営農型太陽光発電の制度改正へ:農山漁村再エネ法との連携と「望ましい要件案」の方向性

営農型太陽光発電の適正化に向けた大幅な制度改正の方針が示された。という記事があったので調べてみました。
近年、農業を継続しながら上部の空間で発電を行う「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」は、作物の販売収入に加えて発電電力の自家利用などによる農業者の所得向上、さらには地域活性化の切り札として高い関心を集めています。実際に導入件数は年々増加していますが、その一方で、下部農地での営農がおろそかになる不適切事例や生育不良といった課題も表面化してきました。
こうした背景から、農林水産省の検討会では、形だけの営農を排除し、地域と共生する「望ましい営農型太陽光発電」を推進するための大規模な見直し案が議論されています。本記事では、これまでの規律強化の流れを整理しつつ、新たに導入される予定の手続きフローや、設備・営農に関する具体的な新基準の方向性について詳しく解説します。
目次
・営農型太陽光発電の現状と浮き彫りになった課題
・これまで実施されてきた規律強化の歩み
・新制度の核心:「農地法」と「農山漁村再エネ法」の連携義務化へ
・「望ましい営農型太陽光発電」に求められる3つの要件案
・既存事業者への影響と国の対応強化
・まとめ
営農型太陽光発電の現状と浮き彫りになった課題
農林水産省のデータによると、営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可件数は、令和5(2023)年度末までの累計で6,137件に達し、発電設備下部の農地面積は1,361.6ha(約1,362ha)へと拡大を続けています。
下部農地で栽培されている作物の傾向を見ると、さかきやしきみなどの「観賞用植物」が36%(2,147件)と最も多く、次いで「野菜等」が28%(1,654件)、「果樹」が13%(791件)となっています 。パネルによる遮光環境を前提とした特徴的な作物が選ばれているのが現状です。
しかし、急速な普及の裏で看過できない課題も生じています。令和5年度末において、下部農地での営農に「支障あり」と判断された割合は24%(1,221件)に上り、前年度から2%上昇しました。さらに、その支障内容の71%(872件)が「営農者に起因する単収減少・生育不良」、つまり適切な栽培管理が行われていないケースであることが分かっています。
| 項目 | 令和5年度末の実績 |
|---|---|
| 累計一時転用許可件数 | 6,137件 |
| 累計許可農地面積 | 1,361.6ha |
| 下部農地での営農に「支障あり」の割合 | 24%(1,221件) |
| 支障のうち「営農者起因」の割合 | 71%(872件) |
これまで実施されてきた規律強化の歩み
こうした不適切事例への対策として、国はこれまでも段階的に規律を強化してきました。
令和6(2024)月4月の見直し
従来は局長通知レベルだった「単収2割以上減少時の不許可基準」などの規定を法令(農地法施行規則)に格上げして明記しました。また、改正再エネ特措法の施行に伴い、違反事業者に対するFIT/FIP交付金の一時停止措置を新設し、令和6年8月および11月には計29件(13事業者)に対して実際の処分が行われています。
令和7(2025)年4月の改正農地法施行
農地転用の許可を受けた者が毎年の定期報告を行うことが法定義務化され、命令に従わない違反者に対しては氏名や土地の地番を公表する仕組みが創設されました。
新制度の核心:「農地法」と「農山漁村再エネ法」の連携義務化へ
これまでの規律強化は主に「農地法」を通じたペナルティの厳格化が中心でしたが、令和8(2026)年4月に開催された第6回検討会では、さらに踏み込んだ「大幅な手続きの変更」の方針が示されました。
これまでは農地法に基づく一時転用許可のみで審査されていましたが、今後は「農山漁村再生可能エネルギー法(農山漁村再エネ法)」に基づく認定取得を一時転用許可の条件として義務付ける方針(案)となっています。
農地法の審査だけではカバーしきれなかった「幅広い地域住民との合意形成」や「地域への貢献度」を、市町村が関与する農山漁村再エネ法の計画制度(協議会など)を活用して担保しようという狙いです。国が定める基本方針に適合し、市町村から設備整備計画の認定を受けた事業でなければ、農地の一時転用が認められなくなります。
「望ましい営農型太陽光発電」に求められる3つの要件案
新制度への移行に伴い、国としての「あるべき姿」を示す具体的な基本理念と、それを満たす形状・形態の要件案が提示されました。要件は大きく3つのカテゴリーに分かれています。
① 発電設備に関すること(一般的な農業が可能な形状の担保)
・遮光率: 30%未満であること
・設備の高さ・間隔: 効率的な機械作業に支障をきたさないよう、最低地上高3m以上、支柱間隔4m以上を確保すること
② 営農に関すること(適切な営農の確実な継続)
・営農者の位置づけ: 地域計画において「10年後の農業を担う者」として位置づけられていること
・営農実績・持続性: 栽培品目について年間50万円以上の生産・販売実績を有しているなど、業としての持続性があること
・品目の選定: 地域で栽培され、一般的な販売ルートが確立していること(原則毎年収穫可能な品目)
なお、遮光環境下でも規定の収量を確保しやすい米・麦・大豆が推奨品目として例示されています。
③ 地域との共生に関すること(合意形成と利益還元)
・地域の合意: 協議会などを通じて、地域の農業者や周辺住民の合意が得られていること
・利益還元: 発電事業者から営農者などに対して適正な利益還元(協力金など)が行われること
・原状回復の担保: 保険加入等による第三者への損害補償や、撤去費用の確保が確実であること
既存事業者への影響と国の対応強化
「これから始める事業だけでなく、すでに稼働している設備はどうなるのか?」という点も気になるところです。
基本的には法の不遡及の原則に基づきますが、新たな基準案の一部(設備要件や営農要件など)は、一時転用の再許可(更新)時の審査基準に追加される方針が示されています。一時転用期間は原則3年(一定条件で10年)ごとに更新を迎えるため、既存の事業者であっても順次、新しい適正化基準への対応が求められることになります。
また、国自身も不適切事案の取り締まりに強く関与するため、国の審査や現地調査の対象となる下部農地面積の基準を「4ha以上」から「2ha以上」に引き下げるなど、監視体制の強化(案)も盛り込まれました。
まとめ
今回の制度改正の方針は、単に「太陽光パネルの下で形だけ作物を育てる」という売電主体のビジネスモデルに対する、国からの明確な「 NO 」 のサインと言えます。
今後は、「地域の農業経営をいかに発展させるか」「地域社会とどのように調和し、貢献できるか」が審査の最重要項目となります。ハードルが高くなったと感じられるかもしれませんが、この適正化が進むことで、地域から歓迎され、長期的に安定した経営を行える優良な「農業シェアリング」の事例が日本全国に広がっていくことが期待されます。
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この記事に関連するページリンク
・Webニュース記事:ITmedia スマートジャパン
営農型太陽光発電の「農地一時転用」、農山漁村再エネ法に基づく認定取得を条件化の方針に(第6回検討会)
・行政公式情報:
農林水産省の公式ウェブサイト内にある「営農型太陽光発電について」のページでは、過去のガイドラインや一時転用許可制度の取り扱い、全国の優良事例などが随時公開されています。詳細な資料やデータを確認したい方は、農林水産省のサイト内検索にて「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」等で検索の上、最新の配布資料をご参照ください。(資料)