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2026.09.30 Wed

光電融合とは?AIデータセンターの消費電力を減らす新技術と、電気代・日本企業への影響を解説

 
半導体パッケージから光の筋が伸びるデータセンターと光電融合による省電力のイメージ
 
以前「データセンターとは?AIで急増する巨大施設の中身と電力事情をやさしく解説」でも触れましたが、AIの普及でデータセンターの電力消費が膨らむ話は、この1年ほどで何度も取り上げてきました。系統がつながらない、水が足りない、燃料費が上がる。どれも「増える需要をどう賄うか」という供給側の話でしたよね。
 
ところが今回、日経ビジネスに「光電融合、なぜ今か AIデータセンター電力削減の切り札」という記事があったので調べてみました。これは、増える電力をどう賄うかではなく、そもそも使う電力を減らせないか。という逆向きのお話。銅線で運んでいたデータを光に置き換え、半導体の中にまで光を持ち込もうという技術の話です。
 
聞き慣れない言葉ですが、日本企業が世界でも存在感を持つ領域です。電気を調達する立場から見ても、社内の設備投資を考える立場から見ても、知っておいて損はない話だと思うので、整理してみました。
 


 
目次

 


 

1. 光電融合とは?電気の配線を光に置き換える技術

 
光電融合は、これまで電気(銅線)が担ってきたデータ伝送の一部を、光ファイバーや光導波路による伝送に置き換える技術です。目的は、消費電力を大きく減らすことにあります。
 
「データを光で送る」こと自体は、新しい話ではありません。ご自宅や事務所に引かれている光回線がまさにそれで、技術としての歴史も長いものです。では何が違うのかというと、距離なんです。
 
従来の光回線は、局と建物、建物と建物といった長い距離をつないできました。光電融合が置き換えようとしているのは、もっとずっと短い距離です。GPU(画像処理半導体)などのチップのすぐ近く、さらには半導体パッケージの内部にまで、光を持ち込もうとしています。
 
数センチ、数ミリの世界にまで光を入れる。ここが、これまでの光通信と決定的に違うところです。
 
 

 プラガブルからCPOへ、光が半導体の内側まで入る

実は現在のデータセンターでも、光電融合の考え方は一部ですでに使われています。プリント配線基板どうしを光で結ぶ「プラガブル光トランシーバー」と呼ばれる方式です。
 
ただ、この方式ではAIの計算処理の伸びに追いつかなくなってきました。そこで導入が始まっているのが「Co-Packaged Optics(CPO)」です。半導体チップのすぐ近く、あるいはパッケージの内部にまで、光を入り込ませます。
 
どれくらいの速さが求められているのでしょうか。データ伝送の帯域を示す単位にbps(ビット毎秒)があります。現行のデータセンターでは数百Gbps(ギガビット毎秒)が使われていますが、AIデータセンターでは今後、その1000倍の単位であるTbps(テラビット毎秒)級が欠かせないとされています。
 
配線を増やして電気を流し続けるやり方では、この桁には届かない。だから光に置き換える。おおまかには、そういう理屈です。
 


 

2. なぜ今なのか。データセンターの電力消費はどこまで増えるのか

 
IEA(国際エネルギー機関)は、世界のデータセンターによる電力消費量を次のように見込んでいます。
 

時点 世界のデータセンター電力消費量 世界の電力消費に占める割合
2024年(実績) 415TWh 約1.5%
2030年(予測・ベースケース) 約945TWh 3%弱

出典:IEA「Energy and AI」(2025年)。2030年はベースケースの見通しです。

2024年の415TWhは、世界の電力消費のおよそ1.5%にあたります。これが2030年に945TWhまで、ほぼ倍増するというのがIEAの見立てです。日本の年間電力消費量に匹敵する規模とされていますから、国がひとつ、まるごと増えるようなものですね。

この話、日本だけの心配ではありません。米国のトランプ大統領は2026年2月の一般教書演説で、主要なテック企業に対し、AIデータセンターで使う電力は自ら確保する義務があるとして、自前の発電設備を整えるよう求めました。データセンターの電力増加が国民の電気代を押し上げることへの危機感が、その背景にあります。

 
(情熱電力の過去記事:そもそもデータセンターがどんな施設なのかは、こちらで詳しく解説しています)
 
電源の増強も送電網の増強も、すぐには間に合わない。それなら使う量そのものを減らせないか。そこで白羽の矢が立ったのが、光電融合というわけです。
 


 

3. 消費電力はどれだけ減るのか。NTTが掲げる「電力効率100倍」

 
気になるのは「で、実際どれだけ減るのか」ですよね。
 
私が調べたところでは、CPOを導入すると消費電力が何%下がる、という確定した数字は、業界としてまだ固まっていないようです。システムの構成や世代によって幅が大きく、各社が示す数値も前提がそろっていないためです。数字が独り歩きしやすい段階なので、この記事でも具体的な削減率は挙げません。
 
その代わり、目標として公表されている数字はあります。NTTは次世代通信基盤「IOWN構想」で光電融合を中核技術と位置づけ、最終段階のIOWN4.0で電力効率100倍を目指すと公表しています。あわせて、IOWN1.0で遅延の目標値200分の1を達成、IOWN3.0で伝送容量125倍という段階的な目標も示されています(いずれもNTTグループ公式サイトの記載)。
 
電力効率100倍とは、裏返せば同じ仕事を100分の1の電力でこなすということ。もちろんネットワーク部分に限った目標であって、データセンター全体の消費電力がそのまま100分の1になるわけではありません。
 
ただ、削減の議論が「数%」ではなく「数十分の1」の桁で語られている点は、押さえておく価値があると思います。省エネというより、構造の置き換えに近い話です。
 


 

4. 光電融合=IOWNではない。紛らわしい5つの言葉を整理

 
(情熱電力の過去記事:AIがどれだけ電力を使うのかについては、以前まとめた記事があります)
 
この分野、似た言葉が多くて混乱しやすいところです。特に日本では「光電融合といえばNTTのIOWN」と受け取られがちですが、これは正確ではありません。実際、光電融合を手がける国内メーカーの中には、IOWN構想に参画していない企業も少なくないのです。
 

用語 意味
光電融合 電気が担ってきたデータ伝送を光に置き換える技術の総称。この記事のテーマ
光半導体 光と電気の信号を変換する半導体。LEDや半導体レーザー、スマホのカメラに使われるCMOSイメージセンサーも含まれる
シリコンフォトニクス 光電融合の中核技術。シリコン基板上に光と電気の変換回路や光導波路をつくる。半導体の製造技術を流用できるため量産・低コスト化に向く
光インターコネクト サーバーラック同士や、その内部の半導体同士を光でつなぐ技術。光電融合の現状の主な用途
IOWN構想 光電融合を中核技術とする、NTTの次世代通信基盤の構想。技術そのものの名前ではない

ざっくり並べると、シリコンフォトニクスが技術の土台、光インターコネクトが今の主な用途、IOWNはそれらを使った通信基盤の構想、という関係になります。技術(光電融合)と構想(IOWN)を分けて聞くと、ニュースがだいぶ理解がしやすいと思います。
 


 

5. データセンターの次は?光コンピューティングとSDV

 
光電融合の用途は、データセンターだけではありません。
 
ひとつは「光コンピューティング」です。AIの演算そのものを、電気ではなく光に担わせる技術。GPUと比べてはるかに高速でありながら、低い消費電力で計算処理を実行できるとされ、米Lightmatter(ライトマター)やイスラエルCognifiber(コグニファイバー)といった新興企業が開発を進めています。
 
もうひとつがクルマです。SDV(ソフトウエア定義車両)や自動運転車では、車体制御などのために扱うデータ量が一気に増えます。配線をすべて銅線でまかなえば重くなり、電力も食う。ここに光電融合のニーズが出てくる可能性があります。
 
このほか、光による情報処理に基づく量子コンピューターや、光を活用したセンサーといった用途でも研究が進みつつあります。データセンターはあくまで最初の入口、という位置づけなのですね。
 


 

6. 電気代への影響と、法人が見ておくべき3つのポイント

 
では、この技術は私たちの電気代にどう跳ね返ってくるのでしょうか。
 
まず率直なところ、短期的にはほとんど効きません。CPOの本格導入はこれからで、データセンターの電力需要は当面増え続ける見通しです。国内でも、増える需要に電源や系統が追いつかない状況は、しばらく続きます。
 
効いてくるとすれば、もう少し先の話です。データセンターの電力需要が想定より緩やかに伸びるなら、追加の電源投資も、系統増強にかかる費用も、当初の見込みより抑えられます。これらはいずれ、託送料金などを通じて法人・家庭を問わず電気料金に乗ってくる部分です。需要のカーブが寝るかどうかは、めぐりめぐって私たちの負担に関わってきます。
 
そのうえで、事業をされている方に見ておいていただきたい点が3つあります。
 
・電力の調達計画は「減る前提」で組まない。削減効果が出るのは先の話で、当面は需要増と料金上昇の局面が続きます
・自社の設備投資では、機器の消費電力を仕様段階で確認する。サーバーやネットワーク機器の更新時期が来たら、消費電力あたりの処理性能は数年後の電気代に効いてきます
・取引先に半導体・電子部品の企業があるなら、この領域は商機でもあります。光半導体の部材や実装技術は、日本企業が世界でも存在感を持つ分野です
 
電気を「どう買うか」だけでなく「どう減らすか」。この2つを並べて考える時代になってきた、ということなのだと思います。
 


 
まとめ
光電融合は、銅線が担ってきたデータ伝送を光に置き換え、消費電力を減らす技術です。従来の光回線と違うのは距離で、半導体チップのすぐ近く、さらにはパッケージの内部にまで光を持ち込みます。プラガブル光トランシーバーからCPOへという流れが、まさに今そこで起きている変化です。
 
背景にあるのは、AIデータセンターの電力問題でした。IEAは世界のデータセンターの電力消費が2024年の415TWhから2030年に約945TWhへ倍増すると予測しています。電源も送電網もすぐには増やせない以上、使う側で減らす技術に注目が集まるのは自然な流れと言えます。
 
注意したいのは、光電融合とIOWNはイコールではないという点です。光電融合は技術の総称で、IOWNはそれを中核に据えたNTTの通信基盤構想。手がけていてもIOWNに参画していない企業は少なくありません。
 
削減効果が電気料金に表れるのはまだ先です。当面は需要増の局面が続きます。それでも、調達の計画と設備の更新、そして取引先の商機という3つの視点で眺めておくと、この先のニュースの読み方が変わってくるはずです。
 


 
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データセンターの話は遠い世界のことに見えますが、電力需要の伸びは卸電力価格を通じて、事業所の電気料金にも回り回って届きます。
 
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この記事に関連するページリンク
・IEA(国際エネルギー機関):エネルギーとAI
・NTT:IOWN 機能と特性
・日経ビジネス:光電融合、なぜ今か AIデータセンター電力削減の切り札
・資源エネルギー庁(エネこれ):増加が見込まれるデータセンターの電力需要をどうする?
・総務省:ICT分野における新たな技術の研究開発例:IOWN光電融合デバイス(令和6年度版情報通信白書)