AI時代の激震 東京・昭島で起きたDC「水騒動」の衝撃!電力不足の次に立ちはだかる“第2の壁”とは?

このブログでは以前からお伝えしていますが、データセンター(DC)新設を巡る気になる記事があったので調べてみました。今回注目するのは、東京都昭島市で進められている国内最大級のDC開発プロジェクトです。
生成AIの爆発的な普及により、世界中でDCの建設ラッシュが続いていますが、今、日本国内で新たな問題が浮き彫りになっています。それが「水資源」を巡る対立です。AIを支える高性能GPU(画像処理半導体)の凄まじい発熱を抑えるため、従来の「空冷」から効率的な「水冷」へのシフトが進んでいますが、これが地域住民の生活用水と競合する事態を招いています。昭島市の事例では、住民の強い反発により、事業者は当初の冷却計画の大幅な修正を余儀なくされました。
本記事では、この「水騒動」の背景にある技術的課題と、それがデータセンター運営の肝である「電力供給」や「系統増強」にどのような影響を及ぼすのか、専門的な視点で解説します。
■なぜ今、データセンターで「水」が奪い合いになるのか?
現在、生成AIの処理に不可欠なGPU(画像処理半導体)は、従来のサーバー用CPUとは比較にならないほどの電力を消費し、同時に猛烈な熱を発します。
IDCジャパンのデータによれば、国内のDC建設投資額は、2023年比で2028年には約3倍の1兆円を突破すると予測されており、熱対策は一刻を争う課題です。
これまで主流だった「空冷方式(エアコンのような送風による冷却)」では、AIサーバーの熱を冷ましきれなくなっています。そこで脚光を浴びたのが、水を冷媒として熱を奪う「水冷方式」です。しかし、この方式は大量の水を継続的に必要とします。
■昭島市で起きた「水冷計画」の頓挫
昭島市は、東京都内で唯一、水道水源の100%を深層地下水で賄っている「水のまち」です。事業者の日本GLPがこの地でDC新設を計画した際、当初は地下水を利用した冷却方式が検討されました。
しかし、東京都の環境アセスメントにおいて「地下水の枯渇や地盤沈下」を懸念する都民意見が噴出。結果として、事業者は地下水の揚水を撤回し、冷却方式を「空冷」へと変更する事態となりました。
■「水」の問題は、そのまま「電力」の問題へ直結する
ここで注意すべきは、「水冷を諦めて空冷に戻せば解決」という単純な話ではないという点です。
1.電力消費の増大(PUEの悪化):
一般的に、水冷に比べて空冷は冷却効率が落ちるため、空調設備をフル稼働させる必要があります。これにより、DC全体の電力消費量が増大し、エネルギー効率指標であるPUE(Power Usage Effectiveness)が悪化します。
2.電力系統(グリッド)へのさらなる負荷:
冷却効率が下がった分だけ、受電設備にはさらなる容量が求められます。現在、日本各地で「DCを作りたいが電力系統の空き容量がない」という系統増強の問題が深刻化していますが、空冷への変更は、この電力不足問題にさらに拍車をかけることになります。
3.環境規制とコスト:
東京都のように、大規模事業所に温室効果ガス排出量削減を義務付けている地域では、電力消費の増大はそのままコスト増やペナルティのリスクに直結します。
■求められる「総合的なインフラ設計力」
DC開発において、これまでは「土地」と「電力」の確保が二大要素でした。しかし、今後はそこに「水」という環境資源のマネジメントが加わります。
周辺住民との合意形成だけでなく、地域の電力系統にどの程度の負荷をかけるのか、再生可能エネルギーの導入を含めたトータルでの設計力が、事業継続の鍵を握っています。
まとめ
データセンターはAI社会の心臓部ですが、その維持には莫大なエネルギーと資源が必要です。昭島市の事例は、技術的な最適解(水冷)が、必ずしも地域の受容性(水資源保護)と一致しないことを示しました。
冷却方式の変更によって増大する消費電力に対し、限られた電力系統の枠をどう確保していくのか。これからのDC開発は、IT技術だけでなく、電力インフラと地域環境の調和を考えた「総合的なプロデュース」が不可欠な時代に突入したと言えるでしょう。
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・総務省:「デジタルインフラ整備計画2030」の公表