【2026年度制度改正】需給調整市場の募集量削減と上限価格設定が蓄電池事業に及ぼす影響について

先日もこのブログで記事をあげましたが、経済産業省の制度検討作業部会の需給調整市場に関する資料を基に要点をまとめます。 2026年度(2026年3月)から予定されている週間商品の「前日取引化」に向け、調整力の募集量や上限価格に関する具体的な方向性が示されました。特に、系統用蓄電池事業の収益性に直結する「上限価格の引き下げ」や「募集量の削減」について、事業者の予見可能性を確保するための詳細なデータが公開されています。本記事では、2025年12月12日に公開された資料を基に、制度変更のポイントと蓄電池ビジネスへの影響を解説します。
目次
1.2026年度以降の市場環境の変化:週間商品の前日取引化
2.募集量の見直し:高速商品は削減、複合商品は増加へ
3.上限価格の適正化:7.21円/ΔkW・30分案とその根拠
4.蓄電池事業の収益性分析:IRR(内部収益率)への影響
5.監視指針の改定:事後的措置とセーフハーバーの明確化
6.まとめ
1. 2026年度以降の市場環境の変化:週間商品の前日取引化
2026年度に向けた最大の変更点は、現在「週間商品」として取引されている一次調整力、二次調整力①・②、三次調整力①が、スポット市場の後のタイミングで行われる「前日取引」へ移行することです。これにより、スポット市場で約定しなかった電源が調整力市場へ応札する機会が増えるため、より効率的な調達が期待されています。
2. 募集量の見直し:高速商品は削減、複合商品は増加へ
コスト抑制の観点から、募集量(調達量)の考え方が見直されます。
・高速商品(一次・二次①)の募集量削減 事務局の提案では、市場による調達量を必要量の一部(1σ相当)に留め、残りは「余力活用」などで調達する方針が示されました。これにより、2026年度の一次・二次①の募集量は、2025年度比で約13%減少する見込みです。
・複合商品全体では増加 一方で、一次〜三次①を含む「複合商品」全体で見ると、募集量は2025年度比で50%増加する見通しです。これは発電事業者や蓄電池事業者にとって、市場参入の機会自体は拡大することを意味しています。
3. 上限価格の適正化:7.21円/ΔkW・30分案とその根拠
コスト高騰を防ぐため、上限価格の引き下げが提案されています。
・新上限価格案 一次〜三次①(複合市場含む)の上限価格を一律「7.21円/ΔkW・30分」(14.42円/kWh相当)とする案が提示されました。現在は一次調整力などで19.51円/ΔkW・30分が設定されていますが、大幅な引き下げとなります。
・スポット市場との整合性 スポット市場価格が14.42円/kWh以下となるコマが年間約8割(79.8%)存在することから、スポットで不落札となった電源がこの価格水準で応札可能であり、一定の供給力は確保できると分析されています。
4. 蓄電池事業の収益性分析:IRR(内部収益率)への影響
上限価格の低下が、新規リソースである系統用蓄電池の投資判断にどう影響するかが懸念されていました。これに対し、以下のモデルケースでの試算結果が公表されています。
・試算の前提 稼働年数10年・15年、4時間率の蓄電池、約定量2ブロック/日(6時間相当)を想定。
・収益性の評価 上限価格「7.21円」で継続的に落札した場合のIRR(10年)は以下の通りです。
CAPEX(設備費+工事費)が6万円/kWhの場合:3.3%
CAPEXが5万円/kWhの場合:7.0%
CAPEXが4万円/kWhの場合:12.0% 事業者の投資目線(IRR 5〜10%程度)を踏まえると、CAPEXを5万円/kWh程度に抑えることができれば、新価格でも事業性は成立し得ると示唆されています。
5. 監視指針の改定:事後的措置とセーフハーバーの明確化
公正な取引環境を守るため、「適正な電力取引についての指針」および「需給調整市場ガイドライン」が改定されます。
・B種電源協議の廃止 従来行われていた事前相談(B種電源協議)は廃止され、今後は厳格な事後監視に移行します。
・具体的な問題行為の明記 「不合理な入札価格設定により不当に収益を得る行為」などが問題となる行為としてガイドラインに追記されます。
・セーフハーバー(安全地帯) ガイドラインで示される価格規律(事前的措置)を遵守している限り、市場相場操縦を目的としていないとみなされる「セーフハーバー」としての位置づけが明確化されます。
まとめ
2026年度以降、需給調整市場は「前日取引化」とともに、より競争的な環境へとシフトします。高速商品の募集量は絞り込まれ、上限価格も7.21円へと引き下げられる方向ですが、複合商品全体の市場規模は拡大します。系統用蓄電池事業者にとっては、CAPEX(建設費)の低減努力と、新ルール(複合市場への最適入札や起動費の按分計上など)への適応が、事業収益確保の鍵となるでしょう。
情熱電力からのお知らせ
今回の制度変更案では、上限価格が引き下げられる一方で、複合市場全体での募集枠は拡大するなど、系統用蓄電池にとってチャンスとリスクが混在する内容となっています。特に、IRR試算にあるように「初期コスト(CAPEX)の低減」と「適切な市場入札戦略」がこれまで以上に重要になります。
情熱電力では、最新の需給調整市場の動向を踏まえた系統用蓄電池の導入支援などを行っています。「2026年以降の収支シミュレーションを見直したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
株式会社情熱電力へのお問い合わせは こちらからお願いします。
この記事に関連するページ
・経済産業省:制度検討作業部会