スマートメーターで家電を一括制御へ|東電など28年度商用化、家庭のDRが電力市場を変える

 
スマートメーターで家電を一括制御
 
日本経済新聞に「電力メーターで『DR家電』制御 東電など、28年度にも商用」という記事があったので調べてみました。
 
内容をひとことでまとめると、東京電力ホールディングス子会社の東京電力パワーグリッド(PG)をはじめとする送配電3社が、各家庭に設置されているスマートメーターを使って、エアコンや蓄電池、電気給湯器などを「一括で」制御する実証実験を始めた、というものです。2028年度末ごろには一部地域での商用化を目指すといいます。
 
スマートメーターは、すでにほぼ全ての家庭に設置されています。つまり、新しい機器を後から取り付けなくても、全国の家庭がまるごと「電力需給の調整役」になり得るということ。これはエネルギー業界にとって、かなりインパクトの大きい話です。
 
電気を「使う側」だったはずの私たちが、電力システムを支える一員になる。デマンドレスポンス(DR)と呼ばれるこの仕組みは、法人のエネルギーコスト戦略にも直結してきます。今回は、この動きが何を意味するのか、ビジネスの視点から整理してみました。
 


 
目次

 


 

1. 東電など送配電3社が始めた「スマートメーターDR」実証とは

 
まずは、今回のニュースの中身から見ていきましょう。
 
実証を始めたのは、東京電力パワーグリッド、関西電力送配電、中部電力パワーグリッドの送配電3社です。2026年度から、複数のスマートメーターに対して同時に指令を出し、そのスマートメーターが管理する住宅内の複数の家電類を一括制御できるかを検証しています。
 
ポイントは「複数」「一括」という部分です。実は2025年度までの段階で、スマートメーターを介して単体の機器の稼働を調整することにはすでに成功していました。今回はそれを、エリア単位・機器複数台へとスケールアップさせる段階に入った、というわけです。
 
制御の対象として想定されているのは、太陽光発電、電気給湯器、EV充電器、蓄電池といった、家庭にあるエネルギー関連機器です。どれも「使うタイミングを少しずらしても生活に大きな支障が出にくい」ものばかり。ここが重要なところです。
 
 

 従来の家庭向けDRとの決定的な違い

家庭でのDRは、これまでも前例がありました。ただ、従来方式には大きなハードルがあったのです。
 
従来のやり方は、家電メーカーのクラウドから、家庭に設置した専用の通信機器を経由して機器を制御するというもの。つまり、参加する家庭ごとに専用機器を置き、インターネット環境を整備する必要がありました。手間もコストもかかるため、なかなか広がりません。
 
そこで送配電各社が着目したのが、スマートメーターです。
 
・すでにほぼ全ての家庭に設置されている
・旧型も順次、更新時期を迎える
・電気給湯器など、需給調整に使えるあらゆる製品につながっている
 
東電PGの小林直樹・次世代ネットワークイノベーション推進担当部長は、スマートメーターが「電気給湯器など需給調整に使えるあらゆる製品に接続されている」点を利点として挙げています(日本経済新聞の報道より)。
新方式では、送配電各社の共通サーバーからスマートメーターへ指令を送り、そこから各機器を動かします。専用機器が不要になるということは、参加のハードルが一気に下がるということ。ここが今回のニュースの核心です。
 
 

 鍵を握る「第2世代スマートメーター」

この仕組みを支えるのが、2025年度から順次導入が始まった第2世代の次世代スマートメーターです。
 
第2世代には、次のような機能があります。
 
・電力データを5分ごとに計測できる
・「IoTルート」と呼ばれる、エネルギー関連家電との通信機能を持つ
 
一方で、課題もあります。スマートメーターはもともと送受信するデータ量が多くないため、通信容量が限られているのです。実用化にあたっては、この限られた通信容量のなかで検針情報の送信と需給調整の指令を両立できるかが鍵になるとされています。
 
実証では、検針情報の送信とタイミングをずらしてDR指令を出す方法などを試すとのこと。地味に聞こえるかもしれませんが、こうした通信設計の詰めこそが商用化を左右します。
 
また、2026年7月には、再エネの需給を束ねるアグリゲーターのShizen Connect(東京・中央)や、家電を手掛けるパナソニック エレクトリックワークスなどが実証に加わりました。実際の需給調整の場面で、アグリゲーターが求める制御の仕方にシステムや家電そのものが対応できるかを確かめる段階に入っています。
 


 

2. そもそもデマンドレスポンス(DR)とは何か

 
ここで、DRという言葉自体を整理しておきましょう。
 
デマンドレスポンス(Demand Response、略してDR)とは、個人や企業など電力の需要家が、供給事業者の要請に応じて電力の使用量を増減させることを指します。再生可能エネルギーによる発電が広がるなか、その変動を吸収する仕組みとして利用が進んできました。
リアルタイムに電力使用量を監視・制御できるようになったことなどから、電力会社やアグリゲーター(特定卸供給事業者)による取り組みとして広がっています。アグリゲーターの事業者数は、2026年1月時点で136社。ガス事業者や商社なども参入しており、プレーヤーの顔ぶれはかなり多様です。
 
 

 「下げDR」と「上げDR」の違い

DRには、方向の違う2つのパターンがあります。
 
・下げDR:供給量の足りない時間帯に、電力使用量の削減を需要家に求めること
・上げDR:電力が余るときに、使用量の増加を要請すること
 
「節電」のイメージが強いDRですが、実は「もっと使ってください」という上げDRも同じくらい重要です。
 
具体的な手法としては、日本政策投資銀行によると、生活や業務に重大な影響を及ぼさない照明・空調設備などの使用量を減らす「節電」、需要家が工場などの稼働タイミングを調整する「シフト」、系統や自家発電設備からの調達比率を調整する「代替」があるとされています。
 
要請を受けた需要家は、自ら設備を調整する手動式か、IoT機器などで自動制御する方式のいずれかで対応します。今回のスマートメーターDRは、後者の自動制御を、専用機器なしで実現しようという話ですね。
 
参加する側にとってのメリットは、電気料金の割引につながる特典ポイントなどのインセンティブです。一方でアグリゲーターは、DRによって生み出した電力の「調整力」を、需給調整市場や容量市場で売買できます。調整力とは、需要と供給の差を最終的に一致させる供給力のことです。
 
実例もあります。東京製鉄は九州電力と連携し、九州工場で上げDRを実施してきました。太陽光による発電量の増加を背景に、電力会社から事前に要請を受け、稼働予定でない日にシフトを組み替えるなどして最終的に需要を増やした、というケースです。
 
 

 再エネの出力抑制がDRを後押ししている

なぜ今、DRの導入機運がここまで高まっているのか。背景には再生可能エネルギーの拡大があります。
 
電力は需給のバランスが崩れると周波数が乱れ、大規模停電(ブラックアウト)につながりかねません。天候や時間によって発電量が変動する再エネが増えるなかで、電力会社が発電事業者に再エネ発電を抑えるよう求める「出力抑制」の要請頻度は増えています。
 
ただ、再エネの出力抑制は、実質的にせっかく作れる電気を捨てているのと同じこと。発電設備の有効利用という観点では、大きな課題でした。
 
ここでDRを活用できれば、「電気が余る時間帯に、家庭の給湯器やEVに充電しておく」といった形で、再エネを効率よく使えるようになります。捨てるはずだった電気が、価値のある電気に変わるわけです。
 
DRは工場でも取り組みが進んでいますが、手法の一つとして、家庭用ヒートポンプ給湯器やEVなど家庭の機器を制御する手法の注目度が高まっています。数は力、というシンプルな理屈です。
 


 

3. DR市場は35年度に735億円へ 数字で見る成長性

 
では、この市場はどれくらいの規模になるのでしょうか。
 
矢野経済研究所(東京・中野)は、アグリゲーターが市場取引で得る収入と、需要家が電力の需要抑制で得るインセンティブを合算した国内のDR関連市場規模について、2035年度に2023年度比3.4倍の735億円になると予測しています。
 
公表されているグラフから読み取れる推移は、おおむね以下の通りです。
 

年度 DR関連の国内市場規模(億円)
2021年度 約135
2023年度 約215
2024年度(予測) 約230
2025年度(予測) 約255
2030年度(予測) 約430
2035年度(予測) 735

※出所:矢野経済研究所。2035年度の735億円および「2023年度比3.4倍」は公表値、その他の年度は公表グラフから読み取った概数です。アグリゲーターが市場取引で得る収入と、需要家が需要抑制で得るインセンティブを合算したもの。
 
注目したいのは、2025年度から2030年度にかけての伸びです。ここで市場が一段跳ねる想定になっていますが、まさにこの時期に、今回のスマートメーターDRの商用化(2028年度末ごろ)が重なります。
 
さらに制度面でも追い風があります。これまでDRによる調整力の市場取引は、大型の工場や蓄電所など電力量の大きい特別高圧・高圧由来に限定されていました。経済産業省は2026年度に、一般家庭など低圧からの電力にも解禁する見通しとされています。
 
「家庭の電気も市場で取引できるようになる」。この規制緩和と、スマートメーターという全国共通のインフラ。この2つが噛み合ったとき、家庭DRは一気に現実味を帯びてきます。
 


 

4. 商用化までのロードマップと、残された課題

 
 

 27年度フィールド実証、28年度末に商用化へ

 
今後のスケジュールを整理してみましょう。
 

時期 内容
~2025年度 スマートメーターを介して単体機器の稼働調整に成功
2026年度 送配電3社が複数機器の一括制御の実証を開始。7月にアグリゲーターや家電メーカーも参加
2027年度 実際の顧客宅のスマートメーターを使ったフィールド実証へ
2028年度末ごろ 一部地域での商用移行を目指す

※日本経済新聞の報道をもとに作成
 
実証では、送配電3社で共通のサーバーや家電の制御方式を構築します。将来的には全国で仕組みを共通化することを見据えており、広域にまたがるエリアでも需給調整の指令を出しやすいよう、エリアごとの垣根をなくす方針です。
 
一方、共通化で課題になるのがセキュリティー面。仮に一部エリアでウイルスによるサイバー攻撃を受ければ、被害が全国に広がる恐れがあります。そのため、共通のサーバーを用いながらも、ウイルス攻撃はエリアごとに遮断できる仕組みなどを構築するとしています。全国の家庭のエネルギー機器につながるインフラですから、ここは慎重に進めてほしいところですね。
 
なお、国の第7次エネルギー基本計画にも、スマートメーターを使った需給調整を目指す方針が示されています。国としても家庭の電力需給調整力への期待は高い、ということです。
 
 

 誰がコストを負担するのか

技術面のめどが立ちつつある一方で、制度面には課題が残っています。最大の論点は「お金の流れ」です。
 
スマートメーターを介した家庭向けDRを実施した際の、資金回収の仕組みにまだメドが立っていません。
 
・アグリゲーターが送配電会社にシステムの利用料金を支払う案 → アグリゲーターの負担が増せば、需給調整の拡大に支障が出る恐れ
・送電網の使用料として徴収する「託送料金」に上乗せする案 → 託送料金は顧客の電気料金が原資のため、国民に負担を強いることになる
 
どちらにも一長一短があり、今後、政府による制度設計の議論が必要になるとされています。
 
技術ができても、ビジネスとして回る設計になっていなければ普及しません。このあたりの議論の行方は、電力を調達する立場の企業にとっても他人事ではないでしょう。
 


 

5. ビジネスパーソンが今から押さえておきたい3つの視点

 
最後に、この動きをビジネスの文脈でどう捉えるか、3つの視点で整理します。
 
まず1つめは、「電力コストは、使う量だけでなく使うタイミングで決まる時代になる」という視点です。DRが広がるということは、同じ電力量でも「いつ使うか」で経済的価値が変わるということ。すでに工場では上げDRの実例がありますが、この考え方はオフィスや店舗にも徐々に降りてきます。自社の電力使用パターンのうち、どこがずらせてどこがずらせないのか。今のうちに把握しておく価値は十分にあります。
 
2つめは、「設備投資の判断軸が変わる」という視点です。ヒートポンプ給湯器、蓄電池、EV充電器といった設備は、これまで省エネや脱炭素の文脈で語られてきました。しかし今後は、DRに参加してインセンティブを得られるかどうかが、投資回収の計算に組み込まれてくる可能性があります。専用の通信機器が不要になれば、参加コストはさらに下がります。
 
3つめは、「制度の議論を追っておく」という視点です。低圧の市場解禁、託送料金の扱い、資金回収の仕組み。これらがどう決着するかで、企業や家庭が受け取れるメリットの大きさは変わります。エネルギー関連の意思決定に関わる方は、経済産業省の審議会資料などをときどきチェックしておくと、判断のスピードが変わってくるはずです。
 
私たち情熱電力が拠点を置く長野県松本市のような地域でも、太陽光発電や蓄電池を導入されているお客様は着実に増えています。「作った電気をどう使い切るか」という発想は、これからますます重要になっていくと感じています。
 


 
まとめ
東京電力パワーグリッドなど送配電3社が、家庭のスマートメーターを使って複数の家電を一括制御するデマンドレスポンス(DR)の実証を始めました。2027年度には実際の顧客宅でのフィールド実証に進み、2028年度末ごろには一部地域での商用化を目指すとしています。
 
ポイントは、すでにほぼ全ての家庭にあるスマートメーターを使うため、専用の通信機器が不要になること。第2世代の次世代スマートメーターは5分ごとの計測とIoTルートによる家電通信に対応しており、参加のハードルが大きく下がります。
 
背景にあるのは再エネの拡大です。天候で変動する再エネが増え、出力抑制で電気を捨てざるを得ない場面が増えるなか、家庭の給湯器やEVを需給調整に使えれば、再エネを効率よく活かせます。矢野経済研究所は、DR関連の国内市場規模が2035年度に735億円(2023年度比3.4倍)になると予測しています。
 
一方で、資金回収の仕組みなど制度面の課題は残ったまま。技術と制度の両輪がそろったとき、家庭も企業も「電気を使うタイミング」で価値を生み出せる時代が来ます。今から自社の電力の使い方を見直しておくことが、その準備になるはずです。
 


 
情熱電力からのお知らせ
デマンドレスポンスのような新しい仕組みが広がっても、出発点になるのは「自社が、いつ、どれくらい電気を使っているか」を正しく知ることです。
 
株式会社情熱電力では、電力の使用状況の見える化から、料金プランの見直し、太陽光や蓄電池を導入された場合の電気の使い方のご相談まで、お客様の状況に合わせてご案内しています。専門用語をできるだけ使わずに、わかりやすくお伝えすることを大切にしています。
 
「うちの使い方だとどうなるんだろう?」「今のプランのままでいいのかな?」——そんな段階のご相談でも大歓迎です。気になる方は、お気軽にお声がけください。
 
TEL:0263-88-1183
お問い合わせフォーム:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・NIKKEI GX:電力メーターで「DR家電」制御 東電など、28年度にも商用
・NIKKEI GX:【デマンドレスポンス】電力需要家、要請受け使用量調整
・資源エネルギー庁:第7次エネルギー基本計画
・資源エネルギー庁:VPP・DRの活用 ネガワット取引
 

40℃「酷暑日」の次は台風がやってくる?2026年夏の電気代を抑える節電術と停電への備え方

 
40℃「酷暑日」の次は台風がやってくる?
 
ダイヤモンド・オンラインに「今年の夏は普通じゃない…『40℃以上の酷暑』の後に待ち受ける〈もう1つの脅威〉とは【気象予報士が警鐘】」という記事があったので調べてみました。
読んでみて、思わず「うわ、そういうことか」と声が出ました。今年の夏、とにかく暑いですよね。ニュースでは連日「40℃」という数字が飛び交い、外に出た瞬間に息が詰まるような日が続いています。ところがこの記事によれば、本当に警戒すべきなのは暑さそのものだけではないというのです。
キーワードは「交互に来る」。強い高気圧に覆われて命に関わる酷暑になるか、その高気圧が弱まったタイミングで台風が近づくか。つまり8月は、猛暑と台風という2つの極端な気象が、入れ替わり立ち替わり日本を襲う可能性があるということでした。
そして、どちらも私たちの「電気」に直結する話です。酷暑ならエアコンをフル稼働させることになり、電気代が跳ね上がります。台風なら停電のリスクがあり、その備えもまた電気の話。この記事では、2026年夏の気象の特徴を公的なデータで確認しながら、家庭でできる現実的な備えを整理してみます。
 


 
目次

 


 

1. 「酷暑日」は今年からの正式用語。2026年夏に何が起きているのか

 
まずは、今年の夏がどれくらい「普通じゃない」のかを確認しておきましょう。
 
 

40℃以上の日を指す新しい予報用語が誕生

2026年4月、気象庁は最高気温40℃以上の日を指す新しい予報用語として「酷暑日」を決定し、今夏から運用を始めました(出典:日本気象協会 tenki.jp「気象庁、40℃以上の日の名称を『酷暑日』に決定」2026年4月17日/日本経済新聞 2026年4月)。
 
これまで気温の呼び名は「夏日(25℃以上)」「真夏日(30℃以上)」「猛暑日(35℃以上)」までしかありませんでした。そこにもう一段階、40℃以上を表す言葉が加わったということです。わざわざ新しい名前をつけるということは、それだけ40℃という気温が「例外」ではなくなってきた、ということでもあります。
 
かつて40℃は数十年に一度の珍事でしたが、近年は毎年のように各地で観測されるようになりました。前出のダイヤモンド・オンラインの記事によると、2026年は8月3日に40℃以上を観測した地点数が過去最多を記録し、地震で被災した熊本でも観測史上初めて40℃以上を記録したと報じられています。
 
 

8月は東海から西日本を中心に厳しい暑さ

意外に思われるかもしれませんが、今年は7月前半まで本州で雨や曇りの日が多く、気温は低めに推移していました。フェーズが変わったのは7月下旬。そこから一気に酷暑モードに突入したのです。
気象庁の長期予報をもとにした報道によれば、8月いっぱいは全国的に平年より気温が高く、特に東海から西日本にかけて40℃に迫る暑さが予想されるとされています。一方で9月に入ると暑さは落ち着き、残暑は控えめになる見込みとのこと。「秋までダラダラ続く長すぎる夏」にはならなさそうですが、裏を返せば8月がこの夏の正念場ということですね。
 


 

2. 暑さが緩んだときこそ要注意。台風が近づく「通り道」ができる

 
ここからが、元記事がいちばん伝えたかったポイントです。
 
 

台風の発生数は平年を大きく上回るペース

猛暑のピーク時、日本付近は勢力の強い高気圧にすっぽり覆われています。この高気圧は、南から北上してくる台風をブロックする役割も果たしています。
ということは——暑さが和らいでいるときは、高気圧の勢力が弱まっているとき。ブロックが効かず、台風が日本に近づく「通り道」ができてしまうわけです。「今日は涼しくて助かるなあ」と思っていたら、その裏で台風が接近している。この構図、知っておくと天気予報の見え方が変わりませんか。
 
実際、今年の台風は数が多いのが特徴です。日本気象協会によると、2026年に7月までに発生した台風は13個。平年値の7.9個を大きく上回るハイペースとなっています。さらに8月は4〜7個が発生し、このうち3〜6個が日本に接近する予想が出されています(出典:日本気象協会 tenki.jp「2026年8月は台風3〜6個が日本に接近予想」2026年7月31日)。
 
 

エルニーニョ現象が台風を強くする理由

もうひとつの懸念材料が、エルニーニョ現象です。
 
気象庁が2026年7月10日に発表したエルニーニョ監視速報によると、2026年春からエルニーニョ現象が続いているとみられ、今後、秋にかけて続く見込み(可能性100%)とされています。6月の監視海域の海面水温は基準値より1.9℃高い状態でした(出典:気象庁「エルニーニョ監視速報」2026年7月10日発表)。
エルニーニョ現象が起きている年は、台風が平年より日本から離れた海域で発生する傾向があります。その分、暖かい海の上を長く進むことになり、十分に発達した状態で日本付近に接近するおそれがある、と説明されています。
 
加えて今年は、記録的な酷暑によって日本近海の海面水温そのものが高くなっています。本来なら北上するにつれて勢力が落ちるはずの台風が、暖かい海面からエネルギーを補給し続け、勢力を保ったまま、あるいはさらに発達して上陸する——そんなシナリオが現実味を帯びているということです。
お盆の帰省や旅行を予定している方は、交通機関への影響も含めて、早めに情報をチェックしておきたいところですね。
 


 

3.この夏、電力は足りるの?電気代はどうなるの?

 
さて、ここからは私たち新電力の本業に近いお話です。
 
 

2026年度夏季は「節電要請なし」の見通し

「こんなに暑いと、また電力がひっ迫するのでは?」と心配される方も多いと思います。結論からお伝えすると、国としての見通しは比較的落ち着いています。
 
経済産業省・資源エネルギー庁が2026年5月20日に取りまとめた「2026年度夏季の電力需給対策」では、全エリアにおいて安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しであることが確認され、政府としての節電要請は実施しないとされています(出典:経済産業省「2026年度夏季の電力需給対策を取りまとめました」2026年5月20日)。
 
ただし、これは「何もしなくていい」という意味ではありません。同じ資料の中でも、異常気象など予測が難しい要因があることを踏まえ、省エネの取り組みを継続する準備と、万一の需給ひっ迫時に備えた体制整備は求められています。国レベルでの要請がなくても、家庭レベルでの工夫は無駄になりません。
 
 

電気代が上がる最大の要因はやっぱりエアコン

夏の家庭の電気使用量で、いちばん大きな割合を占めるのがエアコンです。当たり前のようですが、逆にいえば「エアコンの使い方を少し変えるだけで、支出への効き目が大きい」ということでもあります。
ここで大事なのは、暑さを我慢する節電は絶対にしないでいただきたい、ということです。今年のような酷暑は、熱中症で命に関わります。目指すのは「涼しさは確保したまま、ムダな電気だけを削る」節電です。
 


 

4. 我慢しない節電で酷暑を乗り切る、5つの実践ポイント

 
具体的に、今日から手をつけられるものを5つに絞って整理しました。どれもお金をほとんどかけずにできるものばかりです。
 

ポイント やること なぜ効くのか
① フィルター掃除 2週間に1回を目安にホコリを取る 目詰まりすると風量が落ち、余計な電力を使ってしまうため
② 室外機まわりの環境 吹き出し口の前に物を置かない。直射日光が強く当たる場合は風をふさがない日よけを検討 室外機が熱を逃がしにくいと効率が落ちるため。ただし本体を覆って風の通り道をふさぐと逆効果
③ 日射を室内に入れない すだれ・遮熱カーテン・グリーンカーテンで窓からの熱をカット 夏の熱の多くは窓から入る。入る熱を減らせば冷房の負担が減るため
④ 扇風機・サーキュレーター併用 冷たい空気がたまる足元から、天井方向へ空気をかき回す 体感温度が下がり、設定温度を無理に下げなくても涼しく感じられるため
⑤ こまめなオンオフをやめる 短時間の外出なら運転を続ける 起動直後がもっとも電力を使うため、頻繁な入切はかえって不利になりやすい

なお、よく言われる「28℃」は、エアコンの設定温度ではなく“室温”の目安として示されている数値です。同じ設定温度でも部屋の環境によって室温は変わりますから、温度計を1つ置いて、実際の室温で判断するのがおすすめです。体調がすぐれないとき、小さなお子さんや高齢のご家族がいるご家庭では、目安にこだわらず涼しくしてくださいね。
 


 

5. 台風・停電に「電気の面から」備えるチェックリスト

 
そしてもうひとつの脅威、台風への備えです。台風で怖いのは、暴風雨そのものに加えて「停電」。しかも猛暑のさなかに停電すると、エアコンも冷蔵庫も止まってしまいます。
 
台風が近づくと分かった時点で、以下を確認しておきましょう。
 
・モバイルバッテリー、ノートPC、電動アシスト自転車のバッテリーなどを満充電にしておく
・保冷剤を凍らせておく。ペットボトルに水を入れて凍らせておくと、保冷剤にも飲料水にもなる
・停電したら冷蔵庫・冷凍庫の扉はできるだけ開けない。庫内の冷気を保つのがいちばんの節約
・懐中電灯やランタンを、暗い中でも手が届く場所に出しておく(スマホのライトはバッテリーを消耗します)
・浴槽に水を張っておく。断水時の生活用水になります
・停電情報の確認先をあらかじめスマホに登録しておく。長野県を含む中部エリアなら中部電力パワーグリッドの停電情報ページです
 
もうひとつ、意外と知られていないのが「通電火災」への注意です。停電から復旧したときに、倒れた電気ストーブや傷んだ配線から出火するケースがあります。避難する際や長時間の停電時には、ブレーカーを落としてから家を離れるのが安全です。
 
ちなみに、停電が起きても電気の復旧作業を行うのは、電力小売会社ではなく地域の送配電会社です。新電力にご契約いただいている場合でも、電線や設備の管理・復旧は送配電会社が担当しますので、停電時の連絡先は送配電会社になる、という点も覚えておいていただけると安心です。
(弊社、情熱電力のお客様に関しては、担当者までご連絡いただければできる限りの対応は致します!)
 


 
まとめ
2026年の夏は、40℃以上を表す「酷暑日」という言葉が気象庁の正式な予報用語として使われ始めた、記録的な夏になりました。そして元記事が指摘していたとおり、警戒すべきなのは暑さだけではありません。強い高気圧が弱まって暑さが緩んだタイミングでは、台風が日本に近づく通り道ができてしまいます。
 
しかも今年は、7月までの台風発生数が13個と平年値7.9個を大きく上回るハイペース。エルニーニョ現象が秋にかけて続く見込みであることも重なり、発達した状態の台風が接近するおそれが指摘されています。「暑さ」と「台風」が交互にやってくる、気の抜けない8月ということです。
 
一方、電力需給そのものは全エリアで予備率3%を確保でき、政府としての節電要請は実施しない見通しです。だからこそ、家庭でできる備えは「我慢する節電」ではなく「ムダを削る節電」と「停電への準備」の2本立てで考えるのがおすすめです。
 
フィルター掃除、室外機まわりの整理、窓からの日射カット、扇風機の併用。そして台風前のバッテリー充電と保冷剤の準備。どれも今日からできることばかりです。無理をせず、涼しく、安全にこの夏を乗り切りましょう。
 


 
情熱電力からのお知らせ
猛暑が続くと、毎月の電気の使用量も自然と増えていきます。「先月より高くなったけれど、これって普通なの?」「うちの契約は今の暮らし方に合っているのかな?」——そんな疑問が浮かんだら、遠慮なくお声がけください。
 
情熱電力は長野県松本市の新電力です。検針票やマイページの使用量を一緒に見ながら、料金の内訳や、暮らし方に合ったプランの考え方をわかりやすくご説明します。無理におすすめすることはありません。まずは「今の状態を知る」ところからで大丈夫です。
 
お問い合わせ:TEL 0263-88-1183 お問い合わせフォーム:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・気象庁:エルニーニョ監視速報(No.406)
・経済産業省 資源エネルギー庁:2026年度夏季の電力需給対策
・中部電力パワーグリッド:停電情報
・ダイヤモンドオンライン:今年の夏は普通じゃない…「40℃以上の酷暑」の後に待ち受ける〈もう1つの脅威〉
 

スーパーの「即食」戦略に学ぶ、上がり続ける固定費と電気代の向き合い方

 
スーパーまけっとの店内
 
ダイヤモンド・オンラインに『スーパーが「惣菜、ベーカリー、カットフルーツ」を入口に集めるワケ、時短ニーズだけではなかった』という記事があったので調べてみました。
 
最近、スーパーに入ってすぐの場所に総菜やベーカリー、カットフルーツが並んでいて「あれ、青果コーナーはどこだっけ」と感じたことはありませんか。実はこの売り場の変化、単なる時短ニーズへの対応だけではなく、地価や人件費といった「上がり続ける固定費」にどう対処するかという、経営上の切実な工夫が背景にあったのです。この構図、実は電気代をはじめとした固定費に頭を悩ませている多くの企業にとっても、他人事ではありません。今日は、スーパー業界の売り場改革から、ビジネスパーソンが自社の経営に活かせるヒントを一緒に見ていきましょう。
 


 
目次

 


 

1. スーパー売り場で急増中の「即食」、その正体とは

 
最近、食品スーパーの入口正面に、総菜やベーカリー、カットフルーツがずらりと並ぶ光景を目にすることが増えていませんか。以前は青果売り場から始まり、水産、畜産、総菜へと続くのが定番のレイアウトでしたが、この常識が大きく崩れ始めています。
 
その象徴が「即食(そくしょく)」というキーワードです。日本惣菜協会の『惣菜白書2026』でも、総菜という一部門の枠を超えた「即食」という新しいカテゴリーで市場データが公表されるようになりました。
 
即食とは、弁当や総菜だけでなく、カットフルーツや刺身、焼魚、電子レンジで温めるだけの商品、サンドイッチなど、「買ってすぐに、あるいは最小限の手間で食卓に出せる食品」全般を指す言葉です。共働き世帯の増加や、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する消費者心理を背景に、こうした売り場が急速に広がっているのです。
 


 

2. なぜスーパー各社は「即食」を売り場の主役にしたのか

 
「時短ニーズに応えるため」というのは、実は表面的な理由に過ぎません。その裏側には、店舗経営を圧迫する、もっと切実な事情があります。
 
都市部を中心に、地価や建築コスト、そして数年来上昇を続ける人件費(最低賃金の引き上げなど)が、店舗の固定費を年々押し上げています。こうした環境で生き残るには、限られた売り場面積からこれまで以上の収益を生み出す「坪効率(面積当たりの収益性)」を高めることが、避けて通れない経営課題になっているのです。
 
そこで注目されたのが、需要と収益性を兼ね備えた「即食ゾーン」でした。『スーパーマーケット統計調査2025』によると、総菜の売上構成比は2023年の10.6%から2025年には11.4%まで上昇しています。加えて、部門別の平均粗利益率を見ると、総菜は38.7%と主要部門の中でもっとも高い水準にあるとされています。
 
下の表は、記事内で紹介されていた主なデータをまとめたものです。
 

指標 2023年 2025年 出典
総菜の売上構成比 10.6% 11.4% スーパーマーケット統計調査2025
総菜部門の平均粗利益率 38.7%(主要部門で最高水準) スーパーマーケット統計調査2025
30分以内で買い物を終える客の割合 約4割 スーパーマーケット協会2025年データ

需要が伸び、収益性にも優れている――だからこそ各社は、部門ごとの売り場配分という「部門別」の発想を捨て、「今すぐ食べたい」という生活動線に合わせた「目的別レイアウト」へと売り場を再編集し始めたのです。
 


 

3. 都市型スーパーは成功、地方スーパーは苦戦…その分かれ目

 
ただし、この売り場改革はどこでも同じように成功するわけではないようです。
 
かつて総菜の強さで知られたある地方の食品スーパーでは、総菜の売上構成比が12%を超えたことをきっかけに、入口正面へ総菜とベーカリーを配置する大改装を行いました。しかし結果は厳しく、総菜だけを買ってサッと帰る客が急増する一方、青果や畜産といった他部門への買い回りが激減し、客単価が大幅に低下してしまったといいます。
 
一方、東京都心のライフコーポレーションやサミットといった都市型スーパーでは、同じような売り場改革が成果を上げています。東京都中野区の商業地公示地価(2026年)は前年比17.5%上昇し、一部地点では20%を超える上昇率だったとされ、都市部の地価高騰は深刻です。こうした高い固定費を抱える都市部だからこそ、即食ゾーンを起点に「即食同士の買い回り」を誘発し、客単価と粗利率を同時に引き上げるという戦略が機能しているのです。
 
つまり、同じ「即食」という切り口でも、立地や商圏、客層によって求められる収益設計はまったく異なります。これは、業種や地域を問わず、経営戦略を考えるうえで非常に示唆に富むポイントではないでしょうか。
 


 

4. ビジネスマンが注目すべき教訓、「上がり続ける固定費」との向き合い方

 
このスーパー業界の事例から、私たちビジネスパーソンが学べることは少なくありません。もっとも大きな教訓は、「固定費が上がり続ける前提のもとで、限られたリソースからどう収益を最大化するか」という発想の転換です。
 
スーパー各社は、地価や人件費の上昇という自社では簡単にコントロールできないコスト増に対して、売り場のレイアウトという「変えられる部分」を最適化することで対応しました。プロセスセンターやセントラルキッチンとの連携を進め、店舗のバックヤード業務を効率化したことで、売り場面積を広げる余力を生み出したことも見逃せません。
 
これは、どんな業種にも通じる発想です。すべての固定費を一律に削ることは難しくても、事業の中で「変えられるコスト」と「変えにくいコスト」を切り分け、変えられる部分から手を打っていく。この視点は、経営資源が限られる中小企業にとって、むしろ重要な考え方といえるでしょう。
 
 

電気代も見過ごせない固定費のひとつ

 
記事では地価や人件費が主な固定費として取り上げられていましたが、店舗や事業所を運営するうえで見逃せないもう一つの固定費が「電気代(光熱費)」です。
 
冷蔵・冷凍設備を多用するスーパーはもちろん、オフィスや店舗、工場を持つ多くの企業にとって、電気代は毎月確実に発生し、かつ年々の変動が大きいコストです。地価や人件費のように短期間で大きく変えることが難しい固定費だからこそ、「見直せる部分がないか」を定期的にチェックする価値があります。
 


 

5. 固定費見直しの第一歩は「電気代」から始められる

 
スーパーが売り場のレイアウトという「変えられる部分」から手を打ったように、私たちも自社の固定費の中で「見直せる部分」から着手してみるのはいかがでしょうか。
 
電気代の見直しは、以下のような点から検討できます。
 
・現在の契約プランが、自社の使用状況(時間帯・季節ごとの使用量)に合っているか ・複数の拠点がある場合、拠点ごとに最適な契約になっているか ・新電力を含めた他社プランとの比較検討をしたことがあるか
 
大がかりな設備投資や業務プロセスの変更を伴わずに着手できる点は、電気代見直しの大きなメリットです。スーパー業界が「即食」という新しい切り口で売り場全体の収益設計を見直したように、私たちも固定費を「今のままで当たり前」と捉えず、定期的に点検する習慣を持つことが、これからの経営体力につながっていくはずです。
 


 
まとめ
食品スーパーの売り場に広がる「即食革命」は、単なる時短ニーズへの対応ではなく、地価や人件費といった上がり続ける固定費に対応するための、切実な経営戦略でした。総菜という一部門の枠を超え、売り場全体で坪効率を最大化するという発想は、業種を問わず多くの企業にとって参考になる視点です。
 
同時に、都市型スーパーと地方スーパーで明暗が分かれた事例からは、自社の立地や客層に合わせた収益設計の重要性も見えてきました。固定費が上がり続ける時代だからこそ、「変えられる部分」から見直していく姿勢が求められています。地価や人件費のコントロールは簡単ではありませんが、電気代のような固定費であれば、今日からでも見直しに着手できます。この機会に、自社のコスト構造を一度点検してみてはいかがでしょうか。
 


 
情熱電力からのお知らせ
スーパー業界が売り場全体のレイアウトを見直したように、電気代も「今の契約のままで本当に最適なのか」を一度点検してみる価値があります。株式会社情熱電力では、長野県松本市を拠点に、地域の企業様お一人おひとりの使用状況に合わせて、電気料金プランをわかりやすくご提案しています。難しい専門用語を並べるのではなく、対話を大切にしながら一緒に考えるのが私たちのスタイルです。「うちの電気代、見直せる余地があるのかな」と気になった方は、お気軽にご相談ください。
 
TEL:0263-88-1183 お問い合わせ:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・ダイヤモンドオンライン:スーパーが「惣菜、ベーカリー、カットフルーツ」を入口に集めるワケ
・一般社団法人 日本総菜協会:「2025年版惣菜白書」
 

【お盆休業のお知らせ】今年もしっかり充電して、パワー全開で戻ってきます! 情熱電力

 
夏季休暇のお知らせ
 
いつも情熱電力をご利用いただき、誠にありがとうございます。
 
夏本番、太陽がまぶしく輝くこの季節。私たち情熱電力も、この夏をもっと元気に走り抜けるために、少しだけ充電期間をいただきます。
 
■ 休業期間
 
2026年8月11日(火・山の日) ~ 2026年8月16日(日)
 
■ 営業再開日
 
2026年8月17日(月)より通常営業を再開いたします。
 
お休みの間にいただいたお問い合わせは、営業再開後に順次ご返信させていただきます。
休業明けはご連絡が混み合うことが予想されますので、ご返信までに通常よりお時間をいただく場合がございます。
ご不便をおかけいたしますが、皆さまもこの夏、しっかり休んで心も体もフル充電してください。
 
暑さに負けず、情熱いっぱいのパワーでまたお会いできる日を楽しみにしています!
 
 
お出かけの際の参考に!!
 
お休み期間中の道路状況
・Yahoo!:道路交通情報(長野県)
・NEXCO中日: 2026年度 お盆期間の中日本高速道路における渋滞発生予測
・NEXCO中日本: 渋滞予測・おでかけガイド 2026夏
 
株式会社情熱電力
〒390-0874 長野県松本市大手2丁目1-4
TEL:0263-88-1183 mail: info@jo-epco.co.jp
 
お問い合わせは コチラからお願いします
 

BYDの軽EV「RACCO」実質199万円は本当に安い?補助金と電気代から新電力が解説

 
軽自動車サイズの電気自動車
 
中国のBYDが、日本専用に開発した軽自動車のEV「RACCO(ラッコ)」を2026年7月28日に発売した、という複数の記事を見つけたので、まとめて調べてみました。海外メーカーが日本独自の規格である軽自動車に、専用設計のクルマで本格参入するのは史上初めてのこと。しかも価格は214万5000円からで、国の補助金を使えば実質199万5000円と、ガソリンの軽自動車とも戦える水準に踏み込んできました。
 
ただ、記事を読み比べていくと「安い」の中身はそう単純ではないことが見えてきます。国の補助金はBYDに15万円しか出ず、日産やホンダの軽EVとは40万円以上の差がある。一方で航続距離や装備では上回る部分もある——。
 
そして、私たち電力会社の立場から言わせていただくと、EVで本当に効いてくるのは車両価格だけではありません。「毎月の電気代がどうなるか」「今の家の電気契約のままで充電できるのか」。このあたりは、カタログにはあまり書かれていない部分です。今回は価格のカラクリと、買う前に確認しておきたい電気まわりのポイントを、まとめて整理してみました。
 


 
目次

 


 

1. BYD「RACCO」とは何者か 軽自動車という最後の聖域へ

 
まずは、どんなクルマなのかを押さえておきましょう。
 
RACCO(ラッコ)は、世界最大級のEVメーカーである中国BYDが、日本市場専用にゼロから開発した軽自動車規格の電気自動車です。BYD Auto Japanが2026年7月28日に発表・発売しました。
 
注目すべきは、狙ってきたカテゴリーです。全高1.8m級の「軽スーパーハイトワゴン」——ホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」が属する、軽自動車の中でいちばん売れているジャンルにいきなり切り込んできました。両側の電動スライドドアを全グレードに標準装備し、大人4人がゆったり座れる室内を確保。BYD Auto Japanの商品企画担当者は「一番広いクルマでも一番速いクルマでもなく、一番いい軽自動車を目指した」と語っています(東洋経済オンライン報道)。
 
主なスペックを整理すると、こうなります。
 

グレード RACCO 200 RACCO 300Plus RACCO 300Premium
メーカー希望小売価格(税込) 214万5,000円 239万8,000円 249万7,000円
バッテリー容量 22.4kWh 35.84kWh 35.84kWh
一充電走行距離(国土交通省審査値) 210km 320km 320km
CEV補助金(国) 15万円 15万円 15万円
補助金適用後の実質価格 199万5,000円 224万8,000円 234万7,000円

ボディサイズは全長3,395×全幅1,475×全高1,800mm。モーターは最高出力47kW(64PS相当)、最大トルク160N・m。バッテリーはBYD独自のリン酸鉄リチウムイオン電池「ブレードバッテリー」を採用しています。新車保証は6年または15万km、バッテリーの容量保証は8年15万kmで、有償(18,000円)で最長10年20万kmまで延長できるとされています。
 
軽自動車は日本の新車販売のおよそ3〜4割を占める、国内最大のマーケットです。そこに海外メーカーが専用設計で挑むというのは、これまでなかったこと。BYDはまず年間1万台の販売を目標に掲げています。
 


 

2. 実質199万円のカラクリ 補助金43万円のハンデを読み解く

車両価格は軽EV最安、でも補助金込みだと逆転する

 
ここからが本題です。「実質199万円」という数字は確かにインパクトがありますが、ライバルと比べたときの立ち位置は少し複雑です。
 
国のCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)は、車種によって金額が違います。報道によれば、日産「サクラ」とホンダ「N-ONE e:」は58万円、三菱「eKクロスEV」は57万4,000円が交付される一方、BYDのRACCOは全グレード一律15万円にとどまります。その差、最大で43万円。
 
つまり、こういうことです。
 
・メーカー希望小売価格で比べると → RACCOが軽EVで最安
・国の補助金を差し引いた実質価格で比べると → 日産サクラが約186万円台からで、RACCOの199万5,000円を下回る
 
「表示価格は安いのに、支払い額では逆転する」という、なかなかややこしい状況になっているわけですね。
 
なぜこんな差がつくのか。背景には2026年4月の制度改定があります。CEV補助金は、車両の性能だけでなく「メーカーとしての貢献度」を評価する仕組みになっており、この会社評価の比重が高まりました。国内の充電インフラ整備やサプライチェーンの供給安定性などが評価軸に含まれるため、電池を自社生産する海外メーカーであるBYDは減額された形です。BYD側はこの点に不満を示し、経済産業省に運用の透明性を求めたと報じられています。
 
制度の是非をここで論じるつもりはありませんが、「EVの補助金は、クルマの性能だけで決まるわけではない」というのは、購入を検討する方には知っておいていただきたいポイントです。
 
 

自治体の補助金で景色は大きく変わる

 
もうひとつ大事なのが、自治体独自の補助金です。
 
国の補助金に上乗せする形で、都道府県や市区町村が独自の助成を行っているケースがあります。報道では、東京都の補助金(80万円)を使えばRACCOの実質価格は約120万円になる、というBYD関係者のコメントも紹介されていました。
 
ただし、自治体の補助制度は地域によって金額も条件も、そもそも制度の有無すらまったく違います。予算の上限に達し次第終了、というパターンも珍しくありません。長野県内にお住まいの方も含め、「うちの自治体はどうなっているのか」は、購入を決める前に必ずお住まいの市区町村・都道府県の公式サイトでご確認ください。国の補助金と自治体の補助金は併用できる場合が多いものの、併用条件が定められていることもあります。
 
なお、EVには税制面のメリットもあります。購入時のエコカー減税や、取得の翌年度の軽自動車税(種別割)のグリーン化特例など、ガソリン車にはない優遇が受けられます。制度は年度ごとに見直されるため、こちらも最新の情報を確認しておくと安心です。
 


 

3. 電気代で見る軽EVのランニングコスト

 
さて、ここからは私たち電力会社の得意分野です。
 
車両価格の話はメディアでさんざん報じられていますが、「では実際、毎月の電気代はどうなるの?」という部分は意外と語られていません。ここを一緒に計算してみましょう。
 
 

1kmあたり約3.5円という計算

 
まず、RACCOの「電費」を出してみます。電費とは、1kWhの電気で何km走れるかという、ガソリン車でいう燃費にあたる指標です。
 
RACCO 300Plusはバッテリー容量35.84kWhで航続距離320km(国土交通省審査値)。単純に割ると、約8.9km/kWhという計算になります。RACCO 200は22.4kWhで210kmなので、約9.4km/kWhです。
 
ここに電気料金の単価をかけます。家庭用電気料金の目安単価は31円/kWh(税込)とされていますので、これを使うと——
 
・RACCO 300Plus:31円 ÷ 8.9km ≒ 約3.5円/km
・RACCO 200:31円 ÷ 9.4km ≒ 約3.3円/km
 
一方、ガソリンの軽自動車はどうでしょうか。実燃費20km/Lと仮定し、レギュラーガソリンの全国平均価格を約170円/L(2026年7月下旬時点の水準)とすると、170円 ÷ 20km = 約8.5円/kmとなります。
 

軽EV(RACCO 300Plus) ガソリン軽自動車
1kmあたりの燃料・電気代 約3.5円 約8.5円
年間5,000km走行した場合 約1万7,500円 約4万2,500円
年間10,000km走行した場合 約3万5,000円 約8万5,000円

年間1万km走るご家庭なら、燃料代だけで年間およそ5万円の差。10年乗れば50万円ですから、補助金の43万円差を走行距離でひっくり返せる、という見方もできます。
 
ただし、いくつか注意点があります。上の計算は自宅での普通充電を前提にしたものです。外出先の急速充電器を頻繁に使う場合は、充電サービスの料金体系(従量制・時間制など)によってコストが大きく変わり、この試算より高くつくことがほとんどです。また、充電時にはロスが発生しますし、冬場は暖房やバッテリー性能の影響で電費が落ちます。あくまで目安としてご覧ください。
 
 

家庭の電気使用量はどれくらい増える?

 
もう一つの視点。EVを買うと、当然ですが家庭の電気使用量は増えます。
 
年間1万km走るとして、電費8.9km/kWhなら、必要な電力量は年間およそ1,100kWh。月あたりにすると約92kWhです。31円/kWhで計算すると、月々の電気代は約2,800円増える計算になります。
 
「電気代が月3,000円近く上がる」と聞くとドキッとしますが、その代わりガソリンスタンドでの支払いが月7,000円ほど消えるわけですから、家計全体では明確にプラスです。とはいえ、電気料金の請求書の数字だけが目に入って「EVにしたら電気代が上がった」と感じてしまう方は少なくありません。ガソリン代と電気代を合算して見る癖をつけると、判断を誤らずに済みます。
 


 

4. EVを買う前に確認したい「家の電気」3つのポイント

 
ここが今回いちばんお伝えしたいところです。EVは「クルマを買う」だけでは完結しません。
 
 

その1 契約容量は足りているか

 
そもそもの話ですが、EVは家庭用の普通のコンセント(100V)にそのまま挿して充電するものではありません。自宅で充電するには、200Vの専用回路を分電盤から引いて、EV用のコンセントか充電スタンドを設置する工事が必要になります。「クルマを買えばすぐ自宅で充電できる」わけではない、というのは最初に押さえておきたいポイントです。
 
戸建て住宅の多くは「単相3線式」といって、もともと100Vと200Vの両方が使える引込方式になっています。エアコンやIHクッキングヒーターで200Vを使っているご家庭も多いはずです。ですので200V化そのものは大きなハードルではないのですが、EV充電は「専用の回路を新たに1本増やす」工事になるため、分電盤に空きがあるか、容量に余裕があるかがポイントになります。
 
そのうえで、充電の速さの話です。RACCOの普通充電の受け入れ能力は最大6kW(RACCO 200は3kW)とされています。ただ、住宅向けのEV充電設備でいま広く使われているのは200V・15A(約3kW)のタイプ。6kWでフルに充電しようとすると、それに対応した充電器と、より余裕のある回路が必要になります。
 
そして6kWの充電は、200Vで30A相当の電力を使い続けるということ。エアコン数台を同時に動かし続けるようなインパクトです。夜、家族がお風呂に入り、エアコンとIHと乾燥機が動いている時間帯に充電が重なると、契約容量によってはブレーカーが落ちる可能性があります。EVの導入にあわせて契約アンペア(または契約容量)の見直しが必要になるケースは、決して珍しくありません。
 
逆に言えば、3kWの設備でも一晩(8時間)あれば20kWh以上は充電できる計算なので、通勤や買い物が中心の使い方なら十分間に合うことがほとんどです。「速く充電できる設備を入れるべきか」「今の契約のままで足りるか」は、ご家庭の走り方次第。クルマの契約前に、一度ご相談いただくのが安心です。
 
 

その2 料金プランは夜間の充電に向いているか

 
EVの充電は、そのほとんどが夜間の自宅で行われます。ということは、夜間の電力量単価が安いプランと組み合わせると、ランニングコストはさらに下がります。
 
先ほどの試算では31円/kWhという目安単価を使いましたが、仮に夜間単価が20円/kWh台前半のプランで充電できれば、1kmあたりのコストは3円を切ってきます。年間1万kmなら燃料代は年3万円を下回る計算です。
 
逆に、日中の在宅時間が長いご家庭や、太陽光発電を設置しているご家庭では、また最適解が変わります。「EVを買ったら、とりあえず夜間割引プラン」ではなく、ご家庭の生活パターンに合わせて選ぶことが大切です。ここは、電気の使い方を丸ごと見直すいい機会でもあります。
 
 

その3 V2Hという「クルマが蓄電池になる」選択肢

 
RACCOは全グレードでV2L(クルマから電化製品に給電する機能)とV2H(クルマから自宅に給電する機能)に対応しているとされています(V2Lアダプターは別売オプション、V2Hには対応機器が別途必要)。
 
これは、災害時の備えとして見逃せないポイントです。35.84kWhというバッテリー容量は、一般的な家庭用蓄電池(5〜10kWh程度)の数倍。停電時に、家一軒の電気をしばらく賄える計算になります。台風や大雪、地震による停電は、地方で暮らす私たちにとって決して他人事ではありません。
 
「走る蓄電池」としてのEVは、電気を売る立場から見ても、これからの家庭のエネルギーのあり方を変えていく存在だと感じています。ただし、V2H機器の導入には別途費用がかかり、機器によっては数十万円規模の投資になります。補助金の対象になる場合もありますので、あわせて検討するのがおすすめです。
 


 

5. 軽EVの競争が、私たちの暮らしに意味すること

 
RACCOの登場で、軽EVの価格競争は一気に激しくなりました。日産サクラ、ホンダN-ONE e:、三菱eKクロスEV、そしてRACCO。実質価格200万円という「攻防ライン」をめぐって、各社が本気で戦い始めています。
 
これは、EVを検討する方にとってはいい話です。選択肢が増え、価格が下がり、航続距離が伸びる。RACCOの航続距離320kmという数字は、これまでの軽EVの常識(180〜295km程度)を塗り替えるものでした。
 
そしてもうひとつ。EVが増えるということは、家庭が電気を「使うだけの場所」から「ためて、時には家に戻す場所」に変わっていくということでもあります。夜間の安い電気をクルマにためて、昼間や停電時に使う。太陽光でつくった電気をクルマにためる。そんな使い方が、特別なことではなくなっていきます。
 
私たち情熱電力のような新電力にとっても、これは大きなテーマです。単に「電気をお届けする会社」から、「お客様の家のエネルギーの使い方を一緒に考える会社」へ。BYDの参入というニュースは、クルマ業界の話であると同時に、私たち電力の側にも変化を迫るニュースなのだと受け止めています。
 
軽自動車という、日本の暮らしにいちばん近いところで起きている変化です。ぜひ、ご自宅の電気の使い方とセットで、考えてみてください。
 


 
まとめ
BYDが日本専用に開発した軽EV「RACCO」は、メーカー希望小売価格214万5,000円から、CEV補助金15万円を適用して実質199万5,000円からという価格で登場しました。車両価格では軽EV最安水準ですが、国の補助金が日産・ホンダの58万円に対して15万円にとどまるため、支払い総額では日産サクラのほうが安くなる、というねじれた構図になっています。
 
一方で、航続距離320km、両側電動スライドドア、6年15万kmの新車保証など、商品力での勝負を仕掛けてきているのも事実です。
 
そして、EVを検討するうえで見落とされがちなのが「電気」の話。自宅充電なら1kmあたり約3.5円と、ガソリン軽自動車の約8.5円に対して大きな差がつきます。年間1万km走るご家庭なら、燃料代の差は年間5万円ほど。ただしその分、家庭の電気使用量は月90kWh前後増えるため、契約容量や料金プランの見直しが必要になることもあります。
 
クルマ選びと同じくらい、電気の契約を見直す価値がある——というのが、今回いちばんお伝えしたかったことです。
 


 
情熱電力からのお知らせ
「EVを買おうか迷っているけれど、うちの電気契約のままで充電できるの?」「夜間に充電するなら、どんな料金プランが合っているんだろう?」
 
そんなご相談、情熱電力ではいつでもお受けしています。ご家庭の電気の使い方をお聞きしたうえで、契約容量や料金プランの考え方を、専門用語をなるべく使わずにご説明します。EVをまだ買っていない段階でのご相談ももちろん歓迎です。「調べてはみたけれど、結局うちの場合どうなの?」という段階でこそ、お役に立てることがあると思っています。
 
無理に何かをおすすめすることはありません。気になることがあれば、お気軽にお声がけください。
 
・TEL:0263-88-1183 ・お問い合わせフォーム:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・一般社団法人次世代自動車振興センター:令和7年度補正 CEV補助金(車両)のご案内
・経済産業省:令和7年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」
・資源エネルギー庁:給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)
 

「界隈」はなぜ広がる?口コミマーケティングに学ぶ、電気代や省エネの話題が伝わる仕組み

 
「界隈」はなぜ広がる?
 
複数の気になる記事を見つけたので、まとめて調べてみました。日経ビジネスに掲載されていた「『界隈』はいかに市民権を得ていったのか 誰もが使える自己紹介ワードに」と、「『界隈』からヒット商品が生まれるメカニズム 市場沸騰の4ステップ」という2本の記事です(日経プレミアシリーズ『界隈経済圏』〈牧口松二著〉からの抜粋とのことです)。「〇〇界隈」という言い方、SNSでよく見かけますよね。実はこの言葉が広がっていく過程には、商品やサービスがヒットしていく過程ととてもよく似た構造があるようです。今回はこの2本の記事をもとに、「界隈」がどのように生まれ、広がり、市場にまで影響を与えていくのかを整理しつつ、私たちのような地域密着型のビジネスにとってどんなヒントになるのかも、あわせて考えてみたいと思います。
 


 
目次

 


 

1. 「界隈」ってそもそも何?地図の言葉から自己紹介ラベルへ

 
「アニメ界隈」「美容界隈」など、「〇〇界隈」という言い方を目にする機会が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。辞書で「界隈」を引くと、「ある場所の付近、一帯。また、そのあたりの人たちの集まり」(『デジタル大辞泉』)とあります。もともとは「銀座界隈」「秋葉原界隈」のように、地図の上で丸をつけられる場所を指す言葉でした。
 
面白いのは、「銀座界隈」と聞くと場所そのものだけでなく、「百貨店と老舗と高級クラブが混ざったあの雰囲気」までイメージできてしまうことです。つまり界隈という言葉には、もともと次の2つの意味がセットで詰まっていました。
 
・場所としての「この辺」 ・そこに居着いている人たちの「空気」
 
1980〜90年代には「サブカル界隈」「演劇界隈」のように、趣味や価値観を共有する人たちのゆるい集まりを指す言葉としても使われ始めます。そして転機となったのがインターネット、特にSNSの普及でした。匿名掲示板やブログを経て、X(旧Twitter)やInstagramが広まると、界隈は「自己紹介ラベル」へと進化します。プロフィール欄に「美容界隈/自炊界隈」と書いておけば、まだ見ぬ相手ともなんとなく話が合いそうだと伝わる。ハッシュタグをひとつ加えるだけで、同じ趣味の人たちがひと晩だけ集まる場ができる。そんな軽やかさが、今の「界隈」の使われ方の土台になっています。
 


 

2. 内輪語だった「界隈」がビジネスの言葉になるまで

 
ここでビジネスパーソンとして気になるのは、「界隈」が単なるネットスラングで終わらず、ニュースや商品説明の文脈でも通じる言葉として定着してきた経緯です。日経ビジネスの記事では、その歩みが年表として整理されていました。要点を抜き出すと、以下のような流れになります。
 

時期 主な出来事 区分
2000年代前半 ネット掲示板などで「〇〇界隈」が内輪語として使われ始める ネットスラング
2000年代後半 2ちゃんねるやmixiで「オタク界隈」などの用法が広がる ネットスラング
2010年代前半 Twitterの拡散やハッシュタグ文化と結びつき、日常的に使われる SNS文化
2021年 『三省堂国語辞典 第8版』が俗語的な意味(周辺の人々・活動分野)を記載 辞書収録
2023年 「成分界隈」がドラッグストア販促などで一般化 広告文脈
2024年 「界隈」がユーキャン新語・流行語大賞トップテンに選出 流行語・メディア

(出典:日経ビジネス「『界隈』はいかに市民権を得ていったのか」〈日経プレミアシリーズ『界隈経済圏』牧口松二著より〉)
 
この年表を見ると、「界隈」は突然バズった流行語ではなく、20年近い時間をかけて少しずつ社会に浸透してきた言葉だとわかります。背景にあるのは、人の説明のされ方そのものの変化です。以前は所属や属性で人を語ることが多かったのに対し、SNS時代になると「どんなテーマに反応し、どんな言い回しを使うか」で人となりが見えるようになりました。「界隈」は、その変化にちょうど噛み合う言葉だったというわけです。
 


 

3. 「界隈」からヒット商品が生まれる4つのステップ

 
もうひとつの記事では、界隈の内側で起きていることを観察すると、立派な経済の流れが見えてくると指摘されています。整理すると、界隈の誕生から市場への広がりには、次の4つのステップがあるとされています。
 
 

①きっかけの瞬間

 
界隈の始まりは、大げさなものではありません。誰かが「これ、平成女児って感じしない?」とつぶやいたり、「アプリの地図を塗って歩いている」という話に「それ、ほぼ伊能忠敬じゃん」とツッコミが入ったり。そんなアドリブ的な一言が、小さな共通体験に「名前」を与える瞬間です。ここで生まれた名前のすべてが定着するわけではありませんが、しっくりくるものだけが、少しずつ使い回されていきます。
 
 

②内輪の熱狂

 
名前がつくと、次に起きるのが「内輪ノリ」の熟成です。ここでは、企業が主導する一般的なファンマーケティングとは向きが逆になります。主役はあくまで界隈の人たちの価値観や生活スタイルであり、商品やサービスはそのノリを支える「道具」の立ち位置です。「このノリを一番気持ちよく支えてくれるアイテムって、これじゃない?」という会話の積み重ねの中から、商品が自然に選ばれていきます。
 
 

③熱の拡散

 
内輪ノリがあまりに楽しそうだと、外側の人が気になり始めます。ここで登場するのが、解説noteやまとめ記事、ショート動画といったコンテンツです。専門用語だらけの内輪ノリを、わかりやすいタグに翻訳してくれる存在があることで、「自分は界隈の人間ではないけれど、なんとなく雰囲気はわかる」という見物客が増えていきます。
 
 

④市場シフト

 
最後は「市場シフト」です。売り場や広告、商品設計の前提が少しずつズレていき、以前なら企画会議で通らなかったような発想が、当たり前の顔をして商品棚や広告に並ぶようになります。ここまで来ると、企業側も生活者側も「界隈の影響でこうなった」とはあまり自覚していないというのも興味深い点です。
 


 

4. 電力・エネルギー業界にも当てはまる「界隈経済圏」の考え方

 
この4ステップ、実は電気代や節電といった身近なテーマにも当てはめて考えられそうです。
 
たとえば「電気代が高くて困っている」「電力会社を切り替えたら、思ったより明細がわかりやすくなった」といったつぶやきが、誰かの投稿をきっかけに小さく共感を集める(①きっかけの瞬間)。それに「うちも見直そうかな」「これ、うちの界隈でも話題」というリプライが重なり、節電グッズや料金プランの情報がやりとりされる(②内輪の熱狂)。そのやりとりが「今どき電気代の見直しは当たり前」という空気として、家族や職場の会話にじわじわ広がっていく(③熱の拡散)。そして気づけば「電気代を定期的にチェックする」「複数の電力会社を比較検討する」ことが、特別なことではなく生活の前提になっていく(④市場シフト)――というイメージです。
 
経済産業省が電力の小売全面自由化を進めて以降、電力会社を選べるということ自体は広く知られるようになってきましたが、実際にどう選べばよいか、何を比較すればよいかという実感の伴った情報は、依然として口コミや身近な人の体験談が頼りにされている面が大きいとされています。数字や制度の説明だけでなく、「実際に切り替えてみた人の生の声」が広がることの重要性は、まさに界隈経済圏の構造と重なる部分ではないでしょうか。
 


 

5. 地域密着の企業が「界隈」から学べるマーケティングのヒント

 
ここまでの内容を、私たちのような地域密着型の企業のマーケティングに引き寄せて考えると、いくつかのヒントが見えてきます。
 
・一方的な宣伝よりも、お客様同士の自然な会話や体験談を大切にすること ・自社の商品やサービスを、お客様の生活の中で「話題にしやすい道具」として位置づけること ・SNSや口コミで生まれる小さな盛り上がりを、丁寧にすくい上げること ・会費も会則もない界隈のように、出入り自由で気軽に相談できる距離感をつくること
 
長野県松本市のような地域に根ざして事業を行う企業ほど、こうした「顔の見える口コミ」の力を活かしやすいという側面もあります。大きな広告を打つよりも、実際に利用したお客様の「わかりやすかった」「相談しやすかった」という声が、次のお客様を連れてくる。これは界隈経済圏の考え方そのものだと言えそうです。
 


 
まとめ
「界隈」という言葉は、もともと「銀座界隈」のような地理的な表現でしたが、SNSの普及とともに自己紹介ラベルへと姿を変え、辞書や流行語大賞にも取り上げられるほど社会に浸透しました。その広がり方には、①きっかけの瞬間、②内輪の熱狂、③熱の拡散、④市場シフトという4つのステップがあり、これは商品やサービスがヒットしていく過程ともよく似ています。電気代や節電といった身近なテーマも、口コミや実体験の共有を通じて同じように広がっていく可能性があります。一方的な宣伝ではなく、お客様の自然な会話や体験談を大切にすることが、地域密着型のビジネスにとって大きなヒントになりそうです。
 


 
情熱電力からのお知らせ
今回ご紹介した「界隈」の広がり方のように、電気代の見直しも、実際に切り替えたご家庭やご近所での何気ない会話がきっかけになることが少なくありません。「うちの電気代、実は下がるかもしれない」——そんな気になる話を耳にした方は、ぜひ一度、情熱電力にご相談ください。わかりやすさを大切に、お客様との距離が近いご説明を心がけております。
 
TEL:0263-88-1183/お問い合わせ:https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・日経ビジネス:「界隈」はいかに市民権を得ていったのか 誰もが使える自己紹介ワードに
・日経ビジネス:「界隈」からヒット商品が生まれるメカニズム 市場沸騰の4ステップ
・中小機構 J‑Net21:企業マニュアル SNSでの集客方法