FIP転・蓄電池併設とは?調整後プレミアムで出力制御を収益に変える仕組みを解説

メガソーラービジネス(日経BP)に「なぜ、太陽光発電の『FIP転・蓄電池併設』が注目されているのか?」という記事があったので調べてみました。
このところ、同じテーマのセミナー案内が本当に増えましたよね。弊社にも「FIP転って結局うちは得なんですか」というご質問が届くようになりました。ただ、調べていくと話の中心は「FITからFIPに移すこと」そのものではありませんでした。カギを握っているのは、JEPX(日本卸電力取引所)の価格が0.01円/kWhまで下がった時間帯に、本来もらえるはずだったプレミアムがどこへ行くのかという一点です。
結論から言うと、消えません。その月の別の時間帯に上乗せされて戻ってきます。これが「調整後プレミアム」と呼ばれる仕組みで、蓄電池を併設して売る時間帯をずらせるなら、上乗せぶんを取りにいけるというわけです。制度の中身と、見ておくべき落とし穴を順に整理してみます。
目次
- 1. FIP転・蓄電池併設とは?注目が集まっている理由
- 2. 背景にあるのは出力制御の増加
- 3. FIP制度の仕組みをおさらい
- 4. 調整後プレミアムとは?0.01円/kWhの時間帯がカギ
- 5. 検討するときに見ておきたい注意点
1. FIP転・蓄電池併設とは?注目が集まっている理由
「FIP転」とは、すでにFIT(固定価格買取制度)の認定を受けている発電所を、買取期間の途中でFIP(フィード・イン・プレミアム)へ移すことをいいます。FITの調達価格がそのままFIPの「基準価格」に置き換わり、FITの残存期間がFIP期間になります。ゼロから作り直す話ではなく、既存の発電所の制度上の立ち位置を乗り換えるイメージですね。
そこに蓄電池を足すのが「FIP転・蓄電池併設」です。狙いは大きく3つあります。
・出力制御を回避して、売れる電力量そのものを確保する
・昼間に充電して夕方に放電し、価格の高い時間帯に売る(タイムシフト)
・後述する「調整後プレミアム」の上乗せを受け取る
このうち3つ目が、2025年ごろから急に注目されるようになった部分です。単なる価格差の取り合い(アービトラージ)だけでは蓄電池の投資を回収しきれなかったところに、制度由来の上乗せが乗る可能性が出てきた、という構図になります。
(情熱電力の過去記事:FIPへの移行に蓄電池を同時に設置する際の手続きについては、こちらでも取り上げました)
2. 背景にあるのは出力制御の増加
そもそもなぜ乗り換えを考えるのか。いちばん大きいのは出力制御の増加です。発電できるのに止められれば、そのぶん収入が減ります。
太陽光をはじめとする変動性再エネが増える一方で、原子力発電所の再稼働も進みました。ベース電源の発電量が増えたことで、特定の時間帯に供給が需要を上回る場面が各地で起きています。
東京エリアでも出力制御が始まった
2026年3月1日、東京電力パワーグリッドが管内で初めて再生可能エネルギーの出力制御を実施しました。抑制量は184万kWです(出典:東京電力パワーグリッド「再生可能エネルギー出力制御の実施について」2026年3月1日)。これで出力制御は全国すべてのエリアに広がったことになります。
2026年度の年間の出力制御見込み率も高い水準です。
| エリア | 2026年度の出力制御見込み率 | 制御電力量の見込み |
|---|---|---|
| 九州 | 6.9% | 12.2億kWh |
| 東北 | 4.0% | 7.5億kWh |
(出典:資源エネルギー庁 第6回 次世代電力系統ワーキンググループ 資料/2025年12月公表時点の見通し)
見込みは年度の途中で上振れすることもあります。実績が出てから「思ったより止められた」となるケースもあるので、収支を組むときは余裕をみておきたいところです。
FIP電源は制御の順番が後ろになる
さらに制度面の変化があります。2025年4月、経済産業省は「出力制御の公平性の確保に関する指針」を改正しました。優先給電ルールが見直され、同じ太陽光でも、FIT電源よりFIP電源のほうが出力制御の順番が後ろになるという整理がなされています。運用開始は2027年度までの見通しとされています。
つまり、このまま何もしなければFIT電源の制御量は相対的に増えていく可能性が高い、ということですね。出力制御の多いエリアほど、FIP転が「守り」の手段として意味を持つのはこのためです。
3. FIP制度の仕組みをおさらい
調整後プレミアムを理解するには、まずFIPそのものの形を押さえておく必要があります。
(情熱電力の過去記事:FIP制度そのものの基本は、こちらの記事で詳しく解説しています)
FITとFIPは何が違うのか
FITが始まったのは2012年。あらかじめ決められた固定価格で、一定期間、電力を買い取ってもらえる制度です。これに対してFIPは2022年4月に導入されました。発電事業者が自分で市場に電気を売り、その販売収入に一定の「プレミアム」が上乗せされる形になります。
| FIT(固定価格買取制度) | FIP(フィード・イン・プレミアム) | |
|---|---|---|
| 売電価格 | 固定(調達価格) | 市場価格+プレミアム |
| 収入の安定性 | 高い | 月ごとに変動する |
| いつ売っても同じか | 同じ(時間帯のインセンティブなし) | 違う(高い時間帯に売る動機が生まれる) |
| 蓄電池との相性 | 薄い | 厚い(タイムシフトが収益になる) |
FIT・FIPの支援に使われるお金は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として、電気を使うすべての人が負担しています。単価は全国一律で、2026年度(2026年5月検針分から)は4.18円/kWhです。FIT初年度の2012年度は0.22円/kWhでしたから、制度の規模がどれだけ大きくなったかが分かりますよね(出典:資源エネルギー庁、東京電力エナジーパートナー公表資料)。
FIPには、市場価格が高い局面ではプレミアムが縮む、という性質があります。固定価格で買い続けるFITと比べて、賦課金の膨張を抑えやすいという狙いが制度に込められているわけです。
プレミアムは月単位で決まる
FIPのプレミアム単価は、ざっくり次の形で計算されます。
・基準価格(電源ごとの目標価格。FITの調達価格にあたる)
・−参照価格(月平均の市場価格+非化石価値の価格−バランシングコスト)
・=プレミアム単価
ここで押さえておきたいのは、プレミアムは30分コマごとではなく、1か月単位で算定されるという点です。日ごとに見れば得な日も損な日もあります。だからこそ「工夫してうまく売ってください」という制度設計になっているのですが、裏を返すとFITほど収入が読めません。
導入当初、発電事業者も金融機関も慎重だったのはこのためでした。プロジェクトファイナンスを組む側からすると、月次で収入が揺れるのは扱いにくい。加えて、プレミアムが厚くなる時期や時間帯に設備故障や運用トラブルで発電機会を落とすと、損失が通常より大きくなります。
その後、年単位で見れば事業性が一定程度確保されるという理解が広がり、FIPを選ぶ事業者は増えてきました。とはいえ普及はまだこれからという段階です。日経BPの記事によれば、太陽光のFIP認定は2025年12月末時点の累計で1.65GW(1,650MW)。FITとFIPの合計認定量75GWに占める割合は2.2%にとどまり、1,650MWの内訳は新規認定が825MW、FIP転が825MWでちょうど半々とされています。
なお、新設の事業用太陽光(10kW以上・地上設置型)は2027年度からFIPの対象外になる予定です。一方で、既存のFIT発電所はFIT期間が残っている限りFIP転が可能です。この非対称が、いま「持っている発電所をどうするか」という議論を押し上げています。
4. 調整後プレミアムとは?0.01円/kWhの時間帯がカギ
さて、ここが本題です。
JEPXのスポット市場では、電気が余っている時間帯に価格が下限の0.01円/kWhまで落ちます。そして現行のFIP制度では、0.01円/kWhの時間帯に売った電力量にはプレミアムが付きません。
ただし、その時間帯に本来配分されるはずだったプレミアムは、消えてなくなるわけではないんです。同じ月の「0.01円/kWh以外の時間帯」に再配分されます。これが「調整後プレミアム」と呼ばれるものです。
狙いははっきりしています。太陽光の発電が集中して電気が余る時間帯から、需給がタイトになる時間帯へ、供給をずらしてほしい。そのためのインセンティブというわけですね。日中に充電して夕方以降に放電すれば、発電事業者は厚くなったプレミアムを受け取れる。電力システム全体で見ても、需給の平準化と価格高騰の抑制につながります。
〇増加係数の計算方法
計算式はシンプルです。
調整後プレミアム単価 = 調整前プレミアム単価 × 増加係数
増加係数は、エリアごと・対象電源ごとに次のように求めます。
増加係数 = 月間総発電量 ÷(0.01円/kWhのコマを除いた月間総発電量)
たとえばあるエリアの太陽光が月に100万kWh発電し、そのうち20万kWhが0.01円/kWhの時間帯だったとします。
・増加係数 = 100 ÷(100 − 20)= 1.25
0.01円/kWhのコマがまったくなければ増加係数は1。つまりプレミアムは変化しません。逆に、余剰が多いエリアほど係数は大きくなります。
エリアと季節で大きく変わる
この係数、エリアと月によってかなり振れます。野村證券フロンティア・リサーチ部が一般送配電事業者のエリア需給実績データをもとに試算したところ、電力需要が小さくなる春と秋の端境期に0.01円/kWhのコマが多発し、増加係数が1を上回る傾向がはっきり出ています。
なかでも太陽光の導入量が多い九州エリアは係数が大きく、2026年5月には3を上回ったとみられています。増加係数が3ということは、0.01円/kWhで発電した量が、それ以外の時間帯の発電量の2倍あったという意味です。それだけ「売っても1円にもならない電気」が出ていた、ということでもあります。
効果が大きくなるのは、FITの調達価格が高い案件です。40円/kWhや36円/kWhといった高価格案件をFIP転すると、基準価格と市場価格の差が開きやすく、調整前プレミアムがそもそも厚くなります。
日経BPの記事にある簡易計算では、基準価格40円/kWh・調整前プレミアム単価30円/kWhのケースで増加係数が3になると、プレミアム部分がふくらんで合計100円/kWhに達する可能性がある、とされています。あくまで係数が3まで振れた月を切り取った試算ですが、桁のインパクトは伝わりますよね。
制度整備も進みました。従来、調整後プレミアムの対象にするには太陽光で発電した電気しか蓄電池に貯められませんでしたが、2025年4月に、系統から充電した場合のプレミアム対象電力量(認定発電由来電気量)の算定式が整備され、系統充電とFIP電源由来の充電を切り分けられるようになっています。運用の自由度はかなり上がったといえます。
5. 検討するときに見ておきたい注意点
ここまで読むと良い話ばかりに見えますが、冷静に見ておきたい点もいくつかあります。
・蓄電池の初期投資と運用コスト。導入費用に加え、保守費用や運用体制の整備にもお金がかかります。単純な価格差取引や需給調整市場だけでは回収が難しかったという経緯があり、調整後プレミアムはあくまで「回収可能性が上がった」段階です
・残存期間の短さ。FIT(FIP転後)の残存期間が短いと、メリットを享受できる年数が足りず、蓄電池の追加投資を回収できないリスクがあります
・系統連系協議の長期化。蓄電池を足すとなれば系統側の手続きが発生します。ここが読めないと事業計画全体が後ろ倒しになります
・0.01円/kWhの時間帯と出力制御の時間帯は、完全には一致しない。プレミアムが付かない時間帯と、止められる時間帯がズレるため、収益予測には不確実性が残ります。ここは制度面での改善が期待されるテーマです
・増加係数は事後的にしか確定しない。エリア全体の実績で決まるものなので、自分の発電所の努力だけでコントロールできる数字ではありません
それでも、FIP転・蓄電池併設には「発電した電気をそのまま売る設備」から「市場や需給を見ながら供給先と時間を選べる資産」への転換という意味があります。FIT開始から10年以上が経ち、買取期間の終了(卒FIT)を見据える事業者も増えてきました。保守や部材交換をすれば、FIT期間が終わったあとも発電は続けられます。投資回収がほぼ終わった発電所に、使いこなせる蓄電池が付いている——この状態は、これからの電力市場でかなり強い持ち札になります。
まとめ
FIP転・蓄電池併設が注目される理由を整理すると、話の芯は「出力制御の回避」と「調整後プレミアム」の2つでした。
JEPXのスポット価格が0.01円/kWhまで下がる時間帯にはFIPのプレミアムが付きませんが、その分は同じ月の他の時間帯に再配分されます。増加係数は「月間総発電量÷0.01円/kWhコマを除いた発電量」で決まり、春秋の端境期や、太陽光の多い九州エリアでは1を大きく上回る月があります。蓄電池で売る時間帯をずらせれば、高い市場価格と厚くなったプレミアムの両方を取りにいける、という構図です。
一方で、蓄電池の投資額、FIT残存期間、系統連系の協議期間、そして0.01円/kWhの時間帯と出力制御の時間帯のズレなど、慎重に見るべき変数も残っています。セミナーの案内が増えている今だからこそ、「自分の発電所のエリア・調達価格・残存期間」という3つの条件に当てはめて、数字で確かめることをおすすめします。制度は、前提が揃ったときにだけ味方になってくれるものなので。。
情熱電力からのお知らせ
情熱電力は長野県松本市の新電力として、電力小売だけでなく、系統用蓄電池や再エネ関連のご相談も日々いただいています。
「うちの発電所はFIP転したほうがいいのか」「蓄電池を足すとして、どのくらいの規模が妥当なのか」——こうしたご質問は、エリアの出力制御の状況やFITの調達価格、残り年数によって答えがまったく変わります。一般論ではなく、個別の条件で一度整理してみませんか。
気になることがありましたら、お気軽にご連絡ください。
TEL 0263-88-1183
https://jo-epco.co.jp/contact
この記事に関連するページリンク
・資源エネルギー庁:FIP制度における基準価格とプレミアム
・資源エネルギー庁:再生可能エネルギー FIP・FIP制度ガイドブック
・資源エネルギー庁:再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について
・日経BP 日経エネルギーNEXT:なぜ、太陽光発電の「FIP転・蓄電池併設」が注目されているのか?