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2026.10.12 Mon

地震対策で見落としがちな10項目|通電火災を防ぐ感震ブレーカーと停電時の電源確保

 
分電盤のブレーカーを落とした室内と、固定された本棚・枕元に置かれた靴という地震対策
 
日本経済新聞に「ガラス飛散・通電火災を防ごう…自宅の地震対策10の鉄則」という記事があったので調べてみました。全国1000人に、専門家が勧める防災策21項目について実際に取り組んでいるかを聞いた調査で、「備えていない」と答えた人が多い順にランキングしたものです。
 
読んでみて、正直ドキッとしました。上位に並んでいるのは、どれも「知らない」のではなく「知っているけれど、まだやっていない」ものばかりなんです。しかも1位から10位のうち、電気に関わる項目が2つも入っていました。
 
私たちは電気をお届けする会社ですが、停電が起きたときに現場でできることと、各ご家庭・各事業所であらかじめ備えておけることは、やはり別物です。ここ数年、お客さまとの会話でも災害の話題が増えてきました。今回は10項目をひとつずつ追いながら、特に電気まわりについては一歩踏み込んで調べたことをお伝えします。
 


 
目次

 


 

1. 「備えていない」人が多い地震対策10項目

 
まずは元の調査結果を押さえておきましょう。日本経済新聞の調査で「備えていない」と答えた人の比率が高かった順に、10位までを並べるとこうなります。
 
・1位 窓ガラス・食器棚に飛散防止フィルムを貼る(87.5%)
・2位 家族らと災害用伝言ダイヤル171などの体験利用(87.1%)
・3位 近隣住民とのコミュニケーション強化(83.9%)
・4位 地域・マンション管理組合の防災訓練に参加(82.6%)
・5位 感震ブレーカー設置などで通電火災防止(82.4%)
・6位 スリッパ・靴・ヘルメットなどを枕元に用意(76.1%)
・7位 消火器を用意(71.3%)
・8位 粘着マット・金具を使い家具・家電を固定(67%)
・9位 ソーラーパネル、ポータブル電源、モバイルバッテリーなどを用意(65.9%)
・10位 自宅の耐震性を十分に確保(64.3%)
(出典:日本経済新聞「ガラス飛散・通電火災を防ごう…自宅の地震対策10の鉄則」)
 
逆に、対策済みの人が多かったのは「小銭を含む現金を用意」(備えている51.5%)、「地域の避難場所を確認」(50.9%)、「断水に備えた飲料水確保」(44.5%)の3つでした。といっても、最も進んでいる項目でも半数程度です。
 
この並びを眺めていて気づくことがあります。上位に来ているのは、費用が高いものではないのです。1位の飛散防止フィルムも、5位の感震ブレーカーも、2位の伝言ダイヤルの練習に至っては無料です。実際、調査の回答にも「やろうと思えばすぐにできそう」という声が寄せられていました。やらない理由がお金ではなく、「きっかけがない」ということなんですよね。
 
一方で10位の耐震性確保については「費用が高いのでなかなか取り組めない」という声が目立ったそうです。同じ「備えていない」でも、理由はだいぶ違います。この記事では、お金のかからないものから順に片づけていく前提で整理していきます。
 


 

2. 通電火災とは?地震火災の約6割が電気に起因している

 
10項目のなかで、私たちが最もお伝えしたいのが5位の通電火災対策です。知名度のわりに、被害の実態が大きい項目だからです。
 
内閣府の「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」の報告資料によると、阪神・淡路大震災では139件の火災のうち電気火災が85件、原因別では電気関係が61%を占めていました。東日本大震災でも110件のうち71件、原因別で65%です。つまり、大地震で起きた火災のうち、原因が特定できたものの6割前後が電気に起因しているということになります。
 
「地震の火災」と聞くと、まずコンロの火を思い浮かべる方が多いと思います。ところが実際のデータでは、ガス・油器具が原因のものは阪神・淡路大震災で17%でした。地震で怖いのは、火を使っていないはずの電気のほうです。
 
 

 通電火災が起きる仕組み

通電火災は、地震の揺れそのもので起きるというより、「電気が戻ってきたとき」に起きます。流れとしてはこうです。
 
・地震で停電する
・倒れた家電のコードが傷んだり、電気ストーブが布団や紙の上に倒れたまま電源が入った状態になる
・復旧して電気が戻る
・傷んだ配線がショートする、倒れたストーブが点灯して周囲に着火する
 
やっかいなのは、このタイミングが地震の直後とは限らないことです。停電の復旧は数時間後かもしれませんし、数日後かもしれません。そのとき住人が避難していて家にいなければ、火が出ても誰も気づけません。
 
ですから、避難するときにブレーカーを落としてから出るのが基本の対策になります。ただ、けがをして動けない、留守にしていた、慌てていて思い出せなかった――そういう場合に自動で電気を止めてくれるのが感震ブレーカーです。一定以上の揺れを感知すると、自分で電気を遮断してくれます。
 
 

 感震ブレーカーの種類と費用はいくら?

感震ブレーカーには大きく4つのタイプがあります。費用と工事の要否を整理すると、次のようになります。
 

タイプ 費用の目安 工事 向いている場面
分電盤タイプ(内蔵型) 通常の分電盤より約2万円高い程度 必要 新築・リフォームのタイミング
分電盤タイプ(後付型) 機器で約2万円程度 必要 今の分電盤を活かして家全体を止めたい
コンセントタイプ 1万円程度 不要 電気ストーブなど発熱する器具の口だけ止めたい
簡易タイプ 数千円 不要 まず何か付けておきたい(最初の一歩)

分電盤タイプの価格は内閣府の検討会報告、コンセントタイプと簡易タイプの価格は日本経済新聞の記事に示されていた目安です。簡易タイプは、ばねや重りの落下といった仕組みでブレーカーのレバーを物理的に落とすもので、構造が単純なぶん安く、工事もいりません。
 
ひとつ注意しておきたいのが、家全体の電気が落ちるタイプの場合、夜間の地震では同時に照明も消えるということです。元の記事でも専門家が「停電時自動点灯ライトなどの併用が必要」と指摘していました。真っ暗ななかでガラス片を踏む危険は、このあと4章でも触れます。感震ブレーカーと足元灯はセットで考えてください。
 
なお政府は、延焼のおそれがある密集市街地のうち首都直下地震や南海トラフ地震の対策区域について、10年を区切りに25%以上の世帯への普及を目標として掲げています(消防庁の検討会資料)。全国での普及率がいま何%なのかは、公表資料のなかに明確な数字を見つけられませんでした。元の記事でも専門家が「認知度・普及率ともに低い」と語っており、まだこれからの対策だと言えそうです。設置や購入に補助を設けている自治体もあるので、お住まいの市区町村のホームページを一度確認してみてください。
 


 

3. 停電に備える電源確保と、安否確認の練習

 
9位のポータブル電源・モバイルバッテリー・ソーラーパネルの備えは、ランキングのなかでも「備えていない」が65.9%と比較的低め、つまり取り組んでいる方が多い項目でした。スマートフォンが使えなくなる不安は、多くの方が実感しているのだと思います。
 
ここで大事なのは、持っているかどうかより「使える状態か」です。元の記事でも、モバイルバッテリーを持つだけで安心せず半年に1回など定期的に充電する習慣が鍵だと指摘されていました。これは本当にその通りで、いざ停電したときに残量ゼロだった、という話はあり得ます。防災用品の点検日を決めておくのがよいと思います。
(情熱電力の過去記事:台風シーズンの停電への備え方もまとめています)
 
容量の考え方も、少しだけ現実的に見ておきましょう。スマートフォンの電池容量はおおむね10〜20Wh程度です。つまり1,000Whクラスのポータブル電源があれば、スマホの充電だけならかなりの回数まかなえます。一方で電子レンジやドライヤーのような加熱する家電は数百〜1,500Wを消費するので、同じ1,000Whでも1時間と持ちません。「何を動かしたいのか」を先に決めてから容量を選ぶほうが失敗しません。
 
太陽光パネルと蓄電池をお持ちのご家庭でも、停電時に自動で使えるとは限りません。自立運転への切り替え操作が必要な機種が多く、使えるコンセントの口も限られています。この点は過去の記事でも詳しく取り上げましたので、あわせてご覧ください。
(情熱電力の過去記事:太陽光があっても停電に勝てない理由はこちらで詳しく解説しています)
 
ちなみに「対策済み」上位に入っていた飲料水の備蓄についても触れておきます。農林水産省は、飲料用と調理用だけで1人1日3リットル、最低3日分として9リットルを目安として示しています。元の記事で専門家が勧めていた「7日分以上」は、これより手厚い水準です。在宅避難を前提にするなら、1週間分を目標に少しずつ積み増していくのが現実的でしょう。
 
 

 災害用伝言ダイヤル171は毎月1日・15日に試せます

2位の災害用伝言ダイヤル171の体験利用は、ランキングのなかで唯一、費用がまったくかからない項目です。それでも87.1%の人が「やっていない」と答えました。
 
171は、災害時に音声の伝言を録音・再生できるサービスです。1995年の阪神・淡路大震災で電話がつながりにくい状態が続いたことをきっかけに開発され、1998年にサービスが始まりました。震度6弱以上の地震や豪雨災害などの際に提供されます。
 
ポイントは、伝言を「どの電話番号に預けるか」を家族や社内であらかじめ決めておくことです。自宅の固定電話の番号なのか、お父さんの携帯なのか。ここが食い違うと、お互いに録音したのに相手に届かない、という事態になります。
 
そして、ぶっつけ本番だと操作に迷います。NTT東日本によると、体験利用ができるのは次の期間です。
 
・毎月1日・15日(0時〜24時)
・正月三が日(1月1日〜3日、0時〜24時)
・防災週間(8月30日〜9月5日、9時〜17時)
・防災とボランティア週間(1月15日〜21日、9時〜17時)
 
毎月2回もチャンスがあります。次の15日に、ご家族のグループLINEに「今日171試そう」と一言送ってみるところからで十分です。所要時間は数分です。
 


 

4. けがをしないための3つの対策(ガラス・家具・枕元)

 
1位のガラス飛散防止フィルム、6位の枕元の靴、8位の家具固定は、ひとつながりの話として考えるとわかりやすくなります。いずれも「揺れている最中と直後に、けがをしないため」の対策だからです。
 
けがの原因として家具類の転倒・落下・移動が占めた割合は、2016年の熊本地震の高層マンションで40%、2007年の新潟県中越沖地震では40.7%だったとされています。倒れた家具が出口をふさげば、避難そのものができなくなります。
 
そのうえ、窓ガラスや食器が割れて床一面に散れば、素足では建物から避難するのもままならない状態になってしまいます。元の記事では、専門家が「暗闇の中で倒れて壊れた家具の破片を踏むとほぼ確実に行動できなくなる」と表現していました。だからこそ枕元の靴が効いてくるわけです。
 
つまりこの3つは、順番に効く対策です。
 
・家具を固定する → そもそも倒れない・飛んでこない
・飛散防止フィルムを貼る → 割れても散らばらない
・枕元に靴と明かりを置く → 散らばっても動ける
 
全部やるのが理想ですが、一度にできなければ「寝室だけ」から始めるのがおすすめです。就寝中は最も無防備な時間帯ですし、範囲を区切れば週末の数時間で終わります。飛散防止フィルムはホームセンターやインターネットでも手に入ります。防犯性能が認められたCPマーク付きのものを選べば、防災と防犯を兼ねられるそうです。
 
7位の消火器も、ここに加えておきたい項目です。大地震では同時多発的に火災が起きて消防が足りなくなる可能性があり、停電や断水でスプリンクラーや屋内消火栓が使えないことも考えられます。最初の数分で消せるかどうかが分かれ目になります。
 


 

5. 会社・事業所でやっておきたい備え

 
ここまで自宅の話をしてきましたが、地震が平日の昼間に起きれば、多くの方は職場にいます。会社側の備えも同じくらい大切です。
 
通電火災の考え方は、事業所でもそのまま当てはまります。むしろ、電気ストーブ、業務用冷蔵庫、サーバー、工作機械と、無人の時間帯に電気が戻る設備が自宅より多いのが事業所です。閉店後・退社後に復電したときに誰もいない、という状況は普通に起こります。分電盤に感震ブレーカーを入れておく価値は、住宅より高いかもしれません。
 
あわせて確認しておきたいのが次の点です。
 
・最後に退出する人がブレーカーを落とすルールになっているか
・サーバーやレジなど、落とすと困る機器が無停電電源装置(UPS)でつながれているか
・書庫・スチール棚・パーティションが固定されているか(倒れれば避難経路をふさぎます)
・従業員の安否確認を、誰のどの番号で行うか決まっているか
 
3位・4位に入っていた「近隣とのつながり」「防災訓練への参加」も、事業所のほうが取り組みやすい項目です。阪神・淡路大震災では、建物内に閉じ込められて救助された人のうち8割が家族や近隣の人によって助け出されたともいわれています。隣の会社さんと顔が見える関係かどうかは、備蓄の量と同じくらい効くはずです。
 


 

6. 今日からできることの優先順位

 
10項目を並べ直して、「費用」と「所要時間」で整理してみました。上から順に手を付けていくと、少ない負担で効果の高いところから埋まっていきます。
 

やること 費用 所要時間
171を家族・社内で試す(毎月1日・15日) 0円 5分
枕元に靴・明かり・ヘルメットを置く 0〜数千円 10分
モバイルバッテリーを充電し、点検日を決める 0円 10分
簡易タイプの感震ブレーカーを付ける 数千円 30分
寝室の家具を固定し、ガラスにフィルムを貼る 数千〜1万円台 半日
消火器・飲料水(1人1日3L)を用意する 1万円前後〜 半日
分電盤タイプの感震ブレーカー、ポータブル電源 2万円〜十数万円 業者手配
自宅の耐震診断・耐震改修 数十万円〜(補助あり) 数か月

※費用と所要時間は、本文で挙げた出典や一般的な商品の価格帯をもとにした目安です。製品や住宅の状況によって変わります。
 
最後の耐震改修は確かにハードルが高いのですが、1981年以前に建てられた建物は、耐震基準が強化される前の基準で建てられているため耐震性が不十分なものが多いとされています。国土交通省によると、2025年4月時点で耐震診断や耐震改修などの補助が受けられる市区町村は8割を超えているそうです。該当しそうなお住まいの方は、補助の有無だけでも調べておく価値があります。
 


 
まとめ
今回のランキングで印象的だったのは、「備えていない」上位に並んだのが高額な対策ではなかったことです。1位の飛散防止フィルムも、5位の感震ブレーカーの簡易タイプも数千円で、2位の災害用伝言ダイヤル171の練習にいたっては無料です。足りていないのはお金ではなく、きっかけのほうなんですよね。
 
電力会社としてお伝えしたいのは、やはり通電火災のことです。阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも、原因が特定された火災のおよそ6割が電気に起因していました。地震のときに怖いのは、使っている火ではなく、止まっていた電気が戻ってくる瞬間だということになります。避難するときにブレーカーを落とす、それができない場合に備えて感震ブレーカーを付けておく。この2段構えが基本です。
 
そして、これは自宅だけの話ではありません。平日の昼間に地震が来れば、多くの方は職場にいます。無人の時間帯に復電する設備が多いぶん、事業所のほうがリスクは高いとも言えます。退出時にブレーカーを落とすルール、安否確認の方法、棚の固定。どれも今日決められることばかりです。
 
まずは次の1日か15日に、ご家族や職場で171を試してみるところから。はじめてみましょう。
 


 
情熱電力からのお知らせ
停電時に太陽光や蓄電池を実際どう使えばいいのか、感震ブレーカーを付けると普段の電気の使い方はどう変わるのか。こうしたご質問をお客さまからいただくことがあります。
 
情熱電力は電力の小売を行っている会社ですので、設備の工事そのものを承っているわけではありませんが、弊社には電気工事士の有資格者がいます。
また、お客さまの要望内容に応じて、実際に工事を担当してくれる信頼できる電気工事店をご紹介しますし、ご契約中の電気の使われ方から「どのくらいの容量があれば足りそうか」などを一緒に考えることができます。
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この記事に関連するページリンク
・内閣府(防災情報のページ):大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会関連の情報
・総務省 消防庁:感震ブレーカーの普及推進に関する背景・目的
・NTT東日本:災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内
・農林水産省:大事な水、どうやって備えますか?
・国土交通省:住宅・建築物の耐震化について
・日本経済新聞:ガラス飛散・通電火災を防ごう…自宅の地震対策10の鉄則