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2026.08.13 Thu

消費税減税で家計は本当に楽になる?賃上げしても手取りが増えない理由と所得税減税という選択肢

 
消費税減税で家計は本当に楽になる?
 
私が年に何度かセミナーに参加させていただいている小宮コンサルタンツのメールマガジンに「消費税減税で日本は良くなるのか?~国民に内緒で事実上の増税を続ける政府への提案~」という記事があったので調べてみました。
 
2026年8月5日、政府は飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間に限って1%に引き下げる基本方針を臨時閣議で決定しました。ニュースを見て「少しは家計が楽になるかな」と思われた方も多いのではないでしょうか。
ただ、この記事を読んで調べていくうちに、私たちが感じている「働いても、賃上げされても、なぜかお金が残らない」というモヤモヤの正体は、消費税だけではなさそうだということが見えてきました。鍵になるのは、所得税の「超過累進課税」という仕組みです。
 
今回は電気とは少し離れたテーマですが、電気代も食費もひっくるめた「家計の手取り」の話。私たち電力会社にとっても、お客様の暮らしに直結する大事なテーマです。数字を追いながら、一緒に考えてみませんか。
 


 
目次

 


 

1. 8月5日に決まった「食料品の消費税1%」とは何か

 
まず、今回の決定内容を整理しておきましょう。
 
2026年8月5日、政府は臨時閣議で、飲食料品にかかる消費税率を2027年4月1日から2年間に限り、現行の8%から1%へ引き下げる基本方針を決定しました。期間は2029年3月末まで。外食と酒類は対象外となる見通しです。
 
さらに、1%分に相当する年約6,000億円を中低所得者への現金給付で還元し、食料品にかかる税負担を「実質ゼロ」に近づける構想もセットになっています。そして2029年度からは「給付付き税額控除」の本格導入が予定されています。減税と給付を合わせた財政規模は、年5兆円前後という試算が報じられています。
かなり大きな政策です。ただ、金融マーケットや世論の反応は、意外にも懐疑的でした。「本当に効果があるのか」「財源はどうするのか」という声です。
 
そこで今回は、元記事の問題提起にならって「消費税減税以外に、家計の負担を軽くする手段はないのか?」という視点で調べてみました。
 


 

2. 賃上げしているのに手取りが増えない、本当の理由

 
ここ数年、日本の賃上げは着実に進んでいます。連合の2026年春季生活闘争・最終集計(2026年7月1日時点、5,368組合)では、平均賃上げ率は5.01%。3年連続で5%台を達成しました。組合員300人未満の中小企業でも4.69%と、前年同時期を上回っています。
 
厚生労働省の毎月勤労統計を見ても、名目賃金(現金給与総額)は前年比プラスが続いており、2026年に入ってからは物価変動を除いた実質賃金もプラス圏に転じています。
 
数字の上では、確かに良くなっているんです。
 
それなのに、「給料は上がったはずなのに、財布の中身は変わらない」と感じている方が多い。この感覚のズレはどこから来るのでしょうか。
 
答えのひとつが、所得税の「超過累進課税」という仕組みです。
 
 

課税所得700万円の人が5%賃上げされたら、手取りはいくら増える?

日本の所得税は、課税所得が大きくなるほど税率が段階的に上がる設計になっています。国税庁の速算表によると、税率はこうなっています。
 

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 〜 194万9,000円 5% 0円
195万円 〜 329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円 〜 694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円 〜 899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円 〜 1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円 〜 3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」(令和7年4月1日現在法令等)
 
では、課税所得700万円の方が5%の賃上げを受けたケースで、かなり単純化して計算してみます。
 
7,000,000円 × 1.05 = 7,350,000円。増加分は35万円です。
 
この35万円から、何が引かれるのか。
 
・所得税:700万円は23%の税率帯なので、増えた35万円にも23%。350,000 × 0.23 = 約8万500円
・住民税:所得割の標準税率は10%。350,000 × 0.10 = 3万5,000円
・社会保険料:健康保険・厚生年金・雇用保険の本人負担は給与増加分の約15%とされています。
350,000 × 0.15 = 約5万2,500円
 
差し引くと、350,000 − 80,500 − 35,000 − 52,500 = 18万2,000円
 
年間の手取り増は約18万円、月あたりにすると約1万5,000円です。35万円上がったはずが、手元に残るのはその半分ちょっと。「実感が湧かない」と言われるのも無理はありません。
 
なお、この試算はあくまで大づかみなものです。実際には社会保険料は所得控除の対象なので所得税・住民税の課税ベースが下がり、手取りの目減りはもう少し小さくなります。逆に所得税には復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が上乗せされます。標準報酬月額は等級刻みなので、きれいに比例するわけでもありません。あくまで「ざっくりこういう構造になっている」という理解でお読みください。
 
ポイントは、賃上げされた分の一部は、自動的に税と社会保険料に持っていかれる構造になっているということです。
 
 

「103万円→160万円→178万円」年収の壁は動いている

公平を期すためにお伝えしておくと、政府もこの点に何も手を打っていないわけではありません。
 
所得税がかかり始める「年収の壁」は、令和7年度税制改正で103万円から160万円に引き上げられ、令和8年度税制改正でさらに178万円まで引き上げられました。しかも今回の改正では、控除額を2年ごとに消費者物価指数に応じて見直す「物価スライド制」が導入されています。
 
つまり「所得税減税は何もされていない」わけではなく、課税最低限のほうから手が入っているというのが正確な現状です。ただ、これは主に低所得層・パート層に効く仕組み。中間層の税率そのものは動いていません。
 


 

3. 消費税を下げても、店頭価格は下がらないかもしれない

 
さて、本題の消費税減税に戻ります。
 
消費税減税に期待が集まる背景には「物価高」があります。値段が上がっているところに税がかかる負担を減らそう、しかも全世帯に広く恩恵が行き渡る──理屈としては筋が通っています。
 
ただ、元記事が指摘していた懸念は、なるほどと思わされるものでした。
 
消費税が下がっても、店頭価格が下がるとは限らない、という指摘です。
 
小売店は商品を仕入れる際にも消費税を負担しており、販売価格はそれを含めて設定されます。加えて近年は、包装資材や消耗品の値上がり、物流コストの上昇、人手不足による人件費・採用費の増加など、店を運営するためのコストが軒並み上がっています。
 
この状況で税率が下がったとき、事業者が「値下げの余地ができた」と考えるか、「上がったコストを吸収できる」と考えるか。後者になる可能性は十分にあります。そうなると、レジで支払う金額は変わらない、あるいは増えることさえあり得ます。
 
もちろん、これはひとつの見方です。競争の激しい業態では価格に反映されるでしょうし、政府も転嫁状況を注視するとしています。それでも、「税率が下がった分だけ確実に安くなる」と考えるのは楽観的かもしれません。
 
 

電気代の消費税は10%のまま、という現実

ここは電力会社として、どうしてもお伝えしておきたい点です。
 
今回の減税対象は飲食料品のみです。電気代・ガス代・水道代といった光熱費は軽減税率の対象外で、消費税10%がかかったままになります。
しかも電気代のほうは、別の要因で上昇圧力がかかっています。2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の単価は4.18円/kWhと、初めて4円台に乗り、過去最高を更新しました。月400kWh使うご家庭なら、賦課金だけで月1,672円、年間で約2万円の負担です。
 
つまり、食料品の消費税が実質ゼロに近づいたとしても、家計のもうひとつの固定費である電気代は、その恩恵の外側にあるということです。ここは知っておいていただきたいところです。
 


 

4. 「所得税を下げたほうが効くのでは?」という仮説を検証する

 
元記事が提示していた仮説は、こういうものでした。
 
1.日本全体で賃上げが起きる
2.超過累進課税により所得税収が自然に増える
3.政府の税収が増える
4.その一部を減税で国民へ戻す
5.手取りが改善し、消費を支える
 
現金給付は一時的な効果にとどまります。消費税減税は、前述のとおり価格に反映されない可能性がある。それに対して所得税の減税は、毎月の給与明細に直接効いてくる──だから「手取りの実感」につながりやすい、という論理です。
 
 

税率を3%下げると、手取りはいくら増えるのか

具体的に、課税所得330万円超〜695万円以下の帯(現在20%)を17%に下げたと仮定して計算してみましょう。
 
ここは丁寧に見る必要があります。超過累進課税なので、下がるのは330万円を超えた部分だけです。減税額はおおよそ「(課税所得 − 330万円)× 3%」になります。
 
・課税所得400万円の方 → 約2万1,000円
・課税所得500万円の方 → 約5万1,000円
・課税所得695万円の方 → 約10万9,000円
 
「一律で年10万円得する」というわけではなく、帯の上限に近い方ほど恩恵が大きくなる形です。とはいえ、年間数万円が毎月の給与に分散して戻ってくるインパクトは、決して小さくありません。
 
さらに、5%(195万円以下)・10%(195万円超〜330万円以下)の帯を下げれば、生活に負担を感じている層に直接届きます。「手取りが増えた」という実感を得やすいという意味では、確かに理にかなった発想だと感じます。
 
 

財源は「賃上げによる自然増収」で賄えるのか

もちろん、ここでも財源の問題が立ちはだかります。
 
元記事の試算では、330万円超〜695万円以下の層は約1,500万〜2,000万人、全納税者の25〜35%程度で、3%減税による減収は1.5兆〜3兆円程度とされています(元記事による概算です)。
 
一方、賃上げによる自然増収はどのくらいでしょうか。ここは実際の予算データで確かめられます。
 
財務省の資料によると、一般会計の所得税収は令和7年度当初予算で23兆2,870億円、令和8年度当初予算で25兆3,250億円。1年で約2兆円増える見込みです。ちなみに令和8年度の税収総額は83兆7,350億円、うち消費税が26兆6,880億円、法人税が20兆6,960億円となっています。
 
税率を上げていないのに、所得税収は毎年増えている。この2兆円という自然増収は、3%減税の財源1.5兆〜3兆円と十分に射程が重なる規模です。少なくとも「消費税減税+給付で年5兆円規模」という話に比べれば、財源のハードルは低いと言えそうです。
 


 

5. 気づかないうちに進む「事実上の増税」を税収データで確かめる

 
元記事のタイトルにあった「国民に内緒で事実上の増税を続ける政府」という表現。刺激的ですが、データを見ると言わんとするところは理解できます。
 
日本の所得税は、税率を一切変えなくても、国民の所得が上がれば税収が自動的に増える設計になっています。しかもインフレ局面では、物価が上がった分だけ名目賃金が上がり、実質的には豊かになっていなくても、より高い税率帯に押し上げられていく。経済学で「ブラケット・クリープ」と呼ばれる現象です。
 
実際、所得税収は令和7年度当初の23.3兆円から令和8年度当初の25.3兆円へ。増税法案を一本も通すことなく、これだけ増える見込みになっています。
 
「賃上げをして一番得をしているのは政府ではないか」──そう言いたくなる気持ちも、わからなくはありません。
 
もっとも、前述のとおり基礎控除には物価スライド制が導入されました。これはブラケット・クリープへの対応策そのものです。方向としては正しい一手が打たれ始めている、という見方もできます。
 
企業が業績を上げたら社員に還元するように、国も税収が自然に増えた分を国民に戻す。そういう考え方があってもいいのではないか。元記事のこの提案には、一考の価値があると感じました。
 


 

6. 私たちにできるのは「手取り」と「固定費」の両輪

 
とはいえ、税制は私たち一人ひとりが明日から変えられるものではありません。
 
家計を守る方法は、突き詰めると2つしかありません。入ってくるお金(手取り)を増やすか、出ていくお金(固定費)を減らすかです。
 
手取りのほうは、今回見てきたとおり税制に大きく左右され、個人でコントロールできる範囲は限られています。iDeCoや生命保険料控除といった所得控除の活用、ふるさと納税など、打てる手がないわけではありませんが、劇的とは言いにくい。
 
一方、固定費のほうは違います。電気代は毎月必ず出ていくお金であり、契約プランや使い方の見直しで、比較的すぐに結果が出やすい支出です。
 
・契約アンペア数が実際の使用実態に合っているか
・ライフスタイルに合った料金プランになっているか
・冷暖房の設定や給湯の使い方に、無理のない改善余地はないか
・法人であれば、高圧・低圧の契約区分やデマンド管理は最適か
 
食料品の消費税が1%になるのは2027年4月から。それまでの期間も、そしてその後も、電気代には消費税10%がかかり続けます。だからこそ、電気代の見直しは「今すぐ着手できて、効果が続く」対策なのです。
 
長野県松本市で新電力として地域のお客様と向き合っていると、「電気代って、そもそもどういう内訳なんですか」というご質問をよくいただきます。仕組みがわかると、どこに手を入れれば効くのかが見えてきます。まずは知ることから、で十分だと思っています。
 


 
まとめ
2026年8月5日、政府は飲食料品の消費税を2027年4月から2年間1%に引き下げる方針を閣議決定しました。しかし小売価格は仕入れコストや人件費の上昇を織り込んで決まるため、税率が下がった分だけ安くなるとは限りません。
 
一方、「賃上げしても実感が湧かない」原因のひとつは所得税の超過累進課税にあります。課税所得700万円で5%賃上げされても、税と社会保険料を引いた手取り増は年約18万円、月約1万5,000円にとどまります。所得税率を3%下げれば課税所得500万円で年約5万円、695万円で年約11万円が手元に残る計算で、財源も所得税収の自然増収(令和7年度から令和8年度で約2兆円増)と規模が重なります。
 
そして忘れてはいけないのが、電気代の消費税は10%のままだということ。再エネ賦課金も2026年度は4.18円/kWhと過去最高です。制度が変わるのを待つ間も、固定費の見直しは今日から始められます。
 


 
情熱電力からのお知らせ
食料品の消費税が下がっても、電気代にかかる消費税は10%のまま。だからこそ、電気代そのものの見直しは家計にも経営にも効いてきます。
 
情熱電力では、「うちの電気代、これって高いの?」「契約プランが合っているのかわからない」といったご相談を、専門用語をできるだけ使わずにお受けしています。ご家庭でも事業所でも構いません。検針票をお手元にご連絡いただければ、今の契約状況を一緒に確認するところから始められます。
 
気になる方は、お気軽にご相談ください。
 
TEL:0263-88-1183 お問い合わせフォーム:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
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