日本の原子力発電所の現状と課題:稼働率33.6%の背景と「再稼働後」の運用実態

原発稼働率33.6%という気になる見出しの記事があったので調べてみました。2011年の東京電力福島第1原発事故後、一時はゼロになった国内の原発稼働率ですが、2025年度には33.6%と、事故後で3年連続の最高値を更新しました。しかし、この数字はかつての80%超という水準と比較すると依然として低く、政府が掲げる「最大限活用」という方針と、実際の現場での運用には大きなギャップが存在しています。
本記事では、最新の運転状況を整理し、再稼働を果たした原発が現在どのような状況にあるのか、そして2040年代以降に見込まれる「運転期間の上限」といった課題について、客観的な視点で解説します。
1. 国内原発の稼働状況:上昇の背景と「停止中」の現実
2025年度の稼働率が33.6%まで上昇した主な要因は、女川2号機、島根2号機、柏崎刈羽6号機といった地点が新たに再稼働したことにあります。しかし、再稼働を果たしたからといって、すべての原発が常にフル稼働しているわけではありません。
実際には、再稼働後に再び定期検査やメンテナンスのために停止している地点も多く、2026年5月時点では、存続する33基のうち発電を行っているのは9基にとどまっています。
日本国内の主な原発の運転状況(2026年5月8日時点)
以下の表は、再稼働済み地点の現在の状況をまとめたものです。
| 電力会社 | 発電所名 | 炉型 | 現在の状況(2026/5/8時点) |
|---|---|---|---|
| 東北電力 | 女川2号機 | BWR | 定検停止中 (2026.1.14〜) |
| 東京電力 | 柏崎刈羽6号機 | BWR | 営業運転中 (2026.4.16〜) |
| 関西電力 | 美浜3号機 | PWR | 点検停止中 (2026.5.8〜) |
| 関西電力 | 大飯3号機 | PWR | 営業運転中 (2025.9.10〜) |
| 関西電力 | 大飯4号機 | PWR | 定検停止中 (2026.3.4〜) |
| 関西電力 | 高浜1号機 | PWR | 営業運転中 (2025.12.26〜) |
| 関西電力 | 高浜2号機 | PWR | 定検停止中 (2026.1.23〜) |
| 関西電力 | 高浜3号機 | PWR | 定検停止中 (2026.4.7〜) |
| 関西電力 | 高浜4号機 | PWR | 営業運転中 (2025.11.13〜) |
| 中国電力 | 島根2号機 | BWR | 定検停止中 (2026.2.9〜) |
| 四国電力 | 伊方3号機 | PWR | 営業運転中 (2026.1.21〜) |
| 九州電力 | 玄海3号機 | PWR | 営業運転中 (2025.7.10〜) |
| 九州電力 | 玄海4号機 | PWR | 営業運転中 (2025.11.14〜) |
| 九州電力 | 川内1号機 | PWR | 営業運転中 (2026.1.16〜) |
| 九州電力 | 川内2号機 | PWR | 営業運転中 (2026.4.28〜) |
※2026年5月8日時点。再稼働済み地点のうち運転中および点検停止中を抽出
※資料に基づき作成。再稼働済みだが現在は点検等で停止している地点を含みます。
※PWR(加圧水型)、BWR(沸騰水型)
2. 再稼働を阻む「理想と現実」の壁
数値上は回復傾向にあるものの、再稼働が進まない「停止中(24基)」の原発にはそれぞれ深刻な事情があります。
・安全審査と不祥事: 中部電力浜岡原発では、耐震設計の基準となるデータに不正が見つかり、原子力規制委員会による厳しい検査が進められています。また、日本原電敦賀2号機は、原子炉直下に活断層がある可能性から審査不合格となりました。
・物理的・政治的ハードル: 北海道電力泊3号機は防潮堤工事の延長により再稼働が2027年以降にずれ込んでいます。茨城県の東海第2原発のように、審査をクリアしても周辺自治体の同意が得られず、稼働の目途が立たないケースも少なくありません。
・炉型の違い: 西日本のPWR(加圧水型)が先行して再稼働している一方、東日本に多いBWR(沸騰水型)は事故を起こした福島第1原発と同型であるため、安全対策のハードルが非常に高く設定されています。
3. 2040年代に訪れる「運転期限」の課題
政府は「原則40年、最長60年」というこれまでのルールを緩和し、審査などで停止していた期間を上乗せできる新制度を導入しました。しかし、この延長措置を適用しても、2040年代以降は多くの原発が次々と運転上限に達し、退役していくことになります。
現在、電源構成に占める原発の割合は約9.4%(2024年度)ですが、政府目標の「2040年度に2割程度」を達成するには、既存の再稼働だけでは10基以上不足するという専門家の指摘もあります。新増設には巨額の資金(1基1兆円規模)と長い歳月が必要であり、電力供給の安定性を維持するためには、原発以外の再生可能エネルギーや省エネ対策とのバランスが極めて重要になっています。
まとめ
日本の原子力発電は、事故後の状況(稼働率0%)からは脱したものの、多くの地点で再稼働の目途が立たない「停滞期」にあります。稼働率33.6%という数字は、エネルギー安定供給を求める政策の「理想」と、安全確保や社会的な合意形成という「現実」の乖離を象徴していると言えるでしょう。
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この記事に関連するページリンク
・経済産業省:原子力政策について
・原子力規制委員会:実用発電用原子炉の原子力規制検査実施状況
・一般社団法人 原子力安全推進協会:原子力発電所運転実績
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