2025年冬の電力需給「節電要請なし」!しかし2026年夏の東京は「非常に厳しい」見通し

経済産業省のホームページに「2025年度冬季の電力需給対策を取りまとめ」が上がっていたので調べてまとめてみました。2025年の夏は、統計開始以来で最も暑い夏となりましたが、幸い電力供給はおおむね安定的に推移しました。さて、これから迎える今冬の見通しですが、結論から言うと、安定供給に最低限必要な予備率3%は全てのエリアで確保できる見通しです。そのため、政府による全国一律の「節電要請」は実施されないことが決まりました。ひとまず安心ですが、資料を読み解くと、本当に注目すべきは「2026年(再来年)の夏」の見通しでした。特に東京エリアでは「予備率0.9%」という、非常に厳しい予測が示されています。これは何を意味するのか、詳しく解説します。
2025年冬の電力需給見通し:「節電要請」は見送り
まず、この冬の電力需給についてです。 経済産業省の発表によると、2025年度冬季は、※10年に一度の厳しい寒さ(厳寒H1)を想定した場合でも、全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しです。
<2025年度冬季 最小予備率(厳気象H1)>
・北海道:16.5% (12月)
・東北:4.8% (1月・2月)
・東京:4.8% (1月・2月)
・中部:8.5% (1月・2月)
・北陸:8.5% (1月・2月)
・関西:8.5% (1月・2月)
・中国:8.3% (1月・2月)
・四国:19.1% (1月・2月)
・九州:8.5% (1月・2月)
・沖縄:40.5% (12月)
この結果を踏まえ、昨年度に引き続き、冬季の全期間を通じた事前の節電要請は実施しないことになりました。
ただし「予断を許さない」状況は続く
「節電要請がないなら安心」と思いがちですが、資料では「電力需給は予断を許さない状況」とも指摘されています。その理由は以下の通りです。
・燃料リスク: 火力発電の主燃料であるLNG(液化天然ガス)の在庫が、10月26日時点で過去5年平均を下回っています。国際情勢の変化によっては、燃料調達に影響が出る可能性があります。2021年1月にはLNGの在庫不足により電力卸価格が高騰しました。
・設備リスク: 供給力には、運転開始から長期間が経過した老朽火力発電所も含まれています。2024年度冬季(昨冬)の実績では、想定(2.6%)を上回る計画外停止が発生した日もありました。
・気象リスク: あくまで「10年に一度」の寒さを想定した見通しであり、それを超える異常気象が発生しないとは限りません。
このため政府は、発電事業者に対する保安管理の徹底を要請するなど 、引き続き供給力対策を講じるとしています。
【最重要】2026年・夏の需給見通しが「非常に厳しい」
今回発表された資料の中で最も注目すべきは、2026年度(再来年)の電力需給見通し(速報値)です。 冬季は全エリアで予備率5%以上を確保できる見通しですが、夏季、特に東京エリアの需給が極めて厳しい状況となっています。
<2026年度夏季 最小予備率(厳気象H1・速報値)>※H1:10年に一度
東京エリア: 7月 2.1% / 8月 0.9%
予備率「0.9%」は、安定供給の目安である3%を大きく下回る数値です。これは、需要(電力消費)が供給(発電)をほぼ上回ることを意味し、大規模な停電のリスクが非常に高い状態を示しています。
なぜ東京エリアだけが厳しいのか?
需給バランスが約400万kW相当も悪化する見通しですが、その主な要因は「供給力の減少」と「需要の増加」です。
1.供給力の減少(-約256万kW) 複数の大型火力発電所(約200万kW)が年間を通じた長期の補修停止に入る予定であることに加え、他の火力発電所(約20万kW)の休止などが重なるためです。
2.需要の増加(+約125万kW) 東京エリア単独でのシミュレーションを行った結果、エリア外からの電力融通を最大まで受けても需要を賄えない可能性が示され、2025年度の試算より需要が大きく評価されています。
2026年夏に向けた対策
もちろん、この「0.9%」という見通しをそのまま放置するわけではありません。 政府は、2026年度夏季に最低限必要な予備率3%を確保するため、直ちに「kW公募」を実施し、120万kWの追加供給力を確保する方針を示しました。
これは、休止している発電所を再稼働させたり、企業の自家発電設備を活用したりして、緊急的に供給力(kW)を調達する仕組みです。
「電源移行の過渡期」が続く
今回の見通しは、日本の電力事情が「電源移行の過渡期」にあることを示しています。 設備の老朽化などで火力発電所の休廃止が進む一方、新しいLNG火力や脱炭素電源が本格稼働するのは2029年以降となる見込みです。 2030年代初頭にかけては、今後もこうした需給の綱渡りが続く可能性があることを、私たちも認識しておく必要があります。
まとめ
今回の経済産業省の発表をまとめると、以下の3点がポイントです。
1.2025年冬の電力需給は、予備率3%以上を確保。政府による一律の「節電要請」は実施されません。
2.ただし、燃料や設備の不安要素は残っており、自主的な省エネは引き続き重要です。
3.2026年夏(再来年)の東京エリアは、予備率0.9% と非常に厳しい見通しです。
4.対策として、政府は120万kWの追加供給力を公募で確保し、電力危機を回避する方針です。
電力の安定供給は当たり前のものではなく、常に繊細なバランスの上に成り立っています。この冬はひとまず安心ですが、来夏以降の動向には引き続き注意が必要です。
情熱電力からのお知らせ
いつも情熱電力をご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回の政府発表で示されたように、日本の電力需給は(特に首都圏において)「電源移行の過渡期」にあり、今後も綱渡りの状況が続く見通しです。
2025年冬は「節電要請なし」となりましたが、2026年夏には東京エリアで深刻な供給力不足が予測されるなど、決して楽観できる状況ではありません。
情熱電力は、こうした状況下でもお客様に安定したエネルギーをお届けし続けるため、多様な電源ポートフォリオの確保に全力を尽くしてまいります。
同時に、私たちはお客様と共に「賢いエネルギー利用」を推進することが、この過渡期を乗り越える鍵だと信じています。
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