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2025.07.28 Mon

ペロブスカイト太陽電池は日本の切り札?政府の支援策に潜む「意外な落とし穴」とは

 
ペロブスカイト太陽光電池フィルム
 
日経エネルギーNEXTに、次世代エネルギーとして期待されるペロブスカイト太陽電池の開発について、少し気になる記事が掲載されていましたので、その内容を皆様と共有したいと思います。
「軽くて、曲がる」という夢のような特徴を持つペロブスカイト太陽電池。日本でも実用化に向けた技術開発が国を挙げて進められており、私たちの未来を明るく照らすエネルギー源として大きな期待が寄せられています。
しかし、その裏で「今のままでは、かつての失敗を繰り返すのではないか?」という専門家からの警鐘が鳴らされていることは、あまり知られていません。かつて世界をリードした日本の太陽電池産業がなぜ失速したのか、その歴史を振り返りながら、ペロブスカイト太陽電池が本当に成功するための課題と、政府の支援策の「意外な落とし穴」について掘り下げてみます。この記事が、未来のエネルギーについて考える一つのきっかけになれば幸いです。
 
この記事の元記事 日経エネルギーNEXT:このままではペロブスカイトも危ない、負けを呼ぶ補助金政策に見直しを(https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00021/062500005/?P=1)
 


 
目次
1.はじめに:期待高まるペロブスカイト太陽電池
2.日本の太陽電池が直面した過去の失敗「PV2030」とは?
3.なぜ失速したのか?勝敗を分けた「スワンソンの法則」
4.デジャブ?ペロブスカイト開発に潜む現在の懸念点
  課題①:コスト削減の手段が「技術開発」に偏っている?
  課題②:効果が限定的な「社会実装」へのインセンティブ
  課題③:開発スピードを遅らせる「牛歩戦術」のリスク
5.本当に必要な支援とは?「量産化の壁」を越えるために
6.まとめ:日本のペロブスカイト太陽電池の未来のために
 


 
1. はじめに:期待高まるペロブスカイト太陽電池
こんにちは!情熱電力です。
次世代のクリーンエネルギーとして、今、世界中から熱い視線が注がれている「ペロブスカイト太陽電池」。薄くて軽く、曲げられるという特性から、これまで設置が難しかったビルの壁面や、さらには衣類やリュックサックなど、様々な場所での活躍が期待されています。
日本でも経済産業省やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主導する「グリーンイノベーション基金事業」などを通じて、実用化に向けた研究開発が活発に行われています。まさに未来のエネルギーの主役候補と言えるでしょう。
しかし、この期待の裏で、専門家からは「今の日本の支援策では、過去の失敗を繰り返しかねない」という厳しい指摘も出ています。今回は、そうした視点を提供する記事を元に、日本のペロブスカイト太陽電池開発が抱える課題について考えてみたいと思います。
 
NEDO:グリーンイノベーション基金(https://green-innovation.nedo.go.jp/
 


 
2. 日本の太陽電池が直面した過去の失敗「PV2030」とは?
元記事によると、現在の懸念を理解するためには、まず2000年代の日本の太陽光発電政策「PV2030」を知る必要があります。
この政策は、太陽電池の「変換効率」を高める技術革新によって、発電コストを劇的に下げることを目標としていました。具体的には、2030年までに発電コストを7円/kWhにするという野心的な計画でした。
この方針のもと、日本のメーカーは世界最高レベルの変換効率を持つ太陽電池の開発に成功します。しかし、その技術が市場を席巻することはありませんでした。非常に高性能である反面、製造コストが高くなりすぎてしまい、結果として「博物館に飾られる」ような技術になってしまったと記事は指摘しています。
 


 
3. なぜ失速したのか?勝敗を分けた「スワンソンの法則」
日本のメーカーが変換効率の向上に注力している間に、世界の市場では何が起きていたのでしょうか。
ここで登場するのが「スワンソンの法則」です。これは、「太陽電池の生産量が2倍になるごとに、製造コストが約20%低下する」という経験則です。
2010年頃から、中国メーカーはこの法則を証明するかのように、大規模な量産投資に踏み切りました。圧倒的な生産量によって太陽光パネルの価格を劇的に下げ、世界市場を席巻。変換効率の向上も後から追い付き、今やコストと性能の両面で市場のリーダーとなっています。
一方で、高性能化を優先し、量産投資で後れを取った多くの日本メーカーは、価格競争に勝てず、太陽光パネルの製造から撤退せざるを得なくなりました。元記事は、この「量産効果の巨大さへの理解不足」が、PV2030の決定的な失敗要因だったと分析しています。
 


 
4. デジャブ?ペロブスカイト開発に潜む現在の懸念点
そして今、ペロブスカイト太陽電池の開発プロジェクトにも、この過去の失敗と同じ轍を踏むのではないか、という懸念が示されています。
 
課題①:コスト削減の手段が「技術開発」に偏っている?
現在の「グリーンイノベーション基金事業」でも、製造コストや発電コストの低減目標が掲げられています。しかし、その実現手段が、またしても「技術開発」に重点が置かれているようです。
元記事の筆者は、「量産効果なしに技術刷新だけでコストを下げるのは、禅問答のような無理難題に近い」と指摘します。実際には、ペロブスカイト太陽電池のコストを押し上げている高性能フィルムなどの部材も、量産によって大幅に価格が下がると考えられています。
技術開発を待つのではなく、今ある技術でいかに早く量産体制を築くか。中国メーカーはすでにGW(ギガワット)級の大規模量産を計画しており、このままでは再び日本は市場から取り残される危険性があります。
 
課題②:効果が限定的な「社会実装」へのインセンティブ
もちろん、現在の制度では「社会実装(=製品化・事業化)」を促す仕組みも用意されています。例えば、社会実装に成功すれば補助金の一部がボーナスとして支給される、といったものです。
しかし、その額は、数十億〜数百億円かかると言われる量産工場の建設リスクに比べると「雀の涙」であり、企業が巨大なリスクを取って事業化に踏み出すほどの動機付けにはなっていない、と記事は分析しています。
 
課題③:開発スピードを遅らせる「牛歩戦術」のリスク
補助金プロジェクトには、もう一つの弊害が指摘されています。それは、決められた期間内に目標を達成すれば良いため、企業が開発ペースを意図的に緩めてしまう「牛歩戦術」を招きかねない点です。早く目標を達成してしまうと、その分もらえる補助金が減ってしまう可能性があるからです。
のんびり開発している間に、補助金に頼らない海外メーカーに追い越されてしまう。こうした事例は、多くの産業で繰り返されてきた光景です。
 


 
5. 本当に必要な支援とは?「量産化の壁」を越えるために
では、どうすればよいのでしょうか。
元記事の筆者は、国が主導すべきは「技術開発」への補助ではなく、企業が「量産」に踏み切る際のリスクを低減するための支援であると主張しています。
 
具体的には、
・量産工場の建設に対する直接的な補助金
・大規模な資金調達の支援
などです。研究開発の成果を事業化するまでには「死の谷」と呼ばれる困難な道のりがあります。この谷を越えさせるための、より直接的で大規模な支援こそが、産業を育てるために不可欠だという提言です。
 


 
まとめ
今回は、期待のペロブスカイト太陽電池が直面する、少し厳しい現実と課題についてご紹介しました。
・かつて日本の太陽電池は「変換効率」を重視しすぎ、「量産によるコストダウン」で海外に敗れた。
・現在のペロブスカイト開発支援策も、技術開発に偏っており、量産化への支援が不十分という指摘がある。
・真に産業を育てるためには、技術開発だけでなく、企業が量産に踏み切るリスクを国が支援することが重要。
もちろん、優れた技術開発は日本の強みであり、非常に重要です。しかし、それをいかにスピーディーに市場に届け、ビジネスとして成功させるか。その「戦略」が今、問われています。ペロブスカイト太陽電池が日本の真の切り札となるよう、今後の動向を注意深く見守っていきたいですね。
 


 
情熱電力からのお知らせ
情熱電力では、ペロブスカイト太陽電池をはじめとする次世代エネルギーの最新動向を常に注視し、未来の電力供給のあり方を追求しています。
今回ご紹介したように、新しい技術が私たちの生活に届くまでには、様々な課題や議論があります。私たちは、こうした情報を皆様と共有しながら、エネルギーの未来を共に考えていきたいと願っています。
ペロブスカイト太陽電池が普及した未来では、より多様で、環境にやさしい電力プランが生まれることでしょう。情熱電力は、その未来を見据え、お客様一人ひとりに常に最適なエネルギーソリューションをご提供できるよう、これからも挑戦を続けてまいります。
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