税務署が見る「NG通帳」とは?相続税の税務調査で指摘される3つのポイントと今からできる備え

ダイヤモンド・オンラインに「税務署が許さない『NG通帳』とは?税務調査で見られる3つのポイント」という記事があったので調べてみました。
相続税の申告を終えて、ようやくひと段落。そう思っていた1〜2年後に、税務署から突然の連絡が入る——。相続税の税務調査は、まさに「忘れたころにやってくる」といわれています。
しかも国税庁が公表している「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によれば、実地調査が行われた9,512件のうち、実に7,826件(82.3%)で申告漏れなどの非違が指摘されています。8割を超えるという数字は、正直なところ、なかなかインパクトがありますよね。
では、税務署は何を手がかりに調べているのでしょうか。答えは、意外なほど身近なもの——「通帳」です。
「うちは大した財産もないから関係ない」と思われるかもしれません。でも、名義預金や生前贈与のように、本人にまったく悪気がなくても指摘されてしまうケースは少なくありません。今回は、税務署が通帳のどこを見ているのか、そして今からできる備えは何かを、家計の視点で整理してみます。
目次
- 1. なぜ税務署は「通帳」を徹底的に見るのか
- 2. 数字で見る相続税の税務調査のリアル
- 3. 税務調査でチェックされる「NG通帳」3つのパターン
- 4. 生前贈与は「渡しただけ」では認められない
- 5. 事前通知が届いたら?やってはいけないこと
- 6. 通帳の見直しは「家計の棚卸し」でもある
1. なぜ税務署は「通帳」を徹底的に見るのか
ひとことで言えば、「申告書に書かれていない財産がないかを確かめるため」です。
税務調査というと、いきなり調査官が家にやってくるイメージがあるかもしれません。でも実際は、その前段階として税務署内で「机上調査(準備調査)」が行われます。ここでKSK(国税総合管理システム)を使い、亡くなった方の過去の申告内容や所得情報を確認し、必要に応じて金融機関へ照会して得た資料も踏まえながら、「実地調査で何を確認するか」を絞り込んでいくのです。
つまり、調査官が玄関先に立つ時点で、すでに「この資金移動があやしいのでは」という仮説はできあがっている、ということですね。
そして見られるのは、亡くなった方の通帳だけではありません。質問検査権にもとづき、相続人やご親族名義の通帳まで確認されることがあります。ここが、多くの方が「そこまで見るの?」と驚かれるポイントです。
2. 数字で見る相続税の税務調査のリアル
まずは、国税庁が公表している最新データを見てみましょう。
| 項目 | 令和6事務年度 |
|---|---|
| 実地調査の件数 | 9,512件 |
| 申告漏れなどの非違があった件数 | 7,826件 |
| 非違割合 | 82.3% |
| 1件あたりの申告漏れ課税価格 | 3,093万円 |
| 「簡易な接触」の件数 | 21,969件 |
出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
注目したいのは、実地調査の8割超で何らかの指摘が入っているという事実です。そして「簡易な接触」——電話や書面での問い合わせ——は約2万2千件と、実地調査の2倍以上。いきなり調査官が来なくても、確認の連絡が入る可能性は決して低くないということですね。
さらに、申告漏れが見つかった財産のうち、金額として最も大きいのが現金・預貯金等です。土地や建物よりも、まず現金や預金が狙われる。だからこそ通帳が重要になる、というわけです。
3. 税務調査でチェックされる「NG通帳」3つのパターン
では具体的に、通帳のどこが見られるのでしょうか。相続税に精通した税理士が申告前に重点的に確認するのも、この3つだといわれています。
確認する期間に明確な決まりはありませんが、実務上は贈与税の時効(原則6年、隠ぺいや仮装などの不正がある場合は7年)が一つの目安とされることがあります。
(1)使途がわからない、まとまった現金の引き出し
数十万円、数百万円といったまとまった出金や、定期的な現金の引き出しは目に留まりやすいポイントです。
「自宅のリフォーム費用だった」「入院費に充てた」——理由があっても、それを証明できなければ、そのお金がどこへ行ったのかを説明するよう求められることがあります。手元に現金として残っていれば、それも当然、相続財産です。
対策はシンプルで、領収書や契約書を残しておくこと。これに尽きます。
(2)家族の名前だけを借りた「名義預金」
いちばん誤解が多いのが、この名義預金です。
お子さんやお孫さんの名前で預金をしていても、実質的に管理していたのが亡くなった方であれば、「名義は子どもでも、実態は親の財産」と判断され、相続財産に含まれる可能性があります。
疑われやすいのは、たとえばこんな口座です。
・通帳やキャッシュカード、印鑑を親が保管していた
・名義人本人が口座の存在を知らなかった
・入出金がほとんどなく、利息しかついていない
・毎年決まった額が振り込まれ、ただ積み上がっているだけ
「子どものために貯めてあげていた」という善意が、結果的に指摘につながってしまう。切ないですが、実務ではよくあるケースだそうです。
避けるためには、名義人本人が通帳・カード・印鑑を管理し、自分のお金として使っている実態を整えておくことが大切になります。
(3)相続人への資金移動
亡くなった方から相続人へお金が動いていた場合も、重点的に確認されます。
税理士も必要に応じて相続人の口座を確認し、その資金移動が生前贈与なのか、生活費や教育費の援助なのか、それとも一時的に預かっただけなのかを精査します。同じ100万円でも、性質が違えば税務上の扱いはまったく変わってくるからです。
ここでも効いてくるのが「記録」。何のために動かしたお金なのか、あとから説明できる状態にしておきたいですね。
4. 生前贈与は「渡しただけ」では認められない
「毎年きちんと贈与していたから大丈夫」——そう思っていたのに問題になる。これも非常に多いパターンです。
民法上、贈与は「あげます」「もらいます」という当事者双方の合意によって成立する契約です。ですから、口座にお金を振り込んだだけでは、生前贈与として認められるとは限りません。客観的な証拠と、受け取った側の管理実態がなければ、亡くなった方の財産と判断されてしまう可能性があります。
2024年改正で加算期間が最長7年に
さらに知っておきたいのが、税制改正の影響です。相続財産に加算して計算すべき生前贈与の期間が、従来の「3年」から「7年」へと延長されました。
| 相続が発生した時期 | 加算の対象となる期間 |
|---|---|
| 2024年〜2026年(令和6〜8年) | 3年 |
| 2027年〜2030年(令和9〜12年) | 3年を超え7年未満(段階的に延長) |
| 2031年(令和13年)1月1日以降 | 7年(完全施行) |
対象となるのは2024年(令和6年)1月1日以後の贈与で、相続開始前3年より前の4年間に受けた贈与については、その合計額から100万円を控除できる取り扱いがあります。
つまり、これから年を追うごとに「さかのぼって確認される期間」が長くなっていくということです。数年前の資金移動について説明を求められる場面は、今後さらに増えていくと考えられます。
贈与を認めてもらうための3つの実態
生前贈与として認めてもらうために、押さえておきたいのは次の3点です。
・贈与契約書を作成し、双方の合意が書面で残っているか
・受け取った本人が、通帳や印鑑を自分で管理・使用しているか
・贈与された財産が、贈った側の財産と区別して管理されているか
あわせて知っておきたいのが「書面添付制度」(税理士法第33条の2)です。これは、申告書を作るにあたって税理士がどんな資料を確認し、どんな検討をしたのかを書面で明らかにする制度です。
書面添付がある場合、税務署は調査の前に税理士へ意見聴取を行うことがあります。そこで疑問点が解消され、結果的に税務調査に至らないケースや、スムーズな対応につながる場合もあるそうです。生前贈与や通帳の動きに不安がある方は、早めに税理士へ相談するときに、この制度についても聞いてみるとよさそうですね。
5. 事前通知が届いたら?やってはいけないこと
もし税務調査の連絡が来たら。慌てる必要はありませんが、落ち着いた対応が求められます。
税務調査の多くは、いきなり自宅に来るわけではありません。まずは税務署から「事前通知」の電話が入るのが一般的です。時期としては、相続税を申告してから1〜2年後が多いとされています。
通知が届いたら、まずは申告を依頼した税理士へ連絡し、対応方針を相談しましょう。税理士に依頼していない場合でも、相続税に詳しい税理士へ早めに相談することをおすすめします。申告時に使った資料をそろえ、想定される質問について事前に打ち合わせをしておくだけで、当日の心持ちはずいぶん変わります。
そして、絶対にやってはいけないこと。それは、事実と異なる説明をすることと、資料を隠すことです。
通帳を紛失している場合も、正直にその旨を伝えたうえで、必要に応じて金融機関から取引履歴を取り寄せる。資金移動について聞かれたら、その経緯と理由を事実にもとづいて説明する。その場で答えにくいことは、あいまいに答えるのではなく「確認したうえで回答します」と伝える。これが、いちばん堅実な向き合い方です。
6. 通帳の見直しは「家計の棚卸し」でもある
ここまで相続税の話をしてきましたが、実はこの「通帳を見直す」という作業、相続とは関係なく家計にとって大きな意味があります。
私たち情熱電力は電力小売の会社として、長野県内のご家庭や事業者さまの電気料金と向き合っています。その中でよく感じるのが、「毎月引き落とされているけれど、中身をちゃんと見たことがない」というお金が、意外と多いということです。
・使っていないサブスクの月額料金
・見直したことのない保険料
・契約したまま何年も経っている通信費や電気料金
通帳を1年分さかのぼって眺めてみると、こうした「なんとなく払い続けているお金」がはっきり見えてきます。相続の備えとしての通帳チェックが、そのまま今の暮らしの固定費の棚卸しにもなる。一石二鳥だと思いませんか。
大切なのは、お金の流れを「説明できる状態」にしておくこと。税務署に対してもそうですし、何より自分自身とご家族にとって、そのほうが安心です。
まとめ
相続税の税務調査は、申告から1〜2年後に「忘れたころ」にやってきます。国税庁の令和6事務年度のデータでは、実地調査9,512件のうち82.3%で申告漏れなどが指摘され、1件あたりの申告漏れ課税価格は3,093万円。決して他人事ではない数字です。
そのカギを握るのが「通帳」でした。税務署が特に見るのは、使途がわからないまとまった現金の引き出し、家族の名前だけを借りた名義預金、そして相続人への資金移動という3つのポイント。さらに2024年の改正で生前贈与の加算期間が最長7年へと延長され、さかのぼって確認される範囲は年々広がっていきます。
備えとしてできることは、実はシンプルです。お金を動かしたら理由と証拠を残す。贈与するなら契約書を作り、受け取った本人が管理する。そして不安があれば、早めに専門家へ相談する。
「うちは大丈夫」と思っていても、悪気なく指摘されてしまうのが名義預金や生前贈与の怖いところです。この機会に、ご家庭の通帳を一度ゆっくり眺めてみてはいかがでしょうか。ついでに毎月の固定費もチェックできれば、なおよしです。
※本記事は一般的な情報の整理です。個別の判断については税理士などの専門家にご相談ください。
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