
中日新聞に「データセンター」という特集記事があったので調べてみました。2026年8月23日付のサンデー版で、施設の中身から立地状況、住民とのあつれきまでを1枚の紙面にまとめた力の入った特集です。
「データセンター」という言葉、ニュースでよく見かけるようになりましたよね。AIの普及で建設が相次いでいる、大量の電気を使う、住民の反対運動が起きている……。断片的な情報は耳に入ってくるけれど、「で、結局あの建物の中では何が起きているの?」と聞かれると、意外と答えにくいのではないでしょうか。
私たちはふだん電力の視点からデータセンターの話題を取り上げることが多いのですが、今回は少し角度を変えて、データセンターそのものを正面から解説してみたいと思います。中で動いている設備、事業者のビジネスの形、建物のタイプ、そしてなぜあれほど電気を食うのか。順番に見ていけば、ニュースの見え方がきっと変わってきます。
- 1. データセンターとは?サーバーを集めた「情報の置き場」
- 2. データセンターの中身をのぞいてみる
- 3. AI普及で市場拡大 国内6.8兆円市場へ
- 4. なぜ大量の電力を消費するのか
- 5. 首都・関西圏に9割 立地の偏りと住民の不安
- 6. 洋上DCから宇宙まで 次世代の構想と法整備の課題
1. データセンターとは?サーバーを集めた「情報の置き場」
まずは基本から。データセンター(DC)とは、サーバーやデータ保存などの装置を設置し、運用することに特化した施設の総称です。国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)らの説明として、中日新聞の特集ではこう定義されています。
もう少し具体的にいうと、コンピューターの頭脳であるCPU(中央演算処理装置)やメモリーを搭載したサーバーが、「ラック」と呼ばれる棚に収められた状態で稼働し、インターネットなどを通じて情報をやりとりしている施設です。写真で見る白い扉が並んだ光景、あれがサーバーラックです。
興味深いのは、佐藤教授が「データセンターの明確な定義はありません」と述べている点です。厳密な法的定義がないまま、社会インフラとして急速に存在感を増している。これが今のデータセンターの立ち位置なんですね。
私たちの生活のどこで使われているのか
「自分には関係のない施設」と思われるかもしれませんが、実はまったくそんなことはありません。データセンターが担っているのは、たとえばこんな役割です。
・金融口座の管理
・住民票などの行政データの管理
・ネット通販 ・動画配信 ・メッセージアプリ
スマホで残高を確認する、動画を見る、家族にメッセージを送る。その裏側では必ずどこかのデータセンターが動いています。以前は各企業がオフィスの一角にサーバーを置いていましたが、消費電力や冷却、セキュリティー、信頼性といった要件を考えると、1か所に集約したほうが運用効率もコストも有利になる。だから施設として独立し、大型化してきたわけです。
AI向けサーバーは何が違うのか
近年の建設ラッシュを引き起こしているのが、AI向けデータセンターです。AI向けのサーバーはCPUに加えてGPU(画像処理装置)も搭載し、AIの学習や推論(判断や生成など)を処理します。
このGPUというのが曲者で、消費電力も発熱量も従来型とは桁が違います。さらにサーバー自体の重量も増すため、既存の施設に置き換えるだけでは対応しきれず、新しい施設を建てる必要が出てくる。佐藤教授も、AI向けDCの需要急増が新たなDC建設につながっていると指摘しています。
2. データセンターの中身をのぞいてみる
外から見ると、ただの大きな四角い箱にしか見えないデータセンター。中には何が入っているのでしょうか。特集で示されていた一般的な設備構成を、電気設備を中心に見ていきます。
・サーバーラック:サーバーを収める棚。施設の主役
・空調設備:機器を冷やす。データセンターの心臓部といっていい存在
・冷却塔:屋上などに設置され、熱を外に逃がす
・受変電装置:送電線から受けた高圧の電気を、施設内で使える電圧に変換する
・UPS(無停電電源装置):停電などの際、非常用発電機が起動するまでの間、電気を供給し続ける
・非常用発電機:停電時に施設を動かし続けるための発電機
・燃料タンク:非常用発電機の燃料。法令の安全基準を満たしたうえで地下などに設置される
・入館受付:セキュリティー管理の入り口
原則24時間365日、止めないための設備
並べてみると気づくことがあります。設備の多くが「止めないため」に存在しているんですね。
データセンターは原則として24時間365日稼働します。ネット通販も動画配信も金融システムも、真夜中だからといって止まってはいけません。だからこそ受変電装置からUPS、非常用発電機、そのための燃料タンクまで、電源の多重化に相当な投資がなされています。
そしてもうひとつ、冷却設備の存在感です。機器の故障を防ぐための冷却が欠かせず、一般的な空冷のほか、より冷却効率の高い液冷という方式もあります。データセンターの消費電力のうち、およそ半分は冷却用ともいわれています。つまりデータセンターは「計算する施設」であると同時に「冷やし続ける施設」でもあるわけです。
建物には3つのタイプがある
データセンターの建物は、大きく3つの形状に分けられます。
| タイプ | 特徴 | 課題 |
|---|---|---|
| ビル内型 | 都市部に設置しやすい | 耐床荷重などに制約がある |
| 専用建屋型 | 設計の自由度が高い | 建設コストがかかる |
| コンテナ型 | 短期間で設置可能 | 規模拡大に難点がある |
サーバーラックはかなりの重量物になるため、既存ビルの中に入れる場合は床がその重さに耐えられるかが問題になります。「耐床荷重の制約」というのはそういう話です。近年目立つ大型施設は専用建屋型が中心ということになります。
事業者の業態も3つに分かれる
「データセンター事業者」とひと口にいっても、提供するサービスの範囲は事業者によって違います。
| 業態 | 提供する内容 |
|---|---|
| コロケーション(ハウジング) | 自社で保有するラックを貸し出す(サーバーなどは利用者が管理) |
| サーバー貸し | 自社で保有するラックとサーバーを貸し出す |
| パブリッククラウド | 自社で保有するラックとサーバーを運用し、データ保存などの各種サービスを提供する |
場所だけ貸すのか、機械まで貸すのか、サービスとして丸ごと提供するのか。下にいくほど事業者側が抱える範囲が広くなる、と整理すると分かりやすいと思います。
3. AI普及で市場拡大 国内6.8兆円市場へ
では、この市場はどれくらいの規模なのでしょうか。
富士キメラ総研の調査によると、国内のデータセンター市場は2024年の4兆2627億円から、2030年には6兆8188億円まで拡大すると予測されています(同社「データセンタービジネス市場調査総覧2026年版 市場編」。2024年は実績、2025年は見込み、2026年以降は予測)。
6年でおよそ1.6倍。しかもこれは国内だけの数字です。かつては各オフィスの片隅にサーバーを置いていた時代から、コンピューターとインターネットの発展とともに施設としての整備が進み、そこに生成AIの普及が重なって需要が一段と高まった。この流れが数字にはっきり表れています。
4. なぜ大量の電力を消費するのか
ここからは、私たちがふだん扱っている電力の話に入ります。データセンターが話題になるとき、必ずといっていいほど「電力を大量に消費する」という指摘がついてきますよね。実際どれくらいなのでしょうか。
AI向けサーバー1台で電気ストーブ約10台分
サーバー1台あたりの消費電力(=発熱)は、非AI向けで約1キロワット。家庭用電気ストーブおよそ1台分に相当します。これがAI向けになると約10キロワット、電気ストーブ約10台分です。
1台でこの水準のサーバーが、ラックにびっしり並び、それが何列も何室も続く。しかも先ほど触れたとおり、消費電力の半分ほどは冷却に使われるといわれています。施設全体で見た受電電力は、次のような規模になります。
| 施設の規模 | 受電電力 |
|---|---|
| 中規模DC | 2MW(2000kW) |
| 大規模DC(近年増加) | 50MW ※一般家庭 約1.6万軒分 |
| 最大級のDCキャンパス | 数百MW |
50MWで一般家庭約1万6000軒分。これは、ちょっとした市街地がまるごと1つ増えるようなインパクトです。数百MW級のキャンパスとなれば、発電所の計画そのものに影響する規模になります。
将来の見通しも示されていました。国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センターの提案書や「令和7年版情報通信白書」(総務省)などをもとにした試算では、2050年のデータセンターの消費電力量は、省エネ対策がまったく進まない場合で約12兆kWh規模に達する一方、エネルギー効率の改善幅が小さい場合で約5000億kWh、改善幅が大きい場合で約1100億kWhと、シナリオによって大きく開きがあるとされています。参考までに、日本全体の2022年度の電力需要量は9028億kWhです。
つまり、技術による省エネがどこまで進むかで、未来の電力需給の姿がまったく変わってくる。だからこそ事業者は液冷の導入をはじめとする省エネ化に取り組んでいるわけです。
送電インフラ不足という壁
もうひとつ、意外と知られていない論点があります。「発電所を増やせば解決する」という話ではない、ということです。
佐藤教授によると、国内では送電インフラの不足が課題であり、発電所を増やしてもデータセンターの電力需要を充足できるわけではないと指摘されています。国は発電所や変電所の近くにデータセンターを設置する「ワット・ビット連携」を推進していますが、佐藤教授は通信遅延の観点から、東京湾沿いなど都会に近い発電所を除いて難しいとみているそうです。
電気を作る場所と、電気を使う場所と、データを速く届けたい場所。この三つがなかなか一致しないというのが、日本のデータセンター立地が抱えるジレンマです。
なお、特に電力消費の大きいAI向けDCは電力消費が不安定になりやすいため、補完電源としてリチウムイオン蓄電池を設置する傾向にあるとされています。ただ、火災の際に通常の消火器による鎮火が難しく、危険性が指摘されている点にも触れられていました。2025年9月に韓国で発生した政府管理データセンターの火災は、蓄電池の交換作業に伴う火花が原因とみられているそうです。
5. 首都・関西圏に9割 立地の偏りと住民の不安
データセンターはどこに建っているのか。ここにも大きな偏りがあります。
富士キメラ総研によると、国内のデータセンターは利用者の多い首都圏・関西圏に約9割が集中しています。地域別のサーバールーム面積(2025年見込み)で見ると、次のとおりです。
| 地域 | 面積(㎡) | 割合(%) |
|---|---|---|
| 北海道 | 19,870 | 1.2 |
| 東北 | 23,250 | 1.4 |
| 関東 | 1,059,510 | 62.9 |
| 中部 | 65,320 | 3.9 |
| 関西 | 426,370 | 25.3 |
| 中国/四国 | 39,830 | 2.4 |
| 九州/沖縄 | 49,190 | 2.9 |
| 合計 | 1,683,340 | 100.0 |
関東だけで62.9%、関西と合わせると88.2%。中部は3.9%にとどまります。災害リスクなどの観点から国は地方分散を呼びかけ、支援制度も設けていますが、距離が遠くなるにつれて通信遅延が大きくなるという技術的な制約があります。
地方分散のメリットとデメリットは、次のように整理されていました。
メリット
・災害リスクを分散できる
・土地など比較的余裕がある
・地方経済への波及効果が期待できる
デメリット
・通信遅延が大きくなる
・利用者が十分に集まらない恐れがある
・雇用創出は限定的
最後の「雇用創出は限定的」というのは、地域にとってはなかなかシビアな指摘です。巨大な施設が建っても、無人運用に近い形で稼働するため、地元の雇用に直結しにくいという現実があります。
住民の不安と、事業者に求められる対応
建設が相次ぐなかで、住民からは排熱の影響や騒音などに関する不安の声も上がっています。特集では、主な不安と事業者がとるべき対応例が整理されていました。
・排熱の影響:吹き出し空気の温度は一般的なビルと同程度とされるが、熱源配置の工夫などが必要
・室外機などの騒音:工場や事業所から発生する著しい騒音はすでに法律で規制されているが、より静かなタイプの設備使用や防音壁の設置も考えられる
・非常用発電機の排煙:非常用発電機は停電などに備えた設備で平常時は常時稼働しないが、稼働時は黒煙や異臭が発生することがあるため、排気口の高さや向きなどへの配慮が求められる
・電磁波:発生原因とされるコンピューターやケーブルに対策を実施
・眺望など景観の悪化:高層の建築物という意味ではマンションなども同様だが、壁の色彩など地域と調和したデザインが望まれることもある
業界団体である日本データセンター協会や東京都などは2026年に入ってガイドラインをまとめ、事業者がとるべき対応や、住民との対話を円滑に進めるためのポイントを公表しています。住民向けの見学会を開催している事業者もあるそうです。
背景には、施設そのものの分かりにくさがあります。佐藤教授は、データセンターが住民から「正体のよく分からない施設」と受け止められることも少なくないと指摘しています。事業者はこれまでセキュリティーを理由に施設の概要や所在地を積極的に公表してきませんでしたが、近年は大型化して外観からデータセンターだと容易に分かるようになった。だからこそ情報開示によって住民の不安が和らぐこともあるはずだ、という指摘です。
この構図、電力の世界にいる私たちにはとても既視感があります。発電設備も送電線も、「何をしているのか分からない」ときにいちばん不安を呼ぶんですよね。
なお、データセンターが急拡大する米国では、住民の反対で建設を中止したり見直したりする動きも出ています。建設に伴う一般家庭の電気代高騰や、気化熱を使った冷却で大量の水を消費することへの懸念などが要因とされています。
6. 洋上DCから宇宙まで 次世代の構想と法整備の課題
こうした課題を踏まえ、次世代のデータセンター構想も動き始めています。
日本郵船などは、全電力を再生可能エネルギーでまかなう洋上データセンターの実証実験を開始しました。横浜市の横浜港にあるフロートの上に、サーバーを収めたコンテナや太陽光パネルを設置し、2026年度末までをめどに波の揺れや海水に含まれる塩分への耐性を調べるそうです。土地の制約も冷却水の制約も海なら緩和できる、という発想ですね。
このほか国内では、低消費電力・低遅延・大容量を実現するオール光ネットワーク技術の開発が進んでいます。さらに米国では、宇宙開発企業スペースXを率いるイーロン・マスク氏が、データセンターを宇宙に移転する計画を掲げています。
一方で、足元の制度は追いついていません。佐藤教授は、データセンター関連の法制度が各省庁にまたがっており一貫性があるとはいえないと指摘します。建築基準法にはデータセンターに対応した用途区分がなく、多くは「事務所」として建築確認申請が行われているのが実情です。しかし大規模な冷却設備や高出力の非常用発電機を備えた施設は、一般的な事務所とは大きく異なります。火災などへの対策が実態と合っていないケースもあり、法整備が必要だとされています。
実際、独立した用途区分が存在しないため、実態に応じて「事務所」や「倉庫」などとして扱われ、場合によっては住居地域や商業地域でも建設可能になっています。データセンターの集積地として知られる千葉県印西市では、駅前で計画中の施設をめぐり、住民が建築確認の取り消しを求める訴訟を起こしました。
佐藤教授は、今後は車の自動運転やロボットなどの普及によって、データセンターが電力や通信と同様の社会インフラになると見込んでいます。そのうえで、国が適切に管理し、住民理解を得るとともに、長期的な視点で整備していくことが重要になると結んでいます。
まとめ
データセンターは、サーバーやストレージを集約した施設です。金融口座や住民票の管理からネット通販、動画配信、メッセージアプリまで、私たちの生活のかなりの部分がその上に乗っています。中身をのぞけば、サーバーラックと空調設備、そして受変電装置・UPS・非常用発電機という「止めないための電気設備」が主役でした。
AIの普及で国内市場は2024年の4兆2627億円から2030年に6兆8188億円へ拡大する見通し(富士キメラ総研)。AI向けサーバーは1台で電気ストーブ約10台分、大規模施設の受電電力は50MW=一般家庭約1.6万軒分にもなります。立地は首都・関西圏に約9割が集中し、地方分散には通信遅延という壁がある。住民の不安、建築基準法上の位置付けの曖昧さ、送電インフラの不足と、宿題も山積みです。
とはいえ、正体が分かれば見え方は変わります。「なんだかよく分からない大きな建物」から「電気と情報を束ねる社会インフラ」へ。ニュースを読むときの解像度が少し上がっていれば嬉しいです。
情熱電力からのお知らせ
データセンターの話は規模こそ大きいものの、突き詰めれば「どれだけ電気を使い、どう調達し、どこで無駄をなくすか」という、私たちの暮らしや事業所の電気とまったく同じテーマです。AI向けサーバーの消費電力を電気ストーブに例えて考えたように、電気の話は身近なものに置き換えると一気に分かりやすくなります。
長野県松本市の新電力・株式会社情熱電力では、ご家庭や事業所の電気について「うちの契約、これで合っているのかな?」といったご相談を随時お受けしています。検針票を見ながらの簡単な確認だけでも構いません。気になる方は、どうぞお気軽にご連絡ください。
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