を最大化するという発想は、業種を問わず多くの企業にとって参考になる視点です。
同時に、都市型スーパーと地方スーパーで明暗が分かれた事例からは、自社の立地や客層に合わせた収益設計の重要性も見えてきました。固定費が上がり続ける時代だからこそ、「変えられる部分」から見直していく姿勢が求められています。地価や人件費のコントロールは簡単ではありませんが、電気代のような固定費であれば、今日からでも見直しに着手できます。この機会に、自社のコスト構造を一度点検してみてはいかがでしょうか。
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・ダイヤモンドオンライン:スーパーが「惣菜、ベーカリー、カットフルーツ」を入口に集めるワケ
・一般社団法人 日本総菜協会:「2025年版惣菜白書」