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2026.06.28 Sun

【レアアース覇権に異変?】中国一強に挑むブラジル、米中争奪戦でも「どちらにもつかない」不敵な野心

 
レアアースの採掘現場
 
「中国レアアース支配に対抗、新たな戦線はブラジル」という気になる見出しの記事があったので調べてみました。
 
電気自動車(EV)やハイテク産業、さらには軍事技術にまで欠かせない戦略物資「レアアース(希土類)」。現在、その供給網(サプライチェーン)の大部分を中国が握っていることは広く知られています。しかし今、その圧倒的な支配を揺るがす「新たな戦線」として、南米ブラジルに世界中の注目と巨額の資金が集まっています。
 
ブラジルは世界第2位の膨大な埋蔵量を誇り、欧米企業がこぞって鉱山開発へと名乗りを上げています。しかし、ブラジルの真の狙いは単なる「資源の切り売り」ではありません。さらに、激化する米中対立において、どちらの陣営にも属さないという独自の外交姿勢を貫いています。今回は、世界のエネルギー・ハイテク覇権の勢力図を塗り替えるかもしれない、ブラジルの野心と複雑な現状について解説します!
 


 

■ なぜ今ブラジル?中国一強の牙城を崩す「世界クラスの地質」

現在、中国は世界のレアアース埋蔵量の約半分を保有しているに過ぎませんが、個々の元素を分離する「加工」や、最終製品である「磁石生産」においては90%超という圧倒的なシェアを支配しています。
 
レアアースのシェア

国名 世界埋蔵量シェア 世界採掘生産量シェア 特徴・主な動向
中国 40.0% 68.0% 埋蔵量トップかつ採掘の過半数を支配。分離・精製プロセスでは90%超の圧倒的シェアを誇る。
ブラジル 21.0% 0.1% 世界第2位の埋蔵量。イオン吸着型粘土層を持ち低コスト開発が可能。現在、欧米からの投資が急増中。
ベトナム 19.0% 0.5% ブラジルに匹敵する膨大な未開発埋蔵量を保有。今後のグローバル供給網の鍵を握る。
ロシア 9.0% 2.0% 豊富な資源を持つが、国際情勢(ウクライナ対立等)の影響により西側諸国の供給網からは独立。
オーストラリア 3.0% 5.0% 硬岩鉱床が中心。ライナス社などを筆頭に、西側諸国への貴重な「脱・中国」供給源として稼働。
米国 1.9% 14.0% マウンテンパス鉱山を中心に採掘を強化中だが、高付加価値な精製フェーズの国内回帰が課題。
※データは2024年時点。生産量は精製後ではなく採掘(鉱山生産)ベース。埋蔵量は現在の技術で経済的に採掘可能な既知の評価済みのもの。
出所:アワー・ワールド・イン・データ(米地質調査所:USGSデータの集計に基づく)

2025年に中国が米国との貿易摩擦への対抗措置として輸出規制を課した際、西側諸国がどれほど中国依存のリスクに晒されているかが浮き彫りになりました。
 
この状況を打破する救世主として期待されているのがブラジルです。米地質調査所(USGS)のデータによると、ブラジルのレアアース推定埋蔵量は2,100万トンに達し、これは世界全体の約4分の1(中国に次ぐ世界第2位)に相当します。実際に、国内のレアアース関連の調査許可申請数は、1975年〜2020年までの45年間でわずか476件だったのに対し、2023年初め以降だけで3,000件を突破するという爆発的な急増を見せています。
 
オーストラリア上場の鉱山会社ビリディスのCEO、ラファエル・モレノ氏が「これは世界クラスの地質だ」と評するように、ブラジルの鉱床の多くは「イオン吸着型粘土層」にあります。これはオーストラリア等に多い硬岩鉱床に比べて、安価で加工しやすいという画期的なメリットを持っています。さらに、国内の豊富な水力発電による低コストなエネルギー、比較的安い人件費、そして巨大市場である米国への物理的な近さも、世界中の投資家を惹きつける強力な誘引となっています。
 
 

■ 単なる原材料の輸出では終わらない:ブラジルの「高付加価値」への野心

ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領は、自国が「ただの未加工鉱石の輸出国」として買い叩かれることを強く拒否しています。
 
現在、多くの開発プロジェクト(ビリディスやメテオリックによるポソスデカルダスでのプロジェクト、カナダのアクララ・リソーシズによるゴイアス州のプロジェクトなど)は、初期段階においては採掘した原材料を海外(フランス・ベルギーの化学大手ソルベイの工場など)へ輸出する計画です。
 
しかし、ブラジル政府と鉱山会社が2030年代に向けて見据えているのはその先です。国内に独自の分離プラントを建設し、金属を生産し、最終的には「国内で磁石まで製造・リサイクルできる完全なサプライチェーン」を構築することを目指しています。これが実現すれば、中国が利益を独占してきた最も収益性の高い「加工・製品化フェーズ」に正面から風穴を開けることになります。
 
 

■ 米国の思惑と、ブラジルが貫く「冷徹な中立外交」

中国のサプライチェーン支配を弱めたい米国は、トランプ大統領の下、政府系融資や購入契約、他国による価格破壊から企業を守る「価格保証」まで提供し、ブラジルへの肩入れを強めています。4月には、米政府の融資を受けたUSAレア・アースが、アジア以外で大規模な粘土鉱床を持つセハ・ベルジを28億ドル(約4,400億円)で買収することに合意しました。
 
しかし、米国主導のレアアース貿易圏(中国包囲網)へブラジルを組み込もうとする圧力に対し、ブラジルは明確に「NO」を突きつけています。
 
アレシャンドレ・シルベイラ鉱業・エネルギー相は「我が国の主権を尊重する国なら、米国、EU、中国など、どの国からの投資も歓迎する」と明言。ルラ大統領もホワイトハウスでのトランプ大統領との会談で重要鉱物に関する合意を見送り、その後「我々に好み(特定の優遇国)はない」と語りました。
 
事実、ブラジルは自国の資源への中国のアクセスを制限する気は毛頭ありません。中国はブラジルの鉱業資産へ積極的に投資を続けており、中国EV大手の比亜迪(BYD)などは、ブラジルが長年渇望していた「国内での雇用と技術を生み出す産業投資」を実際に現地へもたらしています。
 
 

まとめ

世界第2位の埋蔵量を武器に、レアアースの採掘から加工、磁石生産までの一大拠点を国内に築こうとするブラジル。西側諸国にとっては中国依存を減らす絶好のチャンスである一方、ブラジルが「どちらの側にもつかない」という中立姿勢を崩さない限り、せっかく開発された資源が再び中国のEVメーカーやサプライチェーンに取り込まれてしまう懸念も残されています。
 
過度な地元調達要件による投資離れや、法整備の遅れといった国内の課題はありますが、エネルギー覇権の未来を占う上で、ブラジルが今後「どちらの手を取るのか(あるいは双方を操るのか)」は、世界のハイテク・エネルギー産業全体にとって最も目が離せないテーマの一つとなるでしょう。
 


 

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この記事に関連するページリンク
・Our World in Data – Mineral Production and Reserves:https://ourworldindata.org/
 ┗ 米地質調査所(USGS)のデータを基にした世界の重要鉱物シェアや生産量をビジュアルで確認できる国際的なデータプラットフォームです。
 
・U.S. Geological Survey (USGS) – National Minerals Information Center:
https://www.usgs.gov/centers/national-minerals-information-center
 ┗ ブラジルのレアアース埋蔵量(2,100万トン)など、世界中の重要鉱物の最新埋蔵量や需給推移を網羅した公式レポート(Mineral Commodity Summaries)を閲覧できます。