【緊急解説】2026年度、需給調整市場の上限価格が半減!?系統用蓄電池ビジネスへの深刻な影響と対策

いつも参考にさせていただいているスマートジャパンさんに、系統用蓄電池ビジネスをご検討中の皆様にとって、決して見過ごせない非常に気になる記事がありましたので、今回はその内容を深掘りしてみたいと思います。
2024年4月に全面スタートした需給調整市場ですが、一部商品での価格高騰を受け、資源エネルギー庁の制度検討作業部会で「2026年度以降の制度変更」について議論が行われました。その中で示された方針は、調整力公募量(募集枠)の縮小、そして何より「上限価格の大幅な引き下げ」です。
これまで「調整力市場は儲かる」という皮算用で蓄電池導入を検討されていた方は、この変更を織り込んで事業計画を見直す必要があります。今回は、公開されたデータをもとに、2026年から市場がどう変わるのか、そして蓄電池ビジネスにどのような「注意」が必要なのかを解説します。
【今回参考にさせていただいた元記事】
ITmediaさん スマートジャパン:需給調整市場の一次・二次②・複合商品 2026年度の上限価格を半減へ
目次
1.2024年の振り返り:なぜ制度変更が行われるのか
2.【最大のインパクト】2026年度からの上限価格変更
3.市場規模も縮小へ:募集量の抑制(1σ運用)
4.「週間」から「前日」へ:取引スタイルの変化と競合
5.系統用蓄電池ビジネスへの影響と「注意喚起」
1. 2024年の振り返り:なぜ制度変更が行われるのか
2024年4月、需給調整市場の全商品(一次〜三次②)の取引が開始されましたが、スタート直後から一部のエリアや商品で調達費用が高騰しました。特に前日商品(三次②)などでは、売り切れ(応札不足)が発生し、高値での約定が相次いだことが要因です。
これを受け、国(エネ庁)はコスト抑制のために様々な対策(募集量の削減など)を講じてきました。その結果、足元の費用は減少傾向にありますが、来る2026年度に向けて、より抜本的な制度変更が行われることになりました。
2. 【最大のインパクト】2026年度からの上限価格変更
今回の発表で最も衝撃的なのが、上限価格の変更です。 これまで、複合市場(一次〜三次①)の上限価格は比較的高めに設定されていましたが、2026年度からは以下のように変更される案が示されています。
・現在の上限価格: 19.51円/ΔkW・30分(=39.02円/ΔkW・h)
・2026年度案: 7.21円/ΔkW・30分(=14.42円/ΔkW・h)
実に60%以上のダウンとなります。 記事によると、これまでの市場では上限価格付近(19.51円)での応札が多く、それが調達コストを引き上げていました。特に、初期投資回収を急ぐ蓄電池事業者が高値で応札していた傾向が伺えますが、2026年以降、その戦略は通用しなくなります。
注意点:「高い単価で売れる」ことを前提とした収支シミュレーションは、2026年度以降、完全に崩れる可能性があります。
3. 市場規模も縮小へ:募集量の抑制(1σ運用)
単価だけでなく、「量(募集枠)」も絞られます。 安定供給に支障がない範囲でコストを抑えるため、市場での調達量は「最大1σ(シグマ)相当」とし、それ以上の突発的な需要変動(3σ相当までの差分)については、容量市場の「余力活用契約」などで賄う方針で統一されます。
これはつまり、「需給調整市場というパイ(市場規模)自体が小さくなる」ことを意味します。高値で売れない上に、売り先(枠)も狭き門になる可能性があるのです。
4.「週間」から「前日」へ:取引スタイルの変化と競合
2026年度からは、これまで週間で行われていた取引が「前日取引」へ移行し、コマ数も3時間ブロックから「30分コマ」へと細分化されます。
これにより、発電事業者は「卸電力市場(JEPX)」で電気を売るか、「需給調整市場」で調整力として待機するか、前日の時点でギリギリの判断を迫られます。 アンケート結果によると、2026年度の一次調整力においては、想定応札量の約半分を「蓄電池」が占めると予想されています。
これは一見、蓄電池の出番が増えるように見えますが、裏を返せ「蓄電池同士の価格競争が激化する」ということです。上限価格が7.21円に抑えられた中で、多くの蓄電池がその枠を奪い合う構図が予想されます。
5. 系統用蓄電池ビジネスへの影響と「注意喚起」
今回の制度変更案から読み取れる、系統用蓄電池ビジネスへのメッセージは明確です。
「調整力市場一本足打法」は極めてリスクが高いということです。
これまでの、「補助金をもらって蓄電池を導入し、高い調整力単価で回せば数年で回収できる」といった楽観的なモデルは、2026年には通用しなくなる恐れがあります。
・収益源の多様化: JEPXの裁定取引(アービトラージ)の精度を上げる。
・入札戦略の高度化: 複合市場と三次②市場、どちらにリソースを配分するかのアルゴリズム。
・コスト管理の徹底: 低い単価でも利益が出る運用体制。
これらを今から準備しておかなければ、2026年の制度変更の波に飲み込まれて可能性があります。
まとめ
・2026年度、需給調整市場(一次〜三次①)の上限価格は7.21円/ΔkW・30分へ大幅減額される見込み。
・市場調達量は「1σ相当」に抑制され、市場規模自体が縮小傾向にある。
・取引は「前日・30分コマ」となり、より緻密な運用判断が求められる。
・蓄電池の応札増加が見込まれるため、低単価での激しい競争が予想される。
制度は常に変化します。「今の価格」ではなく、「将来の制度」を見据えた事業計画が必要です。
情熱電力からのお知らせ
「今の事業計画、2026年の新価格でシミュレーションできていますか?」
今回の制度変更は、系統用蓄電池ビジネスにとって「逆風」とも取れますが、見方を変えれば「本物だけが生き残れる健全な市場」への進化とも言えます。
情熱電力では、今回のような最新の制度変更を織り込んだ「保守的かつ現実的な収益シミュレーション」の作成をサポートしています。
「導入を検討しているが、リスクが心配だ」「既に導入したが、2026年以降の運用戦略を見直したい」という事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。
激動の電力市場を勝ち抜くための戦略を一緒に構築しましょう。
この記事に関連するページ
・資源エネルギー庁 第108回 制度検討作業部会 需給調整市場について
・一般社団法人 電力広域的運営推進機関(OCCTO)
この記事に関連する情熱電力の過去記事
・系統用蓄電池の「場所取り合戦」に国が動く!知らないと損する系統連系の新ルール案を解説します。
・申し込み800万kW超!日本の系統用蓄電池ビジネスが爆発前夜。市場の”今”と未来の勝機を徹底解説
・系統用蓄電池が稼ぐ時代へ!3つの電力市場を活用する最新ビジネスモデル