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2025.04.05 Sat

ソーラーシェアリングはなぜ広がらない?制度・コスト・現場のリアルから読み解く理由

 
ソーラーシェアリング
 
近年注目されている「ソーラーシェアリング」。農地の上に太陽光パネルを設置し、発電と農業を両立させる仕組みですが、実際にはなかなか普及が進んでいません。なぜこの有望な仕組みが広がらないのか?制度、コスト、技術、そして農家の本音など、現場のリアルを掘り下げながら、ソーラーシェアリングの可能性と課題を明らかにします。
 


 
1.そもそもソーラーシェアリングとは
① ソーラーシェアリングの仕組みと目的
ソーラーシェアリングとは、農地の上空に支柱を立て、その上に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同時に行う仕組みです。「営農型太陽光発電」とも呼ばれ、耕作地の有効活用と再生可能エネルギーの推進を両立できるとして注目を集めています。
日本は耕作放棄地の増加や農業従事者の高齢化といった課題を抱えており、こうした背景から、農地に新たな価値をもたらすソーラーシェアリングに期待が寄せられています。
 
② どんな場所・作物に適しているのか
すべての農地に適しているわけではありません。例えば、日照を多く必要としない作物(ほうれん草、ミョウガ、シイタケなど)とは相性がよく、一方で光を多く必要とする作物(トマト、スイカなど)では収穫量が下がる恐れもあります。
また、平坦で広い農地、風が強すぎない場所、地域の農業委員会との連携がしやすい地域などが導入には適しています。
 


 
2.実際に普及しているのか?現状の把握
① 全国の導入件数とその推移
環境省や農水省のデータによると、ソーラーシェアリングの導入件数は年々増加しているものの、全体から見ればまだごく一部にとどまっています。
2023年時点では全国で約3,000件ほどとされていますが、同じ時期の太陽光発電全体の設備数と比較すると、1%未満の割合に過ぎません。
 
② 地域差とその背景
導入が進んでいるのは、千葉県・長野県・静岡県など、もともと環境意識の高い地域や、地域主導の再エネ推進事業が活発な自治体です。
一方、農業が保守的な地域や高齢化が進む地方では、制度の理解や導入のハードルが高く、普及が進みにくい現状があります。
 


 
3.ソーラーシェアリングが普及しない理由
① 農地転用のハードルと制度の複雑さ
ソーラーシェアリングを導入するには、農地の上に太陽光パネルを設置するため、「農地法に基づく一時転用許可」が必要です。この申請には、農業委員会の承認や詳細な書類提出が求められ、多くの手間と時間がかかります。
以前はこの一時転用の許可期間が3年ごとの更新制となっており、更新のたびに行政の審査を受ける必要があるため、事業の継続性に不安を抱く声も多くありました。
しかし、2023年の制度改正により、一定の条件を満たす場合には最長10年まで延長が可能になりました。これにより、より中長期的な視点での事業計画が立てやすくなっています。
では、その「一定の条件」とは何かというと、以下のようなポイントが挙げられます:
・継続的に農業が行われていること(作物の栽培や収穫が確認されている)
・営農と発電の両立が可能な設計・管理体制があること(遮光率の適正管理など)
・定期的な報告やモニタリングを通じて、営農状況を行政に説明できる体制が整っていること
農地を荒らさず、原状回復が可能な構造になっていること
このような条件をクリアすることで、営農型太陽光発電は最大10年の一時転用許可を得ることが可能となり、事業の安定性や金融機関からの評価も向上する期待があります。
とはいえ、制度の内容や運用方法は地域ごとに若干異なっており、担当する農業委員会によって判断基準が異なるケースもあります。そのため、地元行政や専門家と早い段階から連携し、制度の正確な理解と準備が不可欠です。
 
② 初期コストと採算性の不安
ソーラーシェアリングは通常の地上設置型太陽光に比べて、構造が高くなるため建設コストが2〜3割増になります。加えて、農作物の収量が下がるリスクも考慮する必要があるため、投資回収の見通しが立ちにくいという課題があります。
採算ラインを明確にできる事業者が少ないことも、導入が進まない理由のひとつです。
 


 
4.技術的・運用的な課題
① 作物への影響と農業側の懸念
パネルが日光を遮るため、作物の生育に悪影響が出るのではという不安が根強くあります。また、農作業時に支柱や配線が邪魔になることもあり、農家から「作業がしづらい」という声もあります。
農業と発電の両立には、作物の選定、支柱の配置、パネル角度などのきめ細かい調整が必要です。
 
② 発電効率とパネル管理の難しさ
ソーラーシェアリングでは、パネルの角度や高さ、設置間隔によって発電効率が左右されます。また、農地であるがゆえに、雑草対策、鳥害、ほこりや泥による汚れなど、維持管理の手間が増える傾向にあります。
メンテナンスを農家が担うのか、電力会社や事業者が担うのかといった責任の分担も曖昧なケースがあり、長期的な運用体制が課題となっています。
 


 
5.ソーラーシェアリング普及の意義と未来
① エネルギーと食料の両立という可能性
エネルギー自給率の低い日本にとって、農地を活用した再生可能エネルギーの確保は極めて重要です。
同時に、耕作放棄地の活用や農業収益の補完という意味でも、ソーラーシェアリングは農家にとってメリットがあります。“エネルギーと食料の共存”を可能にする仕組みとして、将来的には大きな価値を持つと考えられます。
 
② 普及に向けた解決策と展望
課題は多いものの、ソーラーシェアリングを支援する取り組みは全国的に広がりつつあり、自治体・教育機関・民間の三位一体のサポート体制が整いつつあることで、少しずつですが「やってみよう」と考える農家や事業者が増えています。
今後さらに普及を進めるためには、以下のような取り組みが重要です。
・制度の簡素化と明確化(農地転用ルールの統一、許可・更新手続きの省力化)
・成功事例の「見える化」(収支モデル、適作物、設計ノウハウの共有)
・地域ぐるみの連携体制の構築(農家、行政、施工業者、金融機関が連携)
こうした取り組みによって、ソーラーシェアリングは単なる発電手段ではなく、地域に根ざした“農業とエネルギーの共生モデル”として定着していく可能性があります。将来的には、食料とエネルギーの両面から持続可能な地域社会を支える「未来型インフラ」として、ますます注目されていくでしょう。
 
長野県のソーラーシェアリングの事例
長野県で営農型メガソーラー、ホウレンソウと花を栽培(掲載元:日経BP )
営農型太陽光発電・万次郎かぼちゃ完売(株式会社リックス 熊谷弘さんのブログ)
 
参考ページ
出典:農林水産省 再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可
出典:農林水産省 営農型太陽光発電取組支援ガイドブック
 


 
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