JC-STARとは?2027年4月から系統用蓄電池の系統接続に必須となる認証を解説

日経エネルギーNextに「『JC-STAR』で変わる、選ばれる系統用蓄電池メーカーの条件」という記事があったので調べてみました。
このブログでは、需給調整市場の上限価格の引き下げや、接続検討が集中して系統の空き容量が足りなくなっている話など、どちらかというと「制度」と「系統」の話を続けて取り上げてきました。今回は少し毛色が違って、蓄電所に並ぶ「機器そのもの」の話です。
2027年4月以降に契約申込みを行う高圧・特別高圧の蓄電所では、日本のサイバーセキュリティ認証「JC-STAR」の★1を取得した製品を使うことが、系統接続の要件になります。性能が良くても、価格が安くても、ここを満たせない機器は土俵に上がれません。
弊社でも補助金の資料作成や蓄電池案件の開発に日々関わっていますが、この話は系統用蓄電池だけでなく太陽光発電にも及びます。どこまでが対象で、いつまでに何をすればいいのか。整理していきます。
目次
- 1. JC-STARとは?2027年4月から何が変わるのか
- 2. 対象は「蓄電池」ではない。PCS・BMS・EMSが認証を取る
- 3. いつから必要?「契約申込ベース」という落とし穴
- 4. なぜ中国メーカーは取得できていないのか
- 5. 「選ばれるメーカー」の条件はどう変わるか
1. JC-STARとは?2027年4月から何が変わるのか
JC-STARは「Japan Cyber-Security Technical Assessment Requirements」の略で、日本語では「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度」と呼ばれます。インターネットにつながるIoT製品について、サイバーセキュリティの要件を共通のものさしで評価し、ラベルで示す制度です。
経済産業省が整備し、運営はIPA(情報処理推進機構)が担当しています。経済産業省の発表によれば、最も基礎的な「★1」は2025年3月から運用が始まりました。対象はスマート家電やルーターから、ネットワークカメラや制御機器まで幅広く、電力分野では太陽光発電・蓄電池・風力発電・燃料電池が含まれます。
もともとJC-STARは、補助金の申請要件として使われることはあっても、基本的には事業者が任意で取る認証でした。これが変わります。資源エネルギー庁が公表している「分散型電源のサイバーセキュリティ対策について」(2026年7月・電力基盤整備課)によると、系統連系技術要件、いわゆる「グリッドコード」にJC-STAR★1が組み込まれ、適用時期は次のように整理されています。
(情熱電力の過去記事:蓄電池ビジネスのサイバーリスクについては、国の検討会の議論をまとめた記事もあります)
| 電源の種類 | 特別高圧・高圧 | 低圧(50kW未満) |
|---|---|---|
| 蓄電池 | 2027年4月 | 2027年10月 |
| 太陽光発電 | 2027年4月 | 2027年10月 |
| 風力発電 | 2027年4月(高圧・特別高圧の区分なし) | 対象外 |
| 燃料電池 | 2028年4月 | 区分なし |
出典:資源エネルギー庁「分散型電源のサイバーセキュリティ対策について」(2026年7月)をもとに作成
低圧が半年遅れているのは、流通在庫への配慮によるものとされています。風力は適用範囲が狭く、ウィンドファームのゲートウェイのファイアウォール(または同等の防御機能を持つ機器)に限定されています。
2. 対象は「蓄電池」ではない。PCS・BMS・EMSが認証を取る
ここが最初のつまずきどころです。「蓄電池がJC-STARを取る」という言い方をよく耳にしますが、正確ではありません。
認証の対象になるのは、通信機能を持ち、設備の制御や監視を担う機器です。具体的にはPCS(パワーコンディショナー)、BMS(バッテリーマネジメントシステム)、EMS/サイトコントローラー、そしてゲートウェイや遠隔監視装置といったIP通信を行う機器が該当します。
一方、電池のセルやモジュールそのものは、外部と直接通信しないため、通常は対象に含まれません。昇圧変圧器や受変電設備も同様です。
この区別は、実務上かなり効いてきます。電池セルがどこの国で作られていても、制御・監視を担う部分がJC-STAR★1を満たしていれば、システムとしては要件を満たせるということだからです。実際に、2021年創業の国内メーカーであるパワーエックスは、中国製の電池モジュールを採用しつつEMSを自社開発するという構成で、2025年10月に国内メーカーとしていち早く★1の適合ラベルを取得しています。
つまり、競争の軸は「セル単体の性能」から「蓄電池システム全体の構成と信頼性」へと移りつつある、ということですね。
★1は自己適合宣言。それでも軽くはない理由
JC-STARには★1から★4までのレベルがあり、★1と★2はメーカーによる自己適合宣言が基本、★3以上では第三者機関による評価・認証が行われます。グリッドコードで2027年4月から求められるのは、このうち最も基礎的な★1です。
「自己申告なら簡単では?」と思われるかもしれません。IPAが公開している★1の適合基準を見ると、要求事項はS1.1-01からS1.1-16までの16項目。評価方法の内訳は、ドキュメント評価のみが10項目、実機テストのみが4項目、両方を行うものが2項目です。メーカーが自ら評価してチェックリストを作成しIPAに申請し、適合が認められた製品だけがラベルを表示できます。申請時に証跡の提出は不要ですが、有効期間中は証跡を保管する義務があり、疑義が生じた場合は事後に検査が行われ、ラベルが取り消されることもあります。有効期間はラベル発行日から2年間です。
なお、現時点でグリッドコードへの適用が決まっているのは★1までですが、グリッドコード検討会の資料では、分散型電源に固有の脅威やPCS特有の機能を踏まえた★1より上の基準を整備する方針が示されています。時期は未定とされていますが、★1への対応はゴールではなくスタートと考えておいたほうがよさそうです。
3. いつから必要?「契約申込ベース」という落とし穴
適用時期で最も誤解されやすいのが、判定の基準日です。
基準になるのは運転開始の時期ではなく、契約申込みの時期です。資源エネルギー庁の資料では、2027年4月1日以降に一般送配電事業者が契約申込みを受け付ける案件に適用される、と整理されています。接続検討の申込みだけでは適用されません。
裏を返せば、2027年3月末までに契約申込みを済ませた案件は、運転開始が2027年4月以降であっても対象外ということになります。また、2027年4月より前に契約申込みが完了した案件が、遡及適用によって直ちに系統接続できなくなることはないとされています。
既存設備の機器交換についても、FAQで一定の配慮が示されています。過度な負担となる場合に限り、一般送配電事業者への計画書提出を条件として、★1未取得の同類型式製品への交換が当面認められる、という扱いです。
逆算すると、動くのは2026年のうち
では、制度適用前の契約申込みを狙う場合、いつ動けばいいのでしょうか。
接続検討は、申込みから回答まで標準で3カ月を要します。その回答を受けてから契約申込みに進むため、2027年3月末までに契約申込みを終えるなら、接続検討の申込みは遅くとも2026年末までに済ませておく必要がある、という計算になります。
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 〜2026年末 | 接続検討の申込み(回答まで標準3カ月) |
| 2027年3月末まで | 契約申込み。ここまでならJC-STAR★1の要件は適用されない |
| 2027年4月以降 | 契約申込みを行う案件はJC-STAR★1取得製品が必須(高圧・特別高圧) |
| 2027年10月以降 | 低圧(50kW未満)にも適用 |
ただし、追加検討や協議で回答が遅れるケースは珍しくありません。標準どおりに進む前提で逆算すると間に合わなくなる可能性があるので、実際にはもう少し余裕を見ておいたほうが安全です。
そして、ここで気をつけたいのが、駆け込みで契約申込みを急ぐことが本当に得なのか、という点です。制度の適用を避けられたとしても、その蓄電所は10年、20年と動き続けます。★2以上への引き上げが議論されている以上、「今は対象外だから」と選んだ機器が、数年後に別の形で課題になる可能性は残ります。
4. なぜ中国メーカーは取得できていないのか
ここからが、業界で最も話題になっている部分です。
日経エネルギーNextの記事によれば、2026年7月20日時点で、IPAが公表する適合ラベル取得製品の一覧に中国メーカーの製品は1つも確認できないとのことです。CATL、BYD、ファーウェイといった大手も含めてです。一方、中国以外の海外メーカーでは、米テスラ、韓国サムスンSDI、英クラーケン・テクノロジーズなどが既に取得しています。
(情熱電力の過去記事:中国製の蓄電池をめぐる経済安保と脱炭素のせめぎ合いについては、こちらで詳しく整理しています)
同記事は、その理由として、JC-STARが製品のセキュリティ機能だけでなく、開発・製造・保守を担う企業の管理・運用体制も評価対象としている点、そして「外国の法的環境等によりサイバーセキュリティ確保へ影響を受ける懸念はないか」が評価項目に含まれている点を挙げています。
ここは気になったので、一次資料に当たってみました。
IPAが公開している★1の適合基準(S1.1-01〜16)そのものには、外国の法的環境に関する項目は見当たりません。16項目はいずれも製品の技術的なセキュリティ要件です。では記事の指摘は何を指しているのか。IPAが公開している「★1申請書の書き方」を確認すると、申請書の「確認・同意事項」の中に、過去の取消しや法令違反とあわせて「外国の法的環境による影響に関する確認」が置かれています。つまり、製品の技術要件ではなく、申請時に事業者が答える確認事項として組み込まれている、という構造です。
さらに申請書を見ると、記入を求められる範囲がかなり広いことがわかります。
| 記入欄 | 内容 |
|---|---|
| 申請企業 | 企業名、法人番号/LEI番号、本社所在地、親会社①〜③ |
| 製造情報 | 製造ベンダー名、製造国又は地域、OEM/ODM・委託製造などの区分 |
| 委託先 | 製造の委託先(最大3社)、ファームウェアの製造・保守の委託先(最大3社)。それぞれ法人番号と親会社まで |
| 通信モジュール | Ethernet、Wi-Fi、LTE、Bluetooth等ごとに製造ベンダー、法人番号、親会社、ラベル取得状況 |
出典:IPA「★1申請書の書き方」(2025年7月7日版rev3)をもとに作成
親会社、委託先、さらには通信モジュールのベンダーとその親会社まで。製品単体ではなく、その製品を支える体制がどこにつながっているかを申告させる設計になっていることがわかります。
論点になっているのは、中国の「国家情報法」との関係です。同法では、国家による情報活動において、組織や個人に必要な協力を求めることができると定められています。そうなると、中国企業が製造・管理する機器について、企業が自らの意思だけでデータや遠隔操作の権限を管理できるのか、という問いが残ります。
したがって、中国メーカーにとってのハードルは、製品仕様を変えるだけでは解消しにくいものだと考えられます。実際、ある中国メーカーは企業組織や生産拠点、管理体制の抜本的な見直しと、中国国外を中心としたサプライチェーンの再構築によって取得を目指すとしているとされており、今後取得するメーカーが現れる可能性は否定できません。
なお、念のため付け加えておくと、JC-STARは制度上、特定の国や企業を排除することを目的とした制度ではありません。ただ、経済安全保障を重視した設計である以上、結果として中国メーカーにとって相対的に高いハードルになっている、というのが現状の見え方です。
5. 「選ばれるメーカー」の条件はどう変わるか
これまで系統用蓄電池の機器選定では、性能・価格・保証条件が主な評価項目でした。そこにサイバーセキュリティ対応が加わります。
ただし、順番が大事です。JC-STARを取得したから採用される、という話ではありません。性能や価格、保証条件が重要であることは変わらない。一方で、取得していなければ比較検討の土俵にすら上がれない。付加価値ではなく、前提条件になるということです。
事業者側から見れば、CAPEX(資本的支出)への影響は避けられないでしょう。価格競争力で市場を牽引してきたメーカーが選択肢から外れれば、調達コストは上がる方向に動きます。すでに開発が進んでいる案件では、契約申込みの時期によって想定していたメーカーの変更を迫られ、スケジュールが動くケースも出てきます。
そしてもう一点。★2以上の整備が検討されている以上、「今★1を持っているか」だけでなく、「制度が厳しくなったときに追随できる体制か」という視点が効いてきます。EMSやBMSを自社で開発し、ファームウェアの更新を自社で回せるメーカーと、委託先に依存しているメーカーとでは、次の改定への対応速度が変わってくるはずです。
機器を選ぶときに、カタログの性能値だけでなく、その機器の制御部を「誰が作り、誰が保守するのか」まで確認しておく。手間はかかりますが、20年使う設備であることを考えれば、見ておいて損はないポイントだと思います。
まとめ
2027年4月以降に契約申込みを行う高圧・特別高圧の蓄電所では、JC-STAR★1を取得した製品を使うことが系統接続の要件になります。低圧(50kW未満)は2027年10月から、燃料電池は2028年4月からの適用です。
押さえておきたいポイントは3つあります。1つ目は、認証の対象が電池のセルやモジュールではなく、PCS・BMS・EMSといった通信機能を持つ制御・監視機器だということ。2つ目は、判定の基準が運転開始ではなく契約申込みの時期であり、2027年3月末までの契約申込みを狙うなら接続検討は2026年末までに動く必要があること。3つ目は、★1がゴールではなく、★2以上の整備が検討されているということです。
JC-STARは単なる製品認証にとどまらず、申請書で親会社や委託先、通信モジュールのベンダーまで申告を求める、体制を含めた仕組みになっています。価格と性能だけで機器を選べた時代から、「誰が作り、誰が保守するのか」までを含めて選ぶ時代へ。蓄電所の投資判断においても、この視点は外せなくなりそうです。
情熱電力からのお知らせ
蓄電池や太陽光の案件を進めていると、「この機器で2027年以降も大丈夫なのか」「今の開発スケジュールで契約申込みは間に合うのか」といった、制度と実務が絡んだ判断が増えてきます。
情熱電力では、電力小売としての日々の業務のほか、補助金の資料作成や蓄電池案件の開発にも関わっています。制度の読み解きでお困りのことがあれば、気になる段階でお気軽にご相談ください。一緒に整理するところからお手伝いします。
TEL 0263-88-1183
https://jo-epco.co.jp/contact
この記事に関連するページリンク
・IPA(情報処理推進機構):適合ラベル取得製品リスト
・IPA(情報処理推進機構):★1(レベル1)適合基準・評価手順(評価手法・評価ガイド)
・資源エネルギー庁:分散型電源のサイバーセキュリティ対策について
・電力広域的運営推進機関(OCCTO):グリッドコード検討会
・日経BP 日経エネルギーNext:「JC-STAR」で変わる、選ばれる系統用蓄電池メーカーの条件