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2026.09.24 Thu

長期脱炭素電源オークションとは?LNG専焼火力の募集量が4倍になった理由と電気代への影響

 
夕暮れの臨海部に建つLNG火力発電所とLNGタンク、送電鉄塔が並ぶ電源開発の風景
 
「脱炭素」を掲げた制度なのに、CO2を出すLNG火力を大きく増やす——。電気新聞の『長期脱炭素電源入札の見直し/LNG専焼、大幅に拡大』という記事に、一見ちぐはぐに見える話が載っていたので調べてみました。
 
長期脱炭素電源オークションは、20年間の固定収入を約束することで発電所への投資を呼び込む制度です。その原資は、私たちが払う電気料金からまわっています。今回、資源エネルギー庁はこの制度でLNG専焼火力の募集量を大幅に増やすことを決めました。2027年1月の第4回入札から適用されます。
 
なぜ脱炭素の制度でLNG火力なのか。答えは電力広域的運営推進機関が示した、2040年に向けた需給の見通しにありました。データセンターの新設などで電力需要が伸びる一方、古い火力を全部建て替えても供給力が足りない、という試算です。
 
制度の名前は少し取っつきにくいのですが、中身は「10年後の電気が足りるかどうか」という、とても現実的な話です。順番に見ていきましょう。
 


 
目次

 


 

1. 長期脱炭素電源オークションとは?20年の固定収入で発電所を建てる仕組み

 
まず制度の輪郭からいきましょう。長期脱炭素電源オークションは、容量市場の一種です。容量市場というのは「発電した電気(kWh)」ではなく「いざというときに発電できる能力(kW)」を売り買いする市場のこと。発電所という設備そのものに値段をつける、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
 
普通の容量市場との違いは、契約が1年ではなく長いことです。落札した発電事業者は、原則20年間にわたって固定的な収入を受け取れます。発電所は建てるのに何年もかかり、投資を回収するのに何十年もかかります。「20年分の収入が先に見えている」状態をつくることで、脱炭素電源への投資に踏み切ってもらう。それがこの制度のねらいです。
 

項目 内容
売り手 発電事業者
買い手 小売電気事業者(拠出金を負担)
市場運営者 電力広域的運営推進機関(広域機関)
最低応札容量 原則10万kW
供給力提供期間 基本20年間
価格決定方式 マルチプライスオークション
対象電源 脱炭素電源、LNG火力

出典:電気新聞(2026年9月、SCOPE「長期脱炭素電源入札の見直し」)
 
ここで注目していただきたいのが「買い手」の欄です。買い手は小売電気事業者。つまり、落札した発電事業者に支払われる固定収入は、小売電気事業者が拠出金という形で負担しています。そしてその拠出金は、めぐりめぐって電気料金の原価に含まれていきます。読者のみなさんが毎月払っている電気代とは、遠いようでいて実はつながっている制度なのです。
 


 

2. 「脱炭素」の制度で、なぜLNG火力を増やすのか

 
さて、本題です。この制度の対象電源には、当初から「LNG火力」が入っていました。とはいえ位置づけは限定的で、LNG専焼火力は2023年度の初回入札から2025年度までの3年間限定、合計600万kWを募集する、というものだったのです。
 
これが2026年6月、大きく方針転換されました。第4回入札から2032年度までの7年間で、合計3,900万〜5,500万kW程度を集める。これまでの3回の入札で落札されたLNG専焼火力は累計約1,010万kWですから、最低でもその約4倍にあたる量を募集する計算になります。CO2を出す電源を「大幅に拡大」するわけで、脱炭素という看板だけを見ると違和感がありますよね。
 
その理由は、需給の見通しにありました。
 
 

2040年に電力需要は1兆1千億kWhへ

広域機関が2025年に示した中長期の電力需給シナリオでは、2040年の電力需要が1兆1千億kWhに達すると見込まれています。2019年度と比べて25%の増加です。
 
需要が減り続けると言われてきた日本で、なぜ増えるのか。最大の要因はデータセンターの新設です。生成AIの普及で計算需要が膨らみ、そのための電力が積み上がる。加えて半導体工場の新増設や、運輸・産業部門の電化も需要を押し上げます。省エネで減る分よりも、新しく生まれる需要のほうが大きい、という絵姿です。
 
 

経年火力をすべて建て替えても供給力が足りない

もう一つが、既存の火力発電所の老朽化です。同じシナリオでは、3,900万kWある経年火力をすべてリプレース(建て替え)したとしても、なお1,300万〜1,600万kWの供給力が不足するケースが示されました。
(情熱電力の過去記事:将来の供給力不足と火力のリプレース問題については、こちらでも詳しく取り上げています)
 
エネ庁はこの不足ケースを勘案し、安定供給を担保するには経年火力分の3,900万kWに不足分を足した規模、つまり最大5,500万kW程度のLNG専焼火力の新設・更新が欠かせないと判断しました。募集量の「3,900万〜5,500万kW程度」という幅は、ここから来ています。
 
そして時間の問題があります。火力発電所は建設に7年程度かかるとされます。2040年に間に合わせるには、その約7年前にあたる2033年度頃までに着工していなければならない。そこから逆算して、募集期間を2032年度までと決めた——という順序です。「2032年度まで」という中途半端に見える区切りには、こういう理由があったわけですね。
 


 

3. 第4回入札で変わる4つのポイント

 
では、2027年1月の第4回入札から具体的に何が変わるのか。主な変更点を整理してみます。
 

項目 これまで 第4回入札から
LNG専焼の募集量 2023〜2025年度の3年間で600万kW 2032年度までの7年間で合計3,900万〜5,500万kW程度
供給力の提供開始期限 契約から8年後まで 契約から11年後まで(環境アセス済みの火力などは7年後まで)
応札上限価格 55,242円/kW年(第3回) LNG基地の建設費を算入しない案件:65,284円/kW年
算入する案件:92,068円/kW年
応札事業者への要件 — 「脱炭素化ロードマップ」の作成・公表を求める

出典:電気新聞(2026年9月)、資源エネルギー庁「長期脱炭素電源オークションについて」(2026年6月5日・7月14日、総合資源エネルギー調査会 安定供給WG)
 
1つめの募集量は、すでに見たとおりです。
 
2つめの「提供開始期限を3年延ばす」という変更には、世界的な事情があります。ガスタービンの需要が世界中で高まり、メーカーの生産能力が逼迫しているのです。落札しても発電機が手に入らなければ約束の期日に間に合いません。そこで、広域機関と契約してから実際に供給力の提供を始めるまでの期限を、従来の8年後から11年後へと後ろ倒ししました。すでに環境アセスメントを終えている火力などは、これまでどおり7年後までとされています。
 
3つめの上限価格は、これまでの55,242円/kW年から2本立てに変わります。既存のLNG基地を使える案件は65,284円/kW年、LNG基地そのものを新しく造る必要がある案件は92,068円/kW年。基地の建設費を価格に織り込めるようにした、ということですね。上限価格が上がれば、その分だけ支援の総額も膨らむ可能性があります。
 
4つめ。ここまで手厚い措置を並べつつ、エネ庁は2050年までの脱炭素化を前提とする姿勢は崩していません。応札する事業者には「脱炭素化ロードマップ」の作成と公表を求めることになりました。将来的に水素やアンモニアの混焼・専焼、あるいはCO2の回収へどう移行していくのかを、あらかじめ示させる仕組みです。
 


 

4. 「還付逃れ」を防ぐルールと、適用期間40年の上限

 
今回の見直しには、お金の流れに関する地味だけれど重要な整理も含まれています。
 
この制度では、落札した発電事業者が原則20年間の固定収入を得ます。その一方で、その発電所が卸電力市場(JEPX)や非化石価値取引市場といった他の市場で稼いだ収益については、約9割を広域機関に還付する決まりになっています。広域機関はそれを小売電気事業者に返す。固定収入で投資は守るけれど、市場で儲かった分は取りすぎない、というバランスの設計です。
 
この還付が2027年度から実際に始まります。それを前に、エネ庁は「還付逃れ」を防ぐ整理を行いました。
 
・落札電源の収益より、非落札電源の収益を大きくしてはいけない
・落札電源の収益を下げる代わりに、休廃止電源の収入をコスト以上に増やすことも認めない
・ただし、落札電源の収益を非落札電源や休廃止電源の費用に充てること自体は認める
 
3つめが少しわかりにくいかもしれません。発電事業というのは、競争力のある電源で稼いだ利益で、採算の合わない電源の費用を賄っている面があります。その実態には配慮する。けれど、還付を減らすために意図的に収益を付け替えるのはダメ、という線引きです。
 
もう一点、制度の適用期間についても上限が定められました。上限は40年です。期間が長くなるほど金利などの資本コストが膨らみ、落札電源への支援総額に占める割合が高くなってしまう。それは好ましくないという判断で、過去に期間が40年を超える落札電源がなかったことも踏まえて決められました。なお電源の種類によってはより短い期間が設定されており、LNG専焼火力については20年から30年の範囲で選ぶ案が示されています。
 


 

5. 電気代への影響は?いつから、どこに効いてくるのか

 
ここまで読んでいただいて、「で、電気代はどうなるの?」というのが一番気になるところですよね。
 
制度の構造からいえば、落札電源に支払われる固定収入は小売電気事業者が拠出金として負担し、最終的には電気料金の原価に反映されます。募集量が4倍規模に増え、上限価格も引き上げられるのですから、支援総額そのものは膨らむ方向に働くと考えるのが自然です。
 
ただし、金額がそのまま料金に上乗せされると単純化するのは早すぎます。理由は3つあります。
 
・支払いが発生するのは、落札した発電所が実際に運転を始めてからです。第4回入札の落札分は提供開始期限が最長で契約から11年後ですから、負担が本格化するのは2030年代です
・落札価格は上限価格ではありません。マルチプライスオークションなので、実際にいくらで約定するかは応札の状況しだいです
・他市場収益の約9割が還付され、小売電気事業者に戻ります。この還付が2027年度から始まるため、拠出と還付の差し引きで見る必要があります
 
一方で、供給力が積み増されること自体は、卸電力価格の変動を抑える方向に働きます。夏や冬のピーク時に発電所が足りない状況は、JEPXのスポット価格が跳ねる典型的な場面です。ここ数年、中東情勢によるLNG価格の高騰が卸電力価格を押し上げてきたことを考えると、「量の余裕」を確保しておくことの価値は小さくありません。
(情熱電力の過去記事:LNGが高いときに火力の構成がどう動くかは、石炭火力の復権を追ったこちらの記事で整理しています)
 
法人のお客さまで市場連動型の契約をされている場合、こうした制度の動きは中期的なコスト前提そのものに関わってきます。すぐに請求書の数字が変わる話ではありませんが、2030年代の電力コストを見積もる材料として、頭の片隅に置いておいていただければと思います。
 


 
まとめ
長期脱炭素電源オークションで、LNG専焼火力の募集量が大幅に拡大されます。当初は2023〜2025年度の3年間で600万kWという限定的な位置づけでしたが、2027年1月の第4回入札からは2032年度までの7年間で合計3,900万〜5,500万kW程度へ。これまでの累計約1,010万kWの、最低でも約4倍という規模です。
 
背景にあるのは、広域機関が示した2040年の需給シナリオでした。データセンターの新設などで電力需要は1兆1千億kWh(2019年度比25%増)に伸びる一方、3,900万kWある経年火力をすべて建て替えてもなお1,300万〜1,600万kW足りない。脱炭素の制度でLNG火力を増やすという一見矛盾した判断は、この「足りない」から出発しています。
 
同時に、供給力の提供開始期限は8年後から11年後へ延長され、応札上限価格も引き上げられました。2050年までの脱炭素化は前提として崩さず、応札事業者には脱炭素化ロードマップの公表を求めます。他市場収益の還付についても、付け替えによる還付逃れを防ぐルールが整理されました。
 
負担するのは小売電気事業者、つまり最終的には電気料金です。ただし支払いが本格化するのは発電所が動き出す2030年代で、還付との差し引きもあります。慌てる話ではありませんが、10年後の電気代を左右する決定であることは確かです。
 


 
情熱電力からのお知らせ
こうした制度の話は、正直なところ「知ったところですぐ電気代が下がるわけではない」ものばかりです。それでも、電気料金がどういう仕組みで決まっているのかを知っておくと、契約を見直すときの判断がぶれにくくなります。
 
情熱電力は長野県松本市の新電力として、お客さまとの距離の近さを大切にしています。市場連動型と固定単価のどちらが自社に向いているのか、いまの契約は妥当なのか。そういった漠然とした疑問でも構いませんので、気になる方はお気軽にご相談ください。
 
・TEL:0263-88-1183
・お問い合わせフォーム:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
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