Wi-Fiルーターの電気代は年間いくら?つけっぱなしの実測値と法人の通信機器コストを解説

日経クロステック Activeに「Wi-Fiルーターのつけっぱなしで電気代はどれだけかかる? 実測してみた」という記事があったので調べてみました。
ご自宅のWi-Fiルーター、最後に電源を切ったのはいつでしょうか。「引っ越しのとき以来かもしれない」という方が、たぶん多数派ですよね。24時間365日、何年も動き続けているのに、その電気代を気にしたことがある人は意外と少ないはずです。
同じことが、実は事業所でも起きています。ルーター、ONU、スイッチングハブ、無線アクセスポイント。誰も電源を切らないまま、休日も夜間も静かに電気を使い続けている機器が、オフィスには何台もあることでしょう。
今回は、この「誰も気にしていない常時通電の電気代」が結局いくらになるのかを、実測データと公的な目安単価をもとに計算してみました。先に結論を言ってしまうと、金額そのものは大きくありません。ただ、逆説的にその小ささが分かること自体に意味があります。節電をどこから手を付けるか、優先順位を決める材料になるからです。
目次
- 1. Wi-Fiルーターの電気代は年間いくら?計算式で出してみる
- 2. 実測してわかった、仕様と実際のズレ
- 3. こまめに電源を切ると、電気代はいくら下がる?
- 4. ルーターの省電力機能はどこまで効くのか
- 5. 法人の場合、金額は「台数×24時間×365日」で効いてくる
- 6. 結局どこから節電すべき?待機電力の全体像から考える
1. Wi-Fiルーターの電気代は年間いくら?計算式で出してみる
年間の電気代は、次の式で計算できます。
・消費電力(W)÷ 1000 × 24時間 × 365日 × 電力量料金(円/kWh)
ここで使う「円/kWh」には、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会(家電公取協)が定める電気料金の目安単価を当てはめます。現在の目安単価は、令和4年(2022年)7月22日に改定された31円/kWh(税込)です。家電のカタログに載っている「1年間の電気代」もこの単価で計算されているので、比較の物差しとしてちょうどいいですね。
家庭向けWi-Fiルーターの仕様に書かれている最大消費電力は、おおむね7〜36Wの範囲です。ローエンドモデルで約10W、ミドルクラスで約20Wが目安で、30Wを超えるのは一部のハイエンド機に限られます。
これを式に当てはめると、こうなります。
| 消費電力 | 想定される機種 | 1日の電気代 | 1年間の電気代 |
|---|---|---|---|
| 7W | 仕様上の下限あたり | 約5.2円 | 約1,900円 |
| 10W | ローエンドモデル | 約7.4円 | 約2,720円 |
| 20W | ミドルクラス | 約14.9円 | 約5,430円 |
| 36W | 一部のハイエンド機 | 約26.8円 | 約9,780円 |
※電力量料金31円/kWh(家電公取協の目安単価)で計算。同じ消費電力のまま24時間365日動き続けたと仮定した場合の金額です。
「最大消費電力」は、いつもその値ではない
ここで気をつけたいのが、この計算が「常に最大消費電力で動き続けた場合」の数字だという点です。仕様書に書かれている最大消費電力は、いわば全力疾走したときの値。実際のルーターは、そこまで働き続けてはいません。
では、実際はどのくらいなのでしょうか。
2. 実測してわかった、仕様と実際のズレ
元記事では、バッファローのWi-Fi 6E対応ミドルクラス機「WNR-5400XE6」(仕様上の最大消費電力20.4W)を、スマートプラグで測定しています。なお、この測定はスマートプラグの簡易的な計測機能によるもので、元記事でも参考値として扱われています。
| 状態 | 実測の消費電力 |
|---|---|
| 通信していないとき | 8.3〜8.8W |
| スマホ1台で動画を再生 | 8.7〜10W |
| スマホ3台で同時に動画を再生 | 11.5〜11.7W |
| ファイルのダウンロード中 | 10〜12W |
| Wi-Fi機能をオフ(無通信時) | 8.1〜8.7W |
| LEDを消灯(無通信時) | 8.2〜8.7W |
| 有線LAN機能をオフ(無通信時) | 7.0〜7.1W |
| スリープ状態 | 4.8W |
※出典:日経クロステック Activeの実測記事。スマートプラグ「SwitchBot プラグミニ」による簡易測定の参考値です。
仕様では20.4Wとされている製品が、実際に使っている場面では8〜12W。ざっと半分程度で動いていることになります。端末を1〜3台つないだ一般的な使い方なら、年間の電気代は3,000円前後に収まる計算です。
接続台数を増やしても、消費電力はあまり変わらない
面白いのはここからです。スマホ1台で動画を見たときが8.7〜10W、2台で11〜11.3W、3台で11.5〜11.7W。台数が増えても、増え方はごくわずかですよね。通信していない状態にいたっては、1台でも3台でもほぼ同じ8.4〜8.9Wでした。
つまりWi-Fiルーターの消費電力は、「何台つないでいるか」よりも「電源が入っているかどうか」でほとんど決まっている、ということになります。この性質は、あとで出てくる法人の試算でも効いてきます。
3. こまめに電源を切ると、電気代はいくら下がる?
節電と聞いて最初に思い浮かぶのは、やはりこまめな電源オフでしょう。
消費電力が9〜12W程度のルーターなら、毎日8時間電源を切ることで年間1,000円程度の節約になります。1か月あたりにすると80円ちょっと。正直なところ、毎日の手間に見合うかというと微妙な金額ですよね。
(情熱電力の過去記事:「つけっぱなし」と「こまめにオフ」の損得は、エアコンでも同じ議論があります)
しかも、電源を切ることで失うものもあります。
電源を切ると起きる、2つの不便
ひとつめは、すぐにはつながらないことです。電源を入れてインターネット接続が確立しても、Wi-Fiが使えるようになるまでには数分かかります。特に5GHz帯では、使うチャネルによってDFS(動的周波数選択)という機能が働きます。気象レーダーや航空レーダーの電波とぶつからないよう、使い始める前に周囲を監視するしくみで、元記事によると、この監視のためにさらに60秒程度かかる場合があるとのことです。
ふたつめは、ファームウェアの自動更新が当たらなくなることです。最近のルーターの多くは自動更新に対応していますが、更新処理は通信量の少ない深夜帯に実行されるのが一般的です。たとえばバッファロー製品では、午前4時〜5時に更新する設定が用意されています。他社製品でも深夜帯に設定されていることが多いようです。この時間に電源が落ちていると、更新は適用されません。
ルーターのファームウェア更新は、見つかった脆弱性を塞ぐためのものでもあります。更新が長期間当たらないルーターは、家庭でも事業所でも、じわじわとリスクを溜め込むことになります。
節電のために電源を切ること自体は有効です。ただ、切るのであればスマートプラグのスケジュール機能などを使って、「確実に使わない時間帯だけ」に限るのが現実的でしょう。
4. ルーターの省電力機能はどこまで効くのか
多くのルーターには、管理画面から設定できる省電力機能があります。時間帯を決めてWi-Fiを止める、LEDを消灯する、有線LAN機能を止める、スリープさせる、といったものですね。
さきほどの表をもう一度見てみてください。Wi-Fiをオフにしても8.1〜8.7W、LEDを消しても8.2〜8.7W。通信していないときの8.3〜8.8Wと比べて、ほとんど変わっていません。節電効果がないわけではありませんが、その差は小さく、限定的だと言えます。
一方、有線LAN機能をオフにすると7.0〜7.1Wまで下がります。ただしこの機種の場合、有線LANをオフにするとWAN側のポートも使えなくなり、インターネット接続そのものが切れてしまいます。スリープ状態の4.8Wにいたっては、Wi-Fiも有線LANも使えません。
整理すると、「よく効く設定ほど、ネットが使えなくなる」という関係になっています。それなら電源を切ったほうが合理的ではないか、というのが元記事の結論でした。うなずける話ですね。
5. 法人の場合、金額は「台数×24時間×365日」で効いてくる
ここからは事業所の話です。
家庭ならルーターは1台ですが、オフィスや店舗はそうはいきません。ルーター、ONU、スイッチングハブ、無線アクセスポイント。場所によってはVPN装置や防犯カメラのレコーダーも加わります。どれも24時間動き続けていて、しかも先ほど見たとおり、使っていなくても消費電力はさほど下がりません。
1台あたり10Wと仮定して、台数別に試算してみます。あくまで仮定に基づく計算で、実際の消費電力は製品ごとに異なります。
| 常時通電する通信機器の台数 | 年間の消費電力量 | 年間の電気代 |
|---|---|---|
| 1台(一般的な家庭) | 約88kWh | 約2,720円 |
| 5台(小規模な事務所) | 約438kWh | 約13,580円 |
| 10台(フロア単位のオフィス) | 約876kWh | 約27,160円 |
| 30台(複数拠点・多店舗) | 約2,628kWh | 約81,470円 |
※1台10W・24時間365日稼働・31円/kWhで試算した参考値です。法人のお客様の実際の電力量料金単価は契約内容によって異なります。
10台で年間2万7千円ほど。金額としては決して大きくありませんが、「誰も意識しないまま毎年出ていくお金」としては、知っておく価値のある数字ではないでしょうか。
事業所では、電源を切る判断のハードルが上がる
ただし法人の場合、「夜は切ってしまおう」という判断は家庭よりずっと慎重になります。
・勤怠打刻やPOSレジがネットワーク経由なら、始業前に立ち上がっていないと業務が止まる
・防犯カメラや設備の遠隔監視は、夜間こそ本番という現場もある
・リモートアクセスやVPNを夜間や休日に使う人がいる
・ファームウェア更新の時間帯に電源が落ちていると、セキュリティ更新が当たらない
最後の項目は、法人では特に重く効いてきます。家庭なら「そのうち当たるだろう」で済む話が、事業所では情報セキュリティの管理項目そのものになるからです。
そう考えると、事業所の通信機器については、電気代を理由に電源を切るより、「そもそも必要な台数か」「使われていない機器が通電したまま残っていないか」「古い機器が電力効率の悪いまま居座っていないか」を点検するほうが、筋のいい進め方だと言えます。ハブの空きポートに何もつながっていない、誰も使っていない会議室のアクセスポイントが生きている。こういうものは、切っても誰も困りません。
6. 結局どこから節電すべき?待機電力の全体像から考える
最後に、この数字が全体の中でどのくらいの位置にあるのかを見ておきます。
一般財団法人 省エネルギーセンターの「平成24年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書」によると、1世帯あたりの待機時消費電力量は年間228kWh。これは1世帯の全消費電力量4,432kWhの5.1%にあたるとされています。ただしこれは2012年度(平成24年度)に行われた調査で、その後の家電の省エネ化は反映されていません。現在はもう少し小さくなっている可能性があります。
年間3,000円ほどのWi-Fiルーターの電気代は、この待機電力とほぼ同じ規模感の話です。一方、家庭で電気を多く使うのはエアコンや冷蔵庫、給湯といった顔ぶれで、こちらは桁がひとつ違ってきます。
(情熱電力の過去記事:家電のコードをコンセントから抜くべきかどうかは、こちらで詳しく検証しています)
だからといって「ルーターの電気代は気にしなくていい」という話ではありません。単純に、順番の問題です。まず桁の大きいところから手を付けて、そのうえで、旅行や出張で長期間留守にするときにルーターの電源を落とす。この順番なら、手間の割にしっかり効く節電になります。
なお、古いWi-Fiルーターのなかには最新機種より電力効率が低いものもありますが、消費電力は発売時期だけでなく性能や搭載機能にも左右されます。買い替えれば必ず電気代が下がるとは限らない、という点も覚えておきたいところですね。購入や買い替えを検討するときは、仕様上の最大消費電力だけでなく、実際の動作時の消費電力も確認してみてください。
まとめ
Wi-Fiルーターの電気代を実測データから整理すると、こうなります。仕様上の最大消費電力は7〜36Wと幅がありますが、端末を1〜3台つないだ一般的な使い方での実測値は8〜12W程度。年間の電気代にすると3,000円前後です。毎日8時間電源を切っても、節約できるのは年間1,000円程度にとどまります。
省電力機能も、Wi-FiオフやLED消灯では消費電力がほとんど変わらず、大きく下がる設定はネット接続そのものが使えなくなるものばかり。効かせようとするほど不便になる構図です。
一方、事業所では話が変わります。1台あたりは小さくても、24時間動く機器が10台あれば年間2万7千円ほど。ただしファームウェアの自動更新や夜間の遠隔監視を考えると、電源を切る判断は慎重にならざるを得ません。むしろ「使われていない機器が通電したまま残っていないか」を点検するほうが現実的でしょう。
金額の小ささが分かること自体に、実は価値があります。節電は、桁の大きいところから順番に手を付けるのが鉄則。ルーターはその順番の後ろのほうにいる、あまり気にすることはない! と分かっただけでも収穫だとしましょうか。
情熱電力からのお知らせ
「うちの事業所、そもそも何にどれだけ電気を使っているんだろう」。今回のように1台ずつ計算していくと、意外と見えていない部分が多いことに気づきます。
情熱電力は長野県松本市の新電力として、電気のご契約だけでなく、使用量の見方や料金の内訳についてのご相談も承っています。検針票や請求書を見ながら「この項目は何ですか」といった素朴な質問でも大丈夫です。電気代の全体像がつかめると、どこから手を付けるべきかも見えてきますよ。
気になる方は、お気軽にご相談ください。
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