系統用蓄電池ビジネスが過熱!「空押さえ」問題と今後の新ルールを徹底解説
スマートジャパンさんに、これからのエネルギービジネスを考える上で非常に興味深い記事が掲載されていましたので、今回はその内容を深掘りして調べてみました。
今、脱炭素社会のキーデバイスとして「系統用蓄電池」に大きな注目が集まっています。再生可能エネルギーの導入拡大に不可欠なこの技術ですが、その裏側でビジネス参入を目指す事業者が殺到し、電力系統への接続申し込みが急増。しかし、その多くが事業化に至らない「空押さえ」ではないか、という問題が深刻化しています。このままでは、本当に電気を使いたいデータセンターや他の事業者の接続が妨げられかねません。
この記事では、なぜ今、系統用蓄電池の接続申請が急増しているのか、深刻な「空押さえ」問題の実態、そして国が検討を始めた新しい接続ルールについて、ビジネスの観点から分かりやすく解説します。未来の電力網を支える蓄電池ビジネスの「今」と「これから」を一緒に見ていきましょう。
スマートジャパン(ITmedia)さんの記事:系統用蓄電池の接続検討が急増 受付量は1.1億kW超で「空押さえ」が課題に(https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2507/03/news038.html)
目次
1.なぜ? 系統用蓄電池の接続申請が爆発的に増加中
・接続検討の受付量は1.1億kW超え!
・背景にある「補助金」と「オークション」
2.深刻化する「空押さえ」問題とは?
・事業化確度の低い申し込みが系統容量を圧迫
・投機目的の事業者も参入か
3.国はどう動く?系統接続の新ルールを先取り解説
・【対策1】手続きの規律を強化し、実効性を高める
・【対策2】「ノンファーム型接続」で、もっと速く、安くつなぐ
・【対策3】一般需要との「協調」で系統を賢く使う
4.まとめ:今後の系統用蓄電池ビジネスの展望
1. なぜ? 系統用蓄電池の接続申請が爆発的に増加中
今、日本の電力系統で大きな変化が起きています。再生可能エネルギーを安定化させる切り札として期待される「系統用蓄電池」の設置計画が、驚異的なペースで増加しているのです。
接続検討の受付量は1.1億kW超え!
資源エネルギー庁のデータによると、2025年3月末時点で電力系統への接続を検討する「接続検討」の受付量は、約1億1,300万kWに達しています。これは、日本の総発電設備容量の半分に迫るほどの規模です。
しかし、実際に電力会社と「接続契約」を結んだ量は約1,200万kW、さらに実際に系統に接続(連系)された量はわずか約23万kWに留まっています。この数字の大きなギャップが、現在の課題を象徴しています。
背景にある「補助金」と「オークション」
この申請急増の背景には、国による強力な後押しがあります。
・補助金制度: 系統用蓄電池の導入を支援する補助金の申請には、事前に電力会社からの「接続検討回答書」が必要です。
・長期脱炭素電源オークション: 将来の電力供給力を確保するためのオークション制度でも、蓄電池が対象となっており、応札には同様に接続検討が必要となります。
これらの制度を利用するために、多くの事業者が一斉に接続検討を申し込んでいるのが現状です。特に、補助金やオークションの締め切り前に申請が集中する傾向が見られます。
2. 深刻化する「空押さえ」問題とは?
申し込みが急増する一方で、大きな問題が顕在化しています。それが「空押さえ」です。
事業化確度の低い申し込みが系統容量を圧迫
接続検討の申し込みの中には、実際に事業化する確度が低い案件が多数含まれていると指摘されています。事業者は、より有利な(=工事費が安く、早期に接続できる)場所を探すために、複数の地点で同時に接続検討を申し込むケースが少なくありません。
系統の容量は、基本的に「契約申込順」で確保されます。確度の低い申し込みによって容量が仮押さえされてしまうと、本当に系統を利用したい他の蓄電池事業者や、近年急増しているデータセンターなどの大規模需要家が、接続できない事態に陥る恐れがあるのです。
3. 国はどう動く?系統接続の新ルールを先取り解説
こうした状況を受け、資源エネルギー庁は「次世代電力系統ワーキンググループ」で、接続ルールの見直しに向けた検討を開始しました。今後のビジネス環境を大きく左右する可能性のある、3つのポイントを見ていきましょう。
経済産業省 第3回 「次世代電力系統WG」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/003.html)
【対策1】手続きの規律を強化し、実効性を高める
まずは、実効性のない申し込みを減らすためのルール強化です。例えば、接続検討の申し込み要件を厳格化したり、契約後の工事費負担金の支払い期限を明確にしたりすることで、安易な「空押さえ」を防ぐ狙いがあります。
【対策2】「ノンファーム型接続」で、もっと速く、安くつなぐ
現在、蓄電池の充電(順潮流)は、系統の容量が不足した場合に備え、大規模な増強工事が必要となる「ファーム型接続」が原則です。これには多大な時間とコストがかかります。
そこで、発電設備側(逆潮流)で既に導入されている「ノンファーム型接続」を、蓄電池の充電側にも導入することが検討されています。これは、系統が混雑した際には電力会社からの指令で充電を制限されることを前提に、系統の増強工事を待たずに速やかかつ低コストで接続を可能にする仕組みです。事業の不確実性は増しますが、初期投資を抑え、早期にビジネスを開始できるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
【対策3】一般需要との「協調」で系統を賢く使う
蓄電池は、電気を消費する「需要」の側面と、供給する「電源」の側面を併せ持ちます。この特性を活かし、他の需要家と協調することで系統を効率的に利用するアイデアも検討されています。
例えば、あるエリアで蓄電池が先に接続契約し、後から工場などの一般需要家が接続しようとして系統容量が足りなくなったとします。この時、両者が合意すれば、一般需要家が優先的な「ファーム型接続」、蓄電池が「N-1故障時(送電線のトラブル時)に充電を停止する」という条件付きの接続形態に「入れ替える」ことが可能になります。
これにより、系統の増強工事を回避し、社会全体として効率的なエネルギー利用が実現できます。
まとめ
今回は、過熱する系統用蓄電池の接続申請の現状と、それに伴う「空押さえ」問題、そして今後のルール変更の方向性について解説しました。
・現状: 補助金やオークションを背景に接続検討が急増し、1.1億kWを突破。
・課題: 事業化確度の低い「空押さえ」が横行し、真の需要家の接続を阻害。
・未来: 国は「規律強化」「ノンファーム型接続」「需要家との協調」を軸にルールを見直し、より効率的で実効性のある系統利用を目指している。
系統用蓄電池ビジネスは、脱炭素化に貢献する大きな可能性を秘めていますが、同時に国の政策や電力系統全体のルールに大きく影響される事業でもあります。今後、ノンファーム型接続のような新しい選択肢が生まれることで、ビジネスモデルも多様化していくでしょう。参入を検討されている方は、こうした制度の最新動向を常に注視し、変化に対応していくことが成功の鍵となります。
情熱電力からのお知らせ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
系統用蓄電池ビジネスは大きなチャンスを秘めていますが、今回ご紹介したように、その制度は非常に専門的で、変化のスピードも速くなっています。
「自社の場合はどんな可能性があるのか?」「ノンファーム接続のような新しいルールをどう活用すればいいのか?」「そもそも何から始めれば…?」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
情熱電力では、エネルギーのプロフェッショナルとして、こうした複雑な制度や最新の業界動向を踏まえ、お客様一社一社に最適なエネルギーソリューションをご提案しています。
系統用蓄電池の導入支援はもちろん、自家消費型太陽光発電システムの構築や、日々の電気料金の最適化まで、エネルギーに関することなら何でもご相談ください。お客様のビジネスに情熱で貢献します。お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。
株式会社情熱電力へのお問合せはコチラ
情熱電力の系統用蓄電池ビジネス関連過去記事ページ
・【遊休地の救世主】使っていない土地が“収益源”に!系統用蓄電池の新提案
・申し込み800万kW超!日本の系統用蓄電池ビジネスが爆発前夜。市場の”今”と未来の勝機を徹底解説
・系統用蓄電池が稼ぐ時代へ!3つの電力市場を活用する最新ビジネスモデル
・蓄電池の系統連系が早まる新制度 早期連系に向け追加対策 2025年4月に開始!
<連絡先>
株式会社情熱電力
長野県松本市大手2丁目1-4
info@jo-epco.co.jp