お知らせ

INFO

2026.08.19 Wed

2027年度から事業用太陽光のFIT/FIPはどう変わる?支援重点化の全体像を解説

 
2027年度から事業用太陽光のFIT/FIPはどう変わる?
 
ITmedia スマートジャパンに「今後のFIT/FIP制度で支援する太陽光発電の類型、地域社会との共生を条件に」という記事があったので調べてみました。
 
「太陽光のFITって、そろそろ終わるんですよね?」——最近、工場や倉庫をお持ちのお客様から、こんなご質問をいただくことが増えました。半分は当たっていて、半分は違います。たしかに、いわゆる野立て(地上設置)の事業用太陽光は2027年度から新規のFIT/FIP支援の対象外になることが決まりました。でも制度そのものが終わるわけではなく、いま国が進めているのは「支援をどこに集中させるか」という重点化の議論なんです。
 
2026年7月28日に開かれた資源エネルギー庁の「再生可能エネルギー主力電源化小委員会」第3回会合では、その選定基準の輪郭がかなり見えてきました。屋根置きだけでなく、公有地、ソーラーカーポート、空港や道路といったインフラ空間まで候補に挙がっています。自社の遊休スペースやこれからの設備投資に直結する話ですので、今回はこの中身を法人の目線で整理してみます。
 


 
目次

 


 

1. まず結論:2027年度から何が変わるのか

 
最初に、いちばん押さえておきたいポイントからお伝えします。
 
2026年2月5日の調達価格等算定委員会がまとめた「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」で、事業用太陽光発電(地上設置)は2027年度以降、FIT/FIP制度における新規支援の対象外とすることが決定されました。関係する再エネ特措法の下位法令(省令・告示)の改正はすでに公布済みで、2027年4月1日から施行される予定です。
 
理由はシンプルで、「もう自立できる段階に来た」という判断です。委員会では、FIT制度開始以降に認定量・導入量がともに大幅に拡大したこと、技術革新でコスト低減が進み入札上限価格を下回る落札が継続的に見られること、PPAによる収益確保などFIT/FIPによらない案件も形成され始めていること、が確認されています。その一方で、自然環境・安全・景観といった地域共生上の課題が顕在化し、「負の外部経済性」が生じているのではないかとの指摘があることも挙げられました。
 
ただし—ここが大事なところです—制度が縮小して終わり、ではありません。同じ意見のなかで「再エネ導入拡大の観点から、屋根設置等の地域との共生が図られた形での太陽光発電の導入を促進していくことは重要」とされ、支援の重点化に向けた検討を進めることが明記されています。つまり、支援の「面積」を減らすのではなく、「置き場所」を変える議論だとイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
 


 

2. なぜ「重点化」なのか──2030年目標とのギャップ

 
なぜ国はここまで踏み込むのでしょうか。背景には、目標と実績のあいだにある、かなり大きな数字のギャップがあります。
 
国内の太陽光発電の導入量は2025年12月末時点で78.0GW。これに対して2030年度の導入目標は103.5〜117.6GWです。差し引き、今後およそ5年間で26〜40GWの追加導入が必要という計算になります。
 
問題はペースです。近年の導入ペースは年間3.5〜5GW程度とされていますが、目標達成には年間5〜8GW程度への加速が求められます。ざっくり言えば「今の1.5倍前後のスピードで入れ続ける必要がある」ということですね。
 

項目 数値
導入量(2025年12月末時点) 78.0GW
2030年度の導入目標 103.5〜117.6GW
今後必要な追加導入量 約26〜40GW
近年の導入ペース 年間3.5〜5GW程度
目標達成に必要なペース 年間5〜8GW程度

(出典:資源エネルギー庁「事業用太陽光発電におけるFIT/FIP制度の支援重点化について」2026年7月28日、第3回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 資料2)
 
ところが、地域と共生しながら効率的に事業ができる「適地」には限りがあります。だからこそ、建築物の屋根などすでに使われている空間を重ねて活用する方向に、支援の軸足を移そうとしているわけです。
 


 

3. 支援対象を選ぶ3つのものさし

 
では、どういう基準で「支援を重点化する類型」を選ぶのか。小委員会では、①今後の導入、②地域との共生、③FIT/FIP制度の特性等、という3つの視点が示されました。順に見ていきましょう。
 
 

①今後の導入ポテンシャルがあるか

そもそも、支援しても伸びしろがなければ意味がありません。ここで参考にされているのが、日本エネルギー経済研究所等による「地域条例・建物特性を考慮した太陽光発電の導入ポテンシャル調査」の試算です。
 

住宅 事業用(屋根) 事業用(地上)
導入ポテンシャル(エネ研試算) 49.2GW 137.2GW 20〜107GW
足下の導入量(FIT/FIP) 17.3GW 6.1GW 54.6GW

(出典:同上、資料2 p.13。事業用(屋根)は南向き屋根等を考慮した推計値)
 
数字を並べると、状況がはっきりします。事業用の屋根はポテンシャル137.2GWに対して導入量がわずか6.1GW。ほとんど手つかずと言っていい状態です。逆に地上設置はポテンシャルの上限に近いところまで導入が進んでいます。「屋根に寄せる」という政策判断が、感覚ではなく数字に裏づけられていることがわかりますね。
なお太陽光発電協会の「PV OUTLOOK 2050」では、建物設置型で2050年に209GWAC、農業関連(耕作地、荒廃農地、その他農地)で107GWの導入が見込まれているとされています。
 
 

②地域との共生が図られているか

ここが今回の議論の中心です。太陽光、とくに地上設置型の急速な拡大にともなって、安全面・防災面・景観・環境への影響に対する地域の懸念が高まってきました。2025年12月23日には関係閣僚会議で「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」が決定され、森林法・電気事業法・景観法・自然公園法など、関係法令の規制強化が順次進んでいます。自治体でも、地域と共生した再エネ導入を求める「再エネ条例」の制定が増えています。
 
ただ、資源エネルギー庁はこれまでも、関係法令遵守の認定要件化、法令違反時のFIT/FIP交付金の一時停止、説明会等による住民への事前周知の義務化など、事業規律の強化を進めてきました。ですので今回の「重点化」では、そうした従来の対応を超えて、特に地域共生が図られた形で導入が期待されるものを選ぶ必要がある、という整理になっています。
 
具体的な判断要素は次の2つです。
 
・公益への追加的な影響の度合い:屋根設置は「建築物本来の機能を維持したまま、その屋根に発電設備を付加するもの」。新たな土地開発をともなわず、従前の土地利用も大きく転換されないため、安全・防災・景観・環境への追加的な影響が比較的限定的、という考え方です。この特徴を敷衍(ふえん)できる事業類型かどうかが問われます。※敷衍:もとの意味や趣旨を押し広げ、例などを挙げて詳しく分かりやすく説明すること
 
・自治体や国の事業への関与:首長や議会の承認といった地域における理解醸成のプロセスを経ること、事業への一定の監督が期待できることが理由です。公的な関与が、地域の納得感を担保する仕組みとして評価されています。
 
ちなみに、公的施設側の導入実績はかなり厳しい状況にあります。ITmediaの記事によれば、政府保有施設における太陽光発電の導入は2030年度目標58MWに対して2.8%(1.6MW)、地方公共団体保有施設では目標4,824MWに対して6.2%(300MW)にとどまるとのこと。今回の重点化が、自治体・国自身の導入の後押しになることも期待されています。
 
 

③FIT/FIP制度になじむ類型か

3つ目は、やや制度技術的ですが実務上とても重要な視点です。
 
FIT/FIPは、一定の定型的な事業類型ごとに一律の支援を行う「面的な支援制度」です。そのため、支援対象は客観的な基準・証憑で明確に外延を画定・確認できる類型である必要があります。すでに重点化がなされている屋根設置太陽光では、潜脱的な認定取得を防ぐために固有の認定基準(建築基準法上の検査済証の写し、不動産登記法上の表題登記の登記事項証明書、パネル全てを屋根に設ける旨の写真・図面など)と提出書類が定められています。
 
もう一点。FIT/FIPは特定契約や市場取引等で供給された再エネ電気の量に応じて支援する仕組みですから、逆潮流量の売電が想定される類型であることも条件になります。裏を返すと、余剰売電をともなわない純粋な自家発自家消費・オンサイトPPAは、FIT/FIPではなく環境省の地域脱炭素の支援措置など、他の制度で後押しするという役割分担になります。
 
自家消費型をご検討中の企業様は、「FITが対象外=支援がない」ではなく「支援の窓口が別にある」と理解しておくと、選択肢を見落とさずに済みます。
 


 

4. 候補に挙がっている具体的な類型

 
では実際に、どんな類型が候補になっているのか。第2回会合での関係省庁ヒアリングでは、次のような案が示されました。
 
環境省からの提案
 
・公有地で実施する事業:国または自治体が保有する土地で実施する事業。管理下で行われるため地域との共生が前提となり、公有の遊休地活用や公営事業の事例も多く、今後の拡大が期待される
 
・自治体から法令に基づく認定を受けた事業:地球温暖化対策推進法第22条の2第3項に基づく地域脱炭素化促進事業計画の認定を受けた事業。地域の環境保全や共生を要件として自治体が認定する仕組み
 
・ソーラーカーポート:一体型または搭載型で建築基準法に基づく建築物であること、工場・店舗等の施設に付随する駐車場に設置されるもの。屋根への設置が難しい施設にとっての選択肢となり、企業の脱炭素化を進めるうえで更なる導入が期待される
 
国土交通省からの提案(インフラ空間)
 
第7次エネルギー基本計画で「空港、道路、鉄道、港湾等のインフラ空間等を活用した太陽光発電の導入拡大を図る」とされたことを受け、次の空間が候補として挙げられています。
 

対象 主な設置場所の例 参考:導入状況
空港用地 旅客ターミナルビル、航空機格納庫、場周道路脇の緑地 等 空港内/周辺で約4.2万kW(2020〜2024年の実績)
道路区域 上屋(料金所、電気室、トイレ等)、中央帯、未利用地 等 国直轄・高速道路会社で259箇所(令和6年度末)
臨港地区 保管施設等(倉庫等)の屋根や敷地 等 82港湾600箇所、計約1.0GW(令和8年度末)
鉄道 既存の駅舎、ホーム上屋、車両基地、未利用地 等 約5万kW(令和7年度末)
都市公園 公園内の建物の屋根、駐車場 等 128団体・192公園(令和3年度)
水道・下水道 建築物・構造物の上部空間、浄水場・終末処理場の敷地 等 水道 約140団体/下水道 約160施設
河川区域 河川管理施設建屋上 等 国交省所管施設での実績なし

(出典:第2回 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 資料3〈国土交通省〉より抜粋)
 
法人のお客様にとって現実的に効いてきそうなのは、やはりソーラーカーポートでしょうか。工場や店舗の駐車場は、屋根の耐荷重や築年数の問題で屋根置きが難しい場合の有力な代替になります。もしFIT/FIPの重点化対象に入れば、投資回収の見通しが立てやすくなります。
なお、これらはあくまで検討の候補であり、確定した制度ではありません。この点はご注意ください。
 


 

5. 今後のスケジュールと8つの制度的論点

 
「で、いつ決まるの?」というのが、経営判断としては一番気になるところですよね。示されているスケジュールは次のとおりです。
 

時期 内容
2026年7〜8月頃 地方自治体・事業者団体からのヒアリング、考え方の検討・整理
2026年9月頃 検討結果の整理
2026年10月〜2027年1月頃 具体の制度的論点の検討(調達価格等算定委員会でも並行検討)
2027年2〜3月頃 再エネ特措法の下位法令等の改正に係るパブリックコメント手続
2027年4月1日 改正の施行

(出典:資源エネルギー庁 資料2 p.5)
 
そして、これから詰められる制度的論点は8つに整理されています。①〜④は主に再エネ主力電源化小委員会、⑤〜⑧は主に調達価格等算定委員会での検討です。
 

再エネ主力電源化小委で主に検討 調達価格等算定委員会で主に検討
① 設備の区分等や認定基準等 ⑤ FIT/FIPの別
② 説明会等の適用 ⑥ 入札制の適用
③ 地域活用要件 ⑦ 支援価格/期間や初期投資支援スキームの適用
④ 廃棄等費用積立制度の適用 ⑧ 解体等積立基準額

これらの検討では、すでに重点化がなされている屋根設置太陽光の現行の取扱いが参考にされるとされています。参考までに2026年度の屋根設置(事業用)の扱いを挙げると、50kW以上は原則としてFIP制度のみ・10kW以上50kW未満はFIT/FIPを選択可能、入札制は適用免除、調達価格/基準価格は「初期を高く・後期を低く」する階段型(交付期間終了日から起算して15年前の日以降の期間は8.3円/kWh、初期(それ以外の期間:1~5年)は19円/kWhが採用されています。新しい類型にも、これに近い設計が当てはめられる可能性があります。
 


 

6. 法人が今から準備しておきたい3つのこと

 
制度が固まるのは2027年春。まだ先のようでいて、設備投資の検討期間を考えると決して余裕はありません。今からできることを3つ挙げてみます。
 
・自社の「すでに使っている空間」を棚卸しする:工場・倉庫・店舗の屋根、駐車場、敷地内の構造物。屋根置きが難しくてもカーポートなら可能というケースは少なくありません。屋根の耐荷重や検査済証の有無は、FIT/FIPの屋根設置区分の認定基準にも関わる項目ですので、この機会に確認しておくと後がスムーズです。
 
・「売電するのか、自家消費するのか」を先に決める:FIT/FIPは逆潮流量の売電が前提の制度で、純粋な自家消費・オンサイトPPAは環境省の地域脱炭素関連の支援制度など別ルートが想定されています。どちらを軸にするかで、狙うべき制度も、必要な設備構成も変わってきます。
 
・地域との関係づくりを早めに始める:関係法令・条例の遵守はもちろん、周辺住民への丁寧な情報提供が制度上も重視される流れです。自治体の再エネ条例や、地域脱炭素化促進事業計画の有無を確認しておくと、選べる選択肢が広がります。
 
長野県内でも、自治体との連携を前提にした再エネの取り組みは着実に増えています。制度が動く前に社内で論点を整理しておけば、いざ詳細が固まったときに一歩早く動けます。
 


 
まとめ
今回のポイントを整理します。事業用太陽光発電(地上設置)は2027年度以降、FIT/FIP制度の新規支援の対象外となることが決定済みで、関係する省令・告示は2027年4月1日に施行される予定です。ただし制度が縮小するのではなく、支援の対象が「地域共生が図られた形の太陽光」へと移っていく、というのが議論の本質です。
 
その選定基準として示されたのが、①今後の導入ポテンシャル、②地域との共生(公益への追加的な影響の少なさ/自治体・国の関与)、③FIT/FIP制度の特性(客観的な基準・証憑で画定でき、逆潮流の売電が想定される類型)という3つの視点。候補として、公有地で実施する事業、温対法に基づく地域脱炭素化促進事業計画の認定を受けた事業、ソーラーカーポート、空港・道路・鉄道などのインフラ空間が挙がっています。
 
背景には、2025年12月末で78.0GWという導入量と、2030年度目標103.5〜117.6GWとのギャップがあります。事業用の屋根は137.2GWのポテンシャルに対して導入量6.1GWと、伸びしろが大きく残されています。詳細は2026年秋から2027年初にかけて詰められ、2027年2〜3月頃にパブリックコメントが予定されています。自社の屋根や駐車場をどう活かすか、売電か自家消費か。今のうちに方針を整理しておくことをおすすめします。
 


 
情熱電力からのお知らせ
制度の話は、正直なところ「結局うちはどうすればいいの?」というところが一番わかりにくいですよね。屋根置きが向いているのか、カーポートという手があるのか、そもそも売電と自家消費のどちらが自社に合っているのか—このあたりは、電気の使い方(負荷パターン)や契約内容によって答えが変わります。
 
情熱電力は長野県松本市の新電力として、地域の事業者様の電気とお付き合いしてきました。制度の動きを踏まえて自社の電力コストや設備投資をどう考えるか、現状の使用状況を一緒に見ながら整理するお手伝いができます。「まだ検討段階だけど、話だけ聞いてみたい」という段階でまったく問題ありません。気になる方はお気軽にご相談ください。
 
TEL:0263-88-1183
お問い合わせ:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・経済産業省:再生可能エネルギー主力電源化小委員会 第3回
・ITmedia スマートジャパン:今後のFIT/FIP制度で支援する太陽光発電の類型、地域社会との共生を条件に
・経済産業省:「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」について 資料
・環境省:地域脱炭素化促進事業制度について
・農林水産省:農山漁村再生可能エネルギー法