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2025.07.26 Sat

本当に危ない?太陽光発電へのサイバー攻撃で大停電!?その噂、技術的に検証します!

 
サイバー攻撃
 
スマートジャパンさんに「太陽光発電へのサイバー攻撃で大規模停電は可能?」という気になる記事があったので、私たち情熱電力もその真偽を調べてみました。「海外製のパワコンには、秘密の通信機能が隠されているのでは?」「サイバー攻撃で日本中が大停電に陥るかもしれない…」そんな不安を耳にすることがあります。太陽光発電事業に携わる方なら、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。この記事では、そうした漠然とした不安の正体を、技術的な視点から一つひとつ丁寧に解説していきます。巷で囁かれる噂は本当なのか、そして、私たちが本当に備えるべきセキュリティリスクとは何なのか。専門的な内容を分かりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧いただき、安心・安全な発電所運営にお役立てください。
この記事では、実際にあり得るリスクと“誤解されやすいポイント”を整理。特に、太陽光発電に関わる事業者や設備管理者が知っておくべきセキュリティの本質について、最新の技術的視点からわかりやすく解説します。誤った情報に振り回されないためにも、実態に即した知識を身につけることが重要です。
 


 
目次
1.パワコンに「隠された通信機能」は存在する?
  結論:隠し機能は必ず見つけられる
2.サイバー攻撃で「大規模停電」は本当に起こせるのか?
  停電に必要な発電停止量を試算
  大規模停電の実現可能性が低い理由
3.本当に警戒すべき3つのサイバーリスクとは
4.まとめ:過度に恐れず、正しく備えることが重要
 


 
1.パワコンに「隠された通信機能」は存在する?
「海外製の機器には、仕様書にない通信機能が隠されている」という噂、気になりますよね。
技術的に言えば、半導体の設計段階で、仕様に記されていないWi-FiやBluetooth機能を組み込むことは“理論上は可能”とされています。しかし、重要なのは、どんなに巧妙に隠された通信機能でも、電波を発する限り必ず発見できるという事実です。
外部の電波を完全に遮断する「電波暗室」という専門施設で測定すれば、機器が発するあらゆる電波を精密に分析できます。
・どんな周波数の電波か
・どれくらいの強さか
・どんなパターンで通信しているか
これらは全て明らかになります。日本国内で販売される通信機器は電波法に基づく認証が必要で、その段階での検出も可能。結果として、意図的に隠された通信機能は国内市場で稼働する可能性は極めて低いといえます。
 
※ 電波暗室とは、外部からの電波の影響を受けず、かつ外部に電波を漏らさないようにシールドされた特殊な実験室のこと。
電磁波や電波に関する様々な実験を行うことができ、特に電子機器の電磁ノイズの評価や、アンテナや無線機器の試験に用いられます。
 


 
2.サイバー攻撃で「大規模停電」は本当に起こせるのか?
次に、「サイバー攻撃による大規模停電」のシナリオについて、具体的な数字で検証してみましょう。
 
停電に必要な発電停止量を試算
元記事で例として挙げられている東京電力管内では、夏のピーク時の電力需要が約5,000万kWです。電力の安定供給には通常10%程度の予備率が必要とされているため、意図的に停電を引き起こすには、この予備力である約500万kW以上の発電設備を同時に停止させる必要があります。
 
大規模停電の実現可能性が低い理由
この「500万kW以上の設備を同時に停止させる」というミッションは、太陽光発電へのサイバー攻撃では極めて困難です。その理由は以下の通りです。
・時間帯と天候の制約: 太陽光発電が電力供給の主力となるのは「よく晴れた日の日中」に限られます。
・メーカーの多様性: 全国の発電所が、同じメーカーの同じ機器を使っているわけではありません。攻撃者は多種多様なシステムに対応する必要があります。
・攻撃の検知: 一部の発電所で異常な停止が起これば、即座に検知され、電力会社や他の事業者が対策を講じます。短時間で大規模な攻撃を成功させるのは現実的ではありません。
これらの要因を考慮すると、太陽光発電へのサイバー攻撃による大規模停電の可能性は、限りなく低いと言えるでしょう。
 


 
3.本当に警戒すべき3つのサイバーリスクとは
大規模停電の心配は少ないとしても、セキュリティリスクがゼロというわけではありません。私たちが本当に警戒すべきなのは、より現実的な以下の3つのリスクです。
 
① 個別の発電所への攻撃
特定の発電所を狙い、発電を停止させたり、発電量データを改ざんしたりする攻撃です。事業者にとっては直接的な売電損失につながります。
 
② データの窃取
発電所の発電データや設備情報などが盗まれるリスクです。これらの情報が競合他社の手に渡る可能性も否定できません。
 
③ ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃
発電所のシステムを乗っ取ってロックし、元に戻すことと引き換えに金銭を要求する攻撃です。これは太陽光発電に限らず、あらゆる業界で被害が拡大している深刻な脅威です。
 
これらのリスクは、「海外製だから危険」といった単純な話ではなく、インターネットに接続する全てのITシステムが共通して抱える課題です。重要なのは、ハードウェアの問題、通信の問題、そして日々の運用管理の問題を切り分け、それぞれに適切な対策を講じることです。
 


 
4.まとめ
今回は、太陽光発電のセキュリティに関する噂と真実を解説しました。
・パワコンの「隠された通信機能」は、電波を発する限り必ず検出可能であり、過度に恐れる必要はない。
・サイバー攻撃による「大規模停電」のシナリオは、様々な制約から実現可能性が極めて低い。
・本当に警戒すべきは、ランサムウェアやデータ窃取など、個別発電所を狙った現実的なサイバー攻撃である。
漠然とした噂に惑わされるのではなく、正しい知識を持って、自社の発電所を守るための具体的な対策を進めていくことが何よりも重要です。
 


 
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それではまた!!
 
この記事に関連するページ(リンク)
・経済産業省 電力分野におけるサイバーセキュリティについて(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/073_07_00.pdf
・スマートジャパン(ITmedia)連載:海外製パワコンは本当に危険なのか?(2)(https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2507/11/news036.html