系統用蓄電池の「低圧分割」は認めず|エネ庁が地権者の5年確認と接続検討料の引き上げへ

電気新聞に「系統蓄電池、『低圧分割』容認せず/エネ庁、対策実施へ」という記事があったので調べてみました。
系統用蓄電池といえば、これまでこのブログでも「空押さえ」や連系待ちの長期化を何度か取り上げてきました。今回は少し毛色が違います。争点になっているのは、大きな蓄電所ではなく、50kW未満の小さな蓄電池のほうです。
低圧でつなげば、昇圧の設備もいらないし、手続きもぐっと軽くなる。だったら大きな計画を小分けにして低圧で申し込めばいいじゃないか——そう考える事業者が増えてきたようです。資源エネルギー庁は2026年10月6日の次世代電力系統ワーキンググループで、この「低圧分割」を容認しない方針を示しています。
かつて太陽光で起きたことが、いま蓄電池で繰り返されつつある。そんな構図です。何がどう変わりそうなのか、順番に見ていきましょう。
目次
- 1. 低圧の系統用蓄電池で、いま何が起きているのか
- 2. 「低圧分割」とは?高圧との規律の違いを整理
- 3. エネ庁の対策案:地権者の同一性を5年さかのぼって確認
- 4. 接続検討料は1地点22万円から引き上げへ
- 5. 蓄電池ビジネスへの影響と、いつから変わるのか
1. 低圧の系統用蓄電池で、いま何が起きているのか
系統用蓄電池を電力系統につなぐとき、容量が50kW以上になると高圧扱いになり、昇圧のための設備が必要になります。変圧器やキュービクルの費用、設置スペース、保安の体制。どれも小さくない負担です。
これを避ける方法があります。50kW未満に抑えて、低圧設備として連系することです。
1か所だけなら何の問題もありません。問題になっているのは、同じ事業者が隣り合った敷地を細かく分けて、低圧の蓄電池として何件も申し込むケースです。電気新聞の報道によれば、1つの事業者が同じ時期に数百件の低圧蓄電池の接続契約を申し込んだ事例や、低圧設備として接続するために敷地を分割した事例が表面化してきたとされています。
同じ配電系統に低圧の蓄電池が集中して接続されると、上位系統の潮流や電圧に影響が出ます。しかも蓄電池は、太陽光と違って充電と放電が急に切り替わります。発電だけの設備より、系統側から見た振る舞いは読みにくい。系統事故が起きたときに復旧の手順に支障が出る恐れも指摘されています。
実はこれ、初めての話ではありません。FIT(固定価格買取制度)が始まったあと、50kW未満の太陽光発電設備で同じことが起きました。あのときも、大きな設備を小分けにして低圧で申し込む「分割案件」が増え、国が規制をかけた経緯があります。今回は、その蓄電池版というわけです。
(情熱電力の過去記事:系統の「空押さえ」対策がどう強化されてきたかは、こちらで詳しく解説しています)
2. 「低圧分割」とは?高圧との規律の違いを整理
そもそも、なぜ低圧にすると手続きが軽くなるのでしょうか。電気の世界では、規模に応じて求められる手続きの重さが変わります。低圧は小さい設備を想定した枠組みなので、もともと簡素にできているんですね。
ところが、その簡素さが抜け道として使われると話が変わってきます。
低圧にだけ適用されない3つの規律
報道で挙げられているのは、おもに次の3点です。
・接続検討のプロセスが求められない
・契約申し込み時の保証金を支払わずに申し込める
・土地の使用権限を示す書類の提出といった規律が適用されない
この3つは、いずれも高圧以上の系統用蓄電池について、ここ数年で国が強化してきた「空押さえ」対策そのものです。保証金も、土地の確保の確認も、本気で事業をやる人だけが連系の枠を押さえられるようにするために導入されました。
低圧にはそれが及んでいない。だから、低圧に分割すればそれらをまとめて回避できてしまう——これが「低圧分割」の中身です。
| 手続き・規律 | 低圧(50kW未満) | 高圧・特別高圧 |
|---|---|---|
| 昇圧設備(変圧器など) | 不要 | 必要 |
| 接続検討のプロセス | 求められない | 必要 |
| 契約申し込み時の保証金 | 支払わずに申し込める | 必要 |
| 土地の使用権限の確認 | 適用されない | 求められる |
※電気新聞の報道で挙げられた項目をもとに整理したものです。実際の取り扱いは一般送配電事業者ごとの約款によります。
なお、異なる種類の発電設備を同じ場所に置く場合——たとえば太陽光発電設備と蓄電池を並べて設置するようなケースは、現状では分割設置として認められています。すべての併設がだめになるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
3. エネ庁の対策案:地権者の同一性を5年さかのぼって確認
では、どうやって分割を見分けるのか。
今回エネ庁が示したのは、土地の持ち主をさかのぼって確認するという方法です。報道によれば、接続の申し込みを行う年度から5年さかのぼって地権者の同一性を確認し、敷地の分割を防ぐ考えが示されました。
ここは、現行のルールと比べると変化の大きさがわかります。
資源エネルギー庁の「発電等設備の分割対策に関するQ&A」では、地権者の同一性は原則として登記簿上の名義で判断し、接続検討申込みまたは契約申込みを行う年度から「遡って1年以内」に同一であれば同一地権者とみなす、とされています。つまり、1年より前に名義を分けておけば形式上は別の地権者になれた、ということです。
これが5年になると、話はまったく変わります。短期間で名義を分け直して申し込む手は使えなくなりますし、5年前となると、そもそも蓄電池ビジネスがここまで加熱する前の状態まで戻ることになります。
ちなみに同Q&Aでは、10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備でFIT認定を取得する場合などには、2014年度まで遡って地権者を確認する例外もすでに設けられています。太陽光で一度通った道を、蓄電池でも踏むことになりそうだ、と考えるとわかりやすいかもしれません。
4. 接続検討料は1地点22万円から引き上げへ
同じ会合で、もうひとつ方針が示されています。接続検討料の引き上げです。
報道によれば、現在1地点あたり22万円(税込)となっている接続検討料を増額する方針が示され、対象エリアを限定せず全国一律で適用するとされています。増額の幅などは、次回以降の会合で議論される見通しです。
接続検討料は、系統につなげるかどうかを一般送配電事業者に調べてもらうための費用です。いま22万円という水準は、本気で事業化する人にとっては大きな額ではありません。逆に言えば、「とりあえず出しておこう」という申し込みを止める力も弱い、ということになります。
連系の順番待ちが長期化している背景には、実現性の低い申し込みが枠を押さえてしまう問題があります。入口の費用を上げるのは、そこへの対応という位置づけです。ただし、本気の事業者にとっては純粋なコスト増でもあります。増額幅がどこに落ち着くのか、次回以降の議論は要注目です。
(情熱電力の過去記事:連系待ちがどこまで長くなっているかはこちらで整理しています)
5. 蓄電池ビジネスへの影響と、いつから変わるのか
ここまでを、事業者目線で整理してみます。
・低圧に分けて数を出す手法は、今後は通りにくくなる方向
・土地の名義は、申し込みの何年も前の状態までさかのぼって見られる前提で考える必要がある
・入口の接続検討料は上がる方向。概算の事業計画は作り直しが必要になるかもしれない
・一方で、異種設備の併設そのものが否定されたわけではない
大事なのは、この段階ではまだ「方針が示された」ところだという点です。細かい要件や適用の開始時期は、今後の会合や託送供給等約款の改定を経て固まっていきます。報道の時点で、増額幅などは次回以降の議論とされていました。確定した数字として扱うのは、まだ早い段階です。
とはいえ、方向ははっきりしています。安く早くつなぐための小技を封じて、実現性のある計画から順に通していく。ここ数年の制度変更は、だいたいこの一本の線の上に並んでいます。低圧という最後の抜け道に手が入ったことで、その線がひととおり引き終わった、と見ることもできそうです。
これから蓄電池事業を検討される方は、「低圧なら簡単だから」という前提を一度外して、計画を組み直してみてください。制度が追いついてくるスピードは、思っているより速いと感じます。
まとめ
資源エネルギー庁は2026年10月6日の次世代電力系統ワーキンググループで、系統用蓄電池を50kW未満の低圧設備に分割して連系する「低圧分割」を容認せず、対策を実施する方針を示しました。
低圧には、接続検討のプロセス、契約申し込み時の保証金、土地の使用権限の確認といった規律が適用されません。高圧以上で強化されてきた「空押さえ」対策を、低圧に分けることで回避できてしまう。1事業者が同時期に数百件を申し込む事例まで出てきたことが、今回の対応の背景にあります。
示された対策は、接続の申し込み年度から5年さかのぼって地権者の同一性を確認するというもの。現行の運用が「1年以内」であることを考えると、かなり踏み込んだ内容です。あわせて、現在1地点22万円の接続検討料を全国一律で引き上げる方針も示されました。
ただし、増額の幅や適用の時期はこれからの議論です。FIT開始後の太陽光で起きたことが、いま蓄電池で繰り返されている——その構図を頭に置いて、続報を追いかけていきたいところです。
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この記事に関連するページリンク
・資源エネルギー庁:系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について
・資源エネルギー庁:発電等設備の分割対策に関するQ&A
・資源エネルギー庁:系統連系技術要件の改定について(JC-STAR★1要件化)
・電力広域的運営推進機関(OCCTO):系統アクセスに関する統計情報