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2026.07.17 Fri

需給調整市場、上限価格が15円→10円へ引き下げ決定!系統用蓄電池事業者が今すぐ確認すべきポイント

 
需給調整市場、上限価格が15円→10円へ引き下げ
 
電気新聞に『需給調整市場、3商品で上限価格10円に引き下げ/応札未達続きで』という記事があったので調べてみました。経済産業省・資源エネルギー庁は7月14日に開催された電力安定供給ワーキンググループで、需給調整市場の一次調整力・二次調整力(1)・複合商品について、上限価格を現行の15円/ΔkW・30分から10円/ΔkW・30分へ引き下げる方針を示しました。適用は9月1日の実需給分からとされています。実はこの流れ、当ブログでも今年1月に「上限価格は競争状況次第で段階的に引き下げられる可能性がある」とお伝えしていた内容が、そのまま現実になったものです。2026年度に全商品が前日取引化された後も、市場では応札未達や上限価格付近での約定が続いていたことが今回の決定につながりました。今回は資源エネルギー庁が公表した詳細な検証資料をもとに、なぜ上限価格が下がるのか、そして系統用蓄電池事業者は何を見直すべきかを解説していきます。
 


 
目次

 


 

1. 需給調整市場の上限価格、15円から10円への引き下げが決定

経済産業省・資源エネルギー庁は2026年7月14日に開催された第3回電力安定供給ワーキンググループ(WG)で、需給調整市場の上限価格を見直す方針を示しました。対象となるのは一次調整力・二次調整力(1)・複合商品の3商品で、現行の15円/ΔkW・30分から10円/ΔkW・30分へ引き下げられます。適用開始は2026年9月1日の実需給分からです。
 
なお、二次調整力(2)については、対象期間中の単独での応札数が極めて少なかったこともあり、今回は独自の見直しの対象になっていません。当面は現行水準が維持されるとみられますが、資源エネルギー庁は今後も市場の競争状況を継続的に確認していく方針を示しており、動向は引き続き注視が必要です。
 


 

2. なぜ今、上限価格が引き下げられるのか

上限価格の引き下げは、唐突に決まったものではありません。実は2026年1月の第110回制度検討作業部会の段階で、「前日取引化後も市場の競争状況に改善が見られない場合、上限価格を15円から10円、7.21円等と段階的に引き下げる」という方針がすでに示されていました。今回はその「条件」が満たされたと判断されたということです。今回のWGでは、前日取引化後の約3か月間(2026年3月14日~7月3日)の取引実績を4つの期間に分けて検証し、その結果が公表されています。
 
 

前日取引化後も続く「応札未達」

2026年3月13日取引分(14日受渡分)から、需給調整市場は全商品が前日取引・30分単位取引へと移行しました。この移行前後の実績を比較すると、複合商品の不足率(募集量に対して応札量が不足する割合)は、前日取引化前の14.6%から、直近の期間(6月6日~7月3日)には5.3%まで改善しています。一次調整力についても、46.3%から16.1%まで改善しました。
 
ただし、これは一日単位で見た場合の話です。30分ごとのコマ単位で見ると、応札量が募集量を上回る日が増えた一方で、依然として不足するコマが存在しており、資源エネルギー庁も「応札未達の状況が改善したとは言い難い」と評価しています。
 
なお、直近期間で応札量が増加した背景としては、スポット市場での約定量増加に伴い下げ代(発電抑制の余地)が拡大し、稼働済み電源の持ち上げや追加起動による需給調整市場への応札が増えたこと、4~5月と比べて需要がやや増加したこと、梅雨期の太陽光発電の出力低下により火力電源が約定しやすくなったこと、といった複合的な要因が挙げられています。
 
 

上限価格付近での約定が調達コストを押し上げる

もう一つの論点が、上限価格付近での応札・約定が引き続き発生していることです。複合商品の応札価格分布を見ると、14円/ΔkW・30分を超える応札は、前日取引化後も応札量全体の2~5%程度で推移しており、依然として上限価格付近に一定量が張り付いている状況が続いています。
 
さらに注目すべきは調達コストへの影響です。期間③・④(5月9日~7月3日)では、14円を超える約定は複合商品全体の約3.4%の量にすぎないにもかかわらず、調達費用全体では約16.8%を占めていました。前日取引化前は約6.2%の量が調達費用の約35.0%を占めていたので、比率としては改善しているものの、ごく一部の高値札が調達費用全体を大きく押し上げる構造は変わっていません。電源種別で見ると、この価格帯では蓄電池の占める割合が大きい期間が続きましたが、直近(6月6日~7月3日)では火力の占有率も30.5%まで上昇しています。
 
参考として、市場を介さない調整力調達手段である「余力」の平均単価は、2026年3月の2.43円から4月には3.01円へと上昇しました。これは燃料費(LNG価格)の高騰による限界費用の増大や、一部エリアでの起動指令回数の増加が要因とされています。一方、複合商品の市場での平均約定単価は3月2.77円、4月2.91円とほぼ横ばいで、前日取引化の前後で大きな変化は見られませんでした。
 


 

3. 引き下げのスケジュールと対象商品

今回決定した内容と、これまでの上限価格の推移をまとめると、次のとおりです。
 

商品区分 現行上限価格(~2026年8月) 新上限価格(2026年9月1日実需給分~)
一次調整力 15円/ΔkW・30分 10円/ΔkW・30分
二次調整力(1) 15円/ΔkW・30分 10円/ΔkW・30分
複合商品 15円/ΔkW・30分 10円/ΔkW・30分
二次調整力(2) 15円/ΔkW・30分 変更なし(今回は対象外)

これまでの上限価格の推移を振り返ると、次のように段階的な引き下げが進んでいることがわかります。
 

時期 上限価格(一次・二次①・複合商品) 備考
~2025年度 19.51円/ΔkW・30分 週間取引
2026年度当初(3月13日取引分~) 15円/ΔkW・30分 前日取引化と同時に適用
2026年9月1日実需給分~ 10円/ΔkW・30分 今回決定した引き下げ
将来(競争状況次第) 7.21円/ΔkW・30分の可能性 改善が見られない場合、さらなる引き下げも検討

 


 

4. 電源別の反応の違い:火力・揚水は慎重、蓄電池・VPPは市場参加継続へ

資源エネルギー庁は、上限価格を引き下げた場合に事業者の応札行動がどう変わるかについても、事前にヒアリングを行っています。その結果、電源の種類によって反応が大きく異なることがわかりました。
 
火力・揚水については、逸失利益や機会費用をもとに応札価格を算定するケースが多く、上限価格を超える水準になった場合には市場への応札を控えるとの回答が多く寄せられました。実際、追加起動を伴う火力電源では、起動費や限界費用の高騰により応札価格が上限価格を超えてしまい、経済的な理由から応札できないケースもすでに確認されています。
 
一方、蓄電池・VPPについては、容量市場など他市場との収益性を比較したうえで、応札価格を引き下げてでも需給調整市場への参加を継続するという回答が多い結果となりました。
 
こうした電源構成の変化が調整力の確保に影響しないかという懸念については、広域機関(OCCTO)の確認結果が参考になります。東北エリアの一次調整力・二次調整力(2)はエリア単独では調整力を確保しきれない見通しですが、広域運用を考慮すれば2026年度は全エリア・全商品で調整力を確保できる見通しが得られています。資源エネルギー庁は、上限価格の引き下げにより火力・揚水の応札量が一部減少したとしても、その分は一般送配電事業者による「余力」活用での代替調達に置き換わることが想定され、調整力の確保に直ちに支障が生じるものではないと整理しています。
 


 

5. 系統用蓄電池事業者が今、見直すべき3つのポイント

上限価格が15円から10円へ引き下げられることは、系統用蓄電池ビジネスにとって収益構造そのものに関わる変化です。今回の資料や事業者ヒアリングの内容を踏まえると、押さえておきたいポイントは次の3つです。
 
・収支シミュレーションの前提を更新する:上限付近での高値約定に依存した収益モデルは、今後成立しにくくなります。特に、償却期間を短く設定している電源は当該年度の減価償却費が大きくなり、固定費回収額の増加を通じて応札単価が上がりやすいことが今回の資料でも指摘されています。償却期間の設定や固定費回収計画を、10円という新しい上限価格を前提に再点検することが必要です。
 
・応札価格戦略を磨き直す:ヒアリング結果が示す通り、蓄電池・VPPは上限価格が下がっても市場参加を継続する事業者が多数派とみられます。つまり、これからは「下がった上限価格の中で、どう競争力を保ちながら約定を取りに行くか」が事業者ごとの分かれ目になります。他市場との収益性比較を、これまで以上に精緻に行うことが求められます。
 
・スポット市場との一体運用を強化する:直近の期間では、スポット市場での約定状況(下げ代の増減)が需給調整市場への応札量・応札単価に直接影響していました。「このコマはスポット市場(JEPX)で売るべきか、需給調整市場で待機すべきか」の判断精度を高める運用体制やシステムの整備が、上限価格引き下げ後の収益確保にはより重要になってきます。
 


 

6. 今後の展望:さらなる引き下げの可能性と市場の行方

今回の10円への引き下げは、応札未達と上限価格付近への張り付きという「競争が十分に働いていない」状態が、約3か月にわたる実績データで確認されたことが決め手となりました。2026年1月の時点で示されていた「段階的引き下げ」のシナリオが、そのまま現実になった形です。
 
資源エネルギー庁は、上限価格の引き下げ後も適切な競争環境と十分な約定機会を確保する観点から、市場の競争状況や市場外も含めた調整力調達全体の状況を継続的に確認し、必要に応じて募集量や上限価格の在り方について改めて検討するとしています。つまり、7.21円へのさらなる引き下げの可能性は消えていません。
 
また、事業者へのヒアリングでは、高需要期(夏季・冬季)における応札量・応札価格の見通しについて「予測は困難」との回答が多く、需給調整市場が今後も安定した収益源であり続ける保証はありません。系統用蓄電池事業者としては、目先の10円という数字だけでなく、その先の変化も見据えた事業運営が求められる局面に入ってきているといえるでしょう。
 


 
まとめ
今回、経済産業省・資源エネルギー庁は需給調整市場の一次調整力・二次調整力(1)・複合商品の上限価格を、2026年9月1日の実需給分から現行の15円/ΔkW・30分から10円/ΔkW・30分へ引き下げる方針を示しました。背景には、2026年度の前日取引化後も続く応札未達と、上限価格付近での約定が調達コスト全体を押し上げている実態があります。事業者ヒアリングでは、火力・揚水は機会費用の観点から上限価格を超えると応札を控える可能性がある一方、蓄電池・VPPは他市場との収益性を比較したうえで、応札価格を引き下げてでも市場参加を継続する事業者が多いとみられます。系統用蓄電池事業者にとっては収支シミュレーションと応札戦略の見直しが急務であり、さらなる引き下げ(7.21円)の可能性も残されている以上、10円を通過点として中長期の事業計画を練り直すことが求められるでしょう。
 


 
情熱電力からのお知らせ
上限価格が10円へと引き下げられることで、これまで上限付近での高値約定を織り込んでいた収支計画は見直しが必要になります。情熱電力では、今回の決定を踏まえた「2026年9月改定版・収支シミュレーション」のご相談を承っております。10円時代の投資回収ラインの再確認や、将来の7円台も見据えたコストダウン戦略について、気になる方はお気軽にご相談ください。
 
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