キュービクルとは? 高圧電力を使うなら要チェック!保安料の仕組みも解説
企業が電気料金を見直す際、「高圧」「キュービクル」「保安料」といった言葉を耳にしたことはありませんか?これらは、主に月間の電力使用量が多い事業者が関わる「高圧受電」にまつわる重要なキーワードです。特に経理や管理部門の方にとって、電気契約や請求の内訳を正しく理解することは、コスト管理の第一歩。本記事では、電気の専門家でなくてもわかるように、「キュービクルとは何か」「なぜ保安料がかかるのか」などを丁寧に解説します。高圧受電をしている、または導入を検討している企業の方は、ぜひご一読ください。
■ 目次
1.高圧契約とは?低圧との違いを簡単に解説
2. キュービクルとは?役割と設置場所のイメージ
3. なぜ「保安料」が発生するのか?法的な理由
4. キュービクルを自社保有すると何が変わる?
5. 保安管理業務の委託先の選び方と注意点
1. 高圧契約とは?低圧との違いを簡単に解説
企業の経理業務に関わる中で、「高圧契約」「低圧契約」という言葉を見聞きしたことはありませんか?これは、電気の受け取り方(受電方式)によって分類される契約種別で、会社の規模や使う電力量によって異なります。
● 低圧契約とは?
一般家庭や小規模店舗などで利用されているのが「低圧契約」です。契約電力が50kW未満の場合に適用され、電力会社が直接その建物に電気を供給します。
設備や契約の管理も電力会社が行ってくれるため、利用者側の負担は比較的少なく済みます。
● 高圧契約とは?
一方で、工場やオフィスビル、病院、商業施設など電気を多く使う事業者は「高圧契約」を結ぶことになります。こちらは50kW以上の契約電力がある場合に選ばれ、6600ボルトという高い電圧で電気が供給されるのが特徴です。
この高電圧のままでは建物で使うことができないため、構内にキュービクル(高圧受電設備)を設置し、そこで必要な電圧に変換してから各機器に送る仕組みとなります。
● 経理担当者が知っておきたいポイント
高圧契約を選択する場合、電気料金の請求明細にも特徴があります。
・「基本料金」が高めに設定されている
・「電力量料金(使った分)」は低圧より単価が安い
・「保安管理費(後述)」が別途発生する
つまり、月によって使用量が大きく変動する企業や、契約電力をうまく抑える工夫ができる企業にはメリットがある一方で、設備の管理や保安面では追加の対応が必要になります。
2. キュービクルとは?役割と設置場所のイメージ
高圧契約に欠かせない設備として登場するのが「キュービクル」です。
この言葉、聞き慣れない方も多いかもしれませんが、実は多くのオフィスビルや工場の敷地内に普通に設置されています。
● キュービクルってどんなもの?
キュービクルとは、高圧で受け取った電気を、建物内で使用できる低圧(通常100〜200V)に変換するための「受電設備一式」のこと。
見た目は鉄製の大きな箱で、業務用の冷蔵庫を数台並べたようなサイズ感です。
この中には、
・変圧器(トランス)
・高圧遮断器(ブレーカー)
・計器類(メーターや警報装置)
などが収められており、「電気を安全に・安定的に使うための司令塔」といえる存在です。
● どこに設置されている?
多くの場合、キュービクルは建物の屋外に設置されます。
「屋上の一角」「駐車場の片隅」「フェンスで囲まれたスペース」などが典型です。防水・防塵構造となっているため、雨風にも強く、屋外設置が基本となります。
● 経理担当者にとっての重要ポイント
キュービクルは、電力会社から受け取った高圧電気を建物内で使えるように変換する、企業側で保有・管理する重要な設備です。
高圧契約を結んでいる多くの企業では、このキュービクルを自社で保有しているケースが一般的です。
そのため、キュービクルにかかるコストは、電気料金の中に含まれているわけではありません。
・月々の「保安管理費」
・定期的なメンテナンス費
・点検や修繕の緊急対応費
などが別途、電気の使用料金とは別に請求されます。
つまり、「この設備に関する費用はどこから来ているのか?」を把握しておくことは、経理担当者としての重要な役割です。
設備保有によるリスクとコストを理解し、必要に応じてリース契約や外部委託も検討するなど、適切な判断をサポートできるようにしておきましょう。
3. なぜ「保安料」が発生するのか?法的な理由
高圧契約を結び、キュービクルを自社で保有している場合、「保安管理費」や「保安料」と呼ばれる費用が毎月発生します。
これは単なる“点検代”ではなく、法律で定められた義務に基づくものであることをご存じでしょうか?
キュービクルを設置し、高圧電力を受ける事業者には「保安管理費(通称:保安料)」が毎月発生します。これは任意のサービスではなく、電気事業法に基づく法的な義務に対応するための費用です。
● 保安料の正体は「法定点検費用」
高圧受電設備(キュービクル)を自社で保有している企業には、「電気事業法」により定期的な保安管理業務が義務づけられています。
この点検業務の一例が「月次点検」で、以下の内容が含まれます。
・設備の外観点検(錆・破損・異常発熱の有無など)
・電圧・電流・温度などの測定
・漏電の確認
・非常用発電機の起動テスト(該当設備がある場合)
点検は原則として月1回行う必要があり、設備の状況によっては隔月でも認められるケースがあります。
これらの点検は、有資格者である「電気主任技術者※」が行う必要がありますが、一般企業では外部の保安法人や技術者に業務を委託するのが一般的です。その委託料が「保安管理費」として毎月請求される仕組みになっています。
※ 電気主任技術者とは?
電気主任技術者とは、電気設備の保安・点検・維持管理を専門に行う国家資格者のことです。
高圧受電設備(キュービクルなど)を設置している事業者は、法律により、必ずこの資格を持った技術者を選任することが義務づけられています(電気事業法第43条)。
具体的には、以下のような業務を担当します。
・月次や年次の設備点検・測定
・電気事故の未然防止
・異常発見時の初期対応
・点検結果の報告書作成および行政への提出
中小企業などでは、社内に有資格者がいないケースが多いため、外部の保安法人や電気管理技術者に委託するのが一般的です。
この委託費用が「保安管理費(保安料)」に該当します。
● なぜ法律で義務化されているのか?
高圧電気は万が一の事故が起これば、人的・設備的に大きな被害を招く可能性があります。
そのため、「電気事業法第43条」「同施行規則 第52条」などに基づき、定期的な点検と報告が義務化されています。点検を怠れば行政指導の対象となる場合や、事故時に企業の責任が問われるリスクもあります。
● 経理担当者が押さえるべきポイント
保安管理費は、「なぜ必要か?」「何に使われているのか?」を明確に理解することが大切です。
点検内容が不明確な場合は、業者に報告書の提出を求めることが可能ですし、コストの妥当性を比較するうえでも役立ちます。
コスト管理の視点からも、保安業務の内容と責任範囲を把握することは経理担当者の重要な役割のひとつです。
※電気主任技術者さんが記録を綴じる「保安管理手帳」について
電気主任技術者が実施した点検内容は、「保安管理手帳」という専用の帳票に記録・保存されます。
これは、法定点検の実施状況や測定データ、異常の有無などをまとめた記録で、月ごとにファイリングされ、一定期間の保管が義務づけられています。
┗「保安管理手帳」は赤・オレンジ・緑などのファイルです。
経理担当者としては、保安管理費が適切に使われているかを確認するために、
「最近の保安管理手帳を見せてもらえますか?」
と保安業者に依頼すれば、実際にどんな点検が行われているかを把握することができます。
この手帳は、万一の事故時にも“点検をきちんと行っていた証拠”となる大切な記録でもあるため、信頼できる保安業者を選ぶ際のチェックポイントにもなります。
4. キュービクルを自社保有すると何が変わる?
高圧電力を受ける企業の多くでは、キュービクル(高圧受電設備)を自社で保有しています。
これは電力契約の自由度が高まる一方で、コストや管理責任も伴う選択です。では、自社で保有することで、どんな変化やメリットがあるのでしょうか?
● メリット①:電力契約の自由度が高まる
電力自由化の恩恵を最大限に活かせます。
一般的に、高圧供給は個別見積りで対応する電力会社が多いため、大手電力会社の標準的なプランに比べ、自社の電力消費に応じた柔軟なプラン提案を受けられる場合が多いです。
また、電力会社によって価格差が大きいのもこの高圧供給(キュービクル設置)のメリットと言えます。
● メリット②:目には見えないコスト削減
電力料金に含まれる電力会社側のコストには託送料金(要するに電線使用料)が含まれていて、あまり気にする機会はないかもしれませんが
この託送料金は、低圧供給に比べ高圧供給の方が安いため、
そもそも、電力供給を受ける際には、キュービクルを設置した高圧供給の方が電気を受け取るコストは安いのです。
● メリット③:非常用対応・BCP強化につながる
キュービクルと併せて非常用発電機や蓄電池を導入すれば、災害や停電時も一定の電力を確保できます。
低圧供給を受けている施設で停電時に耐えられる非常用発電機や蓄電池を導入することはなかなか難しいので、
この非常用対策やBCP強化を考えるうえで、キュービクルがあるか・ないかは大きな分かれ道となるでしょう。
これらは特に医療・食品・製造業などでは高く評価される内容だといえます。
● デメリット:保有することで発生する責任とコスト
一方で、キュービクルを自社で持つということは、電力の受け入れ設備を自社で管理・維持する責任があるということでもあります。
経理担当者として注意すべき主なコスト項目は次のとおりです。
・設備の初期費用(購入またはリース)
・月々発生する保安管理費(法定点検費)
・機器の劣化に応じた修理・更新費用
・万が一のトラブル時の緊急対応費用
これらは電気料金とは別に発生します。
「なぜこの費用があるのか?」「妥当な金額か?」といった視点で確認することが、経理担当者には求められます。
● リースという選択肢も
最近では、キュービクルを自社で購入せず、リース契約を活用する企業も増加中です。
こうした方法なら、初期費用を抑えつつ、保守や点検も専門業者に任せることができ、管理の手間を軽減できます。
このように、キュービクルを自社保有することには「自由度が高まる」というメリットと、「管理責任が増える」というデメリットの両面があります。
経理の立場では、こうした構造を理解したうえで、設備費・点検費・契約の見直しのタイミングなどを、他部署と連携しながら適切に判断していく姿勢が求められます。
5. 保安管理業務の委託先の選び方と注意点
キュービクルを自社で保有している企業では、法令で定められた点検・報告業務を実施するために、保安管理業務を外部の専門業者に委託するのが一般的です。
ここで重要になるのが、「どの業者を選ぶか?」という点です。価格だけで選んでしまうと、点検の質や対応力に差が出ることがあります。
● 委託先には「登録保安法人」や「電気管理技術者」がある
保安管理業務の委託先には大きく分けて以下の2種類があります。
・登録保安法人(大手・組織的運営)
安定した体制があり、24時間対応や書類の整備も安心。中堅以上の企業向き。
・電気管理技術者(個人や小規模事業者)
費用は抑えられがちで、地域密着型の丁寧な対応も期待できる。中小企業に適している場合も。
どちらが良い・悪いではなく、自社の設備規模や求める対応レベルに合わせて選ぶことが大切です。
● 経理担当者がチェックすべきポイント
委託契約を結ぶ前後で、経理担当者が特に確認しておきたいのは次のような点です。
・チェック項目 確認ポイント
・点検内容と頻度 月次・年次点検の具体的な作業内容と回数は?
・緊急対応体制 トラブル時、何分で現場対応できるのか?
・提出書類の整備 報告書・保安管理の説明はあるか?
・コスト内訳の明瞭さ 見積書に「点検費」「緊急対応費」など項目ごとの説明があるか?
・有資格者の対応 誰が実際に点検を行うのか、名前・資格の明記があるか?
これらをしっかり把握しておけば、「なんとなく委託している状態」から、「内容を理解して選んだ契約」へと進化させることができます。
● トラブル防止のために、定期的なレビューも大切
委託したからといって任せきりにせず、年に1回程度は契約内容や点検の質を見直すことをおすすめします。
・報告書に不備はないか
・設備に異常が出た時の初動は適切だったか
・コストが高止まりしていないか
こうした視点で見直すことで、万が一の事故リスクを減らすと同時に、無駄なコスト削減にもつながります。
■ 記事まとめ|経理担当者こそ知っておきたいキュービクルの基本と保安管理
電気契約というと設備部門に任せきりになりがちですが、実は経理担当者にとっても「キュービクル」「高圧契約」「保安管理費」は決して無関係ではありません。
電力は企業活動のインフラであり、その契約や設備のあり方次第でコストにもリスクにも大きな影響が出ます。
本記事では、キュービクルの基本から保安管理費の仕組み、委託先の選び方まで、経理視点で押さえるべきポイントを整理しました。
電気は“使うだけのもの”から、“戦略的に管理する経営資源”へ。
情熱電力では、電力コストの見直しや保安業務の適正化に関するご相談も承っています。
「何にどんなお金がかかっているのかわからない…」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。
今回の記事の参考ページ
・経済産業省 電力の安全 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/
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情熱電力は、長野県を中心に中部エリア・全国の高圧供給のお客さまに電力供給の実績があり、高圧供給のコスト削減が得意な電力会社です。
また、保安管理業務は、電気に詳しくないと「なんとなく費用がかかるもの」と思われがちですが、仕組みを知れば最適化の余地がある分野です。
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