EVシフトの主役は欧州じゃない!新興国で電気自動車が爆売れしている経済的な理由
EVの海外動向に関する気になる記事があったので調べてみました。皆さんは「EV先進国」と聞くと、ノルウェーなどの北欧諸国や、政府主導で普及を進める中国を思い浮かべるのではないでしょうか?しかし今、世界のEV市場で最も熱い視線が注がれているのは、実はトルコ、ネパール、エチオピアといった「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国だというのです。「なぜ環境意識の高い先進国ではなく、新興国で?」と疑問に思いますよね。その背景には、環境問題への意識だけでなく、もっとリアルで切実な「経済的な理由」がありました。この記事では、世界の常識を覆す新興国のEV事情と、その裏にある価格破壊のリアル、そして今後の自動車市場のトレンドについて分かりやすく解説していきます。
イメージを覆す!新興国でEVが驚異的な伸び
まず、にわかには信じがたいかもしれませんが、新興国におけるEVの普及スピードを示す驚きのデータを見てみましょう。
トルコ: 過去1年間でEV販売台数がなんと3倍以上に増加。今や新車販売の27%をEVが占め、欧州で第4位の巨大EV市場になっています。
ネパール: 2024年に輸入された自動車の70%以上がEVでした。
エチオピア: なんとガソリンなどの内燃機関(エンジン)車の販売を全面的に禁止。その結果、新車販売の約60%がEVという状況です。
国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2024年にはアフリカ、アジア、中南米といった開発途上国全体でEVの販売台数が60%も増加しており、これは一部の国だけの特殊な現象ではないことが分かります。
なぜそこまで売れるのか?最大の理由は「価格」
新興国でこれほどまでにEVが受け入れられている最大の理由は、環境への配慮というよりも、もっと直接的な「経済合理性」、つまり「安さ」にあります。
1. 中国製EVの価格破壊
大きな役割を果たしているのが、価格競争力に優れた中国製EVの存在です。IEAによると、例えばタイでは2024年に販売された中国製EVの平均価格が約3万ドルだったのに対し、一般的なガソリン車の価格は約3万4000ドルと、EVの方が安価になる「価格の逆転現象」が起きています。
2. 外貨を節約したい各国の事情
多くの新興国は、自国で産出できない石油やガスを輸入に頼っており、貴重な外貨を化石燃料の購入に充てています。
先ほど紹介したエチオピアがエンジン車を禁止したのも、実は環境対策というより「化石燃料への支出を減らし、外貨を節約する」という切実な経済政策の一環なのです。自国で発電できる電気で走るEVは、エネルギー安全保障の観点からも非常に魅力的な選択肢となっています。
政府による強力な後押しも
各国の政策もEVシフトを強力に後押ししています。
トルコの例は非常に分かりやすく、EV購入時にかかる税金は10%ですが、ガソリン車の場合は排気量に応じて45%~220%もの高額な税金が課されます。これだけ税率に差があれば、多くの人がEVを選ぶのも納得できます。
一方で、米国やEUが中国製EVに対して高い関税をかけようとしている動きも、新興国市場にとっては追い風になっています。行き場を失った中国製EVが他の市場に流れ込み、さらなる価格競争を生んでいるのです。
EVと再生可能エネルギーはセットで拡大
EVの普及は、再生可能エネルギーの導入とも密接に関わっています。
・パキスタン: 2025年上半期には、電力の25%を太陽光発電で賄いました。これはクリーンエネルギー先進地域の米カリフォルニア州の32%に迫る勢いです。
・モロッコ: 過去1年間で風力発電量を50%も増やし、世界第9位の風力発電国となっています。
かつては高額だった太陽光パネルや蓄電池の導入コストが大幅に下がったことで、EVとクリーンな電力をセットで導入するハードルが劇的に下がったことも、この流れを加速させています。
まとめ
これまで見てきたように、グローバルサウス(新興・途上国)で起きているEVシフトは、「環境意識」という理想論だけではなく、「価格の安さ」「外貨の節約」「税金の優遇」といった、人々の生活や国の経済に直結する極めて現実的な理由によって力強く推進されています。
この動きは、今後の世界の自動車市場やエネルギー市場の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めています。日本に住む私たちにとっても、EVを選ぶことは、単なるエコな選択肢ではなく、家計にも優しい賢い選択肢となりつつあることを、世界のトレンドが示していると言えるでしょう。
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それではまた!!
この記事に関連するページ
・日経ビジネス:新興国が後押しする再エネ市場 EV価格と投資コストの低下がけん引役
・国際エネルギー機関(IEA)(https://www.iea.org/)
・エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)(https://ieefa.org/)