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2026.11.07 Sat

エコキュート・家庭用蓄電池の「DR対応」とは?1,000万台あるのに動かせない理由と買い替えの見方

 
住宅の給湯設備と家庭用蓄電池が送電線へ光の線でつながるディマンド・リスポンスのイメージ
 
家庭にあるエコキュートや蓄電池は、全国でおよそ1,000万台。ところが、そのうち電力システムの側から遠隔で動かせるものは限られていて、ディマンド・リスポンス(DR)として使える量は合計で約300万kW程度にとどまる——資源エネルギー庁の「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ」第4回(2026年10月)で、こんな現状が報告されました。
 
ITmedia スマートジャパンの「蓄電池やDR運用の現状分析」という記事で知り、会議で示された中身まで当たって調べてみました。
 
2026年4月からは、家庭のような低圧の機器でも電力市場に応札できる制度が始まっています。制度の扉は開いた。けれど、機器の側がまだ追いついていない。いまはそういう段階です。これから蓄電池やエコキュートを買い替える方にとっては、ここが地味に効いてきます。
 


 
目次

 


 

1. ディマンド・リスポンスとは? 家庭の機器1,000万台の話

 
まず言葉から。ディマンド・リスポンス(DR)は、そのまま訳すと「需要(ディマンド)の応答(リスポンス)」です。発電所を増やして需要に合わせるのではなく、電気を使う側が使い方をずらして、発電の都合に合わせる。そういう考え方です。
 
家庭でいうと、たとえばこんな場面になります。
 
・夕方、みんなが一斉に電気を使って電力がひっ迫しそうなとき、エコキュートの沸き上げを少し止める(下げDR)
・昼間、太陽光でつくった電気が余りそうなとき、沸き上げや蓄電池の充電を前倒しする(上げDR)
 
どちらも、やっていることは「お湯を沸かす時間をずらす」だけです。それでも、全国で何百万台という単位で足し合わせると、発電所1基分、2基分の意味を持ちます。だから国はこれを電力システムの一部として数えようとしています。
 
私たち新電力にとっても他人事ではありません。電気を仕入れる値段は時間帯によって大きく変わるので、使う時間がずれるだけで調達のコストが変わり、それは最終的に電気料金に返ってきます。
 
さて、ここからが本題です。ワーキンググループで報告されたのは、家庭などの低圧リソースは1件あたりのDR量こそ小さいものの、約1,000万台という規模があり、今後も増えていく、という話でした。
 
ところが同じ資料で、こうも指摘されています。クラウドにつながっているなどして遠隔から操作できるリソースは限定的で、DRとして動かせる量の合計は約300万kW程度にとどまる、と。
 
台数はある。でも、動かせない。この落差が、いまの家庭用DRの現在位置です。
 


 

2. 2026年4月に制度は開いた。それでも、すぐには参入できない

 
制度の側は、実はもう動いています。2026年4月から、需給調整市場で低圧リソースと「機器個別計測」による応札ができるようになりました。
 
 

 機器個別計測ってなに?

これまでは、家一軒まるごとの電気の使用量を見て「DRをやったかどうか」を判定していました。これだと、エアコンもテレビも冷蔵庫も全部混ざるので、エコキュートが何kW分ずらしたのかを取り出しにくい。そこで、機器ごとに計測して、その機器の動きだけを評価しようというのが機器個別計測です。
 
家庭の機器を市場に出すには、こちらのほうが筋がよい。ただ、ここに条件が付きました。
 
機器個別計測をするには、第二世代スマートメーターの「IoTルート」を使った無線端末でデータを集めることが原則として必要になります。そして、その無線端末がまだ認証や量産の途中で、現時点では実際の参入は難しい——ワーキンググループでは、そう整理されています。
 
制度は開いた。計測の方法も決まった。でも、計測するための箱がまだ世の中に出回っていない。いま止まっているのは、この一点です。
 
(情熱電力の過去記事:スマートメーター経由で家電をまとめて制御する、送配電事業者側の動きはこちら)
 
逆にいえば、ここが解ければ一気に動く可能性もある、ということでもあります。
 


 

3. 買い替えのときに見ておきたい「DR対応かどうか」

 
ワーキンググループが、家庭用リソースを増やすために重要だと挙げたのは2つでした。クラウド接続率を上げること。そして、DRに対応した機器(いわゆる「DR ready」機器)を広めること。
 
ここで気になるのが、いま家にある機器や、これから買う機器はどうなのか、という話ですよね。
 
給湯器も蓄電池も、一度入れたら10年、15年と使い続けるものです。つまり次に選び直す機会は、かなり先になります。2026年のいま買う1台が、2030年代の電力システムにつながるかどうかを決めてしまう、ということでもあります。
 
(情熱電力の過去記事:蓄電池が「コスト」から「投資」へ変わりつつある話はこちら)
 
製品ごとの対応状況はメーカーの公式情報に当たっていただくほかありませんが、カタログや見積もりを見るときに、次のような視点を持っておくと判断しやすくなります。
 
・インターネットにつながる機種か(Wi-Fiや専用のゲートウェイが必要かどうか)
・スマートフォンのアプリから遠隔で操作できるか。できるなら、クラウドにつながっている可能性が高い
・メーカーがDRやVPP(バーチャルパワープラント)の実証に参加しているか
・アプリやクラウドサービスの利用に、別途費用や契約が要るのか
 
「いますぐDRで稼げますよ」という話ではありません。そこは正直に申し上げます。ただ、同じ価格帯で迷ったときに、つながるほうを選んでおく。それくらいの温度感で十分だと思います。
 


 

4. 工場では、もう2割が動いている

 
家庭のほうは「これから」ですが、産業用はもう少し先を走っています。
 
2022年の省エネ法改正で、法律の目的に「電気の需要の最適化」が加わりました。これによって、一定規模以上の特定事業者には、DRを何日実施したかなどを定期報告する義務があります。やったかどうかが、国に数字で残るわけです。
 
2025年度の報告(2024年度の実績)では、次のような結果でした。

項目 2024年度の実績
報告対象の工場・事業場 約14,700件
うちDRを実施した事業場 約3,200件(約22%)
実施した事業者の平均DR実施日数 37.7日
DR実施量に占める下げDRの割合 約3分の2

出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ」第4回資料
 
22%、という数字をどう見るかですよね。「まだ2割か」とも読めますし、「もう2割も」とも読めます。ただ、実施している事業者は年間37.7日、つまりおよそ10日に1日のペースでやっています。やるところは、わりとしっかりやっている。
 
もうひとつ、おもしろい数字がありました。アグリゲーターとDR契約を結んでいる指定工場などは全体の4割強にとどまるのに、その事業者が全業種のDR実施量(kWh)の9割強を占めていた、というものです。
 
アグリゲーターというのは、たくさんの需要家をまとめて電力市場につなぐ事業者のことです。ばらばらの機器を束ねて、ひとつの大きな調整力として扱う役割を担います。届出済みの特定卸供給事業者は145社、合計の供給能力は約6.1GWに達しているとのこと。
 
つまり、DRは「自分でがんばる」よりも「束ねてもらう」ほうが量が出る、という構造になっています。家庭の機器が市場につながるときも、たぶん同じ形になります。一軒ずつが市場と直接やりとりするのではなく、アグリゲーターがまとめて扱う。だからこそ、機器がクラウドにつながっているかどうかが入口になるわけです。
 


 

5. 「数は家庭、量は大口」の現在地

 
いまどのくらい家庭が市場に出ているのかも、数字で出ていました。
 
容量市場では、DRのリソース登録が特別高圧・高圧・低圧を合わせて約9.3万件あります。2024年度の実効性テスト(2026年度の供給力を対象としたもの)でのDR発動量は、合計で約280万kW。
 
ただし内訳を見ると、特別高圧のDRはリソース数では全体の0.8%しかないのに、発動量では約57%を占めていました。件数は小口が多く、量は大口が稼いでいる。そういう構図です。
 
需給調整市場のほうも見てみましょう。2026年4月から8月の実績で、VPP・DRが占める入札量の割合は、三次調整力②でおよそ1.0%、一次調整力でおよそ1.5%でした。割合としてはまだ小さいものの、少しずつ増えています。
 
この話は、寒い地域ほど効いてきます。冬の朝晩は、暖房と給湯が同じ時間帯に重なるからです。長野県のような土地は、その山をずらせる余地がそれだけ大きいということになります。家庭の機器が市場につながったとき、いちばん効き目が出るのはこういう場所ではないかと思っています。
 
では、いま家庭でできることは何か。正直に言えば「待つ」が半分です。ただ、残りの半分はあります。
 
ひとつは、買い替えのタイミングが来たときに、つながる機種を選んでおくこと。もうひとつは、いまの契約で時間帯別の料金になっているなら、その時間帯を意識して使うこと。これは市場を通さない、いちばん身近なDRです。お湯を沸かす時間、洗濯機を回す時間を少しずらすだけでも、やっていることは同じですから。
 


 

6. まとめ

 
家庭にあるエコキュートや蓄電池は全国で約1,000万台ありますが、遠隔で動かせるものに限ると、DRとして使える量は約300万kW程度にとどまります。台数はあるのに動かせない、というのがいまの状況です。
 
制度の側は2026年4月から、低圧リソースや機器個別計測による応札を認めています。ただし機器個別計測には第二世代スマートメーターのIoTルートを使う無線端末が原則必要で、その端末の認証・量産がまだ途中のため、実際の参入はこれからという段階です。
 
一方、産業用は先行しています。省エネ法の定期報告では、対象約14,700件のうち約3,200件(約22%)がDRを実施し、実施した事業者は年平均37.7日。しかもアグリゲーターと契約している4割強の事業者が、実施量の9割強を占めていました。束ねる仕組みがあるところに量が集まる、という構造です。
 
家庭の機器が市場につながるのも、おそらく同じ形になります。だからこそ、次に給湯器や蓄電池を選ぶときに「ネットにつながるか」「遠隔で操作できるか」を見ておくことに意味があります。10年、15年使う機器です。いま急いで買い替える必要はありませんが、買い替えの順番が来たときに思い出していただければと思います。
 


 

7. 情熱電力からのお知らせ

 
「うちのエコキュートは対応しているの?」「時間帯をずらすと、実際どのくらい変わるの?」——すでに設備を入れていらっしゃるお客様は、このあたりをけっこう気にされているようです。
 
ご家庭の使い方や契約している料金プランによって答えが変わるところなので、一般論ではなかなかお答えしきれません。検針票を見ながらでしたら、使い方をずらす余地がどのくらいありそうか、一緒に見ていくことができます。機器の買い替えを考えているけれど何を基準に選べばいいか迷っている、という段階のご相談でも構いません。
 
お気軽にお問い合わせください。
 
TEL 0263-88-1183
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この記事に関連するページリンク
・資源エネルギー庁:分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ
・ITmedia スマートジャパン:蓄電池やDR運用の現状分析
・資源エネルギー庁:省エネ法 電気の需要の最適化
・資源エネルギー庁:特定卸供給事業者(アグリゲーター)の届出一覧
・電力広域的運営推進機関(OCCTO):容量市場 発動指令電源 実効性テスト