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2025.10.18 Sat

2042年、太陽光パネル廃棄がピークに!リサイクル義務化は後退?発電事業者が今知るべき未来と課題

 
太陽光パネルリサイクル
 
先日もお伝えした太陽光発電パネルのリサイクルに関する気になる記事が日本経済新聞に掲載されていましたので、改めて調べてみました。脱炭素社会の切り札として普及が進む太陽光発電ですが、その裏側で「使用済みパネルの将来」が大きな課題として浮かび上がっています。政府はこれまでメーカーの費用負担によるリサイクルの「義務化」を検討してきましたが、どうやらその道のりは平坦ではないようです。新たに「所有者の努力義務」という案が浮上し、実効性を懸念する声も上がっています。2030年代以降に予測される“大量廃棄時代”を前に、私たち太陽光発電ビジネスに携わる者は、この問題をどう捉え、何を準備すべきなのでしょうか。最新のデータと国の動向を交えながら、クリーンエネルギーの未来を左右するこの重要なトピックを深掘りします。
 


 
目前に迫る「2042年問題」- 太陽光パネルが大量廃棄の時代へ
2012年に始まった固定価格買い取り制度(FIT)を追い風に、日本の太陽光発電導入量は飛躍的に増加しました。しかし、クリーンな電力供給という恩恵の裏側で、私たちは新たな課題に直面しています。それが、使用済み太陽光パネルの大量廃棄問題です。
環境省と経済産業省の推計によると、パネルの排出量は今後急速に増加します。
 
・2025年:8.2万トン
・2030年:13.1万トン
・2035年:26.9万トン
・2040年:38.0万トン
・2042年(ピーク時):最大47.2万トン
(注)環境省と経産省の推計から作成。
ピーク時の47.2万トンという量は、2022年度の自動車リサイクル実績(約46万トン)とほぼ同水準に達するほどのインパクトです。銀や銅といった有用な資源を含むパネルを全て埋め立ててしまえば、資源の損失だけでなく、最終処分場の逼迫という深刻な事態を招きかねません。
 


 
なぜ進まない?リサイクル義務化への険しい道のり
この問題に対し、政府は当初、家電や自動車のようにメーカーや輸入業者にリサイクル費用の負担を義務付ける新たな法制度を検討していました。専門業者による確実なリサイクルを目指す、いわば「製造者責任」を問う仕組みです。
しかし、この制度案は法案の事前審査段階で「待った」がかかりました。家電などと違い、太陽光パネルは寿命が20~30年と長く、海外メーカーも多数参入しています。いざ廃棄する頃にはメーカーが事業を撤退・倒産している可能性も考慮すべき、という指摘です。「太陽光パネルだけメーカー負担とする合理的な説明が困難」として、政府は制度の再検討を迫られています。
そこで新たに浮上しているのが、リサイクルを「所有者」の「努力義務」とする案です。しかし、この案には強制力がなく、「結局リサイクルが進まないのではないか」という実効性への懸念が強く残ります。
 


 
太陽光パネルリサイクルが直面する「3つの壁」
法整備の遅れに加え、現場レベルでもリサイクルを阻む大きな壁が存在します。
 
1. コストの壁:埋め立ての数倍かかる費用
経済産業省のデータによると、パネルを廃棄処分(中間処理+埋め立て)する場合の費用は1kWあたり2,100円(中央値)です。
一方、環境省の調査では、リサイクルにかかる費用は1kWあたり8,000円~12,000円。埋め立てに比べて4~6倍ものコストがかかるのが現状で、これでは費用が安い埋め立て処分に流れてしまうのは避けられません。
 
2. インフラの壁:12道府県にリサイクル施設がない
そもそも、使用済みパネルを受け入れる体制が全国的に整っていません。2024年時点で、太陽光パネルのリサイクル施設が12の道府県に存在しないことが明らかになっています。全国の年間処理能力も約11万トン程度と、将来の大量排出量には到底追いつかないのが実情です。
(注)環境省のアンケートから作成、24年時点
 
3. 意識の壁:低いリサイクル率
こうした状況を反映し、2022年の調査では、回収された使用済み太陽光パネルのリサイクル率は54%に留まっています。これは自動車の9割超、家電の7~9割というリサイクル率と比較すると、著しく低い水準です。
 
富山大学の神山智美教授は「強制力のある規制法が本来は望ましい。政策的にリサイクルを進めなければ、環境配慮型の製品設計やリサイクル技術の向上にはつながらない」と警鐘を鳴らしており、実効性のある法制度の必要性を訴えています。
 


 
まとめ
太陽光発電は、持続可能な社会を実現するために不可欠なエネルギー源です。しかし、その持続可能性は、発電時だけでなく、使用済みパネルの処理まで含めて初めて確立されるものです。
現在、リサイクル義務化の議論は難航しており、「努力義務」という後退案も囁かれています。しかし、それではコストやインフラの壁を乗り越え、2042年にピークを迎える大量廃棄時代に備えることは困難でしょう。
私たち太陽光発電ビジネスに携わる者は、この問題を「まだ先のこと」と捉えるのではなく、自社の事業計画に廃棄・リサイクルコストを織り込み、お客様への適切な情報提供を心がける必要があります。国の法整備の動向を注視しつつ、業界全体でリサイクル技術の向上やコストダウンに取り組んでいくことが、太陽光発電の真の価値を守ることに繋がるはずです。
 


 
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情熱電力では、地域分散型エネルギーの普及を目指すとともに、その「未来」に対する責任も重要だと考えております。
太陽光発電設備の導入をご検討されるお客様には、発電効率や初期費用だけでなく、将来のメンテナンス、そして使用済みパネルの処理方法に至るまで、長期的な視点に立ったコンサルティングを心がけております。
今回のブログで取り上げたリサイクル費用や法制度の動向など、ご不安な点がございましたら、専門のスタッフが丁寧にご説明いたします。未来まで見据えた安心の太陽光発電は、ぜひ情熱電力にご相談ください。
 
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それではまた!!
 
この記事に関連するページ
・環境省:「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン
・経済産業省 資源エネルギー庁:「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを確保するための制度
 
この記事に関連する情熱電力の過去記事ページ
太陽光パネルのリサイクル義務化を政府が断念!迫る大量廃棄時代、未来は大丈夫か?