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2026.10.10 Sat

ペロブスカイト太陽電池はいつ普及する?2040年3.7兆円予測から読む導入時期の目安

 
ビルの壁面に建材一体型で設置された軽量な次世代太陽電池と、工場屋根のフィルム型パネル
 
ITmedia スマートジャパンに「ペロブスカイト太陽電池の世界市場予測、2040年に3.7兆円規模に」という記事があったので調べてみました。調査会社の富士経済が2026年9月に発表したもので、2040年の世界市場は3兆6854億円、2025年と比べて78.9倍になるという予測です。
 
数字だけ見ると、正直なところ少しピンと来ないかもしれません。78.9倍と言われても、では自社の工場や事務所の屋根がいつその話になるのか、までは見えてこないからです。
 
ただ、今回の発表には金額よりも大事なことが書かれていました。「どの用途から、何年ごろに広がっていくのか」という普及の順番です。ここを読むと、設備投資を考えている法人にとって、待つべきものと今決めてよいものの線引きがかなりはっきりします。順を追って見ていきます。
 


 
目次

 


 

1. 富士経済の予測は何を示したのか

 
まず、発表の中身を整理しておきます。調査対象はペロブスカイト太陽電池の単接合型とタンデム型(多接合型)で、世界市場が対象です。
 
発表で示された金額は、次の2つです。
 
・2026年の市場は1088億円の見込み(前年比2.3倍)
・2040年の市場は3兆6854億円(2025年比78.9倍)
 
2026年という「今年」の数字が入っているのがポイントです。2025年までは試験的な生産や実証的な設置、有償サンプルの提供が中心でしたが、2026年は中国のスタートアップメーカーを中心に生産ラインが立ち上がり、量産化が動き出した年だと位置づけられています。つまり、ここからが実際の市場の始まりという見立てですね。
 
一方で、課題もはっきり書かれています。変換効率や耐久性といったモジュールの性能、そして量産時の歩留まりの低さです。商用化が始まった直後なので、当然といえば当然かもしれません。ここが改善するスピードが、そのまま普及のスピードになります。
(情熱電力の過去記事:この耐久性の課題がどこまで解決されたかは、こちらで詳しく取り上げています)
 


 

2. ペロブスカイト太陽電池とは?法人が押さえたい3つの特徴

 
名前は聞いたことがあっても、既存の太陽光パネルと何が違うのかは意外と整理されていないかもしれません。法人の設備投資という目線で見ると、効いてくるのは次の3点です。
 
ひとつめは、軽くて曲げられること。ビルの壁面、耐荷重の小さい屋根、車体のような曲面にも設置できます。これが最大の違いです。既存のシリコンパネルは重く硬いため、「屋根はあるのに載せられない」建物が相当数ありました。そこが開く、という話になります。
 
ふたつめは、つくり方。塗布などによる連続生産が可能とされています。製造工程が印刷に近づくので、量産技術が固まればコストが下がる余地があります。
 
みっつめは、材料。レアメタルを必要としません。調達リスクの面で、既存パネルとは事情が違います。
 
いずれも「だから今すぐ安く買える」という話ではありません。ただ、既存の太陽光発電で検討対象にすらならなかった建物が、数年後には対象になり得る、という理解をしておくと良いと思います。
 


 

3. 普及はいつから?時間軸を3段階で読む

 
ここが今回の発表でいちばん実務に効く部分です。市場は一気に立ち上がるのではなく、用途を変えながら段階的に広がると予測されています。発表の記述を整理すると、おおむね3段階です。
 

時期 主役になるタイプ 主な用途
2030年ごろまで 単接合型 BIPV(建材一体型)・BAPV(建物据付型)
2030年前後 タンデム型の量産開始 大手結晶シリコンメーカーが参入
2035年以降 タンデム型 既存太陽電池の代替として普及

 
 

 2030年ごろまで:壁面と「載せられなかった屋根」から

最初に広がるのは、既存の太陽電池では設置が難しかった場所です。発表では、BIPV(建材一体型太陽電池)とBAPV(建物据付型太陽電池)で、軽さを生かした単接合型の採用が進み、これが市場拡大をけん引するとされています。
 
言い換えると、2030年ごろまでは「既存パネルと競う」のではなく、「既存パネルが入れなかった場所に入る」フェーズということです。発電コストで既存パネルに勝つ段階ではまだない、とも読めます。
 
基板による違いもあります。ガラス基板は発電事業向けのほか、電子機器などの消費者向け、さらに宇宙向けのような特殊・過酷な環境への対応が進んでいます。フィルム基板は軽量で設置自由度の高い製品へと改良が進んでおり、BIPV・BAPVを主軸に、自動車向けの研究・開発も今後増えるとみられています。自社の建物に関係してくるのは、主にフィルム基板のほうですね。
 
 

 2030年前後:大手が動き、タンデム型の量産が始まる

次の節目が2030年ごろです。ここでスタートアップメーカーに加えて、大手の結晶シリコン太陽電池メーカーによるタンデム型の量産化が進むとされています。
 
タンデム型は、ペロブスカイトと結晶シリコンを組み合わせて変換効率を高めたものです。既存のシリコンパネルをつくってきた大手が本格的に動く、という点が重要で、ここを超えると生産量も価格も既存パネルの土俵に乗ってきます。
 
 

 2035年以降:既存パネルの置き換えへ

そして2035年以降、既存太陽電池の代替として普及することで、2040年の3兆6854億円という市場規模につながる、という筋書きです。
 
つまり3兆7000億円近い市場の大半は、2035年より後ろに積み上がる想定ということになります。「2040年に3.7兆円」という見出しだけ見ると今すぐ大きな変化が来るように感じますが、中身を読むと、本格的な置き換えは10年近く先に置かれています。
 


 

4. 予測は毎年動く。前回調査との差を見ておく

 
もうひとつ、押さえておきたいことがあります。この手の市場予測は毎年更新され、そのたびに数字が動くということです。
 
富士経済は同じテーマで前年にも調査を発表しています。EE Times Japan(2025年7月18日)が伝えた前回調査では、2040年の世界市場は3兆9480億円と予測され、2025年の市場は1476億円が見込まれていました。
 

発表時期 2040年の世界市場予測 足元の市場見込み
2025年7月 3兆9480億円 2025年見込 1476億円
2026年9月 3兆6854億円 2026年見込 1088億円

比べる年が1年ずれているので単純な引き算はできませんが、前回は2025年の時点で1476億円に届く見込みだったところ、今回の発表では1年あとの2026年でも1088億円という見込みになっています。立ち上がりが想定より後ろにずれた形です。なお、調査のたびに対象範囲や定義が見直される可能性があるため、まったく同じものさしでの比較ではない点はご留意ください。
 
2040年の金額も、3兆9480億円から3兆6854億円へとやや下がっています。大きく崩れたわけではなく、方向性は変わっていません。ただ、「予測は動くもの」という前提で受け取るのが正しい距離感だと思います。商用化が始まった直後の技術ですから、歩留まりひとつで数年単位のずれが出ます。
 


 

5. 自社の設備投資にどう効くか

 
ここまでを踏まえて、実務的な話をします。設備投資の判断に落とすと、おおむね次のような整理になります。
 
今すでに既存の太陽光パネルが載る屋根をお持ちなら、ペロブスカイトを待つ理由は薄いです。本格的な置き換えは2035年以降の想定で、それまで待つ間に発電できたはずの電気が失われます。10年近い機会損失は、技術の進歩で取り戻せる額ではありません。
(情熱電力の過去記事:初期費用をかけずに太陽光を導入する方法については、こちらで解説しました)
 
逆に、耐荷重の問題で見送った屋根や、面積の大きい壁面をお持ちなら、ここは数年単位で状況が変わる可能性があります。すぐに導入できるという話ではありませんが、2030年ごろに向けて選択肢が増える方向にあるので、建物の改修や建て替えの計画がある場合は、設計段階で「将来BIPVを載せられるか」を一度確認しておく価値はあります。あとから足すより、設計時に織り込むほうが安く済むからです。
 
そして、どちらの場合も先に効いてくるのは、電気の使い方そのものの見直しです。発電設備は入れたあとに使い方を変えるより、使い方を把握してから容量を決めるほうが、ほぼ確実に投資効率が良くなります。新しい技術の普及を待つ時間は、そのまま自社の電力使用の実態を把握する時間に充てられます。
 
価格の見通しについてもひとつ。一部では低価格な既存太陽電池との競合もみられるとされており、ペロブスカイトが出てくれば太陽光全体がすぐ安くなる、という単純な図式にはなっていません。量産技術の向上や主要部材・成膜方法の開発による製造コスト低減は期待されていますが、それが価格に反映される時期まではまだ幅があります。
 


 
まとめ
富士経済が2026年9月に発表したペロブスカイト太陽電池の世界市場予測は、2040年に3兆6854億円、2025年比で78.9倍というものでした。ただ、法人にとって読むべきは金額そのものよりも、その内訳にある普及の順番だと思います。
 
2030年ごろまでは、既存パネルが載らなかった壁面や軽い屋根で単接合型が広がる段階。2030年前後に大手メーカーがタンデム型の量産に入り、既存パネルの置き換えが本格化するのは2035年以降。市場の大半は、この後半に積み上がる想定です。
 
課題も残っています。変換効率や耐久性、量産時の歩留まりの低さは、発表の中でもはっきり指摘されていました。前回調査から足元の見込みが後ろにずれていることも、技術の普及が計画どおりには進まないことを示しています。
 
ですから、今ある屋根に載せられるなら待つ理由はなく、載せられない建物をお持ちなら数年先を見ておく、というのが現時点での妥当な線引きではないでしょうか。そして、どちらにしても先にやっておきたいのは、自社がいつ・どれだけ電気を使っているかを把握することです。ここが固まっていないと、どんな新技術が来ても判断ができません。
 


 
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この記事に関連するページリンク
・富士経済グループ(プレスリリース):ペロブスカイト太陽電池の世界市場を調査
・ITmedia スマートジャパン:ペロブスカイト太陽電池の世界市場予測、2040年に3.7兆円規模に
・日本経済新聞:ペロブスカイト太陽電池、前年比2倍超に 世界の市場規模
・経済産業省:次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会
・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構):次世代型太陽電池の開発