レタス1玉400円超はなぜ?日照不足で葉物野菜が高騰、家計への影響と対策を解説

 
品薄で棚に空きが目立つスーパーの野菜売り場に並ぶ、値上がりしたレタスなどの葉物野菜
 
以前「9月の日照不足で太陽光の発電量が前年比74%に」でも触れましたが、その後、日照不足の影響は食卓のほうにもはっきり出てきました。日本経済新聞に「レタス1玉400円超、パニック級高値の恐れ 日照不足で供給減」という記事があったので、調べてみました。
 
スーパーの野菜売り場で「あれ、高い」と足が止まった方も多いのではないでしょうか。レタス類の卸値は前年同期に比べて8割高。市場に入ってくる量は4割も少ない。「過去20年でここまでレタスの供給が厳しいのは初めて」という声まで出ています。
 
前回の記事で書いたのは、日が差さないと太陽光の発電量が落ちるという話でした。考えてみれば、野菜も同じ光で育っています。パネルと葉物野菜は、同じ空の下で同じものを受け取り損ねた。そう並べてみると、今年の9月が何を奪ったのかが見えやすくなる気がします。
 
どの野菜がどれだけ上がったのか。なぜここまでの不足になったのか。そして、いつまで続きそうなのか。順に見ていきます。
 


 
目次

 


 

1. レタス類の卸値は前年同期比8割高に

 
日本経済新聞が伝えたところによると、東京都中央卸売市場におけるレタス類の卸値は、9月中旬時点で1キログラム314円。前年同期に比べて8割高い水準です。しかも市場への入荷量は、前年同期比で4割少ない。値段が上がっているだけでなく、そもそも物が足りていません。
 
品目別に見ると、差はさらに大きくなります。
 

品目 卸値(1kg) 前年同期比
レタス類(全体) 314円 8割高
 レタス 230円 6割高
 サニーレタス 628円 9割高
 グリーンリーフレタス 623円 2.2倍
ミズナ ― 6割高
ハクサイ ― 3割高

出典:日本経済新聞(東京都中央卸売市場、2026年9月中旬の卸値)。ミズナ・ハクサイは記事中に単価の記載がないため「―」としています
 
グリーンリーフレタスは2.2倍です。去年と同じ量を買おうとしたら、支払いは倍以上になる計算になります。キュウリが1割高、ナスが7%高と、葉物以外もじわりと上がっていますが、葉物の上がり方は明らかに別格です。
 
ある青果卸の担当者は「過去20年でここまでレタスの供給が厳しいのは初めて」と話しています。3年前に猛暑で起きた「トマトパニック」を引き合いに出し、今年は日照不足で「レタスパニック」になりかねない、と。市場関係者がここまで言うのは、相当のことです。
 


 

2. 葉物野菜が高騰した理由は日照不足と多湿

 
理由は、前回の記事で扱った9月の長雨そのものです。
 
9月のレタスの主産地である長野県について、JA全農長野は「日照不足に加え、気温も低かったことから玉が小さい傾向にあった」と説明しています。光が足りないと光合成が進まず、葉が十分に巻かない。小さい玉しか採れなければ、重量ベースの出荷量は当然減ります。
 
さらに厄介なのが、水です。レタスは多湿に弱く、葉が腐ってしまうこともある作物で、実際に病害が発生した例もあったとのこと。雨が降り続けると、育たないだけでなく、育ったものまで傷んでいきます。前回の記事で、リンゴの炭疽病や市田柿の条紋に触れましたが、構図は同じです。高温多湿は病気の条件がそろってしまいます。
(情熱電力の過去記事:9月の日照不足がどれほど記録的だったかは、こちらで数字をまとめています)
 
 

 後続の産地も打撃を受けている

もう一つ見落とせないのが、「次の産地も準備ができていない」ことです。
 
例年、10月以降は茨城県産のレタスが増え始めます。ところが9月の大雨で一部の産地が浸水被害を受けました。さらに、9月は苗を植え付ける定植の時期にあたりますが、JA全農いばらきによれば「雨が続いて土が固まり、作業しにくい日が多くなっている」といいます。
 
ここが、今回の高騰を「すぐには終わらないかもしれない」ものにしている部分です。今採れていないだけなら、天気が戻れば回復します。しかし定植が遅れたということは、その分だけ収穫のタイミングが後ろにずれるということ。影響が先の月に持ち越されます。
 
ミズナやコマツナも同様で、東京市場への入荷量は前年同期比で3割ほど減りました。JAほこた(茨城県鉾田市)の担当者は「日照不足で生育が伸び悩む」と話しています。
 


 

3. 店頭と外食の現場で起きていること

 
卸値の上昇は、そのまま店頭に出てきます。
 
埼玉県桶川市のスーパーでは、9月28日時点でレタスが1玉438円、ハクサイの4分の1カットが275円という値がついていました。レタスは前年同期の2倍、ミズナは330円で3倍ほどです。サラダ1回分のつもりで手に取って、値札を見て戻した。そんな場面が各地で起きていたのではないでしょうか。
 
同店の担当者は「消費者も買い控え気味で、最近は代わりに豆苗などが売れるようになった」と話しています。豆苗は室内の水耕で育てられるため、天候の影響を受けにくい。買い物客の側も、ちゃんと逃げ道を見つけているわけです。
 
影響は業務用にも及んでいます。飲食店向けに野菜を扱う都内の青果卸の担当者は「自社で調達しているものだけでは足りず、社員がスーパーを回って買い集めないといけない状況」とのこと。国産の品薄を受けて中国産レタスの輸入を続けてもなお、逼迫しているといいます。
 
飲食店にとっては、仕入れ値が上がるだけでなく「メニューが出せない」事態になりかねません。サラダや付け合わせは、価格が上がったからといって急に値上げしにくい部分でもあります。
 


 

4. 一方で安くなっている野菜もある

 
ここまで悪い話が続きましたが、売り場のすべてが高いわけではありません。
 
順調なのが北海道産の野菜です。道産野菜は夏から秋にかけて収穫のピークを迎えますが、2025年は記録的な猛暑で低調でした。それが今年は、ホクレン農業協同組合連合会によると「夏場の気温が高くなりすぎず、雨も適度に降った」とのこと。
 
東京都中央卸売市場では9月中旬、道産のジャガイモが1割安、タマネギは4割安で取引されました。東京・練馬のスーパーでは17日時点で道産のジャガイモ(男爵)が1袋171円、タマネギが1袋214円。いずれも前年同期比で2割ほど安い水準です。
 
同じ年の同じ季節に、片方は8割高、片方は4割安。気候が産地ごとに違う顔を見せているということです。葉物が高いときは根菜や芋類に寄せる。昔からある知恵ですが、今年はそれが特によく効く年だといえそうです。
(情熱電力の過去記事:8月は逆に、猛暑で高原野菜の産地が苦しんでいました)
 


 

5. 野菜が高いときの買い方と保存のコツ

 
高い時期の野菜との付き合い方は、だいたい次の3つに整理できます。
 
・品目を替える:レタスの代わりにキャベツや豆苗、水菜の代わりに小松菜以外の青菜など、安いものに寄せる
・産地を替える:北海道産のように、今年は条件が良かった産地の品目を選ぶ
・形を替える:カット野菜や冷凍野菜は、生鮮の相場ほど極端には動かないことがあります
 
そしてもう一つ、意外と大きいのが「買った分を傷ませない」ことです。1玉438円のレタスを半分捨ててしまえば、実質的な単価は876円になります。高い時期ほど、保存の丁寧さがそのまま家計に効いてきます。
 
葉物は、湿らせたキッチンペーパーで包んで袋に入れ、立てて冷蔵する。それだけでも持ちが変わります。使い切れない分は、さっと茹でて小分けに冷凍しておくと無駄が出ません。
 
 

 冷蔵庫の使い方で電気代は変わる

保存の話が出たので、電気の側からも少しだけ。
 
冷蔵庫は、庫内に物を詰め込みすぎると冷気の通り道がふさがれ、冷却効率が落ちます。買いだめをしたときほど、ぎゅうぎゅうに押し込みたくなるものですが、少し余裕を持たせたほうが結果的に効率がよい。これは資源エネルギー庁の省エネ情報でも案内されている、基本の考え方です。
 
一方で冷凍室は逆で、ある程度詰まっているほうが、凍った食品同士が保冷し合うため効率的だとされています。茹でた葉物を小分けにして冷凍室に入れておくのは、食材の無駄を防ぎつつ、冷凍室の中身も埋まるという、二重に都合のいい話です。
 
ちなみに、冷蔵庫の設定温度を「強」から「中」に変えるだけでも消費電力は下がりますが、食品の傷みと引き換えになります。野菜が高い時期に無理をして傷ませては本末転倒ですから、ここは欲張らないほうがよさそうです。
 


 

6. いつまで続く?10月以降の見通し

 
大田市場の青果卸は「10月いっぱいは入荷量が極端に少ない状況が続くのではないか」と警戒しています。
 
天気そのものは回復に向かう見込みです。気象庁は10月について、全国的に天気が数日の周期で変わり、平年に比べて晴れの日が多いとしています。ただ、野菜の値段は天気より遅れて動きます。今日晴れたから明日レタスが安くなる、という話ではありません。今から育てはじめたものが店頭に並ぶまでには時間がかかりますし、定植が遅れた分は、そのまま出荷の遅れとして残ります。
 
つまり、しばらくは高値が続くと見ておくのが現実的です。そのうえで、産地の切り替えが順調に進めば、冬にかけて徐々に落ち着いてくることが期待できます。
 
今回の件は、気候と暮らしのつながりをあらためて見せてくれました。日が差さなかった1か月が、発電量を減らし、果物に病気を呼び、サラダの値段を2倍にした。別々の出来事のようでいて、原因はひとつです。天気が読みにくくなるということは、こういう形で家計や事業に返ってくるのだと思います。
 


 
まとめ
9月の日照不足と長雨によって、葉物野菜の供給が大きく落ち込みました。東京都中央卸売市場のレタス類の卸値は前年同期比8割高の1キログラム314円、入荷量は4割減。グリーンリーフレタスは2.2倍、サニーレタスは9割高です。店頭でもレタス1玉438円、ミズナ330円といった値がつきました。
 
背景にあるのは、主産地での玉の小ささと病害、そして後続産地での浸水と定植の遅れです。今採れていないだけでなく、次の収穫も後ろにずれている。これが「10月いっぱいは続くのでは」という警戒につながっています。
 
一方で、北海道産のジャガイモやタマネギは前年より安く取引されています。すべてが高いわけではありません。安い産地・品目に寄せる、買った分を傷ませない、冷蔵庫に余裕を持たせる。地味ですが、この3つが効く時期です。天気が戻れば野菜も戻ってきます。それまでの、しのぎ方の話だと思って付き合っていきたいところです。
 


 
情熱電力からのお知らせ
野菜も電気も、値段が動く理由は案外似ています。供給がどれだけあるか、そして需要がどれだけ重なるか。違うのは、電気のほうは契約の形によって、変動の受け止め方を選べるという点です。
 
「今月は高い気がする」が続くようでしたら、一度ご相談ください。使用量のどこが季節の要因で、どこが契約の条件で決まっているのか。切り分けてご説明します。飲食店さまや食品を扱う事業所さまは、冷蔵・冷凍設備の稼働が電気代の大きな部分を占めますので、そのあたりも含めてお話しできます。
 
TEL 0263-88-1183
https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・農林水産省:野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年10月)について
・東京都中央卸売市場:販売結果(青果)
・独立行政法人農畜産業振興機構(alic):「ベジ探 野菜情報」
・気象庁:農業気象
・資源エネルギー庁(省エネポータルサイト):キッチン 無理のない省エネ節約
 

9月の日照不足で太陽光の発電量が前年比74%に 記録的な長雨と電気代への影響を解説

 
厚い雨雲の下で雨に濡れる太陽光パネルと、長雨で日照不足が続いた秋の里山
 
信濃毎日新聞の10月2日付朝刊に「県内 記録的な9月の長雨」「雨多し 県内戸惑い」という2本の記事があったので、まとめて調べてみました。
 
正直なところ、記事を読む前から体感がありました。「こんなに晴れない9月は初めてだ」と。弊社で見ている太陽光発電の発電量も、前年同月比で74%まで落ち込んでいます。4分の1が消えた計算です。気のせいではなかったのだと、数字を見て妙に納得してしまいました。
 
9月というのは本来、残暑と秋晴れが入れ替わる月です。ここ数年は「暑さがいつまで続くのか」という話ばかりしていました。それが今年は一転して、雨と曇りの話になった。発電量だけでなく、果樹の生育にも、保育園の運動会にも、そして体調にも影響が出ています。
 
記録的だったのは、どれくらい記録的だったのか。そして10月以降はどうなるのか。気象庁の発表まで遡って確かめてみます。
 


 
目次

 


 

1. 県内の9月、日照時間は平年の5〜6割にとどまった

 
信濃毎日新聞が長野地方気象台のまとめとして伝えたところによると、県内の9月の日照時間は、比較可能な27観測地点のうち10地点で平年比5割台、14地点で6割台にとどまりました。つまり24地点、ほぼ9割の地点が「平年の7割未満」だったということになります。
 
主要5地点の数字を並べてみます。
 

観測地点 9月の日照時間 平年比
長野 102.3時間 68%
諏訪 94.2時間 62%
松本 93.3時間 62%
飯田 91.7時間 59%
軽井沢 64.8時間 51%

出典:信濃毎日新聞 2026年10月2日付朝刊(長野地方気象台のまとめ)
 
最も少なかった軽井沢は64.8時間、平年の51%です。1か月で64時間ということは、1日あたり2時間ちょっとしか日が差さなかった計算になります。同紙によれば、これは1945年の統計開始以来、2番目の少なさでした。
 
降水量のほうも極端でした。大鹿では429.5ミリと平年比220%を記録し、県内26地点で平年の1.5倍を超えています。降った量そのものより、「降る日が多かった」ことのほうが体感に効いた月だったのではないでしょうか。
 


 

2. 東日本の太平洋側は統計開始以来の多雨・日照不足

 
この長雨は県内に限った話ではありません。気象庁は10月1日、「9月の東日本太平洋側の記録的な多雨・日照不足と今後の見通しについて」という報道発表を出しています。一次情報を当たってみると、そこには次のような数字が書かれていました。
 
・東日本太平洋側の9月の降水量平年比は236%で、1946年以降で最多。従来の記録は1982年の182%
・同じく日照時間平年比は46%で、1946年以降で最少。従来の記録は1988年の54%
・12地点で、月降水量の多い方からの記録を更新
 
ここで注目したいのは、記録の「更新幅」です。降水量は182%だった従来記録を236%で塗り替え、日照時間は54%だった記録を46%まで下げました。わずかに上回ったのではなく、80年近い統計の中でこれまで一度もなかった水準に、はっきりと踏み込んでいます。「こんな9月は初めて」という実感は、統計的にもその通りだったわけです。
 
 

 原因は秋雨前線の長期停滞

気象庁は要因として、秋雨前線が本州付近に長期間停滞したことを挙げています。太平洋高気圧と一体化した優勢な高気圧と、大陸から張り出した秋の高気圧。その2つに挟まれる形で前線が居座り、活動も非常に活発になりました。そこに台風の接近が重なったことで、雨の日が途切れなかったという構図です。
 
秋雨前線そのものは毎年現れます。珍しいのは、それが動かなかったこと。前線は普通、高気圧の勢力が変われば南北に動いて、晴れ間が入ります。今年はその押し引きが起きにくい配置が続きました。
 


 

3. 太陽光発電の発電量はどれくらい減ったのか

 
日照時間が平年の5〜6割ということは、太陽光発電にとってそのまま発電量の問題になります。冒頭でも触れたとおり、弊社で見ている発電量は前年同月比74%でした。
 
ただし、ここは少し丁寧に見たほうがいい部分です。日照時間が6割なら発電量も6割、とはなりません。日照時間は「直射日光が地表を照らした時間」を数えたもので、太陽光パネルは曇り空の散乱光でも発電するからです。薄曇りでも、晴天時の2割前後は発電します。日照時間の落ち込みほどには発電量が落ちない。これはパネルの性質として知っておいてよい点だと思います。
 
とはいえ、4分の1が消えるのは小さくありません。売電していれば収入がそのまま減りますし、自家消費していれば、減った分を買電で埋めることになります。
 
 

 自家消費型の工場で起きていたこと

信濃毎日新聞は、佐久市の樫山工業の例を伝えています。同社は県内4工場のうち2工場で太陽光発電システムを稼働させ、工場で使う電力の一部を賄っています。パネルは計2980枚、総面積は約6100平方メートル。昨年の年間発電量は約1114メガワット時でした。
 
その9月の発電量が、約9万7千キロワット時。前年同月比で2割以上の減少です。消費電力全体に占める自給率は約9%で、残りは外部から購入しているとのことでした。
 
自家消費型の太陽光は、発電した分だけ買電が減る仕組みです。裏を返せば、発電が落ちた分はそのまま購入電力量の増加として請求書に出てきます。規模が大きいほど、「天候で月の電気代が動く」という感覚は強くなります。
 
天候による変動を均したいのであれば、蓄電池を組み合わせて日中の余剰を夜間に回す、あるいは電力の購入契約そのものを単価の読める形にしておく、といった打ち手が現実的な選択肢になります。発電量を天気任せにしない、という発想です。
 


 

4. 果樹や農作物への影響

 
同紙の27面では、農業への影響が詳しく紹介されていました。
 
飯田市座光寺のリンゴ農家では、11月中旬に収穫する晩生種の「ふじ」に、実の表面が円形に腐り始める「炭疽病」が出ています。高温多湿を好む病気で、9月の長雨がその条件をつくってしまいました。農家の方は「雨続きで薬剤の散布ができず、散布しても雨で流されてしまった」と話しています。病気を防ぐには散布の回数を増やしたいのに、雨でそれができない。もどかしい状況です。
 
飯田下伊那特産の市田柿にも影響が出ています。柿が水分を吸って実が肥大する傾向があり、肥大した実の皮がひび割れる「条紋」が生じているとのこと。条紋ができた柿は加工に適さず、商品にならないものが出てきます。
 
日照不足は、農作物にとって「光合成の材料が足りない」という直接の問題でもあります。糖度が上がりにくい、着色が進みにくい、収穫が遅れる。秋の味覚は、9月の日差しで仕上がりが決まる部分が大きいのです。
(情熱電力の過去記事:気候の変化が農業と電気代に与える影響については、夏の高原野菜の記事でも取り上げました)
 


 

5. 日照不足と体調の関係

 
周囲でも「今年の9月は体調を崩した」という声をよく聞きました。
 
日照時間の減少と気分の落ち込みの関係は、季節性感情障害(SAD)として知られています。秋から冬にかけて日照が減る時期に、気分の落ち込みや過眠、だるさなどが現れるもので、光を浴びる量の減少が関係しているとされています。例年なら10月以降に起きやすい条件が、今年は9月の時点で揃ってしまったという見方はできそうです。
 
ただし、今回の長雨で体調不良が何割増えた、といった統計は見当たりませんでした。気圧の変動や、気温の上下が激しかったことの影響もあります。ですので「長雨が原因だ」と言い切ることはしません。できることとして現実的なのは、晴れた日の午前中に少し外に出る、室内の照明を明るめにしておく、といった程度の話です。症状が続くようであれば、医療機関に相談してください。
 
ちなみに、照明をつけている時間が長くなれば、その分の電気はかかります。とはいえ、LED照明を数時間余分に点けたところで、月の電気代に与える影響はごくわずかです。暗い部屋で過ごすことと比べれば、点けたほうがいい場面のほうが多いはずです。
 


 

6. 10月以降の見通しと、電気代への備え

 
気象庁の同じ発表には、今後の見通しも書かれています。10月は全国的に天気が数日の周期で変わり、平年に比べて晴れの日が多い見込み。東日本太平洋側で降水量の多い状態や日照時間の少ない状態が続く可能性は小さい、とされています。
 
つまり、9月の状況がそのまま10月も続くわけではなさそうです。太陽光の発電量も、平年並みに戻ることが期待できます。
 
ただ、ここから先に控えているのは冬です。暖房の電気代が立ち上がる季節に向けて、9月に起きたことは一つの教訓を残しました。再生可能エネルギーの発電量は天候で動く。そして天候は、これまでの経験則から外れた動き方をすることがある。「去年と同じくらいだろう」という前提が、必ずしも成り立たないということです。
(情熱電力の過去記事:この冬の見通しについては気象庁の3か月予報をもとにこちらで整理しています)
 
家庭であれば、電気の使用量を月単位で記録しておくと、天候要因なのか使い方の変化なのかを切り分けられます。事業所であれば、自家発電の比率が高いほど天候による変動も大きくなるので、購入電力の契約単価が読めるかどうかが効いてきます。どちらも、慌ててからでは選択肢が狭くなる話です。
 


 
まとめ
2026年9月は、県内の27観測地点のうち24地点で日照時間が平年の7割を下回り、軽井沢では平年比51%まで落ち込みました。全国で見ても、東日本太平洋側の降水量平年比236%・日照時間平年比46%は、いずれも1946年以降で最も極端な記録です。原因は、本州付近に長期間停滞した秋雨前線でした。
 
この1か月は、太陽光発電の発電量を前年同月比74%まで押し下げ、佐久市の工場では2割以上の減少として表れました。リンゴには炭疽病が、市田柿には条紋が出ています。体調を崩した方も少なくなかったようです。日が差さないということが、これほど広く影響するのかと改めて感じた9月でした。
 
10月は晴れの日が多い見込みで、9月の状態が続く可能性は小さいとされています。ひとまず安心ですが、天候が読みにくくなっているのは確かです。発電量も電気代も、「去年と同じ」を前提にしない。そのくらいの構えが、ちょうどよいのかもしれません。
 


 
情熱電力からのお知らせ
天候によって発電量や電気の使用量が動くと、月々の請求額も揺れます。「今月はなぜ高いのだろう」が続くようでしたら、一度、契約の中身を確かめてみてください。使用量のどこが天候要因で、どこが契約の条件で決まっているのか。切り分けるだけでも、見通しは立てやすくなります。
 
自家消費型の太陽光を導入されている事業所さまからのご相談も承っています。発電量の変動に対して、購入電力の側をどう組むか。地域の事情を踏まえてお話しできることがあるかと思います。
 
お問い合わせはお気軽にどうぞ。
TEL 0263-88-1183
https://jo-epco.co.jp/contact
 
 
この記事に関連するページリンク
・気象庁:9月の東日本太平洋側の記録的な多雨・日照不足と今後の見通しについて
・気象庁:過去の気象データ検索
・長野地方気象台:長野県の気象概況(年のまとめ)
・厚生労働省 e-ヘルスネット:快眠と生活習慣
 

排出量取引(GX-ETS)とは?CO2に値段がつく仕組みをやさしく解説【連載第1回】

 
工場から出るCO2と、排出枠を表すチケットを天秤にかけた排出量取引のイメージ
 
日経ビジネスに「GX-ETS始動 炭素コスト時代、企業価値を左右する排出量取引」というまとめ記事があったので、経済産業省が公表している資料まで含めて調べてみました。
 
排出量取引。ニュースでは何度も見かける言葉です。けれど「で、結局なにをする制度なの?」と聞かれると、説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。排出枠、無償割当、償却、キャップ・アンド・トレード。制度の解説記事はどれも、最初の一文目からこうした言葉で埋まっています。読むのをやめてしまっても無理はありません。
 
この制度は2026年4月に本格的に始まりました。直接の対象は300〜400社ほどで、多くの会社にとっては「うちは関係ない」で済む話に見えます。ただ、燃料や電気の値段を通じて、じわじわと広い範囲に効いてくる仕組みでもあります。
 
そこで今回から数回に分けて、排出量取引を一番やさしいところから追いかけていきます。第1回は、専門用語をできるだけ日常の言葉に置き換えながら、制度の骨格だけをつかむことを目指します。
 


 
目次

 


 

1. 排出量取引(GX-ETS)とは?CO2に値段がつく仕組み

 
排出量取引制度は、正式には「GX-ETS」と呼ばれます。GXはグリーントランスフォーメーション、ETSはEmissions Trading Schemeの略です。
 
ひとことで言えば、CO2に値段をつける制度です。これまでCO2は、出しても直接おカネがかかるものではありませんでした。それを「出すならその分の費用がかかる」形に変えるのが、この制度の狙いです。
 

 排出枠は「CO2を出してよい量」のチケット

制度の中心にあるのが「排出枠」です。国が対象企業に対して、1年間にCO2をどれだけ出してよいかを示した枠を配ります。イメージとしては、CO2を出すためのチケットだと思ってください。1枚で1トン分です。
 
対象企業は1年間の実績を集計し、実際に出した量と同じ枚数のチケットを国に納めます。この納める行為を「償却」と呼びます。聞き慣れない言葉ですが、会計の減価償却とは別物で、ここでは「使ったチケットを回収してもらうこと」くらいの意味です。
 

 余れば売れる、足りなければ買う

面白いのはここからです。配られたチケットが余ったら、他社に売ることができます。逆に足りなければ、市場で買って埋め合わせます。
 
上限(キャップ)を決めて、その範囲でチケットを配り、あとは企業どうしで融通しあう。だからこの方式は「キャップ・アンド・トレード」と呼ばれます。
 
この設計には理由があります。削減が得意な会社は、頑張った分だけチケットが余り、売却益になります。削減にコストがかかりすぎる会社は、無理に設備を入れ替えるより買ったほうが安く済みます。社会全体で見れば、安く減らせるところから順に減っていく。CO2の削減を「義務」から「損得の判断」に移すのが、この制度の発想です。
 

制度の言葉 ふだんの言葉でいうと
排出枠 CO2を1トン出してよいチケット
無償割当 そのチケットを国がタダで配ること
償却 出した分のチケットを期限までに納めること
ベンチマーク方式 同業他社と比べた効率のよさで配る枚数を決めるやり方
未償却相当負担金 チケットが足りなかったときに払う、割増の負担金

 


 

2. 対象になるのはどんな会社?300〜400社という規模感

 
では、どんな会社が対象になるのでしょうか。
 
基準はひとつです。CO2の直接排出量が、前年度までの3カ年度平均で年10万トン以上。経済産業省の説明資料によると、この条件に当てはまるのは日本全体で300〜400社程度で、日本全体の温室効果ガス排出量の6割近くをカバーするとされています(経済産業省GXグループ「2026年度より開始する排出量取引制度について」2026年1月)。
 
年10万トンというのは、かなり大きな数字です。電力、鉄鋼、化学、セメント、石油、自動車といった業種の大手企業が中心になります。中小企業の大半は、直接の対象にはなりません。
 
なお判定は事業者単位で行われ、子会社や関連会社はそれぞれ別の事業者として扱われます。グループ全体で足し上げて10万トン、という数え方ではない点に注意してください。
 
 

 対象は「直接排出(スコープ1)」だけ

もうひとつ、押さえておきたいのが「何を数えるのか」です。
 
対象になるのは直接排出、いわゆるスコープ1だけです。自社でボイラーを焚いた、炉で燃料を燃やした、というように、自分の活動から直接出るCO2を指します。
 
一方、電力会社から買った電気を使ったことで発生するCO2(間接排出・スコープ2)は、この制度の対象外です。電気を使う側と発電する側で二重に数えてしまうためです。また対象はCO2に限られ、メタンなど他の温室効果ガスは含まれません。
 
「うちも電気をたくさん使うから対象かもしれない」と心配された方、ひとまずご安心ください。判定に使うのは、あくまで自社で燃やした分です。
 


 

3. 排出枠はどうやって配られるのか

 
チケットは、いきなり有料で売られるわけではありません。制度の当面のあいだは、国が無償で割り当てます。企業の負担が一気に増えて、国際競争力が落ちてしまうことを避けるためです。
 
配り方は主に2通りあります。
 
・ベンチマーク方式……製品を1トンつくるのに出てよいCO2の基準値を業種ごとに決め、そこに生産量を掛けて枠を算定する方法です。基準は同業種内の上位50%の水準から始まり、5年後には上位32.5%の水準まで引き下げられていく予定とされています
・グランドファザリング方式……過去の排出実績を基準に、毎年度一定の比率で枠を減らしていく方法です。削減率は年率1.7%に設定されています
 
ここが、この制度のいちばん大事なところかもしれません。ベンチマーク方式では、枠の量が「たくさん出したかどうか」ではなく「同業他社と比べて効率がよいかどうか」で決まります。同じ製品を同じ量つくっていても、エネルギー効率の高い工場は枠が余り、低い工場は足りなくなる。省エネの巧拙が、そのまま損益に出る仕組みです。
 
しかも基準値は年々厳しくなっていきます。今年ちょうど足りていた会社が、何もしなければ数年後には足りなくなる。設計としては、そういう向きに力がかかっています。
 


 

4. CO2の値段はいくら?2026年度は1トン1700〜4300円

 
気になるのは値段です。
 
排出枠の価格には、上下に目安が設けられています。2026年度は、上限にあたる「参考上限取引価格」が1トンあたり4300円、下限にあたる「調整基準取引価格」が1700円とされています。価格が上がりすぎても下がりすぎても制度が機能しなくなるため、幅を持たせて安定させる考え方です。
 
そして2027年度以降は、前年度の価格に「3%+物価上昇率」を乗じて決められる方針が示されています。つまり、値段は毎年少しずつ上がっていく前提で設計されているということです。
(情熱電力の過去記事:電気の環境価値に値段がつく仕組みは、非化石証書でもすでに動いています)
 
企業どうしが実際に排出枠を売買する取引市場は、2027年度の秋ごろに開設される予定とされています。制度が始まってすぐ市場が立ち上がるわけではなく、1年半ほどの助走期間がある形です。
 


 

5. 排出枠が足りなかったらどうなるのか

 
チケットを納める期限は、割り当てを受けた年度の翌年度1月31日です。
 
もし足りないまま期限を迎えたらどうなるか。「未償却相当負担金」を国に納めることになります。金額は、足りなかった量に参考上限取引価格を掛け、さらに1.1を乗じた額。GX推進法41条1項に定められています。
 
つまり、放っておくと上限価格の1.1倍を払うことになる。市場でチケットを買ったほうが確実に安い、という設計です。罰として重くしているというより、「ちゃんと市場で調達してください」という誘導に近い作りになっています。
 
なお、J-クレジットやJCMクレジットを無効化した分は、排出実績量から差し引くことができます。自社の削減だけで足りない場合の逃げ道が、市場での購入以外にも用意されているわけです。また、余った枠を翌年度以降に繰り越す「バンキング」も認められるとされています。
 


 

6. 対象外の会社にも関係がある理由と、これからの予定

 
ここまで読んで、「やっぱりうちには関係ないな」と思われた方も多いと思います。直接の義務という意味では、そのとおりです。
 
ただ、この制度はもっと大きな枠組みの一部です。政府が示している予定を並べると、こうなります。
 

時期 何が起きるか
2026年4月 改正GX推進法が施行。対象事業者はCO2の直接排出量の算定を開始
2026年9月30日 対象である旨の届出と移行計画を提出(初年度はここまで)
2027年度 排出枠の割当が始まる。秋ごろに排出枠の取引市場が開設予定
2028年度 化石燃料賦課金を導入。化石燃料の輸入事業者等が対象
2033年度 発電部門を対象に、排出枠の有償オークションを段階的に導入

2028年度に始まる化石燃料賦課金は、化石燃料を輸入する事業者にCO2の量に応じた負担を求めるものです。輸入の段階でかかる費用は、燃料や製品の価格を通じて、最終的には広く波及していくことになります。
(情熱電力の過去記事:政府のGX政策とエネルギー自給率の全体像は、こちらで整理しています)
 
2033年度からは、発電部門で排出枠の有償オークションが段階的に始まる予定です。発電に炭素のコストが乗れば、電気の料金にも反映されていく可能性があります。
 
さらに実務の面では、対象企業のサプライチェーンに入っている会社に、CO2排出量のデータ提出を求められる場面が増えていくと見られます。自社に義務がなくても、取引先の義務が降りてくる。これは非化石証書や再エネ調達をめぐって、すでに起きはじめていることでもあります。
 
なお、2026年度は初年度の特例として、対象事業者がやることは届出と移行計画の提出までです。排出枠の実際の割当は2027年度からになります。制度が本当に動き出すのは、これからだと考えてよさそうです。
 


 
まとめ
排出量取引制度(GX-ETS)は、CO2に値段をつけ、削減を損得の問題に変える仕組みです。国が排出枠というチケットを無償で配り、対象企業は1年間に出した量と同じだけのチケットを納める。余れば売れて、足りなければ買う。それがキャップ・アンド・トレードの骨格でした。
 
直接の対象は、CO2の直接排出量が3カ年度平均で年10万トン以上の300〜400社。2026年度の価格の目安は1トンあたり1700〜4300円で、2027年度以降は毎年引き上げられていく方針が示されています。取引市場の開設は2027年度秋ごろ、発電部門の有償オークションは2033年度から。値段が上がる方向に、あらかじめ設計されている制度だと言えます。
 
自社が対象でなくても、燃料への賦課金や取引先からの要請という形で、影響はいずれ届きます。今すぐ何かをする必要はなくても、何が起きようとしているのかを知っておくことには意味があるはずです。
 
次回は、対象になった企業が実際に何をしているのか、鉄鋼や石油といった業界の対応を追いかけてみようと思います。
 


 
情熱電力からのお知らせ
排出量取引そのものは大企業向けの制度ですが、その周辺で動いている再エネ電力の調達や非化石証書、電気料金のメニュー選びは、規模の大小にかかわらず関わってくるテーマです。
 
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この記事に関連するページリンク
・経済産業省:排出量取引制度の概要
・GX推進機構:排出量取引制度・化石燃料賦課金
・経済産業省:排出量取引制度 セットアップマニュアル
・環境省:国内排出量取引制度 | 国内排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)
・日経ビジネス:GX-ETS始動 炭素コスト時代、企業価値を左右する排出量取引