エルニーニョ現象とは?観測史上最強級の予測と、この秋冬の天気・電気代への影響を解説します

以前『2026年も猛暑確定!?「スーパーエルニーニョ」予測と電気代高騰に備えるための最新気象ナビ』でも触れましたが、あのとき「予測」だったエルニーニョ現象が、いよいよ見過ごせない大きさになってきました。
気象庁が8月10日に発表したエルニーニョ監視速報では、この現象が冬にかけて続く見込みは100%。さらにAFPBB Newsが伝えた9月3日の世界気象機関(WMO)の会見では、比較可能な観測が始まってからの40年間で最も強力になる恐れがある、という警告が出ています。
一方、足元の日本はどうでしょう。tenki.jpの1か月予報の解説によれば、9月もまだ全国的に厳しい残暑が続く見込みです。「エルニーニョだから涼しくなる」という話には、どうやらなっていません。
このズレはどこから来るのでしょうか。そして、この秋から冬の天気と電気代には、どう跳ね返ってくるのでしょうか。気象庁の一次資料まで戻って、順番に整理してみました。
目次
- 1. エルニーニョ現象とは?海面水温の変化が世界の天気を動かすしくみ
- 2. 「観測史上最強級」の根拠は?気象庁とWMO、2つの発表を並べて読む
- 3. エルニーニョなのに猛暑だったのはなぜ?統計の「見えない前提」
- 4. この秋から冬の天気はどうなる?エルニーニョ発生時の傾向を季節ごとに整理
- 5. 電気代への影響は?エルニーニョが効く3つの経路
- 6. 家庭と事業者、この冬に向けてできる備え
1. エルニーニョ現象とは?海面水温の変化が世界の天気を動かすしくみ
まずは言葉の整理から始めましょう。
エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の中部から東部にかけて、海面水温が平年より高い状態が1年程度続く現象です。「海の水温が少し上がるだけ」に聞こえますが、赤道付近の海は地球全体の大気を温めるボイラーのような役どころ。ここが変わると、風の流れ、気圧の配置、雨の降る場所までが世界規模で動きます。
ふだんの太平洋赤道域では、東から西へ吹く貿易風が暖かい海水を西側へ吹き寄せています。押し出された分を埋めるように、東側では深いところの冷たい水が海面へ湧き上がる。だから東側は冷たく、西側は暖かい、という並びになっています。
この貿易風が弱まると、西に溜まっていた暖かい水が東へ広がり、東側の湧き上がりも弱くなります。結果として中部から東部の海面水温が平年より高くなる。これがエルニーニョ現象です。逆に貿易風が強まって東側がいつもより冷たくなるのがラニーニャ現象で、名前だけ聞くと別物のようですが、同じシーソーの反対側にいるとお考えください。
そして、海に溜まった熱は時間をかけて大気へ放出されます。このためエルニーニョは、発生した年より翌年の世界の気温を押し上げる性質があるとされています。WMOも、2023〜24年に発生した強力なエルニーニョが、2024年が観測史上最も暑い年となる要因になったと説明しています。
気象庁の判定基準は「+0.5℃が6か月以上」
「エルニーニョが発生した」と言えるかどうかは、感覚ではなく数字で決まります。
気象庁は、太平洋赤道域の東部にある監視海域(NINO.3)の月平均海面水温をずっと追いかけています。その値が基準値からどれだけ離れているかを見て、5か月移動平均が+0.5℃以上の状態が6か月以上続いたとき、その期間をエルニーニョ現象の発生期間としています。
5か月の移動平均を使うのは、1か月だけの上下に振り回されないためです。逆に言えば判定は少しゆっくりで、「今まさに強くなっている」局面は毎月の速報で追いかけることになります。
2. 「観測史上最強級」の根拠は?気象庁とWMO、2つの発表を並べて読む
ここが今回の本題です。「観測史上最強」という言葉だけが独り歩きしやすいので、出どころを分けて見ていきます。
気象庁:7月は基準値より+2.5℃、冬まで続く見込みは100%
気象庁が2026年8月10日に発表したエルニーニョ監視速報には、次のように書かれています。
・2026年春からエルニーニョ現象が続いているとみられる
・2026年7月の監視海域の月平均海面水温は、基準値との差が+2.5℃、5か月移動平均値は+1.3℃
・今後、冬にかけてエルニーニョ現象が続く見込み(100%)
・大気海洋結合モデルの予測では、監視海域の海面水温は冬にかけて上昇して基準値より高い値で推移し、これまでピークの値が最も大きかった1997年に匹敵する値になる
注目したいのは最後の一行です。1997年といえば、いわゆる「スーパーエルニーニョ」の代名詞にあたる年。気象庁は「史上最強」という言い方こそしていませんが、過去最大級に並ぶと読める予測を出している、ということになります。
なお、次回の監視速報は9月9日14時の発表予定です。数字が更新されますので、気になる方はここを見に行くのがいちばん確実です。
WMO:40年で最も強力になる恐れ、2027年2月まで
一方、国連の専門機関である世界気象機関(WMO)は9月3日、この現象が今後数か月で「非常に強力」になり、2027年2月まで続くことがほぼ確実だと発表しました(AFPBB Newsの報道による)。セレステ・サウロ事務局長は「このままの推移が続けば、観測を開始して以来、最も強力な現象になる可能性がある」と述べています。
気象庁が「1997年に匹敵」、WMOが「比較可能な観測の40年間で最強の恐れ」。表現の強さは違いますが、指している水準はおおむね重なっていると読めます。どちらも「そうなる」と断定はしていない点も同じで、まだ幅のある話です。
ひとつお断りを入れておきます。海面水温の上昇幅を「最大3.5〜4℃」とする専門家のコメントが海外の報道に出ていますが、WMOの発表資料そのもので同じ数値を確認できなかったため、本記事では扱っていません。数値の引用は、確認できたものだけに絞っています。
3. エルニーニョなのに猛暑だったのはなぜ?統計の「見えない前提」
「エルニーニョが起きると冷夏になる」というイメージ、ありませんか。実際、気象庁の統計でも、エルニーニョ発生時の夏は西日本で気温が低い傾向、北日本と東日本で並か低い傾向、と出ています。
(情熱電力の過去記事:春に「スーパーエルニーニョ」の予測が出た時点での見方は、こちらでまとめています)
ところが今年の夏、涼しかったという記憶のある方は、ほとんどいらっしゃらないと思います。tenki.jpの解説でも、9月に入ってなお全国的に厳しい残暑が続くと伝えられています。
種を明かすと、この統計には前提がひとつ隠れています。気象庁は同じページの注記で、「トレンドが明瞭な気温についてはトレンドの影響を除去する処理をしています」と書いています。つまり、地球温暖化による底上げをいったん差し引いたうえで、「エルニーニョという要因だけを見れば気温を押し下げる方向に働く」と言っているわけです。
現実の気温は、2つのものの足し算で決まります。ひとつは、温暖化でじりじり上がってきた「土台」の高さ。もうひとつが、エルニーニョのようなその年ごとの要因による「振れ」です。気象庁の統計が示しているのは後者だけ、つまり振れの向きだけです。
そして近年は、土台がかなり高いところまで上がってきました。エルニーニョが気温を下へ振ったとしても、高い土台からの下振れですから、着地点は結局「猛暑」の水準になる。今年の夏がまさにこれで、統計と体感がずれた理由もここにあります。
この読み方は、この先も同じように使えます。「エルニーニョの冬は暖冬傾向」と聞いても、それは振れの向きの話であって、実際の気温を約束するものではありません。しかも傾向は傾向でしかなく、平均するとそちらに寄りやすい、という程度のこと。ひと冬を通してずっと暖かい、という意味ではないのです。
4. この秋から冬の天気はどうなる?エルニーニョ発生時の傾向を季節ごとに整理
9月はまだ残暑と大雨、台風シーズンも続く
まず足元から。気象庁は9月3日、「高温に関する全般気象情報」を発表しました。東北から九州にかけての広い範囲で、9月9日頃から17日頃にかけて、その時期としては10年に一度程度しか起きないような著しい高温となる可能性が高まっている、という内容です。
同時に、雨のほうも気がかりです。1か月予報では、関東甲信などで降水量が平年より多い見込み。9月はもともと秋雨前線の活動が活発になりやすく、台風の影響も受けやすい時期です。台風の年間発生数の平年値は25.1個ですが、今年は9月上旬の時点ですでに24個が発生しています。
暑さと大雨に同時に備える、という少し欲張りな9月になりそうです。
秋と冬に統計上あらわれる傾向
その先については、気象庁が「エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴」として、過去の発生時に統計的に有意だった傾向を公開しています。統計期間は1948〜2021年(冬は1947/48〜2020/21年)です。表にまとめました。
| 季節 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 |
|---|---|---|---|
| 春(3〜5月) | 東日本・沖縄奄美で高い傾向。北日本で並か高い傾向 | 北日本太平洋側で少ない傾向 | 北日本太平洋側で多い傾向 |
| 夏(6〜8月) | 西日本で低い傾向。北・東日本で並か低い傾向 | 西日本日本海側で多い傾向 | 北日本日本海側で少ない傾向。東日本日本海側で並か少ない傾向 |
| 秋(9〜11月) | 西日本で低い傾向。北日本で並か低い傾向 | 有意な傾向なし | 北日本太平洋側で多い傾向。西日本日本海側で並か多い傾向 |
| 冬(12〜2月) | 西日本で並か高い傾向 | 東日本太平洋側・沖縄奄美で多い傾向 | 西日本太平洋側で少ない傾向。東日本太平洋側で並か少ない傾向 |
| 梅雨の時期 | (公表なし) | 西日本日本海側で多い傾向 | 有意な傾向なし |
出典:気象庁「エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴」。梅雨については、梅雨入りが北陸・四国で早い傾向、梅雨明けが近畿・四国・奄美・沖縄で遅い傾向(東北北部・東海・中国で並か遅い傾向)と示されています。
冬の欄をご覧ください。気温は西日本で並か高い傾向、つまり暖冬寄り。一方で東日本の太平洋側では降水量が多く、日照時間は少なめという並びになっています。「暖かいけれど、どんよりして雨や雪が多い冬」というイメージが近いかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、これは温暖化の分を差し引いた統計上の傾向です。しかも「有意な傾向がある」ことと「毎回そうなる」ことは別の話。実際に昨シーズンの冬は、ラニーニャ現象に近い状態という診断のもとで、警報級の大雪が何度も来ました。傾向に寄りかからず、幅で構えておくのが安全です。
5. 電気代への影響は?エルニーニョが効く3つの経路
さて、ここからが私たちの本業に近い話です。エルニーニョは、電気代に3つのルートで効いてきます。
| 経路 | どう効くか | 見ておくもの |
|---|---|---|
| ① 気温(使用量) | 暖冬なら暖房の使用が減り、使用量が下がる。ただし寒波が入った月は跳ねる | 気象庁の1か月予報・3か月予報、寒波の早期天候情報 |
| ② 燃料価格(単価) | 世界の降水量が動くことで発電構成に影響し、燃料需給に響く経路が指摘されている | 毎月の燃料費調整額、平均燃料価格の推移 |
| ③ 政策(補助) | 電気・ガス料金の補助があるかどうかで、請求額が直接変わる | 資源エネルギー庁の電気・ガス料金支援の実施状況 |
①の気温は、いちばんわかりやすい経路です。暖冬なら暖房の使用が減り、電気やガスの使用量が下がる。家計にはありがたい方向です。ただ先ほど見たとおり、「暖冬傾向」は寒波が来ない保証にはなりません。1〜2週間の強い寒波が入るだけで、その月の請求は上昇します。
②の燃料価格は、少しわかりにくい経路です。日本の電気料金には燃料費調整という仕組みがあり、LNG・石炭・原油の輸入価格の変動が、数か月遅れで毎月の単価に反映されます。エルニーニョは世界各地の降水量を動かすため、水力発電に頼る地域で発電量が落ちれば火力の焚き増しにつながり、燃料の需要と価格に響く、という経路が指摘されています。ここは断定できる話ではありませんが、「海の水温が私たちの請求書につながる道が一応ある」ことは、知っておいて損はありません。
なお、規制料金には燃料費調整額に上限が設けられており、上限を超えた分は電力会社が負担します。一方、自由料金には上限のないプランもあり、燃料価格が上がったときの効き方が変わってきます。
(情熱電力の過去記事:燃料費調整の上限のしくみは、こちらで詳しく解説しています)
③の政策は、いま最も動きが読みにくいところです。今夏については、高市首相が5月18日の政府与党連絡会議で、7〜9月の電気・ガス料金を補助するための具体策をまとめるよう指示し、財源を確保するため補正予算案の編成を検討すると表明しました(電気新聞2026年5月19日付)。この夏の補助は、その流れで実施されたものです。10月以降、そして冬の分がどうなるかは、この記事を書いている時点ではまだ決まっていません。
6. 家庭と事業者、この冬に向けてできる備え
予報は当てにいくものではなく、備えの材料にするものです。いまわかっている範囲でできることを、立場別に挙げてみます。
ご家庭の場合。目先の課題は9月の残暑を乗り切ることですが、その流れでそのまま暖房の準備に入ってしまうのが効率的です。エアコンのフィルター清掃は冷房でも暖房でも効きますし、暖かい空気は天井にたまるので、サーキュレーターで下へ降ろす使い方は冬こそ本番。契約プランについては、市場価格に連動するタイプかどうかを一度確認しておくと安心です。
事業者の場合。冬の需要を織り込んだ調達の見通しを、いつもより早めに立てておくことをおすすめします。暖冬傾向の年は「使用量は減るだろう」という前提で計画を組みがちですが、寒波が入った月のデマンドが年間の基本料金を決めてしまう契約もあります。長野県のように内陸で朝晩が冷える地域では、暖房の立ち上がりの電力が特に重くなります。平均ではなく、振れ幅で考えてみてください。
そして共通していちばん現実的なのは、9月9日の監視速報と、10月以降の補助の動きを追いかけることです。天気は変えられませんが、契約と使い方は変えられます。
まとめ
エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなる現象で、風や気圧、雨の降る場所を世界規模で動かします。気象庁が8月10日に発表した監視速報では、2026年春から現象が続いており、冬にかけて続く見込みは100%。ピークは、これまで最も大きかった1997年に匹敵するとの予測が出ています。WMOはこれを「観測を開始して以来、最も強力な現象になる可能性がある」と表現し、2027年2月まで続くことがほぼ確実としました。
ただし「エルニーニョだから涼しい」とはなりません。気象庁の統計は温暖化による底上げを差し引いた傾向であり、現実の気温にはそこへ上乗せが乗ります。今年の夏がまさにそうでした。この先の冬も、統計上は西日本で暖冬寄りとされますが、寒波が来ないという意味ではありません。
電気代に効く経路は、気温・燃料価格・政策の3つ。天気は選べませんが、契約の中身と使い方、そして補助の動きは、こちらから確認できます。まずは9月9日に更新される監視速報が、次の手がかりになりそうです。
情熱電力からのお知らせ
「暖冬になるなら電気代も下がるのかな」「逆に寒波が来たらどこまで上がるんだろう」。この時期、こうしたご相談をよくいただきます。
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