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2026.09.12 Sat

燃えにくいモバイルバッテリーが登場|準固体電池とは?事故2140件と正しい捨て方・回収の現実

 
準固体電池を使ったモバイルバッテリーと、安全性とリサイクルを示すアイコン
 
日経ビジネス電子版に「NTTドコモが安全性強化のモバイルバッテリー 求められるさらなる取り組み」という記事があったので調べてみました。
 
モバイルバッテリーの発火事故が増えている、という話はもう何度も耳にしていると思います。実際、当ブログでも過去に何度か取り上げてきました。ただ今回の記事が面白かったのは、話が「気をつけて使いましょう」で終わっていないところです。
 
ひとつは、電池そのものを燃えにくくするという、メーカー側からのアプローチ。ドコモは2026年7月10日、準固体リチウムイオン電池を採用した「準固体モバイルバッテリー01M」を発売しました。もうひとつは、使い終わったバッテリーをどう回収するかという、出口の話です。
 
わたしたちは電気を扱う会社なので、電池の「入口」の話にはつい目が向きます。でも実際に事故が起きているのは、使っている最中と、捨てるときなんですよね。今回は、その両方を整理してみます。
 


 
目次

 


 

1. ドコモが出した「燃えにくい」モバイルバッテリー

 
NTTドコモが2026年7月10日に発売したのが「準固体モバイルバッテリー01M」です。容量は1万mAhで、スマートフォン向けとしてはごく標準的。特別に大きいわけでも、小さいわけでもありません。
 
では何が新しいのかというと、中に入っている電池です。ドコモとして初めて、準固体リチウムイオン電池を採用しました。パッケージにも「燃えにくい次世代バッテリー」と大きく書かれています。
 
容量でも価格でもなく「燃えにくさ」を製品の看板に持ってくる。これはなかなか珍しいことだと思いませんか。裏を返せば、それだけ発火事故が消費者の不安になっている、ということでもあります。
 


 

2. 準固体電池とは?液体・全固体とのちがい

 

 電解質が「流れない」だけでリスクの出方が変わる

リチウムイオン電池の中には、イオンが行き来するための「電解質」が入っています。いま普及している一般的なリチウムイオン電池では、これが液体です。
 
液体だと、外から強い衝撃を受けたり、内部で異常が起きたりしたときに、漏れる・発熱するといったかたちで一気に暴走しやすい。膨らんだモバイルバッテリーの写真をニュースで見たことがあると思いますが、あれは中で起きている変化が外に出てきたサインです。
 
準固体電池は、この電解質をゲル状・半固体にしたものです。日経クロステックの記事では、一般的な液体系リチウムイオン電池と比べて「液漏れや熱暴走のリスク低減が期待される」と説明されています。あくまで「リスクが下がることが期待される」であって、絶対に燃えないという意味ではありません。ここは押さえておきたいところです。
 
 

 全固体電池とは何が違うのか

(情熱電力の過去記事:全固体電池のしくみと課題については、こちらで詳しく解説しています)
 
「固体」と聞いて、全固体電池を思い浮かべた方もいるかもしれません。ざっくり言えば、電解質をどこまで固めたかの違いです。
 

電池のタイプ 電解質の状態 位置づけ
液体系リチウムイオン電池 液体 いま市販品の主流。実績は豊富だが、破損や高温で液漏れ・熱暴走が起きうる
準固体リチウムイオン電池 ゲル状・半固体 液漏れ・熱暴走のリスク低減が期待される。市販品への採用が始まった段階
全固体電池 固体 安全性と容量の両立が期待されるが、量産技術とコストが課題。本格普及はこれから

※この分類は一般的な整理です。「準固体」に統一された規格や定義があるわけではなく、性能は製品ごとに異なります。準固体の特徴についての記述は、日経クロステック(2026年8月24日)によります。
 


 

3. 5年で2140件。事故はなぜ夏に増えるのか

 
ここで、事故の実態を数字で見ておきます。
 
製品評価技術基盤機構(NITE/ナイト)が2026年7月15日に公表した注意喚起によると、2021年から2025年までの5年間にNITEへ通知された「リチウムイオン電池搭載製品」の事故は2140件。このうち最も多かったのがモバイルバッテリーでした。
 
そしてもうひとつ、覚えておいてほしい傾向があります。NITEは、事故件数が春から夏にかけて気温の上昇とともに増え、8月にピークを迎えると指摘しています。「夏バテ(夏のバッテリー)にご注意を」というのが、この注意喚起のタイトルです。うまいこと言いますよね。
 
理由はシンプルで、リチウムイオン電池は熱に弱いからです。真夏の車内、直射日光の当たる窓際、布団やクッションの上での充電。どれも熱がこもります。心当たりのある置き場所、ありませんか。
(情熱電力の過去記事:火災の件数や具体的な発生状況は、こちらの記事で詳しくまとめています)
 


 

4. ドコモが回収を始めた。でも「自社製品だけ」なのはなぜ?

 
ここからが、今回いちばん考えさせられた部分です。
 
ドコモは1998年から携帯電話のリサイクルに取り組んでいて、2024年には年間約320万台を回収しています。ところが、モバイルバッテリーはこれまで回収の対象ではありませんでした。今回それを対象に加えたのは、使用中の発火事故に加えて、廃棄物をリサイクルする中間処理施設での爆発事故が増えているからだといいます。
 
捨てられたバッテリーが、ごみ収集車や処理施設のなかで潰されて発火する。使う人の手を離れたあとにも、事故は起きているわけです。
 
 

 広域認定制度という枠組み

ただし、ドコモショップで回収してもらえるのは自社製品に限られます。ここには制度上の理由があります。
 
ドコモが活用しているのは、環境省が所管する「広域認定制度」です。これは、認定を受けたメーカーが自社製品を全国規模で回収・リサイクルできるようにする制度で、裏を返せば、対象は基本的に自社製品ということになります。他社のバッテリーまでは引き受けられない、という構図です。
 
日経クロステックの記事は、ここからさらに踏み込んでいます。ドコモショップが、小型充電式電池のリサイクルに取り組む業界団体・JBRCの協力店になれば、他社製のモバイルバッテリーも回収できるようになる。全国に店舗網を持つドコモだからこそ、そこまでやってほしい——という提案です。ただ、現時点でそうした考えはない、というのが取材に対するドコモの回答でした。
 
そして環境省は、モバイルバッテリーを処分する最終的な責任は自治体が負う、と明言しています。ところが実際の処分方法は自治体によってかなり違い、処理を請け負う施設が近くにあるとも限りません。長野県内でも、お住まいの市町村によってルールは変わります。
 
 

 KDDIは他社製も回収(期間限定)

一方で、競合のKDDIは2026年8月1日から10月31日までの期間限定で、東京都内の4店舗においてメーカーを問わずモバイルバッテリーを無料回収する取り組みを始めています。期間も店舗数も限られてはいますが、「メーカーを問わない」という一点で、利用者にとっての使いやすさはまったく違います。
 
燃えにくい電池をつくることと、使い終わった電池を安全に引き取ること。この2つは両輪なのだと思います。
 


 

5. 使い終わったモバイルバッテリー、どこへ持っていく?

 
では、いま手元にある古いモバイルバッテリーはどうすればいいのか。持って行き先を整理しました。

持って行き先 出せるもの 調べ方
キャリアショップ ドコモショップは自社製モバイルバッテリーの回収を開始 店頭または各社の公式サイトで対象を確認
JBRCの協力店・協力自治体 リサイクルマークのついた小型充電式電池が中心(製品により対象外あり) JBRCサイトの「協力店検索」
家電量販店の回収ボックス 店舗ごとに対象が異なる 回収ボックスの表示を確認
お住まいの市町村 最終的な処分の責任は自治体。ルールは自治体ごとに大きく違う 自治体サイトで「リチウムイオン電池」を検索

やってはいけないのは、燃えるごみ・燃えないごみにそのまま出してしまうことです。収集車の中で潰れて発火すれば、火災になります。膨らんでいる・熱を持つといった異常があるものは、持ち運びの前に受け入れ先へ相談してください。
 


 

6. 覚えておきたい「3つのC」

 
先ほどのNITEの注意喚起では、事故を防ぐポイントが「3つのC」としてまとめられています。これがよくできているので紹介します。
 
・賢く選ぶ(Cool Choice)……販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認する。表示マークが適切かを見る
・丁寧に使う(Careful use)……高温の場所で使わない・置かない。強い衝撃や圧力を加えない。異常があれば使用をやめる
・正しく捨てる/資源循環(Correct disposal with better recycling)……捨てるときにリチウムイオン電池が使われていないかを確認し、メーカー回収や自治体の回収方法を調べる
 
3つ目が入っているところが大事だと思うんです。安全な電池を選ぶことと、丁寧に使うことは、多くの人がすでに意識している。でも「正しく捨てる」までを事故対策として捉えている人は、まだそう多くないのではないでしょうか。
 


 
まとめ
モバイルバッテリーの安全性は、いま2つの方向から改善が進んでいます。ひとつは電池そのものを燃えにくくすること。ドコモが発売した準固体モバイルバッテリー01Mは、その第一歩といえる製品です。ただし「燃えにくい」であって「燃えない」ではないことは、忘れないでおきたいところです。
 
そしてもうひとつが、使い終わったあとの回収です。ドコモが自社製品の回収を始めたのは前進ですが、対象は自社製に限られます。KDDIのように他社製まで引き取る動きもありますが、期間も場所も限定的。結局のところ、いま古いモバイルバッテリーを持っている人は、自分で受け入れ先を探すしかないのが実情です。
 
NITEによれば、リチウムイオン電池搭載製品の事故は5年間で2140件、そのピークは8月。気温が下がってくるこれからの時期は、夏のあいだ車の中や窓際に置きっぱなしだったバッテリーを点検し、使わないものを処分するのにちょうどいいタイミングです。引き出しの奥に、何年も前のモバイルバッテリーが眠っていませんか。
 


 
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この記事に関連するページリンク
・一般社団法人JBRC:協力店・協力自治体検索(検索システム)
 ┗ 小型充電式電池を持ち込める協力店・協力自治体を、お住まいの地域から探せます
・環境省:環境再生・資源循環 広域認定制度関連
 ┗ メーカーが自社製品を全国規模で回収・リサイクルする制度の趣旨と、認定事業者の一覧が確認できます
・環境省:リチウムイオン電池特設サイト
・日経ビジネス:NTTドコモが安全性強化のモバイルバッテリー