お知らせ

INFO

2026.08.26 Wed

町工場が1億円システムを自社開発?中小企業のAI活用最前線から学ぶ業務効率化

 
町工場が1億円システムを自社開発?
 
複数の気になる記事を見つけたので、まとめて調べてみました。今回取り上げるのは、日経ビジネスに掲載された「町工場の婿専務、Claudeで1億円システム自作 寸法管理など30メニュー」という記事と、「仕事の『量・質・幅』伸ばす 現場生まれのAI活用法」という記事です。石川県金沢市の部品メーカー・岡田研磨では、専務が生成AIを使って一行もコードを書かずに30以上の業務システムを自作し、外注すれば1億円近くかかるシステムを内製化したといいます。一方、ソフトバンクや日立製作所、名古屋鉄道といった大手企業でも、AIを使った業務効率化の取り組みが加速しています。「AIって結局、大企業やIT企業だけの話でしょう?」と思っている方にこそ読んでいただきたい内容です。日々の業務効率化やコスト管理にAIをどう役立てられるのか、具体的な事例とともに見ていきましょう。
 


 
目次

 


 

1. 町工場の専務が挑んだ「1億円システム」の自社開発

 
「外注すれば8000万円から1億円ほどの費用がかかっただろう」。こう語るのは、建設機械向け部品を製造する岡田研磨(石川県金沢市、1974年設立)の岡田雄太専務です。従業員約80人、売上高25億円前後というこの優良企業が、この1年ほどの間に、社内で使う30を超える業務システム・アプリを自前で作り上げました。
 
驚くのは、その開発手法です。雄太氏はプログラミング経験がないにもかかわらず、米アンソロピックが提供するAI「Claude Code(クロード・コード)」を使い、コードを一行も書かずにシステムを完成させたといいます。富士通出身で2020年に婿入りする形で入社した雄太氏は、まず社内のペーパーレス化に取り組み、ノーコードツールを導入しましたが、「手間も掛かるし、できることに限界があった」と壁にぶつかりました。そこで出会ったのが、AIに指示を出しながらシステムを組み上げていく「バイブコーディング」という手法でした。
 
最初に完成させたのは、2025年7月に稼働した「検査成績書」という社内システムです。それまで紙に書いていた製品の寸法データを一元化し、現場作業員がタブレットで作業内容を登録すると、加工作業で狙うべき寸法が自動で表示される仕組みです。紙の資料を探す時間が減り、寸法の間違いも防げるようになりました。
 
こうして作られた業務システムは、ポータルサイト「OKADA Board(岡田ボード)」にまとめられています。日常点検や生産実績の管理はもちろん、加工作業で排出される二酸化炭素(CO2)の量を管理するシステムや、作業員のお弁当の注文管理システムまで、幅広い業務がAIによって効率化されているのが特徴です。
 
以下は、岡田研磨のAI活用の概要です。
 

項目 内容
開発システム数 30以上(検査成績書、CO2排出量管理、弁当注文管理など)
開発期間 約1年
AIとの対話時間 約1500時間
開発費用 サブスクリプション・トークン代を含め総額約30万円
利用プラン 「Claude Max 5x」(月額100ドル、約1万6000円)
外注した場合の推定費用 8000万円~1億円

出典:日経ビジネス「町工場の婿専務、Claudeで1億円システム自作 寸法管理など30メニュー」(2026年)
 


 

2. AI活用のカギは「仕様書」と「対話」にあり

 
「コードどころか、AIに与える長文の『プロンプト』を手で入力する必要さえない」。雄太氏はそう語ります。では、どうやってシステムを作っているのでしょうか。開発の流れは、大きく2つのステップに分かれています。
 
・ステップ1:「仕様書」を音声で作る まず「ChatGPT」の音声会話機能を使い、数十分間AIと対話します。作りたいシステムのイメージを言葉で伝えながら壁打ちを重ねると、会社から車で帰宅する間に、システムの設計書(仕様書)が完成しているそうです。
 
・ステップ2:仕様書をもとにAIがコードを自動生成 できあがった仕様書をClaude Codeに入力すると、AIがプログラムを自動で作成します。大部分はこの時点でほぼ完成していますが、見た目や操作性など細かい部分は、AIに繰り返し指示を出しながら修正を重ねていきます。バグや不具合が見つかった場合も、AIにそのまま修正させる仕組みです。
 
保守運用も効率的です。現場でバグや新たな要望が見つかると、システム担当部隊がそれを吸い上げ、雄太氏がAIに修正を指示する体制になっています。
 
もっとも、岡田研磨はすべてを自社開発しているわけではありません。勤怠管理や取引先の図面を扱うSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)は外部サービスを利用しています。「図面管理SaaSはAIでも作成可能だが、月2万~3万円と低額であるうえ、取引先の図面データを自社システムで管理するのはリスクが大きいため内製化していない」と雄太氏は理由を説明します。基幹システムなど会社の中核を担う部分は、これまで通りSIer(システムインテグレーター)に外注しているとのことです。何でも自作するのではなく、コストとリスクを見極めて「作る」「借りる」を使い分ける姿勢は、中小企業がAIを取り入れるうえで参考になりそうです。
 


 

3. 大手企業も実践するAI活用術:仕事の「量・質・幅」を伸ばす

 
AIによる業務効率化は、町工場だけの話ではありません。日経ビジネスのもうひとつの記事では、AIの活用が仕事の「量」「質」「幅」という3つの側面を伸ばすと紹介されています。ここでは、大手企業の事例を3つの切り口で見ていきましょう。
 
 

 量を増やす―ソフトバンクや三菱UFJ銀行の事例

 
ソフトバンクグループでは、孫正義会長兼社長の呼びかけで2023年5月から「生成AIコンテスト」を継続的に開催しています。ソフトバンクやLINEヤフーなどグループ社員約5万人が対象で、これまでに集まったアイデアは累計約26万件にのぼるとされています。さらに約2万人の社員が「1人100個のAIエージェントを作成する」プロジェクトに取り組み、2025年6月から8月末までの間に作られたエージェントの総数は250万個に達したといいます。
 
金融の現場でも変化が起きています。三菱UFJ銀行はAI開発企業のSakanaAIと共同で、融資稟議書の作成を支援するAIエージェントを開発中です。融資業務は担当者の経験や知見に頼る部分が大きく、想定パターンも膨大なため「慣れ」が必要とされてきました。AIが書類を読み取り、壁打ち相手になることで、経験による知見の差を埋め、より多くの業務に対応できるようになることが期待されています。
 
 

 質を高める―日立製作所や参天製薬の事例

 
日立製作所の大みか事業所(茨城県日立市)は、鉄道向け列車運行管理システムの品質保証部門にAIを導入しました。鉄道システムは約15年に1回しか刷新されないため、異動や世代交代でベテランのノウハウが継承されにくいという課題がありました。過去のナレッジを学習させたAIを導入した結果、入社2年目の社員でも「入社前の前例を見て対応できた」という声が出るまでになったといいます。
 
眼科専業の製薬会社、参天製薬の奈良研究開発センターでは、2024年10月からマイクロソフトの「Copilot」を研究開発の全プロセスで活用しています。関連論文を探す作業は数日から1日に短縮され、「全体では従来の2~3倍の速さで研究開発のサイクルを回せる実感がある」と担当者は話しているそうです。
 
 

 幅を広げる―名古屋鉄道や大塚商会の事例

 
名古屋鉄道グループは、駅の落とし物を管理する「遺失物管理システム」へのAI導入など、現場発のAI活用が評価され、「生成AI大賞2024」でグランプリを受賞しました。約3万人のグループ社員のうち約1万3000人がAIツールを利用できる環境が整い、約7000人が日常業務で活用しています。習熟度に応じて「ベーシック」「アドバンスト」「エキスパート」の3階層で研修を実施し、現場社員自身がアプリを開発する事例も生まれています。
 
大塚商会では、営業担当者向けの独自アプリ「AIアシスタント」に、社員の幸福度を高める機能を組み込みました。前向きに仕事に取り組む「心の資本」と、安心して発言できる「心理的安全性」の2軸で運用した結果、一時は約3割だった入社3年以内の離職率が1割台まで下がったといいます。仕事の効率化だけでなく、社員の定着という「経営課題」にもAIが役立てられている好例です。
 


 

4. 中小企業がAI活用を始める前に押さえておきたいポイント

 
ここまで紹介した事例に共通するのは、「AIに何でも丸投げする」のではなく、人とAIの役割分担を意識している点です。中小企業がAI活用を検討する際に押さえておきたいポイントを整理してみましょう。
 
・小さく始める 岡田研磨も、いきなり大掛かりなシステムを作ったわけではありません。まずは現場が困っている業務、たとえば紙の書類やエクセルの手作業から着手すると、社内の理解も得やすくなります。
 
・コストとリスクで「作る」「借りる」を判断する すべてを自社開発する必要はありません。低価格で安全性の高いSaaSはそのまま活用し、コストが大きい業務や、自社の強みに直結する部分から内製化を検討するのが現実的です。
 
・仕様を言語化する習慣を持つ 岡田研磨の事例のように、AIとの対話を通じて「作りたいものを言葉にする」プロセスが、システム開発のスピードを大きく左右します。日頃から業務の課題や理想の姿を整理しておくことが、AI活用の土台になります。
 
・現場を巻き込む ボッシュ日本法人や名古屋鉄道の事例が示すように、AI活用を社内に根付かせるには、現場のスタッフを巻き込み、成功事例を共有する文化づくりが欠かせません。
 


 

5. AI活用の広がりは、コスト管理やエネルギー管理にも通じる

 
今回紹介した事例の中で見逃せないのが、岡田研磨がAIで開発したシステムの中に「加工作業で排出されるCO2量を管理するシステム」が含まれていた点です。業務の効率化を目的に始めたAI活用が、結果としてエネルギーやコストの「見える化」にもつながっているのです。
 
紙の帳票や手作業のエクセル管理をAIでシステム化すると、これまで見えにくかった作業時間やコスト、資源の使用状況がデータとして可視化されます。これは、電気代やエネルギーコストの管理にも通じる考え方です。「どこで、どれだけのコストが発生しているか」を把握できて初めて、無駄を減らす具体的な対策が打てるようになります。AIによる業務効率化は、単なる作業のスピードアップにとどまらず、経営全体のコスト構造を見直すきっかけにもなり得るのです。
 


 
まとめ
 
石川県の町工場・岡田研磨では、専務がAIを使い、外注すれば1億円近くかかる業務システムを一行もコードを書かずに自社開発しました。カギとなったのは、AIとの対話で「仕様書」を作り、コードの生成から修正までAIに任せるという進め方です。一方、ソフトバンクや日立製作所、名古屋鉄道といった大手企業でも、AIは仕事の「量」を増やし、「質」を高め、「幅」を広げる存在として活用が広がっています。共通しているのは、AIに丸投げするのではなく、人とAIの役割分担を意識しながら、現場の課題から小さく始めている点です。今回紹介したCO2排出量管理の事例のように、業務効率化の取り組みは、コストやエネルギーの「見える化」にもつながります。自社の業務にAIをどう取り入れられるか、まずは身近な課題から考えてみてはいかがでしょうか。
 


 
情熱電力からのお知らせ
 
今回ご紹介したように、AIによる業務の見える化は、コストやエネルギーの使い方を見直す良いきっかけになります。私たち情熱電力は、長野県松本市を拠点に、地域の企業の皆さまに電気料金やエネルギーの使い方を分かりやすくご説明することを大切にしている新電力会社です。「今の電気料金プランが自社に合っているか分からない」「まずは電気代の内訳を整理したい」といったお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
 
お問い合わせ:TEL 0263-88-1183/ https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・日経ビジネス:町工場の婿専務、Claudeで1億円システム自作 寸法管理など30メニュー
・日経ビジネス:仕事の「量・質・幅」伸ばす 現場生まれのAI活用法
・中小企業庁:ミラサポplus 中小企業向け 補助金総合支援サイト
・資源エネルギー庁:省エネポータルサイト 各種支援制度