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2025.06.10 Tue

ペロブスカイトも視野に再エネ加速 太陽光導入率66%止まり、3省が示した突破口と残課題

 
Businessman invests in electric power stocks, on a background with network antennas and wind turbines.
 
スマートジャパン(ITmedia)に、今後の電力政策を占う上で非常に重要な記事が掲載されていました。資源エネルギー庁が開催した「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第73回)」にて、環境省・国土交通省・農林水産省の3省が、2030年の太陽光発電導入目標に向けた進捗と課題を報告した内容です。この記事を参考に、情熱電力では各省の施策を整理し、今後の方向性を読み解くブログを作成しました。
 
元記事:
スマートジャパン(ITmedia):2030年目標へ残された大きなギャップ――環境・国交・農水省が目指す再エネ普及策の現状
 
政府が掲げる2030年度のエネルギーミックスでは、太陽光発電量を1,290〜1,460億kWh(設備容量1億0350〜1億1760万kW)へと拡大することが目標です。しかし、2024年12月時点の導入量は7,560万kWにとどまり、目標との差はおよそ3,000万kW。これは国内で流通しているパネルの枚数に換算すると約6,000万枚分に相当する大きなギャップです。
こうした中で、各省は〈公共施設6 GW〉〈地域共生型4.1 GW〉〈住宅3.5 GW〉〈空港2.3 GW〉といった分野別の導入計画を発表し、その進捗状況と課題を共有しました。また、PPA(電力購入契約)における与信リスクや、建売住宅での導入停滞といった制度面・実務面の壁も浮き彫りとなっています。本記事では、スマートジャパンの報道内容を基に、2030年目標達成に向けた現状と論点を解説します。
 


 

3)目次
1.太陽光導入目標と現状ギャップ
2.公共部門による率先導入(6 GW)
3.地域共生型プロジェクトと脱炭素先行地域
4.企業の自家消費拡大とPPA課題
5.住宅トップランナー制度とZEHの強化
6.インフラ(空港等)を活用した再エネ拠点化
2040年エネルギー見通しとペロブスカイトへの期待
 


 
1. 太陽光導入目標と現状ギャップ
政府の第6次エネルギー基本計画では、2030年度までに太陽光発電量を1,290〜1,460 億kWh(電源構成14〜16%)へ、設備容量を1億0350〜1億1760 万kWへ拡大する方針です。
これに対し、2024年12月末時点の国内累計導入量は7560 万kWにとどまっています。
低めの容量目標(1億0350 万kW)に照らすと達成率は約73%、不足分は2790 万kWです。上限目標(1億1760 万kW)に対しては達成率約64%、不足は4200 万kWとなります。
 
残り6年間(2025〜2030年度)でギャップを解消するには、毎年およそ465〜700 万kWを積み増す計算です。これは、2023年度の年間新設量(約450 万kW前後と推計)を下回らないペースでの継続拡大が不可欠であり、住宅・公共施設・企業の自家消費などあらゆるセグメントで導入速度の底上げが求められます。
 


 
2. 公共部門による率先導入(6 GW)
環境省は、国および地方公共団体が保有する庁舎や学校、廃棄物処理施設などの公共施設において、2030年度までに累計6 GW(6,000 MW)の太陽光発電設備を導入する目標を掲げています 。
導入件数ベースで見ると、2030年度までに2,500施設(全体の62.5%)、2035年度までに4,000施設(100%)の設置を完了する計画となっています。2024年度時点での導入実績は約1,500施設・設備容量1.1 GWにとどまり、目標達成に向けては今後さらに年間500〜600件のペースで導入を加速させる必要があります。
また、国主導の「脱炭素先行地域」に選定された自治体では、公共施設を中心とした地域一体のエネルギー転換が期待されており、施設単体での設置だけでなく地域マイクログリッドや地域新電力との連携といった広域的な活用も視野に入っています。
ただし、導入が進んでいない自治体では、予算の確保や調達のノウハウ不足、老朽施設での設置困難といった課題も指摘されており、国による技術支援や財政措置の継続的な強化が求められます。
 


 
3. 地域共生型プロジェクトと脱炭素先行地域
地域との調和を重視する「地域共生型再エネ」は、地元の合意形成や地域還元を条件とする太陽光発電プロジェクトを指します。政府はこの枠組みで累計4.1 GWの導入を目標としており、そのうち2024年度末時点での導入実績は約1.1 GWにとどまっています 。
この地域共生型再エネの一環として、環境省が進めているのが「脱炭素先行地域」の選定です。これは地域レベルで再エネ導入を加速し、全国展開のモデルを創出する取り組みで、2024年6月時点で全国88地域が選ばれています。これらの地域では、公共施設や民間建築物への太陽光設備の導入が進められており、既に約0.18 GWの導入が完了、将来的に約1 GWの導入が計画されています 。
一方で、実際の導入現場では、住民との合意形成、土地利用に関する規制、電力系統への接続制約などが障壁となることも多く、特に中山間地域や住宅密集地では慎重な設計が求められます。また、地元自治体の再エネ導入体制や事業者との調整力が成功の鍵となっており、導入支援体制の整備が今後の焦点となっています。
 


 
4. 企業の自家消費拡大とPPA課題
企業による太陽光発電の自家消費は、再エネの主力化に向けた重要な柱のひとつです。環境省が補助金事業などを通じて把握している自家消費型太陽光の導入量は約0.65 GWであり、これに含まれない未把握分を含めると、最大3.2 GW程度に達する可能性があるとされています 。
特に近年は、設備を所有せず電力だけを利用するオンサイトPPA(Power Purchase Agreement)の普及が進んでいますが、企業によるPPAの導入にはいくつかの障壁が存在します。代表的なものが「与信リスク」です。PPAは10〜20年といった長期契約を前提とするため、信用力の乏しい中小企業では、第三者からの設備投資を受けにくい状況が続いています。
また、PPA導入においては、屋根の耐荷重や電気設備の改修、契約形態の理解不足といった実務上の課題も存在します。特に中小事業者においては、再エネ導入に関するノウハウが乏しく、導入を支援する専門家や自治体の存在が重要になります。
こうした背景を受けて、環境省や経済産業省はGXリーグやグリーントランスフォーメーション(GX)推進の枠組みの中で、サプライチェーン全体での排出削減目標設定や、金融機関との連携を強化しています。今後は、与信支援の仕組みづくりとともに、企業の電力調達を「環境価値」ごと見直す動きが加速すると見込まれます。
 


 
5. 住宅トップランナー制度とZEHの強化
住宅分野では、太陽光発電の導入促進に向けて「トップランナー制度」の強化とZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が重要な政策手段となっています。国土交通省は、2030年度までに新築戸建住宅の60%に太陽光を搭載することを目標に掲げており、2050年度には合理的に設置可能なすべての住宅での導入を目指すとしています。
2023年度時点では、新築戸建住宅の太陽光搭載率は約36.5%にとどまっています。また、住宅の供給形態によって導入率に大きな差があり、注文住宅では比較的進んでいるものの、建売住宅や分譲マンションでは導入が進みにくい傾向が見られます。
これを受けて国土交通省は、2027年度を目標に「住宅トップランナー制度」を改正し、注文住宅の87.5%、建売住宅の37.5%が太陽光発電を搭載する水準を目指すとしています。また、ZEHの導入を促進するための補助金制度や、建築主・事業者に対する技術支援も進められています。
ただし、住宅分野の課題としては、導入コスト・回収期間の長さ、屋根形状の制約、設置後のメンテナンスへの不安などがあり、消費者側の理解と納得を得る仕組みづくりが引き続き求められます。また、自治体レベルでの義務化の動き(例:東京都)との整合性も論点のひとつとなっています。
 


 
6. インフラ(空港等)を活用した再エネ拠点化
国土交通省は、空港や港湾、高速道路などの社会インフラを活用した再生可能エネルギーの導入を進めています。なかでも空港は、敷地面積が広く、施設屋根も大規模であることから、太陽光発電との親和性が高く、全国で累計2.3 GW(2,300 MW)の太陽光設備導入を目指しています。
しかし、2024年度時点で空港ごとに策定済みの再エネ推進計画に基づく導入見込みは約0.32 GWにとどまっており、全体目標の14%前後に過ぎません。導入が進まない背景には、航空機の安全運航に支障をきたさないよう設置エリアや反射光、機器干渉などへの配慮が求められる点や、施設の所有・管理主体が多岐にわたるため、関係者間の調整が複雑化している点が挙げられます。
また、再エネ導入に際しては初期投資が大きく、採算性の見通しや長期安定運用に対する懸念も根強いため、民間資金の活用や官民連携スキームの設計が課題となっています。
今後は、空港を単なる発電拠点とするのではなく、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化や蓄電池・水素との組み合わせによる「スマート空港」構想も併せて進めることで、再エネと地域経済・モビリティを統合する新しいモデル構築が期待されます。
 


 
7. 2040年エネルギー見通しとペロブスカイトへの期待
政府が2024年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、2040年度における総発電電力量を1.1~1.2兆kWhと見込み、そのうち太陽光発電が23~29%を占めるという試算を提示しています。これは、太陽光発電だけで約3,000億kWh規模の供給を担うという意味で、2030年度目標の約2倍に相当する水準です。
こうした将来見通しに対し、現在主力となっている結晶シリコン型の太陽光パネルのみでは対応が難しいとの懸念も高まっています。とくに都市部や既存建築物では、設置スペースや荷重の制約が導入のボトルネックとなっており、新たな選択肢として注目されているのがペロブスカイト太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、既存の建材や窓面にも貼り付け可能な次世代型の発電技術です。国内では複数の企業や研究機関が2025年度以降の量産開始を目指して実証事業を進めており、住宅・ビル・工場の壁面や窓面など、従来利用できなかったスペースでの発電が可能になると期待されています。
このように、2040年のエネルギー需給見通しを現実のものとするためには、現行の制度や設備導入支援だけでなく、新技術の社会実装と低コスト化のスピード感ある推進が欠かせない局面に入っているといえます。政府・自治体・民間企業が連携し、技術開発と需要創出の両輪を同時に動かしていくことが求められます。
 


 
まとめ
政府が掲げる2030年度の太陽光発電導入目標に対し、2024年末時点での累計導入量はおよそ7,560万kW。目標との差は約3,000万kWに及び、計画達成には今後6年間で年平均500〜700万kWペースの導入が求められます。
本記事で紹介したように、環境省・国土交通省・農林水産省はそれぞれ、公共施設6 GW、地域共生型4.1 GW、住宅3.5 GW、空港2.3 GWなどの分野別目標を掲げ、対応を進めています。しかし、いずれの領域においても進捗は目標の半ば程度にとどまり、導入スピードの加速が急務となっています。
また、企業による自家消費型太陽光やPPA導入では、与信・契約・技術的制約といった実務上の課題が、住宅分野では建売住宅などでの搭載率低迷が障壁となっています。こうした制度的・資金的なボトルネックをどのように解消するかが、今後の政策と民間連携のカギを握ります。
さらに、2040年には太陽光発電に求められる出力量は現在の約2倍に達する見込みです。これに対応するには、軽量・柔軟で建材一体型のペロブスカイト太陽電池の実用化と市場形成が不可欠となります。
制度・設備・技術の三位一体での改革が、2030年目標、そして2040年の持続可能な電力供給を実現する鍵となるでしょう。
 


 
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参考ページ
〇 経済産業省 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第74回):
今後の再生可能エネルギー政策について
〇 環境省 脱炭素先行地域:
脱炭素先行地域支援サイト
〇 農林水産省 環境バイオマス政策課:
農山漁村における再生可能エネルギー発電をめぐる情勢
〇 国土交通省:
住宅トップランナー制度の概要
 
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